59 / 262
第一章 少女たちの願い(前編)
七不思議その二
しおりを挟む
「次の、七不思議……その二! 理科室の……人体模型が……喋る!」
「おー、七不思議で定番の理科室かぁ……」
理科室なら、何かあっても良さそうだなと結衣は思った。
というのも、図書室や例の女子トイレとそれほど離れていない場所にある理科室は、道具が古いせいか、度々壊れ、使えなくなった道具がたくさんあるのだ。
そんな理科室なら、怪談の一つや二つあるかもしれない。
結衣は無自覚に、少し期待していた。
「じゃ……あ、開ける……ね……!」
真菜がそう言うと、引き戸を開け――ようとしたのだが。
「あ、あ……れ?」
「どうしたの、真菜ちゃん?」
引き戸はガタガタと音を立てるだけで、開く様子はまったくない。
「これ……多分、鍵……かかって……る……」
「え!?」
真菜が零した言葉に、結衣は愕然とする。
「う、嘘でしょ……?」
放課後なら教室に鍵をかけても不思議はない。
だけど、やっとこれから楽しくなる所だったのに。
……あれ? なぜ自分も楽しむ側に回っているのだろうか。
「ん? どうした……の、結衣……? そんな……所に、うずくま……って」
「いや……なんでもないよ……」
結衣は虚ろな目で立ち上がり、改めて理科室の引き戸を見る。
その時、どこからか微かに音が聞こえた気がした。
「ねぇ、なんか聞こえない?」
結衣が辺りを見回しながらそう言うと、真菜にも聞こえたのか、結衣に倣って辺りを見回し始めた。
「なんでしょうね……理科室の方から聞こえるような気がしますけどぉ」
ガーネットの言葉に、ハッと結衣たちは顔を見合わせる。
そして引き戸に顔を寄せ、耳をつける。
すると――
「ふー、誰もいない理科室は最高だね」
「――!」
微かに独り言が聞こえた。
これはもしや、本当に人体模型が!?
興奮した結衣は引き戸に寄りかかりすぎて、ガタンと音を立ててしまう。
「だ、誰だ!?」
理科室から焦燥の声が聞こえる。
かく言う結衣も、「しまった!」と、かなり怯えた。
これは目撃者を殺すパターンか!? そう思うが、足が動かない。
真菜も焦って理科室を警戒しているようで、顔が険しい。
そして、ついに鍵が外され、引き戸がゆっくりと開く。
やばい! そう思った結衣は、咄嗟に目を瞑ってしまう。
だが、放たれた言葉は思いもよらないものだった。
「お前たち、ここで何してるんだ?」
「……え? その声、まさか――」
拍子抜けした結衣は、その言葉に一拍置いて反応する。
「水谷先生!?」
「お、おう?」
それは、結衣がよく見知った人物だった。
結衣の担任の先生である水谷先生。ちょっと太り気味で、生徒に人気のある優しい先生。
結衣が叫んだ事に驚いたのか、先生が疑問形で答える。
「……まさか担任の先生がここにいるとは…………」
「ん? 担任の先生が理科室に居ちゃダメなのか?」
結衣は安心したやら、期待はずれだったやらでため息と共にそう零す。
――のだが、先生は何を思ったのか、首を傾げて訊いてきた。
「あー、いえ……そういう事ではないです……」
結衣はぎこちない笑みで、そう答える。
「でも、先生は……何で……こんな時間に……理科室……に?」
真菜が小首を傾げて先生に訊く。
それは結衣も訊きたかったことなので、結衣も真菜に倣って先生を見る。
当の先生はと言うと、しきりに目を泳がせて、結衣たちと目を合わせないようにしている。
「……先生?」
結衣と真菜は同じように、半眼で先生を睨みつけるように見た。
その視線に耐えられなくなったのか、先生は重い口を開く。
「実は――」
「おー、七不思議で定番の理科室かぁ……」
理科室なら、何かあっても良さそうだなと結衣は思った。
というのも、図書室や例の女子トイレとそれほど離れていない場所にある理科室は、道具が古いせいか、度々壊れ、使えなくなった道具がたくさんあるのだ。
そんな理科室なら、怪談の一つや二つあるかもしれない。
結衣は無自覚に、少し期待していた。
「じゃ……あ、開ける……ね……!」
真菜がそう言うと、引き戸を開け――ようとしたのだが。
「あ、あ……れ?」
「どうしたの、真菜ちゃん?」
引き戸はガタガタと音を立てるだけで、開く様子はまったくない。
「これ……多分、鍵……かかって……る……」
「え!?」
真菜が零した言葉に、結衣は愕然とする。
「う、嘘でしょ……?」
放課後なら教室に鍵をかけても不思議はない。
だけど、やっとこれから楽しくなる所だったのに。
……あれ? なぜ自分も楽しむ側に回っているのだろうか。
「ん? どうした……の、結衣……? そんな……所に、うずくま……って」
「いや……なんでもないよ……」
結衣は虚ろな目で立ち上がり、改めて理科室の引き戸を見る。
その時、どこからか微かに音が聞こえた気がした。
「ねぇ、なんか聞こえない?」
結衣が辺りを見回しながらそう言うと、真菜にも聞こえたのか、結衣に倣って辺りを見回し始めた。
「なんでしょうね……理科室の方から聞こえるような気がしますけどぉ」
ガーネットの言葉に、ハッと結衣たちは顔を見合わせる。
そして引き戸に顔を寄せ、耳をつける。
すると――
「ふー、誰もいない理科室は最高だね」
「――!」
微かに独り言が聞こえた。
これはもしや、本当に人体模型が!?
