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第一章 少女たちの願い(前編)

新たな敵の予感

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 ――せーちゃん大好き!

 その言葉が何故か耳から離れず、ずっと張り付いたままこだまする。

「あああああ!!」

 せーちゃんはそのまま膝から崩れ落ち、悶えた。
 顔を真っ赤にさせ、ゴロゴロとその場に転がる。

「……なんでこんなにドキドキするんだろう」

 その気持ちが何か分からず、悶々とした気持ちを吐き出したい気分でいっぱいだった。

「はぁ……勢いで来ちゃったけど……ここ――どこ?」

 その次に、『私は誰?』というフレーズが聴こえてきそうな台詞だが、ノリは良くないのでスルーさせてもらう。
 ところで、せーちゃんの眼前に広がる光景はと言うと――

「隣町かな……ここ……」

 見覚えのない家ばかりで、何故か目の前には神社がある。
 せーちゃんは少し戸惑ったが、自分の家とはあまり離れてはいないらしいことに気付いた。
 なぜなら結衣といた――少し小高い所にある森が、辛うじて見えるから。

 それは当然だろう。小学生の足で走っただけなので、そう遠くへは行けないからだ。
 しかし、問題はそこではなく――

「どうやって家に帰ろうかしら……?」

 そう。無我夢中で走ったため、帰り道がわからないのだ。
 我を忘れて駆け出したので、結衣にお願いされた、真菜を救うことの手伝いも忘れていた。
 どうしようか悩んでいると。

「こんにちは~! ちょっとよろしいでしょうか?」

 ふわふわとした、気の抜けるような声が後ろから聞こえた。
 神社の長い階段を登っていたせーちゃんが振り返って確認すると、太陽の光を浴びて輝く檸檬色の――肩に付くか付かないかの短い髪が見える。

 そして声をかけた少女は、アクアマリンのような綺麗な水色の瞳でせーちゃんを捉えている。
 その少女の薄い桜色のワンピースが、風でヒラヒラと揺らめく。

「は、はぁ……なんですか?」

 せーちゃんは警戒しつつも、少しだけ年上のようにも見える少女に質問を返した。

「うふふ。ちょっと人を探しているのですが……椎名結衣? という方を知りませんか?」
「し、椎名……結衣?」

 まさか――と思ったが、名字を聴いたことはないし、同じような名前の人は多いから人違いかもしれない。
 せーちゃんはそう思って、『知らない』と口を開こうとしたその時。

「あ、もちろん――、椎名結衣さんですからね?」
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