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幕間 少女たちの過去(前編)

真菜の過去Ⅱ

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 そんなふうに、真菜が両親への不満をどんどん募らせている時、事件が起こる。
 真菜が普通に学校から帰ってくると、家の前に人集りができていた。

「え、なん……だろ……」

 少し嫌な予感がしたが、体育の授業で疲れていたせいか。
 好奇心より鬱陶しさが勝っていたのだ。

 だから真菜は人波をかき分け、家の方へ進む。
 だが、すぐ何かに遮られる。

「ん……? なに……?」

 サスペンスドラマなどによく出てきそうな、『立ち入り禁止テープ』が真菜の目の前に貼ってある。
 そして、救急車とパトカーが一台ずつ停まっている。

 真菜は慌てて家の方を見ると、壁には銃弾を無造作に撃ち込まれたような跡があった。
 屋根は既になく、窓ガラスが割れている。

「…………なに、これ……」

 まるで戦争の被害に遭ったかのような光景。
 小学二年生の真菜には、理解が追いつかない。

 何が起こったのだろう。
 なにがどうして、こんなことに。

「……おかあ、さん……おとう、さん……」

 お母さんとお父さんは無事なのだろうか。
 その事を確かめたいが、テープが邪魔をしていて前に進めない。
 そこで真菜は覚悟を決め、テープを潜った。

「あ、ちょっと……!」

 警官らしき人の声が聞こえたが、真菜はそれを無視する。
 短い距離ではあるが――体育での疲れを忘れ――全力で走った。

「……っ、おかあ、さん……! おとう、さん……!」

 真菜は声と身体を震わせ、必死に叫ぶ。
 だが、返事が返ってこない。
 静寂だけが、真菜の周りを包む。

 もう、解っていた。

 救急車が停まっていて、家が原型を留めていない。
 事故か事件か。区別はつかないが、両親が無事ではないということだけは解る。

 ……ああ、一度だけでいいから。二人に、抱きしめられたかった。

 真菜はその場に崩れ落ち、意識を手放した。

 ☆ ☆ ☆

「……そんな、ことも……あったな……」

 感慨深そうに、真菜は呟く。
 回想から意識を取り戻し、腰掛けていた岩から降りる。
 あの時は絶望して、死にたくなったこともあったが、今は――

「……結衣、や……みんなが……いてくれる、から……」

 赤い――赤すぎる夕陽を眺めながら、すごく嬉しそうに微笑んだ。
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