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第二章 似すぎている敵
謎の少女と出会うのは……
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『少年少女自然の家』から少し離れた山の中。
山頂から地上を見下ろす影があった。
その影は、頬杖をついて退屈そうにしている。
「やっぱりココにいまシタカ」
「……なんだよ、お前」
唐突に背後から聞こえた声に、影は警戒心を強める。
だが、カタコトな日本語を発した者は笑顔で言う。
「イヤー、ユーのことを知りたいだけデスヨ」
「お前……紺條カスミか」
「……まあ、ミーのことは当然知ってマスヨネ」
“紺條カスミ”と呼ばれた者は、紅い眼を逸らして苦笑する。
悪魔のような尻尾を揺らし、カスミは影に問う。
「結衣サンのこと、“憎い”って思っているデショウ?」
その問いかけに、影は琥珀色の瞳を見開く。
影――赤毛の少女は、カスミに向かって黒い槍を投げた。
だが、カスミは蝙蝠のような翼をはためかせて躱す。
「も~……なんデスカ、急に!」
「何となく。ムカついたから」
「ひっどいデス!」
カスミは冷や汗をかきながら叫ぶ。
結構ギリギリだったらしい。
だけど、赤毛の少女は『避けて当然だ』とでも言うように、冷めた目で見る。
「――で、用件は?」
先程とは打って変わって、鋭い眼光をカスミに向ける。
だが、槍をまじまじと見ていたカスミは、その声に取り合わなかった。
槍を指でツンッと触って、「お~」と感嘆の声をあげる。
「おい」
「アウチッ!?」
そんなカスミにイラッとした少女が、平手打ちをお見舞いする。
カスミは頭をさすり、涙を浮かべた。
「ん~、もう……ユーは暴力的デスネ~……」
「お前が人の話聞かねぇからだろ!? 何の用なんだよ!」
「え~? 何のって言われても――“ミーはユーに協力する”って言いに来たんデスヨ」
「……は?」
強い風が、辺りを吹き抜ける。
それに伴って、心が強くかき乱されるような感覚を覚えるのだった。
山頂から地上を見下ろす影があった。
その影は、頬杖をついて退屈そうにしている。
「やっぱりココにいまシタカ」
「……なんだよ、お前」
唐突に背後から聞こえた声に、影は警戒心を強める。
だが、カタコトな日本語を発した者は笑顔で言う。
「イヤー、ユーのことを知りたいだけデスヨ」
「お前……紺條カスミか」
「……まあ、ミーのことは当然知ってマスヨネ」
“紺條カスミ”と呼ばれた者は、紅い眼を逸らして苦笑する。
悪魔のような尻尾を揺らし、カスミは影に問う。
「結衣サンのこと、“憎い”って思っているデショウ?」
その問いかけに、影は琥珀色の瞳を見開く。
影――赤毛の少女は、カスミに向かって黒い槍を投げた。
だが、カスミは蝙蝠のような翼をはためかせて躱す。
「も~……なんデスカ、急に!」
「何となく。ムカついたから」
「ひっどいデス!」
カスミは冷や汗をかきながら叫ぶ。
結構ギリギリだったらしい。
だけど、赤毛の少女は『避けて当然だ』とでも言うように、冷めた目で見る。
「――で、用件は?」
先程とは打って変わって、鋭い眼光をカスミに向ける。
だが、槍をまじまじと見ていたカスミは、その声に取り合わなかった。
槍を指でツンッと触って、「お~」と感嘆の声をあげる。
「おい」
「アウチッ!?」
そんなカスミにイラッとした少女が、平手打ちをお見舞いする。
カスミは頭をさすり、涙を浮かべた。
「ん~、もう……ユーは暴力的デスネ~……」
「お前が人の話聞かねぇからだろ!? 何の用なんだよ!」
「え~? 何のって言われても――“ミーはユーに協力する”って言いに来たんデスヨ」
「……は?」
強い風が、辺りを吹き抜ける。
それに伴って、心が強くかき乱されるような感覚を覚えるのだった。
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