上 下
163 / 262
第二章 似すぎている敵

なぜここに……!?

しおりを挟む
「え……? 結衣サン!? どうして……」

 カスミが目を見開いて、驚いたような声をあげる。
 結衣はそんなカスミに、目を閉じて淡々と言う。

「……ガーネットから色々聞いたよ。カスミちゃんが、本当は味方じゃないことも」
「っ――! あ、アレは……っ!」
「おやぁ? 言い逃れでもするつもりですかぁ?」

 ガーネットは、カスミと魔王のやり取りを見ていたのだ。
 それを結衣に伝え、結衣は全てを知ったということで。
 だからこそ、ここに来ることができたわけである。

「……そ、それより、ココ……外からは入れないはずなんデスガ……」

 だが、それより、と。
 自分の秘密がバレていたことはどうでもいいように言い放った。
 そして、今起こっていることにこそ驚く。

 それもそのはず。
 何せこの林は――白石緋依の力――神の光で覆われているのだから!

「……ああ、そういうことか。神の光――人間の近くにあてると黒く濁るってやつだな」

 やはり、結衣に似ているだけはある。
 魔王は頭の回転がはやい。
 結衣に負けず劣らずの、頭の良さ。

「……もしかして、緋依さんの力もコピーしたの……?」
「そうみたいだな。あと、他にもあったぞ? 矢とか黒いモヤとか」
「真菜ちゃんの力まで!?」

 結衣が驚愕に染まった声で訊くと、カスミではなく、魔王がそれに答えた。
 カスミは夏音の力だけでなく、緋依や真菜の力まで吸収したのだという。

 つまりそれは、結衣だけではとても対処しきれないほどの力を蓄えているということである。

「……そうデス。ユーの……いや、魔王サンの願いはとても強烈デス。だから……こんなに黒くすることができたんデスヨ」

 人間にあてると黒く濁る神の光。
 それも、人間の強烈な願いによりどす黒くなるのだとか。
 そして、そんなどす黒くなった光がどうなるのか。
 それは――

「願いを魔法に変える力を持つ魔法少女には――とても有害なものとなる……デスヨ」

 有害、具体的にどうなるのかはわからない。
 だが、とても悲惨なこととなるのは間違いないだろう。
 それほどまでに、カスミは怒っているのかもしれない。
 自分の提案を受け入れなかったことに対する、怒りを……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

小さな姫さまは護衛騎士に恋してる

絹乃
恋愛
マルティナ王女の護衛騎士のアレクサンドル。幼い姫に気に入られ、ままごとに招待される。「泥団子は本当に食べなくても姫さまは傷つかないよな。大丈夫だよな」幼女相手にアレクは戸惑う日々を過ごす。マルティナも大きくなり、アレクに恋心を抱く。「畏れながら姫さま、押しが強すぎます。私はあなたさまの護衛なのですよ」と、マルティナの想いはなかなか受け取ってもらえない。※『わたしは妹にとっても嫌われています』の護衛騎士と小さな王女のその後のお話です。可愛く、とても優しい世界です。

虹の騎士団物語

舞子坂のぼる
ファンタジー
昔々、神様は世界をひとつにできる架け橋、虹を作りました。 けれど、世界はひとつになるどころか、いつまで経っても争いがなくなりません。 悲しんだ神様は、一筋の涙を流しました。 涙が虹に落ちると、虹は砕け、空から消えました。 それから、虹が空に現れることはありませんでした。 でもある日、砕けた虹のカケラが、ある国の9人の少女の元にとどきます。 虹の騎士団と呼ばれた彼女たちが世界をひとつにしてくれる、最後の希望になった。そのときのお話です。

転生調理令嬢は諦めることを知らない

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。  主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。  追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。  2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

転生したら親指王子?小さな僕を助けてくれたのは可愛いものが好きな強面騎士様だった。

音無野ウサギ
BL
目覚めたら親指姫サイズになっていた僕。親切なチョウチョさんに助けられたけど童話の世界みたいな展開についていけない。 親切なチョウチョを食べたヒキガエルに攫われてこのままヒキガエルのもとでシンデレラのようにこき使われるの?と思ったらヒキガエルの飼い主である悪い魔法使いを倒した強面騎士様に拾われて人形用のお家に住まわせてもらうことになった。夜の間に元のサイズに戻れるんだけど騎士様に幽霊と思われて…… 可愛いもの好きの強面騎士様と異世界転生して親指姫サイズになった僕のほのぼの日常BL

泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄
ファンタジー
沢山の家族に看取られ80歳で天寿を全うした春子は、神様らしき人物に転生させられる。 「おめでとうございまーす。アナタは泉の精に生まれ変わりまーす。」 気がついたら目の前には水溜まり。 「これが……泉?」 荒れ果てた大地に水溜まりが一つ。 泉の精として長大な時間を過ごす事になったお婆ちゃんの話。

処理中です...