魔法少女になれたなら【完結済み】

M・A・J・O

文字の大きさ
上 下
26 / 262
第一章 少女たちの願い(前編)

何度だって救ってみせる!

しおりを挟む
「――……結衣! 結衣っ!」

 せーちゃんの震え声が聴こえ、せーちゃんの涙の粒が結衣の顔に当たる。
 結衣はその感触で目を覚まし、重い身体を無理矢理起こした。

「あ……そっか。負けた……んだ……」

 そばにいるはずの――いなくてはならないものの姿が見当たらない。
 変身は解除され、結衣の身体は普段着を纏っている。

 ――そこから何となく、状況判断が出来た。
 したくないのに、無理矢理現実を思い知らされる。

「……とりあえず、ここから移動しましょう。ここじゃ――危険よ」
「うん、ごめんね……」

 せーちゃんが涙を流しながら必死で、自分に言い聞かせるように言う。
 結衣はそんなせーちゃんに、「大丈夫だよ」と言える余裕はない。

 ガーネットが――奪われてしまった。
 そんな現実から逃げるように、結衣たちは真菜の住んでいる森を後にした。

 ☆ ☆ ☆

 ――そこから会話はなく、二人で俯きながら歩いていた。
 ガーネットを失った喪失感は大きく、地面が遠く感じる。

 あのうるさくてうざったらしいステッキも。
 いざ居なくなると寂しいような、寂しくないような……
 わけのわからない感情が一気に押し寄せてくる。

「ねぇ、あの……」

 せーちゃんがおもむろに口を開く。
 せーちゃんも何だか疲れ切っていて、もう休みたいだろうに、結衣を元気づけようとしているのが伝わってきた。
 なので、無下にもできない。

「……なに?」
「実は、真菜のことなんだけど、あの子……結衣を仕留めた時、泣いてたのよね……『ごめんね、本当に……ごめんね……』って。だからあたしも身動き出来ずにいて……そしたら、突然ガーネットを奪ってどっかに消えちゃって……」
「そ、そう……なんだ……そっか……」

 結衣は、その言葉を聴いて――安堵した。
 薄く笑った結衣をどう思ったのか、せーちゃんは一層不安そうな顔を浮かべる。

「大丈夫、大丈夫だよ。せーちゃん。あの子は……多分――」

 今度は、ちゃんと「大丈夫」だと伝えられた。
 これなら問題は無い。
 結衣は一層笑みを浮かべ。

「待ってろ。ガーネット、真菜ちゃん。絶対――二人とも救ってみせる!」

 そう、強い意志を宿す瞳で――断言した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

百合ハーレムが大好きです!〜全ルート攻略開始〜

M・A・J・O
大衆娯楽
【大衆娯楽小説ランキング、最高第7位達成!】 黒髪赤目の、女の子に囲まれたい願望を持つ朱美。 そんな彼女には、美少女の妹、美少女の幼なじみ、美少女の先輩、美少女のクラスメイトがいた。 そんな美少女な彼女たちは、朱美のことが好きらしく――? 「私は“百合ハーレム”が好きなのぉぉぉぉぉぉ!!」 誰か一人に絞りこめなかった朱美は、彼女たちから逃げ出した。 …… ここから朱美の全ルート攻略が始まる! ・表紙絵はTwitterのフォロワー様より。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

爆誕!異世界の歌姫~チートもヒロイン補正もないので、仕方がないから歌います~

ロゼーナ
ファンタジー
気づいたら異世界の森の中に転移していたアラサー会社員チヨリ。何かチートがあるかと期待したものの、装備はパジャマ、お金なし、自動翻訳機能なしでいきなり詰む。冷静かつ図太い性格(本人談)を存分に生かし、開き直って今日も楽しく歌をうたう。 *ほのぼの異世界生活、後にちょっと冒険。チートあり。血生臭い争いは起こりませんが、ケガや出血の描写は多少出てきます。ちびっ子や恋愛要素もあり。 *9/27追記:全編完結いたしました。応援ありがとうございました!

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

ばじゅてんっ!〜馬術部の天使と不思議な聖女〜【完結済み】

M・A・J・O
キャラ文芸
馬が好きな女子高生、高宮沙織(たかみやさおり)は伝統のある星花女子学園に通っている。 そこは特段、馬術で有名な学校……とかではないのだが、馬術部の先生が優しくて気に入っている。 どこかの誰かとは大違いなほどに―― 馬術の才能がある沙織は一年生にもかかわらず、少人数の馬術部員の中で成績がずば抜けていた。 そんな中、沙織はある人が気になっていた。 その人は沙織の一つ先輩である、渡島嫩(おしまふたば)。 彼女は心優しく、誰にでも尽くしてしまうちょっと変わった先輩だ。 「なんであんなに優しいのに、それが怖いんだろう……」 沙織はのちに、彼女が誰にでも優しい理由を知っていくこととなる…… ・表紙絵はくめゆる様(@kumeyuru)より。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。

木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。 その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。 本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。 リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。 しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。 なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。 竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。 ※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)

処理中です...