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第一章 少女たちの願い(後編)

宝の地図……?

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「ねぇねぇ、聞いた?」
「うんうん! あの『お宝が埋まっている地図』が見つかったってやつでしょ?」
「そうそれ! 私たちもお宝見つけたいよね~」
「ね~!」

 様々な、元気な声が飛び交う咲姫小学校。
 そんな小学校に、一つのある噂が流れ始めていた。

「宝探し?」
「そうなんよ! 一緒にやってくれへん?」

 目を輝かせて迫ってくる明葉。
 ものすごく嫌な予感しかしない。

 結衣はそう思うも、好奇心がうずく。
 『宝探し』――そう聞くだけで、わくわくする。

「うーん……そうだなぁ……暇だし、少し気になるから行ってみたいな」
「ほんま!? うふふ、嬉しいわぁ……!」

 朗らかに笑う奥ゆかしさが、すごく素敵だ。
 それでいて、おちゃめな部分も含まれている。

 これは、最強なのではないだろうか。

「結衣さん……? 行かへんの?」
「へあっ!? ご、ごめん! 今行くっ!」

 こうして、結衣たちの宝探しが始まった。

 ☆ ☆ ☆

 いつもなら人の少ない図書室が、人で溢れかえっている。

「なっ……! なにごとっ!?」

 結衣はそう叫ばずにはいられなかった。
 いつもは、閑古鳥が鳴いているのではと錯覚するほどなのに。

 そんな結衣の驚きに、明葉はさも当然というふうに「うんうん」と頷く。

「なんでも、ここに宝の地図が隠されてるらしいんよ」
「えっ!? ここに!?」

 図書室に宝の地図……!?
 そんなことってありえるのだろうか……
 結衣は一層、混乱に喘ぐ。

 それにしても、さすがに人が多すぎではないだろうか。
 宝探しはたしかに楽しそうではあるが。
 胡散臭さがプンプン臭っているものに、なぜこれだけの人が集まるのだろう。

 図書室に人が集まりすぎて、メインである本より、人の方が多い気さえする。
 こんなに人が密集しているところには、正直入りたくないのだが。

「……い、行こう……!」
「うん! 結衣さん、頼もしいわぁ……」
「え? えへへ……そ、そうかなぁ……?」

 勇気を出したら明葉に褒められ、結衣は照れる。
 こういうことで褒められたら、何百倍も勇気が跳ね上がりそうだ。

「じゃ、じゃあ行くよっ!」
「おー!」

 結衣と明葉は戦場へ入ってゆく。
 だが結衣は、肝心なことを聞いていないことに気が付いた。

「……そういえば、宝の地図って……どこにあるの……?」
「……あはっ……」
「え……?」

 結衣の問いかけに、明葉はただ笑うだけだ。
 肝心の場所については教えてくれない。
 というより、教えられないのだろう。

「……ま、まさか……」

 そんな結衣の言葉を肯定するように、明葉は目を伏せる。

「堪忍なぁ……」

 そして、謝罪の言葉を放つ。
 周りに人が多いのに、結衣はなぜか……寒さを覚えた。

 だが、次の瞬間には自分に喝を入れる。

「ここまで来たら仕方ない……自力で探そう!」
「へ……? うちを責めへんの……?」

 明葉の弱々しい声を聞き、結衣は力強く言い放つ。

「だって、明葉ちゃんを責めても意味ないし! 行くって決めたのは私だもん!」

 「だから――」と言って。

「大丈夫!」

 そうやって、結衣は明葉の手を握った。
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