上 下
156 / 262
第二章 似すぎている敵

謎の少女と出会うのは……

しおりを挟む
『少年少女自然の家』から少し離れた山の中。
 山頂から地上を見下ろす影があった。
 その影は、頬杖をついて退屈そうにしている。

「やっぱりココにいまシタカ」
「……なんだよ、お前」

 唐突に背後から聞こえた声に、影は警戒心を強める。
 だが、カタコトな日本語を発した者は笑顔で言う。

「イヤー、ユーのことを知りたいだけデスヨ」
「お前……紺條カスミか」
「……まあ、ミーのことは当然知ってマスヨネ」

 “紺條カスミ”と呼ばれた者は、紅い眼を逸らして苦笑する。
 悪魔のような尻尾を揺らし、カスミは影に問う。

「結衣サンのこと、“憎いヘイト”って思っているデショウ?」

 その問いかけに、影は琥珀色の瞳を見開く。
 影――赤毛の少女は、カスミに向かって黒い槍を投げた。
 だが、カスミは蝙蝠のような翼をはためかせて躱す。

「も~……なんデスカ、急に!」
「何となく。ムカついたから」
「ひっどいデス!」

 カスミは冷や汗をかきながら叫ぶ。
 結構ギリギリだったらしい。
 だけど、赤毛の少女は『避けて当然だ』とでも言うように、冷めた目で見る。

「――で、用件は?」

 先程とは打って変わって、鋭い眼光をカスミに向ける。
 だが、槍をまじまじと見ていたカスミは、その声に取り合わなかった。
 槍を指でツンッと触って、「お~」と感嘆の声をあげる。

「おい」
「アウチッ!?」

 そんなカスミにイラッとした少女が、平手打ちをお見舞いする。
 カスミは頭をさすり、涙を浮かべた。

「ん~、もう……ユーは暴力的デスネ~……」
「お前が人の話聞かねぇからだろ!? 何の用なんだよ!」
「え~? 何のって言われても――“ミーはユーに協力する”って言いに来たんデスヨ」
「……は?」

 強い風が、辺りを吹き抜ける。
 それに伴って、心が強くかき乱されるような感覚を覚えるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしたい!?

日向墨虎
ファンタジー
前世は孫もいるおばちゃんが剣と魔法の異世界に転生した。しかも男の子。侯爵家の三男として成長していく。家族や周りの人たちが大好きでとても大切に思っている。家族も彼を溺愛している。なんにでも興味を持ち、改造したり創造したり、貴族社会の陰謀や事件に巻き込まれたりとやたらと忙しい。学校で仲間ができたり、冒険したりと本人はゆっくり暮らしたいのに・・・無理なのかなぁ?

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&
ファンタジー
その日、魔法学園女子寮に新しい寮母さんが就任しました、彼女は二人の養女を連れており、学園講師と共に女子寮を訪れます、その日からかしましい新たな女子寮の日常が紡がれ始めました。

涙の国の君主とアマテルの娘。

黒谷
ファンタジー
──遠く、焼けた大地の果て。 険しい岩山と乾いた砂地に囲まれて、その国は在った。 異形の者と人間とが共に暮らす国、『涙の国』。 涙の国には、地上で最も獰猛であり──、 数多の武勲をあげた牛頭の男が君主として君臨していた。 彼の率いる軍隊は凄まじく強靭で勇ましい狂戦士ばかりである。 そのあまりの強さに、周辺の国はかの国を『化け物の国』と呼び、 魔物が住まう魔境として忌み嫌い、恐れていた──。 そんなとある国を、遠い海の果てにある島国から、一人の娘が訪ねてくる。 彼女は、島国の神、アマテルの使いだった。 旅路への助けとして多くのものを授かり、それを用いて海を渡ってきた彼女は、 『海の向こう側にある神さま』への親書を預かっていた──。 *** これは、在り得ざる『いつか』の物語。 まだ善も悪もなく、そこに『悪魔』というものはなく。 人も、そうではないものも、共に暮らしていた頃のこと。 ──その誰も彼もが『神さま』だった時代のお話。 人外×少女の、王道ファンタジー。  

大魔女アナスタシアの悪戯 ~運命の矢が刺さったらしいのですが、これ、間違いなんです!~

三沢ケイ
恋愛
大魔女アナスタシアは考えた。このつまらない日常に何か楽しい余興はないものか。 そして犠牲となったのは三十路OLの日下舞花。口車に乗せられて連れてこられた異世界で渡された恋に効く弓矢が誤発射し、刺さった相手はやたら怖そうな強面の軍人だった。 待ってください。これ、間違いなんです!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...