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第一章 少女たちの願い(後編)

転校生がやってきた!

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「いってきまーす!」
「はーい。いってらっしゃい」

 結衣は元気よく家を飛び出し、学校に向かう。
 今日は図書室に、新しい本が色々入ってくるらしいのだ。
 結衣はその事に、テンションが上がっていた。

「わー! すっごくワクワクするなぁ……! いったいどんな本が入ってくるんだろう!」
「結衣様は本当に本がお好きですよねぇ~」

 ランドセルの中に入っているガーネットが、なぜか嬉しそうに言う。

「と、言うことはぁ! 私のことも大好きだと思われてる――と言うことですよねぇ!」
「いや、それはないから。ていうか! 今は魔法のステッキなんじゃないの!?」
「私は魔法のステッキであり、本でもあるので大丈夫なのです!」
「もうガーネットがわからないよ……」

 そんな風にまた、いつも通りの会話を交わして学校に着く。
 すると、なにやら教室が騒がしい。
 いつも活気がいいが、今日はどこか違う。

「え、なんなんだろ……この空気……」
「なんなんでしょうねぇ~? なんだかすごいことが起こりそうでぇす!」

 結衣が独り言を呟くと、ガーネットが小声で結衣の声を拾った。
 その声をスルーし、結衣は自分の席に着く。

 結衣の席は窓側の一番後ろ。
 いわゆる“主人公席”というやつだ。

 ……という話はどうでもよくて。

「おはよう、みんな!」

 結衣が席に着いたと同時、担任の水谷先生が入ってくる。
 元気がいい先生の声に、みんなが席に着く。

「突然だが、今日は転校生を紹介する」
「えっ……!?」

 教室中にどよめきがはしる。
 結衣も思わず、疑問の声を零してしまった。
 本当に突然のことに、心の準備が出来ていない。

 そうしている間に、転校生の子が教室に入ってきていた。
 落ち着いた黄緑色の長い髪を二つに束ね、橙色の綺麗な瞳をしている。

 そんな転校生の第一声が。

高柳明葉たかやなぎあきはどす。どうぞよろしゅう♡」

 まさかの京都弁だった。

 結衣は吃驚しすぎて、声が出ない。
 結衣の住んでいる所は、京都へ行こうとすると新幹線が必要なぐらい遠いから。

「ほああ……すご……」
「ほー……京都弁キャラですか……いいですねぇ~……」

 ガーネットがなぜか上気した声を発する。
 が、結衣はそれを無視する。

 改めて見てみても、さすが京都出身というべきか。
 奥ゆかしい笑顔に、しなやかな動き、和風美人という言葉が良く似合っている。

 隣に立てば、恥ずかしくて絶対距離を置いてしまうようなほど顔立ちがよい。
 そんな風に、結衣が性別を忘れて見とれていると。

「じゃあとりあえず……椎名の隣でいいな?」
「――はい?」

 突然現実に引き戻された。
 そう言えば、隣の人がいない。休みなのだろうか。

「椎名の隣は今日休みだから、今日はその席に座ってくれ。明日から正式な席を用意するから」
「はーい」

 ……ま、マジですか。
 結衣はどう反応すればいいのかわからず、とりあえず下を向くことにした。

 こんなに美人な転校生が隣にきたら、自分と比べられるに違いない。
 結衣はそう思って、下を向くことしか出来ないでいる。

 そうこうしているうちに、美人な転校生が隣に来ていた。

「椎名さん……やっけ? よろしゅうなぁ」
「え……あ……えっと、気軽に『結衣』って呼んでよ」

 結衣が若干引きつった笑顔そう言うと、転校生は目を見開いた。
 だが、それも一瞬のこと。転校生はすぐに笑顔を浮かべる。

 そのことに、結衣は少し違和感を覚えながらも、知らんぷりを決め込んだ。

「じゃあ、うちのことも気楽に『明葉』って呼んでくれへん?」

 転校生――明葉がそう言うと、結衣に手を差し出す。
 そして、

「どうぞよろしゅう――結衣さん」
「え、あ……うん! よろしくね――明葉ちゃん」

 挨拶を交わすと、二人は笑顔で握手した。
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