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第一章 少女たちの願い(前編)

結衣の決意

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「ガーネットと真菜ちゃんを、両方――救う!」

 そう言い放ち、せーちゃんの手を取って。

「手伝ってくれる?」

 真っ直ぐせーちゃんの顔を見つめ、結衣は問う。
 答えはもう、分かりきってはいるが。

「何言ってんの。そんなの――当たり前じゃない!」
「っ……! ありがとう、せーちゃん……大好き!」

 結衣はせーちゃんの心強い言葉にまたもや泣きそうになり、それを誤魔化すために笑顔で言った。
 しかし、当のせーちゃんはと言うと――

「あれ? どうしたの? 顔真っ赤だよ?」

 熱があるのではないかと疑うほど顔を真っ赤にさせ、目を見開いて狼狽えている。

「へ、あ、あの……え??」

 声を裏返させ、目をしきりに泳がせていることから、随分動揺しているだろうということがわかった。

「ちょ……どうしたの?? 私……なんか変なこと言った?」

 だが結衣には、せーちゃんが動揺している理由が判らなかった。
 だからそう問うたのだが――

「な、なんでもないわ。さ、行きましょう」
「え? う、うん……? あ、でもそこ――」

 誤魔化して、平然を装うせーちゃんに。
 結衣は制止の声をかけようとして――
 ――ゴンッ。

「いったぁ!?」

 木の幹にぶつかってしまったせーちゃんを半眼で見つつも、心配そうに駆け寄った。

「だ、大丈夫……?」
「え、ええ……大丈夫……」

 結衣がせーちゃんを覗き込もうとすると、せーちゃんはバッと顔を逸らす。

「えっ?? 本当にどうしたの?」
「な、なんでもないわぁぁぁ!」

 そう顔を真っ赤にして叫ぶと、せーちゃんは走ってどこかに行ってしまった。

「ど、どうしよう……せーちゃんがいなきゃまともに戦えるかも分からないのに……」

 せーちゃんとは対照的に、結衣は顔を真っ青にして呟く。
 それもそのはず。ガーネットが奪われ、結衣は魔法少女としての力を失ってしまったのだから。

「こんなんじゃ……救えな――」

 そこまで言うと、結衣はとある台詞について思い出していた。

『どんなことだって! 願えば、叶う!』

 自分が強く言い放った言葉が、脳裏に浮かんだ。
 あんな威勢よく言い放っておいて忘れるなんて――

 そう結衣は自分に呆れ、ここからあの時の気持ちを取り戻すために――瞑想した。
 あの時の――変身する感覚。思い出せ、思い出せっ――!
 そして数秒が経ち、ザアッと一陣の風が吹くと――目を開き、変身のポーズを取る。

 ――閃いた。あの感覚、自分は――覚えている! いや、覚えていなくたっていい。

 ――自分で、創り出すッ!

 先程まで結衣の周りを囲むようにして生えていた木々は既になく、代わりに周りが煌びやかに輝く。
 そして、ガーネット抜きの変身シーンが始まる。

 そして――
 ガーネットと一緒にいた時の魔法少女衣装とは少し異なるが、魔法少女になることができた。
 しかし、それはとても肉体に負荷がかかるものだった。

 皮膚が焦げ付き、健康的な肌色は既になく、褐色に染まる。
 血が滲み、血管が張り裂けているのではと思うほど、体毛を紅く染め上げた。
 ドクンドクンと心臓が脈打つ音がいつもより大きく聴こえる。

 ――魔法少女は、ステッキがないとこんな血なまぐさいものなのだろうか。
 そう勘違いしてしまうほどの生々しさがあった。

 だけど、それに固執しているほどの時間はない。
 早く、ガーネットと合流して――真菜を、救い出さなければ。
 そう決意し、結衣は探索魔法をかけながら空へ飛んだ。
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