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第一章 少女たちの願い(前編)
世界平和のために……
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「私、世界平和を望んでいるんですよ! だからそのために――どうしても魔法のステッキの力が欲しいんですっ♪」
「……は? あ、あなた……何言って――」
せーちゃんの思考が凍りつき、思わず声が裏返るほど、少女の言っていることが理解不能だった。
さっきまで強烈な威圧感やら殺気やら放っていたというのに――世界平和? 何を言っているのだろう。
『殺しちゃってもいいんですけど……』と零していたやつが言うセリフではない。
せーちゃんは困惑しながらも必死で考えていると、またもや意地の悪い笑い声が上がった。
「あはは……まあ、当然の反応ですよねぇ~……」
そんなせーちゃんの困惑を察し、少女は照れくさそうに頬を指で軽く掻く。
しかし、相変わらずせーちゃんには理解出来ない言葉を紡ぐ。
「でもぉ、私――世界平和を実現するためには人類種を滅ぼそうと思っているんです。そのために願望器を何としても手に入れたいんです」
変わらず笑顔でぶっ飛んだ事を言い放つ天使のような悪魔。
せーちゃんはその悪魔を睨まずには居られなかった。
すると、それに気づいた少女は仮面が剥がれたように笑みを外し、無機質で暴力的な瞳をせーちゃんに注ぐ。
せーちゃんは本性を現した悪魔に硬直してしまい、言葉も出せない。
「……何睨んでるんです? 人類種なんて害悪じゃないですか。そんなもの、滅ぼした方が身のためでしょう」
と少女は言い、今更外れた仮面に気付いたのか。
またもや天使のような笑顔を繕って続ける。
「世界平和に人類種は必要ないのです。あなたにはわからなさそうですがね……」
少女は残念そうな顔で、せーちゃんの方を見やる。
その眼は、せーちゃんが幾度となく親に注がれた――誰かを見下す時の、あの眼だった。
つまり――自分は、見下されている――!
「まあ、いいでしょう。分からずとも――解らせてやれば良いことです」
そう言って少女が目を瞑り、手を天にかざす。
すると、少女の周りに眩いほどの光が降り注がれる。
雷が鳴っているような音を伴い、天変地異の前触れのような現象なのではと錯覚させる。
そうして降り注がれた光は。
少女が手を下ろすと、少女の周りに光を残したまま天に戻って行く。
「……これは、神の光であらせられます。ですがこれは人の手に渡るとすぐに――濁ります」
少女は言ってる途中でせーちゃんの方に手を翳す。
するとと、光がせーちゃんの方に舞う。
そして、暖かくて綺麗な色をしていた光が――一瞬にして闇のように黒く染まる。
せーちゃんは目を剥き、その光景に愕然としていた。
「これで分かりましたか? ――劣等種」
少女は声のトーンを落とし、畏怖を与えんとする威圧感が再びせーちゃんを襲う。
今度は少女から完全に笑みが消え、せーちゃんの首には死神の鎌を向けられているような光景が漂う。
せーちゃんは極度の緊張で脚が震え、立っているのがやっとだった。
だけど、それでも――言っておかなければならないことがあった。
……これが、最期の言葉になるかもしれない覚悟を持って。
「ぜっ……全然分かんないわね。 もっと凡人にも分かるように説明してくれませんか? ――同じ劣等種」
その時。
確かに少女の方から、何かが切れる音がした。
「……は? あ、あなた……何言って――」
せーちゃんの思考が凍りつき、思わず声が裏返るほど、少女の言っていることが理解不能だった。
さっきまで強烈な威圧感やら殺気やら放っていたというのに――世界平和? 何を言っているのだろう。
『殺しちゃってもいいんですけど……』と零していたやつが言うセリフではない。
せーちゃんは困惑しながらも必死で考えていると、またもや意地の悪い笑い声が上がった。
「あはは……まあ、当然の反応ですよねぇ~……」
そんなせーちゃんの困惑を察し、少女は照れくさそうに頬を指で軽く掻く。
しかし、相変わらずせーちゃんには理解出来ない言葉を紡ぐ。
「でもぉ、私――世界平和を実現するためには人類種を滅ぼそうと思っているんです。そのために願望器を何としても手に入れたいんです」
変わらず笑顔でぶっ飛んだ事を言い放つ天使のような悪魔。
せーちゃんはその悪魔を睨まずには居られなかった。
すると、それに気づいた少女は仮面が剥がれたように笑みを外し、無機質で暴力的な瞳をせーちゃんに注ぐ。
せーちゃんは本性を現した悪魔に硬直してしまい、言葉も出せない。
「……何睨んでるんです? 人類種なんて害悪じゃないですか。そんなもの、滅ぼした方が身のためでしょう」
と少女は言い、今更外れた仮面に気付いたのか。
またもや天使のような笑顔を繕って続ける。
「世界平和に人類種は必要ないのです。あなたにはわからなさそうですがね……」
少女は残念そうな顔で、せーちゃんの方を見やる。
その眼は、せーちゃんが幾度となく親に注がれた――誰かを見下す時の、あの眼だった。
つまり――自分は、見下されている――!
「まあ、いいでしょう。分からずとも――解らせてやれば良いことです」
そう言って少女が目を瞑り、手を天にかざす。
すると、少女の周りに眩いほどの光が降り注がれる。
雷が鳴っているような音を伴い、天変地異の前触れのような現象なのではと錯覚させる。
そうして降り注がれた光は。
少女が手を下ろすと、少女の周りに光を残したまま天に戻って行く。
「……これは、神の光であらせられます。ですがこれは人の手に渡るとすぐに――濁ります」
少女は言ってる途中でせーちゃんの方に手を翳す。
するとと、光がせーちゃんの方に舞う。
そして、暖かくて綺麗な色をしていた光が――一瞬にして闇のように黒く染まる。
せーちゃんは目を剥き、その光景に愕然としていた。
「これで分かりましたか? ――劣等種」
少女は声のトーンを落とし、畏怖を与えんとする威圧感が再びせーちゃんを襲う。
今度は少女から完全に笑みが消え、せーちゃんの首には死神の鎌を向けられているような光景が漂う。
せーちゃんは極度の緊張で脚が震え、立っているのがやっとだった。
だけど、それでも――言っておかなければならないことがあった。
……これが、最期の言葉になるかもしれない覚悟を持って。
「ぜっ……全然分かんないわね。 もっと凡人にも分かるように説明してくれませんか? ――同じ劣等種」
その時。
確かに少女の方から、何かが切れる音がした。
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