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第一章 少女たちの願い(後編)
ジェットコースターにて
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「おおー! き、ききき緊張するなぁ……っ!」
「あはは。結衣ちゃん面白い顔してますよ?」
「ふぇ!? そんなに変な顔してた……!?」
結衣たちは今、ジェットコースターの序盤の所を体感している。
つまり、ジェットコースターの大きな上り坂にいるのだ。
そして、結衣の隣には緋依が座っている。
「うわわ……すっごいガコガコしてる……!」
「なんだか楽しいですね!」
結衣は忙しなく辺りを見回す。
こういう所の緊張感は半端じゃない。
なんと言うか……こう、今からでも逃げ出したくなるような気持ちになってしまう。
だが、何故か緋依は余裕そうな顔をしている。
「……す、すごいね緋依さん。怖くないの……?」
「え? なんでですか? すっごくワクワクす――るっ?」
そんな会話を交わしていると、ちょうどてっぺんまで来ていたようだ。
結衣は顔を引き攣らせ、緋依はというと。
「ひえあああああ!?!?」
ものすごい形相で叫んでいる。
自分よりテンパる人を見て、結衣は少し冷静になることが出来た。
余裕そうだった緋依が、なぜこんなにも怖がっているのか。
それは、多分。
「も、もしかして……遊園地に来たことがない、とか……?」
それならば納得がいく。
緋依の家庭は、なんというか……普通じゃないから。
遊園地に来たことがなくても、不思議じゃない。
なら――……
「めいいっぱい、みんなと楽しまなきゃね……」
そんなことを呟いて、結衣は風に打たれた。
☆ ☆ ☆
「ふひええ~……もう無理……無理ですぅ……」
緋依は、ベンチでグロッキー状態になっている。
先程のジェットコースターが余程堪えたのだろう。
「大丈夫? お水あるわよ?」
結衣のお母さんが、心配そうに声をかける。
みんな心配そうに緋依を見ている中、せーちゃんは。
「まったく……これぐらいで音をあげるなんて、だらしないわねぇ……」
と、呆れ気味に零す。
そう言いつつも、タオルを渡しているのだ。
本当に、素直じゃない。
結衣はそう思って、顔をゆるめた。
「どうしたんです、結衣様? 随分嬉しそうですがぁ」
またもやガーネットが、小さな声で話しかけてくる。
本当になぜ、結衣の変化がわかるのか謎である。
だが、その真相を知るのもこわいため、訊かないでおいた。
「みんなと仲良くなれて、本当によかったな~って思ったの」
結衣は遠い昔を懐かしむようにして、空を見上げる。
その空は、結衣たちの行く末を照らし出してくれているように見えた。
「あはは。結衣ちゃん面白い顔してますよ?」
「ふぇ!? そんなに変な顔してた……!?」
結衣たちは今、ジェットコースターの序盤の所を体感している。
つまり、ジェットコースターの大きな上り坂にいるのだ。
そして、結衣の隣には緋依が座っている。
「うわわ……すっごいガコガコしてる……!」
「なんだか楽しいですね!」
結衣は忙しなく辺りを見回す。
こういう所の緊張感は半端じゃない。
なんと言うか……こう、今からでも逃げ出したくなるような気持ちになってしまう。
だが、何故か緋依は余裕そうな顔をしている。
「……す、すごいね緋依さん。怖くないの……?」
「え? なんでですか? すっごくワクワクす――るっ?」
そんな会話を交わしていると、ちょうどてっぺんまで来ていたようだ。
結衣は顔を引き攣らせ、緋依はというと。
「ひえあああああ!?!?」
ものすごい形相で叫んでいる。
自分よりテンパる人を見て、結衣は少し冷静になることが出来た。
余裕そうだった緋依が、なぜこんなにも怖がっているのか。
それは、多分。
「も、もしかして……遊園地に来たことがない、とか……?」
それならば納得がいく。
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遊園地に来たことがなくても、不思議じゃない。
なら――……
「めいいっぱい、みんなと楽しまなきゃね……」
そんなことを呟いて、結衣は風に打たれた。
☆ ☆ ☆
「ふひええ~……もう無理……無理ですぅ……」
緋依は、ベンチでグロッキー状態になっている。
先程のジェットコースターが余程堪えたのだろう。
「大丈夫? お水あるわよ?」
結衣のお母さんが、心配そうに声をかける。
みんな心配そうに緋依を見ている中、せーちゃんは。
「まったく……これぐらいで音をあげるなんて、だらしないわねぇ……」
と、呆れ気味に零す。
そう言いつつも、タオルを渡しているのだ。
本当に、素直じゃない。
結衣はそう思って、顔をゆるめた。
「どうしたんです、結衣様? 随分嬉しそうですがぁ」
またもやガーネットが、小さな声で話しかけてくる。
本当になぜ、結衣の変化がわかるのか謎である。
だが、その真相を知るのもこわいため、訊かないでおいた。
「みんなと仲良くなれて、本当によかったな~って思ったの」
結衣は遠い昔を懐かしむようにして、空を見上げる。
その空は、結衣たちの行く末を照らし出してくれているように見えた。
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