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第一章 少女たちの願い(後編)
絶対に助けるから!
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「別に不満というわけではないですが……結衣様が一人で突っ走るのでいじけてるだけです」
「えっ! そんなこと!?」
「そんなこととはなんですかぁ! 私は結衣様の奴隷ですのにぃ!」
「言葉に気をつけよう!? っていうか奴隷ってなに!?」
ガーネットが言い放った予想外の言葉に、結衣は思わず叫ぶ。
だが、結衣は頭を左右に振り、このままじゃだめだと心を入れ替える。
そして、結衣は改めて地図を見てみる。
だが、地図記号が全くわからない。
「ううう……地図記号って苦手……何がなんなのかわけわかんない……」
「結衣様はほんと地図系に弱いですよねぇ~。何気に方向音痴だったりしますしねぇ」
「う、うるさいな……」
ガーネットに指摘され、結衣は顔を赤らめる。
本当に地図系は無理なのだ。だって意味わかんないし。
「ねぇ……力を貸してくれない?」
「……はぁ……わかりましたぁ。後でちゃんと説明してくださいねぇ?」
結衣の涙目の懇願に、ついにガーネットが根負けする。
呆れたように零すガーネットを見て、結衣はパァーっと目を輝かせる。
「それじゃ、行くよっ!」
自分が絶対、お宝を見つけてみせる!
結衣はそう意気込んで、ガーネットを握る手に力を込める。
願え。望め。叶えられると、信じるんだ!
「……あ、これは――」
お宝のある場所、それは――……
☆ ☆ ☆
ふわりと降り立つ。
優しさと決意を滲ませて、魔法少女は地上に足をつける。
「やっと来たんね……遅かったやないの」
そんな少女に呼びかける声が、辺りに響く。
響いた声は風に乗り、儚く消える。
「……やっぱり、明葉ちゃんは――」
その代わり、別の声が震える。
その言葉を受けて、明葉と呼ばれた少女は苦笑する。
明葉の姿は、龍そのものだった。
とはいえ、明葉の姿に龍の要素がついたものであるが。
大きな龍の尻尾を揺らし、高い位置に二つに結んだ髪を靡かせる。
「……そうや。うちは龍。あの龍と同じやよ」
あの龍。あの絵本の主人公だろう。
そして、“同じ”ということは。
「“悲しさを抱えた龍”……っていうことだよね……」
結衣の言葉に、明葉は目をつむる。
そして腹を括ったのか、明葉はもう一度目を開く。
その眼は、悲しみに満ちている。
寂しくて、寒いほどの――藍。
やはり……明葉は――
「……そうや。そしてその悲しみは、どんどん膨れ上がっていくんや……」
明葉が言葉を紡ぐたび、周囲には風が強く吹いていく。
明葉の感情に呼応するように、白い雲は黒く染まっていく。
「……なぁ。あんさんにもわかるやろ? うちと結衣さんは、おんなじ――」
「やめて」
「……ふっ、ふふっ。そないに怖い顔せんでもいいやないの」
自分としたことが、挑発に乗るなんて……
結衣は自分の頬を叩き、気合を入れる。
その音に吃驚したのか、明葉が目を見開く。
「……うん、うん。大丈夫。絶対、助けるから――」
結衣はそう呟き、バッと跳躍した。
「えっ! そんなこと!?」
「そんなこととはなんですかぁ! 私は結衣様の奴隷ですのにぃ!」
「言葉に気をつけよう!? っていうか奴隷ってなに!?」
ガーネットが言い放った予想外の言葉に、結衣は思わず叫ぶ。
だが、結衣は頭を左右に振り、このままじゃだめだと心を入れ替える。
そして、結衣は改めて地図を見てみる。
だが、地図記号が全くわからない。
「ううう……地図記号って苦手……何がなんなのかわけわかんない……」
「結衣様はほんと地図系に弱いですよねぇ~。何気に方向音痴だったりしますしねぇ」
「う、うるさいな……」
ガーネットに指摘され、結衣は顔を赤らめる。
本当に地図系は無理なのだ。だって意味わかんないし。
「ねぇ……力を貸してくれない?」
「……はぁ……わかりましたぁ。後でちゃんと説明してくださいねぇ?」
結衣の涙目の懇願に、ついにガーネットが根負けする。
呆れたように零すガーネットを見て、結衣はパァーっと目を輝かせる。
「それじゃ、行くよっ!」
自分が絶対、お宝を見つけてみせる!
結衣はそう意気込んで、ガーネットを握る手に力を込める。
願え。望め。叶えられると、信じるんだ!
「……あ、これは――」
お宝のある場所、それは――……
☆ ☆ ☆
ふわりと降り立つ。
優しさと決意を滲ませて、魔法少女は地上に足をつける。
「やっと来たんね……遅かったやないの」
そんな少女に呼びかける声が、辺りに響く。
響いた声は風に乗り、儚く消える。
「……やっぱり、明葉ちゃんは――」
その代わり、別の声が震える。
その言葉を受けて、明葉と呼ばれた少女は苦笑する。
明葉の姿は、龍そのものだった。
とはいえ、明葉の姿に龍の要素がついたものであるが。
大きな龍の尻尾を揺らし、高い位置に二つに結んだ髪を靡かせる。
「……そうや。うちは龍。あの龍と同じやよ」
あの龍。あの絵本の主人公だろう。
そして、“同じ”ということは。
「“悲しさを抱えた龍”……っていうことだよね……」
結衣の言葉に、明葉は目をつむる。
そして腹を括ったのか、明葉はもう一度目を開く。
その眼は、悲しみに満ちている。
寂しくて、寒いほどの――藍。
やはり……明葉は――
「……そうや。そしてその悲しみは、どんどん膨れ上がっていくんや……」
明葉が言葉を紡ぐたび、周囲には風が強く吹いていく。
明葉の感情に呼応するように、白い雲は黒く染まっていく。
「……なぁ。あんさんにもわかるやろ? うちと結衣さんは、おんなじ――」
「やめて」
「……ふっ、ふふっ。そないに怖い顔せんでもいいやないの」
自分としたことが、挑発に乗るなんて……
結衣は自分の頬を叩き、気合を入れる。
その音に吃驚したのか、明葉が目を見開く。
「……うん、うん。大丈夫。絶対、助けるから――」
結衣はそう呟き、バッと跳躍した。
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