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第二章 似すぎている敵
魔王、天使を討つ
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「肝試し……? お前らそんなくだらないことしてたのかよ……」
「し、しょうがないでしょ……止められなかったんだから……」
未だ闇が広がる林の中。
少女の魔法のおかげで、ほのかな灯りが結衣たちの周りを包んでいる。
だが、その灯りによって逆に怖くなっているような気がしないでもない。
「……つーかさ、この空間嫌な感じしかしねーな……」
「……そ、そうだよね。実は私もそういう感じがするよ……」
そう言えば、いつの間にか腕の振動が治まっている。
やっと落ち着いてきたのかとも思ったが、腕を掴まれている感触もない。
もしかしたら――ッ!!
「っ……! 明葉ちゃん!」
結衣が意を決して叫ぶも、案の定返事はない。
というより、近くにもいないのだ。
そうすると、この人に頼るしか……
「……ねぇ、力を貸してくれない?」
結衣一人でも、やれば出来るのかもしれない。
だが、二人でやれば成功率は格段に上がる。
少女は少し考え込んだ後、ボリボリと頭をかいた。
「チッ……仕方ねぇ。このままじゃ危険なのは俺も同じだしな」
「……ありがとう! じゃあ、やろう――!」
「おうっ!」
結衣は久々の――ガーネット抜きの変身をし。
少女は薄汚れたローブを、魔法少女衣装に変えていく。
そして――
「――幻想展開、光刃!」
「――幻想展開、黒・光刃!」
結衣の両手には、二本の白い槍。
少女の両手には、二本の黒い槍。
それぞれ右と左に一本ずつの槍を携え、二人は飛んだ。
天使と魔王。
相容れぬ二人が今、手を組もうと――!
「……ほぇ?」
結衣は、間の抜けた声を零した。
そして迫り来る魔王が、結衣の翠の瞳に映る。
ニヤリと、獰猛な笑みを浮かべた魔王が――
――天使を、討った。
「……ふ、は。ふはははは!! こんなに簡単にいくとはな!」
天使をしとめた魔王が、堪えきれずに声を上げて嗤う。
空から地面に墜ちた天使を、文字通りの上から目線で見おろす。
「あのな、俺――お前さえ殺せれば俺自身はどうなってもいいんだよ……」
どこか悲しそうに呟いた声は、結衣の耳に入ることはなかった。
なにせ、本物の結衣は――ここにはいないのだから。
「し、しょうがないでしょ……止められなかったんだから……」
未だ闇が広がる林の中。
少女の魔法のおかげで、ほのかな灯りが結衣たちの周りを包んでいる。
だが、その灯りによって逆に怖くなっているような気がしないでもない。
「……つーかさ、この空間嫌な感じしかしねーな……」
「……そ、そうだよね。実は私もそういう感じがするよ……」
そう言えば、いつの間にか腕の振動が治まっている。
やっと落ち着いてきたのかとも思ったが、腕を掴まれている感触もない。
もしかしたら――ッ!!
「っ……! 明葉ちゃん!」
結衣が意を決して叫ぶも、案の定返事はない。
というより、近くにもいないのだ。
そうすると、この人に頼るしか……
「……ねぇ、力を貸してくれない?」
結衣一人でも、やれば出来るのかもしれない。
だが、二人でやれば成功率は格段に上がる。
少女は少し考え込んだ後、ボリボリと頭をかいた。
「チッ……仕方ねぇ。このままじゃ危険なのは俺も同じだしな」
「……ありがとう! じゃあ、やろう――!」
「おうっ!」
結衣は久々の――ガーネット抜きの変身をし。
少女は薄汚れたローブを、魔法少女衣装に変えていく。
そして――
「――幻想展開、光刃!」
「――幻想展開、黒・光刃!」
結衣の両手には、二本の白い槍。
少女の両手には、二本の黒い槍。
それぞれ右と左に一本ずつの槍を携え、二人は飛んだ。
天使と魔王。
相容れぬ二人が今、手を組もうと――!
「……ほぇ?」
結衣は、間の抜けた声を零した。
そして迫り来る魔王が、結衣の翠の瞳に映る。
ニヤリと、獰猛な笑みを浮かべた魔王が――
――天使を、討った。
「……ふ、は。ふはははは!! こんなに簡単にいくとはな!」
天使をしとめた魔王が、堪えきれずに声を上げて嗤う。
空から地面に墜ちた天使を、文字通りの上から目線で見おろす。
「あのな、俺――お前さえ殺せれば俺自身はどうなってもいいんだよ……」
どこか悲しそうに呟いた声は、結衣の耳に入ることはなかった。
なにせ、本物の結衣は――ここにはいないのだから。
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