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第一章 少女たちの願い(前編)
魔王、降臨
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覚醒した意識で、結衣が最初に目にしたのは。
こちらを凝視して笑顔の仮面が剥がれ落ちた天使と、結衣の無事を知って安堵の声を上げるガーネット。
しかし、結衣はそれらを興味もなく無機質に見つめる。
そしてガーネットを放り出して、単身で天使の方へ突っ込む。
その瞳の奥に、煮えたぎる程の殺意を伴って。
「結衣様!?」
ガーネットの――困惑に染まった声が聴こえるが、結衣はそれを無視した。
眼前の天使は、結衣が自分に突進して来ることに頭がついていかないのか、ただ目を剥いて呆然としている。
ガーネットを放ったことで変身は既に解除され、結衣は生身で異能力を持った敵へ挑もうとしている。
だが――
「ぐるるるる……」
敵意と殺意を剥き出しにし、怒りで我を忘れて獣じみた本能塗れの。
結衣は自分でも自分とは思えない変わり果てた姿が、眼前の天使の瞳に映る。
「くっ……!」
やっと身体が言うことを聞いたのか。
天使は身を翻し、後退しながら翼を広げて空を飛ぶ。
結衣はその動きを視ると、その動きを追った。
「なっ――!」
結衣が自分を追えたことを、驚愕に染った顔で視る天使は。
その後起こった出来事に、さらに目を剥くこととなる。
結衣の姿が徐々に変わってゆく。
白かった髪は紅く染まり、頭から鬼のような角が二本生え、さらに服が痴女のような申し訳程度の布面積となる。
その姿はまるで――魔王そのものだった。
頬と腕に傷のような縞模様ができ、頭上には天使のような光輪を掲げ、マントが蝙蝠の翼のようなデザインとなり。
殺意と威圧感を放っていた。
空模様が紅い晴天から闇のような曇天に変わり、ますます異様なオーラを醸し出している。
雲のカーテンがかけられ、日の入りになりかけていた地上がさらに黒く染まる。
結衣の深緑色の瞳は――琥珀色に変わって不気味に光る。
結衣は変わり果てた自分の姿を興味もなく一瞥すると、ニヤリと嗤った。
「すごい……! すごいや……これなら――」
結衣が言い終わる前に、天使が仕掛けてきた。
翼をはためかせ、警戒しながらも徐々に距離を詰めてくる。
そして天使が手を天に掲げると、空から一筋の光が降りてきた。
周りが暗いからか、目を開けていられないほど眩い光が降り注ぐ。
「……この光が私の全て。神から与えられた力」
そうやって天使は苦しそうに、顔を顰めて――
「天使の私が――振るうことが出来る力」
涙を零しながら……言った。
「――これは、全てを灼き尽くす焔。人が触ると瞬く間に穢れる繊細な光」
それは、まるで――
「だけど、それでも――この光はこの世の全てを呑み込む……世界中最悪の敵」
何かと、戦っているようで――
「――これを放っちゃったら……やばいことになりますね」
顔を引きつらせながら、無理して笑顔を作る様は――
――その様子をただ見ていることしか出来ないガーネットは、ただ一人呟く。
「あれは――あの光の魔力量は膨大すぎる……! 加えて言えば、結衣様のあの姿も――個人の魔力量とは思えない……」
息をのみ、主人の行く末を見守ることしか出来ない自分に、ガーネットは歯がゆさを禁じ得ない。
だが――
「……言葉なんていいから早くその物騒な光放てば? ――『口より先に手ぇ出さなきゃ』」
そう言って結衣は不敵に笑うと、天使はたじろいで一歩後ずさった。
だがその様子に構わず、結衣は続ける。
「私がその光――受け止めてあげる!」
口元を歪め、悪役のような笑みをひたすら浮かべる。
天使の仮面を被った悪魔より、余程自分の方が悪魔的だなと結衣は内心思いながら。
