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第一章 少女たちの願い(後編)
筋肉痛だよ……
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翌朝。
結衣は筋肉痛になっていた。
「うう……全身が痛いよぉ……」
戦った時には、こんなことは一度もなかったのに。
それほど、昨日の夜に起きたことがハードだったのだろう。
「あははぁ。結衣様は弱いですねぇ~! あれだけで筋肉痛になるとはぁ~」
「ううう~……筋肉痛じゃなきゃ、ガーネットをぶん投げてるのにぃ……」
「バイオレンスですね!? 危なかったです……」
結衣のそばにいたガーネットだったが。
結衣の言葉を聞いて、即座にベッドの下に隠れた。
結衣はため息をつき、学校に向かう準備をする。
だが結衣は、あまり学校に行きたくなかった。
筋肉痛だということもあるが。
明葉に会いたくないのだ。
結衣は、明葉のことを友だちだと思っている。
だが、明葉が結衣をどう思っているのかがわからない。
「……まあ、行くしかないか……」
こうして結衣は、ぎこちなく歩きながら部屋を出た。
☆ ☆ ☆
「ねねね! 私さっきそこで龍を見たよ!」
「人の姿に龍の角とか尻尾とかついてたよね!」
「えー! いいなぁ! 私も見たーい!」
教室内が何やら騒がしい。
こんなにざわざわしているのは、明葉が転校してきた時以来かもしれない。
つい最近だが。
「なんなんだろう……龍を見た??」
「なんだか怪しげな雲行きですねぇ~……」
龍と言えば、あの絵本の龍を思い出す。
だけどあの龍は、人間の姿なんてしていなかった。
「とりあえず、休み時間に調べてみようか……!」
「ええ! 楽しくなってきましたねぇ!」
「うーんと……楽しくはないかな……」
とりあえずはこの件を保留にする。
結衣にとっては、あの件の方が重要だから。
あの件とは。そう、明葉のことだ。
だが。
いつまで経っても、明葉は現れなかった。
明葉の正式な席が結衣の後ろになったから、来ていればすぐにわかるのだが。
朝のHRが始まっても来ない。
結衣は、先生の話を上の空気味に聞いていた。
その時。
「えーと、高柳は休みだと聞いている。なんでも、熱を出しているそうだ」
「えっ!?」
「お前らも体調には気をつけろよー」
そう言って、先生は教室から出ていった。
結衣は明葉の席を見る。
まさか明葉が体調不良だとは。
――もしかして。
明葉も自分と同じで、あの夢を見たのだろうか。
だとしたら、あの胸の痛みを、一人で体験していることになる。
明葉の両親は共働きだと聞いている。
なら、今は二人とも仕事に行っているだろう。
だから今、明葉は……一人で――
「……ねぇ、ガーネット……」
「なんです?」
結衣の静かな問いかけに、ガーネットが首を傾げるような仕草をする。
「休み時間に行くところ、変更しようと思うんだけど……いいかな?」
結衣の真剣な眼差しを受けて、ガーネットは当然のように言う。
「ええ! 結衣様がそう決めたのなら、私はそれに従うまでですよぉ!」
「ありがとう、ガーネット……!」
結衣は逸る気持ちを抑え、大人しく授業を受けた。
結衣は筋肉痛になっていた。
「うう……全身が痛いよぉ……」
戦った時には、こんなことは一度もなかったのに。
それほど、昨日の夜に起きたことがハードだったのだろう。
「あははぁ。結衣様は弱いですねぇ~! あれだけで筋肉痛になるとはぁ~」
「ううう~……筋肉痛じゃなきゃ、ガーネットをぶん投げてるのにぃ……」
「バイオレンスですね!? 危なかったです……」
結衣のそばにいたガーネットだったが。
結衣の言葉を聞いて、即座にベッドの下に隠れた。
結衣はため息をつき、学校に向かう準備をする。
だが結衣は、あまり学校に行きたくなかった。
筋肉痛だということもあるが。
明葉に会いたくないのだ。
結衣は、明葉のことを友だちだと思っている。
だが、明葉が結衣をどう思っているのかがわからない。
「……まあ、行くしかないか……」
こうして結衣は、ぎこちなく歩きながら部屋を出た。
☆ ☆ ☆
「ねねね! 私さっきそこで龍を見たよ!」
「人の姿に龍の角とか尻尾とかついてたよね!」
「えー! いいなぁ! 私も見たーい!」
教室内が何やら騒がしい。
こんなにざわざわしているのは、明葉が転校してきた時以来かもしれない。
つい最近だが。
「なんなんだろう……龍を見た??」
「なんだか怪しげな雲行きですねぇ~……」
龍と言えば、あの絵本の龍を思い出す。
だけどあの龍は、人間の姿なんてしていなかった。
「とりあえず、休み時間に調べてみようか……!」
「ええ! 楽しくなってきましたねぇ!」
「うーんと……楽しくはないかな……」
とりあえずはこの件を保留にする。
結衣にとっては、あの件の方が重要だから。
あの件とは。そう、明葉のことだ。
だが。
いつまで経っても、明葉は現れなかった。
明葉の正式な席が結衣の後ろになったから、来ていればすぐにわかるのだが。
朝のHRが始まっても来ない。
結衣は、先生の話を上の空気味に聞いていた。
その時。
「えーと、高柳は休みだと聞いている。なんでも、熱を出しているそうだ」
「えっ!?」
「お前らも体調には気をつけろよー」
そう言って、先生は教室から出ていった。
結衣は明葉の席を見る。
まさか明葉が体調不良だとは。
――もしかして。
明葉も自分と同じで、あの夢を見たのだろうか。
だとしたら、あの胸の痛みを、一人で体験していることになる。
明葉の両親は共働きだと聞いている。
なら、今は二人とも仕事に行っているだろう。
だから今、明葉は……一人で――
「……ねぇ、ガーネット……」
「なんです?」
結衣の静かな問いかけに、ガーネットが首を傾げるような仕草をする。
「休み時間に行くところ、変更しようと思うんだけど……いいかな?」
結衣の真剣な眼差しを受けて、ガーネットは当然のように言う。
「ええ! 結衣様がそう決めたのなら、私はそれに従うまでですよぉ!」
「ありがとう、ガーネット……!」
結衣は逸る気持ちを抑え、大人しく授業を受けた。
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