上 下
27 / 262
第一章 少女たちの願い(前編)

ガーネットの心情やいかに……

しおりを挟む
 ――強い願いは人を狂わせる。それは、わかっていたはずだ。
 だけど……それでも――あの子の。
 あの強い眼差しの中の……寂しさが気になって、近づいてしまった。

 ――後悔はしていない。予想以上に相性が良く、戦っている時はとても心地よかった。
 あんな出来事は初めてで、舞い上がってしまったのも事実だ。

 その結果が――これか。
 大切な人を――自分がマスターと呼んだ人を護れず、あまつさえ敵に敗れ、マスターと一緒にいられなくなってしまった。
 ――嗚呼、どうか……強く、生きて……くだ、さ――

 ☆ ☆ ☆

 ――目覚めた時は、見知らぬ場所にいた。
 暗くて寂しい何処か――実験室や研究室を思わせる無機質で背筋が凍るようなゾクゾクと来る怖さを感じられる。

 ――どうして此処にいるのか……全く記憶にない。
 もっと言うと、どうやって此処に来たのかも――何も覚えていない。
 ふらふらとあてもなく彷徨っていると、家族写真のようなものを見つけた。

「こ、これは――!」

 息を呑んで、その家族写真を凝視する。
 何の変哲もないただの家族写真だったのだが、そこに写っていたのは――

「勝手に、見ない……で……」

 いつの間にか後ろに立っていた人物によって、その家族写真が伏せられる。
 その人物は、家族写真にも写っていた女の子。

「ま、真菜様……」
「はぁ……まあ、見られた……ものは、仕方ない……けど……」

 その女の子――真菜は呆れたようにため息を吐き、そばにあった椅子に腰掛けた。

「あ、あなた様は一体何を企んで――」
「……別に。結衣や、あの子の……そばにいた子……と同じ、ように……強い……願いが、あるだけ……」

 ガーネットの弱々しい声を遮って、真菜が言う。
 その顔は何か――何処か――哀しそうな……

「――な……に?」

 ガーネットが真菜を見つめていたことに気付き、睨むように見つめ返す。

「い、いえ……なんでもありませぇん……」

 しかし、ガーネットがそう口にした時、結衣の言葉を思い出していた。

『どんなことだって! 願えば、叶う!』

「ああ――そう、そうでしたとも。なぜ、私はそんな事も忘れていたんですかねぇ……」

 強く、私欲に満ちている――ただの少女の願い事。
 それがどうしてこんなにも心地いいのか――ようやくわかった気がした。

「ふ、ふふ。私は……従者失格でございますねぇ……」

 ポツリ、ポツリと弱く吐き出した言葉はだが、強い願いを乗せて紡がれる。

「結衣様――必ずや、ここから逃げ出して見せましょう!」

 不敵に笑ったように見えたガーネットに、もう迷いはなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと神様!私もうステータス調整されてるんですが!!

べちてん
ファンタジー
アニメ、マンガ、ラノベに小説好きの典型的な陰キャ高校生の西園千成はある日河川敷に花見に来ていた。人混みに酔い、体調が悪くなったので少し離れた路地で休憩していたらいつの間にか神域に迷い込んでしまっていた!!もう元居た世界には戻れないとのことなので魔法の世界へ転移することに。申し訳ないとか何とかでステータスを古龍の半分にしてもらったのだが、別の神様がそれを知らずに私のステータスをそこからさらに2倍にしてしまった!ちょっと神様!もうステータス調整されてるんですが!!

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!

つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。 冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。 全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。 巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗
ファンタジー
 帝国の第三皇子・ラスティは“無能”を宣告されドヴォルザーク帝国を追放される。しかし皇子が消えた途端、帝国がなぜか不思議な力によって破滅の道へ進む。周辺国や全世界を巻き込み次々と崩壊していく。  ラスティは“謎の声”により無人島へ飛ばされ定住。これまた不思議な能力【無人島開発】で無人島のレベルをアップ。世界最強の国に変えていく。その噂が広がると世界の国々から同盟要請や援助が殺到するも、もう遅かった。ラスティは、信頼できる仲間を手に入れていたのだ。彼らと共にスローライフを送るのであった。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...