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第一章 少女たちの願い(前編)

嫌な予感は的中し……

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 帰り道。
 いつもは通らない場所を通り、気分転換をしようと考えていた。

 少し遠回りにはなるが、嫌な予感が頭から離れないから。
 駅の方へ行けば人が沢山いるだろうと考え、結衣は駅に繋がる細い道を歩いている。

「あれぇ? 結衣様何処に行くんですかぁ? はっ! まさか帰らないつもりで――」
「いいから黙ってて」

 数は少ないが、通行人の目が痛く、すごく恥ずかしくなり。
 結衣は顔を真っ赤にしながら駆け足した。
 絶対、大きな声で独り言を発している変な子だと思われただろう。

 結衣はしばらくガーネットにどう反省させようかを考えながら歩いていると。
 さっきより大きな道に出たにも関わらず、まるで人の気配がなかった。
 ――学校内に足を踏み入れた時と同じような感覚が襲う。

 だけど、これは――

「……学校の時のより……嫌な感じがする」

 重苦しい空気が結衣の周囲を覆い、妙な圧迫感に包まれる。
 すると、結衣の視界に映ったのは。

「ま、まさか――せーちゃん!?」

 深緑色の長い髪に、空色のフリルを纏った少女。
 その少女が、道端に倒れていたのだ。

「な、なん――」
「はぁあ……ようやく会えましたねぇ」

 結衣の困惑の声はだが。
 頭上からため息と共に発せられた声によって、かき消される。

 その声の主は――天使だった。
 純白の翼に檸檬色の髪、アクアマリンの瞳の年上のような少女の姿がある。

「はぁい♪ 私が星良さんを襲った犯人でーす!」
「――……は?」
「んふふ。その困惑顔――たまりませんねぇ」

 ジュルリと舌なめずりをしながら嗤うその様は、もはや天使とは呼べない。
 それは、まるで――悪魔のようだと結衣は思った。

「あ、あなた……一体何を企んで――」
「いやぁ、それがですねぇ。この子にはちょーっとお仕置きしてる最中なんですよぉ」

 「だから……」と付け加えて。

「邪魔しないで貰えます?」

 笑みを消して無機質な瞳が結衣に注がれ、万物はそれに従うように静まり返る。
 圧倒的な威圧感――これが、今回の……結衣の――

「よくも……せーちゃんを……!」
「はい?」

 結衣が小さく呟いた声は、少女には聞き取れなかったのか。
 小首を傾げながら結衣を見る。
 結衣はそんな少女の、一挙手一投足すら怒りを覚えて。

「絶対に――許さない!」

 突如、結衣の視界が暗転した。
 その僅かな時間に――少女が薄く嗤ったのを、結衣は見逃さなかった。
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