32 / 262
第一章 少女たちの願い(前編)
放たれた光は……
しおりを挟む
「へくちっ!」
「おやおやぁ~? どうしたんですかぁ、結衣様? そんな可愛いくしゃみしてぇ」
「わ、わかんない……誰かに噂されてるのかなぁ?」
からかうように言うガーネットを横目に。
結衣は窓から見える景色をセンチメンタルに眺め、顔を顰める。
あの後、真菜とお別れをしてから数時間が経とうとしていた。
日は既に昇りきり、万物を照らしだしていて、眩しいほどだ。
静かに思えた昼時はしかし、どこか嫌な予感がしてならない。
だが、そう言える根拠がどこにもなかった。
「むっ……! これは……!」
「! やっぱり、ガーネットも感じる?」
「ええ……! 感じますよぉ……!」
そして、一呼吸置くと。
「今からテレビで魔法少女モノのアニメが始まるとぉ!」
――…………
相変わらず結衣とは違った意見を持っているらしいガーネットに。
結衣は呆れすら通り越して、ただただ無が襲った。
そんな結衣に目もくれず、ガーネットはテレビのリモコンのボタンを押してチャンネルを変える。
そして、その魔法少女モノのアニメとやらを観させられた。
「ほんとガーネットって魔法少女好きだよね……私が魔法少女させられてるのもガーネットの趣味でしょ……」
ため息を吐きながら、結衣は変わらず窓の外を眺めてそう言う。
「ええ、その通りですが何か?」
ガーネットが何故か真顔で、素のトーンで言葉を放ったように感じられた。
結衣はもうガーネットと会話する気力がなかったため、無視を決め込んだ。
そうしている間にアニメが始まったのか。
ガーネットは結衣の態度に興味をなくし、テレビに見入っている。
そんな時――窓の外から一筋の光が地上から放たれ、天に向かっているように見える現象が起こった。
結衣はそれを、目を見開いて見つめる。
「な、何あれっ!」
「結衣様? 五月蝿いですよぉ。もぉ~」
「アニメなんかいいから! 窓の外見て! あれって多分――」
結衣がそこまで言った時、渋々窓の外を視たガーネットが驚いた様子で言葉を発する。
「なっ――! この気配――まさか!?」
「やっぱりなんかあるんだよね!? 行かなきゃじゃない!?」
結衣が焦った様子でそう問うと。
「い、いえ……あれには――関わらない方がいいです……」
深刻な問題を見つけたかのような声のトーンで呟いたガーネットの真意は計り知れない。
だが、ガーネットがそう言うということは――恐らく関わらない方がいいのだろう。
ガーネットは奇想天外なことばかり言うし、多くを語ろうとはしない。
――が、嘘をついたことはないのだから。
結衣は逸る気持ちを抑え、見て見ぬ振りを決め込んだ。
それがこの後、最悪の展開を招くことになるなんて――気づかずに。
「おやおやぁ~? どうしたんですかぁ、結衣様? そんな可愛いくしゃみしてぇ」
「わ、わかんない……誰かに噂されてるのかなぁ?」
からかうように言うガーネットを横目に。
結衣は窓から見える景色をセンチメンタルに眺め、顔を顰める。
あの後、真菜とお別れをしてから数時間が経とうとしていた。
日は既に昇りきり、万物を照らしだしていて、眩しいほどだ。
静かに思えた昼時はしかし、どこか嫌な予感がしてならない。
だが、そう言える根拠がどこにもなかった。
「むっ……! これは……!」
「! やっぱり、ガーネットも感じる?」
「ええ……! 感じますよぉ……!」
そして、一呼吸置くと。
「今からテレビで魔法少女モノのアニメが始まるとぉ!」
――…………
相変わらず結衣とは違った意見を持っているらしいガーネットに。
結衣は呆れすら通り越して、ただただ無が襲った。
そんな結衣に目もくれず、ガーネットはテレビのリモコンのボタンを押してチャンネルを変える。
そして、その魔法少女モノのアニメとやらを観させられた。
「ほんとガーネットって魔法少女好きだよね……私が魔法少女させられてるのもガーネットの趣味でしょ……」
ため息を吐きながら、結衣は変わらず窓の外を眺めてそう言う。
「ええ、その通りですが何か?」
ガーネットが何故か真顔で、素のトーンで言葉を放ったように感じられた。
結衣はもうガーネットと会話する気力がなかったため、無視を決め込んだ。
そうしている間にアニメが始まったのか。
ガーネットは結衣の態度に興味をなくし、テレビに見入っている。
そんな時――窓の外から一筋の光が地上から放たれ、天に向かっているように見える現象が起こった。
結衣はそれを、目を見開いて見つめる。
「な、何あれっ!」
「結衣様? 五月蝿いですよぉ。もぉ~」
「アニメなんかいいから! 窓の外見て! あれって多分――」
結衣がそこまで言った時、渋々窓の外を視たガーネットが驚いた様子で言葉を発する。
