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第二章 似すぎている敵

肝試しの最中に……

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 そうして。
 肝試しをスタートさせた結衣たちだった。
 ――が。結衣は早くも後悔し、明葉はというと……

「いやいやいや無理無理無理…………」
「明葉ちゃんが怖いよぉ……」

 お経のように何かを唱えて、生まれたての子鹿状態になっている。
 そんな明葉に怖がる結衣の姿も隣に。
 明葉ががっしりと結衣の腕を掴んでいるせいか、結衣にも振動が伝わって震えている。

「うおおぉ……声が震える……」
「かえ、かえ、帰りましょおおお」
「ひぇええ!! 明葉ちゃんが何かに取り憑かれたああ!!」

 結衣と明葉は、『肝試し』をすごく満喫していた。
 ――別の方向性で。

 阿鼻叫喚が聴こえる、地獄と化した林の中。
 ふと、結衣たちの間を何かが横切った。

「え、な、なに!?」

 それに気づいた結衣が声を上げる。
 だが、それよりも大きな問題にも気づいてしまった。
 いつの間にか、前を歩いていたグループの子たちが消えていたのだ!
 そのことに、結衣は血の気が引くのを感じた。

「……これ、本格的にやばいんじゃ……」
「し、し、ししししし……」
「あー、もう! 分かったから静かにしてよぉ……!」

 明葉は震えながら、涙とともに声を出す。
 結衣はそんな明葉につられて涙目になる。
 だが、そんな結衣たちにさらに追い打ちをかけるように、またもや何かが近づく。

「はぁ、はぁ……っ。――あ? あれ、お前ら……何してんだよ」

 その何かは、結衣に似た少女だった。
 どこか威圧感のある少女の声が。
 今の結衣にはなぜか、妙に安心できた。
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