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第一章 少女たちの願い(後編)

セクハラステッキ

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 大雨が降った翌日。
 話したい事があると言っていたせーちゃんが、結衣の家に遊びに来ている。

「来ちゃったの」
「へ?」

 突然、深刻そうな面持ちで言ったせーちゃんの言葉は。
 だが、結衣には理解できなかった。

「えっと……何が?」
「分かるでしょう!? アレよ、アレ!」
「いや、アレって言われても……よく分からないっていうか……」

 恐る恐る訊いたが、やはりわからない。
 ハッキリとは言えない事情があるのはだいたいわかるが、『アレ』と言われてもわかるわけがない。

「ふむぅ? せーちゃん様は何が言いたいんですぅ?」
「それは……言えないわ……」

 結衣の隣で浮いているガーネットも、結衣と同じで、せーちゃんの言いたいことがわからないらしい。

 だけど、せーちゃんは目を逸らすだけで理由を話してくれない。

「でも、それじゃあ……何もしてあげられないって言うか……」
「そうですよぉ。言いたいことがあるならハッキリ言った方がいいですよぉ?」

 結衣とガーネットはせーちゃんを諭すように言うが、せーちゃんはやはり打ち明けてくれない。

 困った。どうすることも出来ない。
 だが、ガーネットは何かに気付いたように口を開く。

「せーちゃん様は小学五年生ですよね?」
「え? ……う、うん」
「“来ちゃった”というのは、小学生になってからの体験ですかぁ?」
「え……ま、まあ……」

 ガーネットが訊いていくたびに、せーちゃんの顔色が悪化していく。

 ――せーちゃんには最悪な未来が。
 ――ガーネットには最高の未来が。

 その眼に視えているようだ。
 だが、結衣は一向にわからない。

「それはつまり、生r……」
「セクハラだー!!」

 訂正。わかってしまった。

 ガーネットのストレートな……いや、ストレートすぎる言葉によって。
 結衣はガーネットを、渾身の力で投げ飛ばした。

「何するんですか、結衣様!」

 壁に突き刺さり、壁に大きな穴を開けたガーネットが叫ぶ。
 だが、結衣はそれより大きな声で叫んだ。

「少しはせーちゃんのことも考えて!? なんでこんな公開処刑されなきゃ――って、せーちゃん!? 首吊ろうとしないでぇ!!」

 ドッタンバッタン大騒ぎー♪
 ……のようなポップな感じではなく。

 乱雑というか混沌というか。まあ、そんな感じで。
 結衣の部屋は、地獄絵図と化した。
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