興奮した結衣は引き戸に寄りかかりすぎて、ガタンと音を立ててしまう。
「だ、誰だ!?」
理科室から焦燥の声が聞こえる。
かく言う結衣も、「しまった!」と、かなり怯えた。
これは目撃者を殺すパターンか!? そう思うが、足が動かない。
真菜も焦って理科室を警戒しているようで、顔が険しい。
そして、ついに鍵が外され、引き戸がゆっくりと開く。
やばい! そう思った結衣は、咄嗟に目を瞑ってしまう。
だが、放たれた言葉は思いもよらないものだった。
「お前たち、ここで何してるんだ?」
「……え? その声、まさか――」
拍子抜けした結衣は、その言葉に一拍置いて反応する。
「水谷先生!?」
「お、おう?」
それは、結衣がよく見知った人物だった。
結衣の担任の先生である水谷先生。ちょっと太り気味で、生徒に人気のある優しい先生。
結衣が叫んだ事に驚いたのか、先生が疑問形で答える。
「……まさか担任の先生がここにいるとは…………」
「ん? 担任の先生が理科室に居ちゃダメなのか?」
結衣は安心したやら、期待はずれだったやらでため息と共にそう零す。
――のだが、先生は何を思ったのか、首を傾げて訊いてきた。
「あー、いえ……そういう事ではないです……」
結衣はぎこちない笑みで、そう答える。
「でも、先生は……何で……こんな時間に……理科室……に?」
真菜が小首を傾げて先生に訊く。
それは結衣も訊きたかったことなので、結衣も真菜に倣って先生を見る。
当の先生はと言うと、しきりに目を泳がせて、結衣たちと目を合わせないようにしている。
「……先生?」
結衣と真菜は同じように、半眼で先生を睨みつけるように見た。
その視線に耐えられなくなったのか、先生は重い口を開く。
「実は――」
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説

百合ハーレムが大好きです!〜全ルート攻略開始〜
M・A・J・O
大衆娯楽
【大衆娯楽小説ランキング、最高第7位達成!】
黒髪赤目の、女の子に囲まれたい願望を持つ朱美。
そんな彼女には、美少女の妹、美少女の幼なじみ、美少女の先輩、美少女のクラスメイトがいた。
そんな美少女な彼女たちは、朱美のことが好きらしく――?
「私は“百合ハーレム”が好きなのぉぉぉぉぉぉ!!」
誰か一人に絞りこめなかった朱美は、彼女たちから逃げ出した。
……
ここから朱美の全ルート攻略が始まる!
・表紙絵はTwitterのフォロワー様より。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
爆誕!異世界の歌姫~チートもヒロイン補正もないので、仕方がないから歌います~
ロゼーナ
ファンタジー
気づいたら異世界の森の中に転移していたアラサー会社員チヨリ。何かチートがあるかと期待したものの、装備はパジャマ、お金なし、自動翻訳機能なしでいきなり詰む。冷静かつ図太い性格(本人談)を存分に生かし、開き直って今日も楽しく歌をうたう。
*ほのぼの異世界生活、後にちょっと冒険。チートあり。血生臭い争いは起こりませんが、ケガや出血の描写は多少出てきます。ちびっ子や恋愛要素もあり。
*9/27追記:全編完結いたしました。応援ありがとうございました!

ばじゅてんっ!〜馬術部の天使と不思議な聖女〜【完結済み】
M・A・J・O
キャラ文芸
馬が好きな女子高生、高宮沙織(たかみやさおり)は伝統のある星花女子学園に通っている。
そこは特段、馬術で有名な学校……とかではないのだが、馬術部の先生が優しくて気に入っている。
どこかの誰かとは大違いなほどに――
馬術の才能がある沙織は一年生にもかかわらず、少人数の馬術部員の中で成績がずば抜けていた。
そんな中、沙織はある人が気になっていた。
その人は沙織の一つ先輩である、渡島嫩(おしまふたば)。
彼女は心優しく、誰にでも尽くしてしまうちょっと変わった先輩だ。
「なんであんなに優しいのに、それが怖いんだろう……」
沙織はのちに、彼女が誰にでも優しい理由を知っていくこととなる……
・表紙絵はくめゆる様(@kumeyuru)より。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。
木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。
その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。
本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。
リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。
しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。
なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。
竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる