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第一章 少女たちの願い(前編)
ガーネットの心情やいかに……
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――強い願いは人を狂わせる。それは、わかっていたはずだ。
だけど……それでも――あの子の。
あの強い眼差しの中の……寂しさが気になって、近づいてしまった。
――後悔はしていない。予想以上に相性が良く、戦っている時はとても心地よかった。
あんな出来事は初めてで、舞い上がってしまったのも事実だ。
その結果が――これか。
大切な人を――自分がマスターと呼んだ人を護れず、あまつさえ敵に敗れ、マスターと一緒にいられなくなってしまった。
――嗚呼、どうか……強く、生きて……くだ、さ――
☆ ☆ ☆
――目覚めた時は、見知らぬ場所にいた。
暗くて寂しい何処か――実験室や研究室を思わせる無機質で背筋が凍るようなゾクゾクと来る怖さを感じられる。
――どうして此処にいるのか……全く記憶にない。
もっと言うと、どうやって此処に来たのかも――何も覚えていない。
ふらふらとあてもなく彷徨っていると、家族写真のようなものを見つけた。
「こ、これは――!」
息を呑んで、その家族写真を凝視する。
何の変哲もないただの家族写真だったのだが、そこに写っていたのは――
「勝手に、見ない……で……」
いつの間にか後ろに立っていた人物によって、その家族写真が伏せられる。
その人物は、家族写真にも写っていた女の子。
「ま、真菜様……」
「はぁ……まあ、見られた……ものは、仕方ない……けど……」
その女の子――真菜は呆れたようにため息を吐き、そばにあった椅子に腰掛けた。
「あ、あなた様は一体何を企んで――」
「……別に。結衣や、あの子の……そばにいた子……と同じ、ように……強い……願いが、あるだけ……」
ガーネットの弱々しい声を遮って、真菜が言う。
その顔は何か――何処か――哀しそうな……
「――な……に?」
ガーネットが真菜を見つめていたことに気付き、睨むように見つめ返す。
「い、いえ……なんでもありませぇん……」
しかし、ガーネットがそう口にした時、結衣の言葉を思い出していた。
『どんなことだって! 願えば、叶う!』
「ああ――そう、そうでしたとも。なぜ、私はそんな事も忘れていたんですかねぇ……」
強く、私欲に満ちている――ただの少女の願い事。
それがどうしてこんなにも心地いいのか――ようやくわかった気がした。
「ふ、ふふ。私は……従者失格でございますねぇ……」
ポツリ、ポツリと弱く吐き出した言葉はだが、強い願いを乗せて紡がれる。
「結衣様――必ずや、ここから逃げ出して見せましょう!」
不敵に笑ったように見えたガーネットに、もう迷いはなかった。
だけど……それでも――あの子の。
あの強い眼差しの中の……寂しさが気になって、近づいてしまった。
――後悔はしていない。予想以上に相性が良く、戦っている時はとても心地よかった。
あんな出来事は初めてで、舞い上がってしまったのも事実だ。
その結果が――これか。
大切な人を――自分がマスターと呼んだ人を護れず、あまつさえ敵に敗れ、マスターと一緒にいられなくなってしまった。
――嗚呼、どうか……強く、生きて……くだ、さ――
☆ ☆ ☆
――目覚めた時は、見知らぬ場所にいた。
暗くて寂しい何処か――実験室や研究室を思わせる無機質で背筋が凍るようなゾクゾクと来る怖さを感じられる。
――どうして此処にいるのか……全く記憶にない。
もっと言うと、どうやって此処に来たのかも――何も覚えていない。
ふらふらとあてもなく彷徨っていると、家族写真のようなものを見つけた。
「こ、これは――!」
息を呑んで、その家族写真を凝視する。
何の変哲もないただの家族写真だったのだが、そこに写っていたのは――
「勝手に、見ない……で……」
いつの間にか後ろに立っていた人物によって、その家族写真が伏せられる。
その人物は、家族写真にも写っていた女の子。
「ま、真菜様……」
「はぁ……まあ、見られた……ものは、仕方ない……けど……」
その女の子――真菜は呆れたようにため息を吐き、そばにあった椅子に腰掛けた。
「あ、あなた様は一体何を企んで――」
「……別に。結衣や、あの子の……そばにいた子……と同じ、ように……強い……願いが、あるだけ……」
ガーネットの弱々しい声を遮って、真菜が言う。
その顔は何か――何処か――哀しそうな……
「――な……に?」
ガーネットが真菜を見つめていたことに気付き、睨むように見つめ返す。
「い、いえ……なんでもありませぇん……」
しかし、ガーネットがそう口にした時、結衣の言葉を思い出していた。
『どんなことだって! 願えば、叶う!』
「ああ――そう、そうでしたとも。なぜ、私はそんな事も忘れていたんですかねぇ……」
強く、私欲に満ちている――ただの少女の願い事。
それがどうしてこんなにも心地いいのか――ようやくわかった気がした。
「ふ、ふふ。私は……従者失格でございますねぇ……」
ポツリ、ポツリと弱く吐き出した言葉はだが、強い願いを乗せて紡がれる。
「結衣様――必ずや、ここから逃げ出して見せましょう!」
不敵に笑ったように見えたガーネットに、もう迷いはなかった。
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