身体が震えて、血の気が引いた顔を見せる天使を――結衣はのぞき込むように見る。
「さぁ、ほら! ほら!!」
こちらを凝視して笑顔の仮面が剥がれ落ちた天使と、結衣の無事を知って安堵の声を上げるガーネット。
しかし、結衣はそれらを興味もなく無機質に見つめる。
そしてガーネットを放り出して、単身で天使の方へ突っ込む。
その瞳の奥に、煮えたぎる程の殺意を伴って。
「結衣様!?」
ガーネットの――困惑に染まった声が聴こえるが、結衣はそれを無視した。
眼前の天使は、結衣が自分に突進して来ることに頭がついていかないのか、ただ目を剥いて呆然としている。
ガーネットを放ったことで変身は既に解除され、結衣は生身で異能力を持った敵へ挑もうとしている。
だが――
「ぐるるるる……」
敵意と殺意を剥き出しにし、怒りで我を忘れて獣じみた本能塗れの。
結衣は自分でも自分とは思えない変わり果てた姿が、眼前の天使の瞳に映る。
「くっ……!」
やっと身体が言うことを聞いたのか。
天使は身を翻し、後退しながら翼を広げて空を飛ぶ。
結衣はその動きを視ると、その動きを追った。
「なっ――!」
結衣が自分を追えたことを、驚愕に染った顔で視る天使は。
その後起こった出来事に、さらに目を剥くこととなる。
結衣の姿が徐々に変わってゆく。
白かった髪は紅く染まり、頭から鬼のような角が二本生え、さらに服が痴女のような申し訳程度の布面積となる。
その姿はまるで――魔王そのものだった。
頬と腕に傷のような縞模様ができ、頭上には天使のような光輪を掲げ、マントが蝙蝠の翼のようなデザインとなり。
殺意と威圧感を放っていた。
空模様が紅い晴天から闇のような曇天に変わり、ますます異様なオーラを醸し出している。
雲のカーテンがかけられ、日の入りになりかけていた地上がさらに黒く染まる。
結衣の深緑色の瞳は――琥珀色に変わって不気味に光る。
結衣は変わり果てた自分の姿を興味もなく一瞥すると、ニヤリと嗤った。
「すごい……! すごいや……これなら――」
結衣が言い終わる前に、天使が仕掛けてきた。
翼をはためかせ、警戒しながらも徐々に距離を詰めてくる。
そして天使が手を天に掲げると、空から一筋の光が降りてきた。
周りが暗いからか、目を開けていられないほど眩い光が降り注ぐ。
「……この光が私の全て。神から与えられた力」
そうやって天使は苦しそうに、顔を顰めて――
「天使の私が――振るうことが出来る力」
涙を零しながら……言った。
「――これは、全てを灼き尽くす焔。人が触ると瞬く間に穢れる繊細な光」
それは、まるで――
「だけど、それでも――この光はこの世の全てを呑み込む……世界中最悪の敵」
何かと、戦っているようで――
「――これを放っちゃったら……やばいことになりますね」
顔を引きつらせながら、無理して笑顔を作る様は――
――その様子をただ見ていることしか出来ないガーネットは、ただ一人呟く。
「あれは――あの光の魔力量は膨大すぎる……! 加えて言えば、結衣様のあの姿も――個人の魔力量とは思えない……」
息をのみ、主人の行く末を見守ることしか出来ない自分に、ガーネットは歯がゆさを禁じ得ない。
だが――
「……言葉なんていいから早くその物騒な光放てば? ――『口より先に手ぇ出さなきゃ』」
そう言って結衣は不敵に笑うと、天使はたじろいで一歩後ずさった。
だがその様子に構わず、結衣は続ける。
「私がその光――受け止めてあげる!」
口元を歪め、悪役のような笑みをひたすら浮かべる。
天使の仮面を被った悪魔より、余程自分の方が悪魔的だなと結衣は内心思いながら。
身体が震えて、血の気が引いた顔を見せる天使を――結衣はのぞき込むように見る。
「さぁ、ほら! ほら!!」
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