145 / 262
第二章 似すぎている敵
野外学習の準備
しおりを挟む
ガーネットの意外な一面を見た翌日。
野外学習に向かうため、しおりを見ながらいるものを用意している。
「ん? え、これあったかな……お母さーん」
ギリギリまで準備を怠っていたせいで慌ただしく、忙しなく動き回っている。
なんでギリギリまで放っておいたのだろう、と。
結衣は己の怠惰を恨んだ。
「ううう……終わらないよぉ~……」
「自業自得ですよぉ? ちゃんとやっておかないとぉ」
「うう……ガーネットに説教されてる……なんか屈辱……」
「酷すぎませんか!?」
なんだか久しぶりに自分たちらしいやり取りができて、結衣は薄く笑う。
こんな何気ない会話を嬉しく思う日が来るなんて、結衣は想像もしなかった。
なぜか元気をもらった結衣は、気合を入れてもうひと頑張りしようと踏ん張る。
「よーし、明日までに終わらせるぞー!」
「おー! その意気ですよ、結衣様!」
そんなふうに二人で盛り上がっていると、ノックの音が聞こえてきた。
そして、ガーネットは慌ててその音から逃げるようにして隠れる。
「結衣ー? 入るわよ?」
「あ、うん……! いいよ!」
ガーネットが隠れられたことを確認し、結衣はドアを開ける。
その開けたドアの先には、大荷物を抱えたお母さんがいた。
結衣は戸惑い、目を点にする。
「……え? この大荷物……何??」
「え? 何って――野外学習に必要なものを持ってきたのよ」
「――え?」
この大荷物が、全部野外学習に必要なものなのだろうか。
結衣がたじろいでいると、お母さんが結衣の部屋の中へ入ってくる。
そして、ゆっくりと抱えていた大荷物をおろす。
妙に大きなバッグのチャックを開けると――
「わぁ……」
結衣は思わず感嘆の声を零した。
バッグの中には――寝巻きや着替え、歯ブラシやお菓子やアナログゲーム(トランプ)など。
野外学習に必要なものがたくさん入っている。
「お母さん……ありがとう……」
結衣は、嬉しすぎて泣きそうになった。
ここまでしてくれる人は、そういない。
感謝を伝えるだけでは到底足りない。
「いいのよ。野外学習、楽しんできてね」
「……うんっ!」
お母さんの優しい声に、結衣は笑顔でこたえた。
野外学習に向かうため、しおりを見ながらいるものを用意している。
「ん? え、これあったかな……お母さーん」
ギリギリまで準備を怠っていたせいで慌ただしく、忙しなく動き回っている。
なんでギリギリまで放っておいたのだろう、と。
結衣は己の怠惰を恨んだ。
「ううう……終わらないよぉ~……」
「自業自得ですよぉ? ちゃんとやっておかないとぉ」
「うう……ガーネットに説教されてる……なんか屈辱……」
「酷すぎませんか!?」
なんだか久しぶりに自分たちらしいやり取りができて、結衣は薄く笑う。
こんな何気ない会話を嬉しく思う日が来るなんて、結衣は想像もしなかった。
なぜか元気をもらった結衣は、気合を入れてもうひと頑張りしようと踏ん張る。
「よーし、明日までに終わらせるぞー!」
「おー! その意気ですよ、結衣様!」
そんなふうに二人で盛り上がっていると、ノックの音が聞こえてきた。
そして、ガーネットは慌ててその音から逃げるようにして隠れる。
「結衣ー? 入るわよ?」
「あ、うん……! いいよ!」
ガーネットが隠れられたことを確認し、結衣はドアを開ける。
その開けたドアの先には、大荷物を抱えたお母さんがいた。
結衣は戸惑い、目を点にする。
「……え? この大荷物……何??」
「え? 何って――野外学習に必要なものを持ってきたのよ」
「――え?」
この大荷物が、全部野外学習に必要なものなのだろうか。
結衣がたじろいでいると、お母さんが結衣の部屋の中へ入ってくる。
そして、ゆっくりと抱えていた大荷物をおろす。
妙に大きなバッグのチャックを開けると――
「わぁ……」
結衣は思わず感嘆の声を零した。
バッグの中には――寝巻きや着替え、歯ブラシやお菓子やアナログゲーム(トランプ)など。
野外学習に必要なものがたくさん入っている。
「お母さん……ありがとう……」
結衣は、嬉しすぎて泣きそうになった。
ここまでしてくれる人は、そういない。
感謝を伝えるだけでは到底足りない。
「いいのよ。野外学習、楽しんできてね」
「……うんっ!」
お母さんの優しい声に、結衣は笑顔でこたえた。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ちょっと神様!私もうステータス調整されてるんですが!!
べちてん
ファンタジー
アニメ、マンガ、ラノベに小説好きの典型的な陰キャ高校生の西園千成はある日河川敷に花見に来ていた。人混みに酔い、体調が悪くなったので少し離れた路地で休憩していたらいつの間にか神域に迷い込んでしまっていた!!もう元居た世界には戻れないとのことなので魔法の世界へ転移することに。申し訳ないとか何とかでステータスを古龍の半分にしてもらったのだが、別の神様がそれを知らずに私のステータスをそこからさらに2倍にしてしまった!ちょっと神様!もうステータス調整されてるんですが!!
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
魔王に養われる【ヒモ勇者】ですが何か?~仲間に裏切られたけど、魔王に拾われたので、全力で魔界ライフを満喫しようと思います~
柊彼方
ファンタジー
「エル、悪いが君にはここで死んでもらう」
【勇者】の称号を持つ少年、エルは魔王を討伐するため、勇者パーティーと共に冒険をしていた。
しかし、仲間である【賢者】に裏切られ、囮として捨てられてしまう。
追手の魔族たちに囲まれ、何もかも諦めたエルだったが、そんな彼の前に突如、美少女が現れる。
それは仲間達でも人間でもない……【魔王】だった。
何故か魔王に拾われたエルは魔界で魔王に養われることに。
そこでエルは魔族の温かみを知り、魔界で暮らしたいと思うようになる。
そして彼は決意した。魔族と人間が笑い合える世界を作ることを。
エルを捨てた勇者パーティーは全てが空回り。エルを捨てたことで生んだ亀裂は徐々に広がっていく。
人間界は勇者に戻ってもらおうと躍起になるが、エルが戻るわけもなく……
これは、ヒモとなった勇者が魔界ライフを満喫するために、魔王と世界を救う、そんな物語。
魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”
どたぬき
ファンタジー
ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。
なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる