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第一章 少女たちの願い(前編)

ついに切れた

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「力を制御しきれていない……って、なんで……そんなこと――」

 夏音は驚愕のあまり、言葉に詰まる。
 自分でも、心臓が張り裂けそうなほど、ドクンドクン脈打っているのがわかる。
 何故せーちゃんは、そんなことを知っているのだろうか。

「だってあなた、“願い”が強すぎるんだもの」
「――!?」

 訂正。せーちゃんは、何をどこまで知っているのだろう。
 本心も本音も、全部自分の心の中に隠してきたのに。

 夏音はさっきから、驚くことしか出来ていない。
 反対に、せーちゃんは目を伏せながら冷静に告げているだけ。
 なんだろう。この気持ちは。

「夏音の“願い”が何か……せーちゃんさんは知っているって言いたいんですかにゃ……?」
「まあね。そういうことになるのかしら?」

 夏音の驚愕なんかどうでもいいのか、せーちゃんは苦笑する。
 そしてまだ、何も言わない。

 せーちゃんは知った風な口を開き、夏音の心を掻き乱すことが目的のように振る舞う。
 それが、なんだか、とても。

「そんなの……夏音の地雷を踏むだけって――分からないんですかにゃ……?」

 夏音は低く唸るように言う。
 怒っているのか、泣いているのか。夏音は自分でもわからなかった。
 今、自分がどういう顔をしているのかも。

 だが、せーちゃんはおもむろにお風呂から立ち上がると、

「ごめん、ちょっとのぼせそうだわ。お先に失礼するわね」

 見事に夏音の堪忍袋の緒を、切った。
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