「なっ――! この気配――まさか!?」
「やっぱりなんかあるんだよね!? 行かなきゃじゃない!?」
結衣が焦った様子でそう問うと。
「い、いえ……あれには――関わらない方がいいです……」
深刻な問題を見つけたかのような声のトーンで呟いたガーネットの真意は計り知れない。
だが、ガーネットがそう言うということは――恐らく関わらない方がいいのだろう。
ガーネットは奇想天外なことばかり言うし、多くを語ろうとはしない。
――が、嘘をついたことはないのだから。
結衣は逸る気持ちを抑え、見て見ぬ振りを決め込んだ。
それがこの後、最悪の展開を招くことになるなんて――気づかずに。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説

爆誕!異世界の歌姫~チートもヒロイン補正もないので、仕方がないから歌います~
ロゼーナ
ファンタジー
気づいたら異世界の森の中に転移していたアラサー会社員チヨリ。何かチートがあるかと期待したものの、装備はパジャマ、お金なし、自動翻訳機能なしでいきなり詰む。冷静かつ図太い性格(本人談)を存分に生かし、開き直って今日も楽しく歌をうたう。
*ほのぼの異世界生活、後にちょっと冒険。チートあり。血生臭い争いは起こりませんが、ケガや出血の描写は多少出てきます。ちびっ子や恋愛要素もあり。
*9/27追記:全編完結いたしました。応援ありがとうございました!
百合ハーレムが大好きです!〜全ルート攻略開始〜
M・A・J・O
大衆娯楽
【大衆娯楽小説ランキング、最高第7位達成!】
黒髪赤目の、女の子に囲まれたい願望を持つ朱美。
そんな彼女には、美少女の妹、美少女の幼なじみ、美少女の先輩、美少女のクラスメイトがいた。
そんな美少女な彼女たちは、朱美のことが好きらしく――?
「私は“百合ハーレム”が好きなのぉぉぉぉぉぉ!!」
誰か一人に絞りこめなかった朱美は、彼女たちから逃げ出した。
……
ここから朱美の全ルート攻略が始まる!
・表紙絵はTwitterのフォロワー様より。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪行貴族のはずれ息子【第2部 魔法師匠編】
白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
※表紙を第一部と統一しました
★作者個人でAmazonにて自費出版中。Kindle電子書籍有料ランキング「SF・ホラー・ファンタジー」「児童書>読み物」1位にWランクイン!
★第1部はこちら↓
https://www.alphapolis.co.jp/novel/162178383/822911083
「お前みたいな無能は分家がお似合いだ」
幼い頃から魔法を使う事ができた本家の息子リーヴは、そうして魔法の才能がない分家の息子アシックをいつも笑っていた。
東にある小さな街を領地としている悪名高き貴族『ユーグ家』―古くからその街を統治している彼らの実態は酷いものだった。
本家の当主がまともに管理せず、領地は放置状態。にもかかわらず、税の徴収だけ行うことから人々から嫌悪され、さらに近年はその長男であるリーヴ・ユーグの悪名高さもそれに拍車をかけていた。
容姿端麗、文武両道…というのは他の貴族への印象を良くする為の表向きの顔。その実態は父親の権力を駆使して悪ガキを集め、街の人々を困らせて楽しむガキ大将のような人間だった。
悪知恵が働き、魔法も使え、取り巻き達と好き放題するリーヴを誰も止めることができず、人々は『ユーグ家』をやっかんでいた。
さらにリーヴ達は街の人間だけではなく、自分達の分家も馬鹿にしており、中でも分家の長男として生まれたアシック・ユーグを『無能』と呼んで嘲笑うのが日課だった。だが、努力することなく才能に溺れていたリーヴは気付いていなかった。
自分が無能と嘲笑っていたアシックが努力し続けた結果、書庫に眠っていた魔法を全て習得し終えていたことを。そして、本家よりも街の人間達から感心を向けられ、分家の力が強まっていることを。
やがて、リーヴがその事実に気付いた時にはもう遅かった。
アシックに追い抜かれた焦りから魔法を再び学び始めたが、今さら才能が実ることもなく二人の差は徐々に広まっていくばかり。
そんな中、リーヴの妹で『忌み子』として幽閉されていたユミィを助けたのを機に、アシックは本家を変えていってしまい…?
◇過去最高ランキング
・アルファポリス
男性HOTランキング:10位
・カクヨム
週間ランキング(総合):80位台
週間ランキング(異世界ファンタジー):43位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる