8 / 262
第一章 少女たちの願い(前編)
どんなことだって、願えば叶う!
しおりを挟む
そして――と、視線を変える。
すると、猫耳を付けた人が、いつの間にか結衣と距離を保ちながらグラウンドの真ん中にいた。
その人は、血のような赤い眼で結衣の様子を窺っているのがわかる。
金色の――陽の光に負けていない煌びやかな髪の毛は、飾りでしかないのではと思うほど異様な眼。
血を欲し、血に塗れ、そのものが血であるかのような不気味な瞳。
――結衣は、ゾクリと背筋が凍るような錯覚に見舞われる。
だが、結衣はその赤い眼に、深い翠の瞳で応える。
あらゆるものを全て包み込むような深く、優しい翠。
しかし、今はその色を鋭く光らせていた。
そしてまたチラリと視線を変えると、グラウンドに倒れている人達をその瞳が映す。
「ステッキ…………あの人は、関係ないみんなを巻き込んだ。そんな人に、あなたを奪われるわけにはいかない!」
「結衣様……! へへへ、嬉しいです……ならば! 私もその“願い”、応えてやらないわけにはいきませんねぇ!」
そう高らかに叫ぶと、一直線に敵へ接近した。
遠距離戦ではなく、近接戦へ持ち込むことにしたのだ。
しかし、今もなお降り注ぐ矢の嵐は止まることを知らず、結衣を殺さんとして迫ってくる。
だが、そんな簡単に殺られるほど、結衣はヤワではない。
次はどうしようかと考えながら、矢の嵐を見やる。
治癒も防壁も、願うだけで、イメージするだけで自分のものとして扱うことが出来た。
ならば――
「どんなことだって! 願えば、叶う! ――増幅!」
ヒイイイィィンと言う音を伴って急加速した結衣の身体は、物理限界さえ突破しようとしていた。
そしてこれは取っておき、と薄く笑って――
「ステッキ! 行くよ! ――認識阻害!」
「……! なるほど! 了解しましたぁ!」
結衣の言葉の意図が分かったらしいステッキは、一層高らかな声を出す。
そして、認識が阻害された結衣を見つけることは叶わなかったのか、敵は不気味な瞳で焦るように辺りを見回す。
だが、結衣は敵――結衣と同じぐらいの歳の少女の姿を、少女の真後ろから捉えた。
「全力全開!! ――大砲!」
魔法で編んだ大きな鉄砲玉――のようなキラキラした何かを、獣耳の少女にぶつける。
ぶつける前に、ようやくこちらを見据えた少女は、一度も表情を変えることなく佇んでいた。
だが、その時一瞬――ものすごく、悔しそうな顔をした…………ような気がした。
すると、猫耳を付けた人が、いつの間にか結衣と距離を保ちながらグラウンドの真ん中にいた。
その人は、血のような赤い眼で結衣の様子を窺っているのがわかる。
金色の――陽の光に負けていない煌びやかな髪の毛は、飾りでしかないのではと思うほど異様な眼。
血を欲し、血に塗れ、そのものが血であるかのような不気味な瞳。
――結衣は、ゾクリと背筋が凍るような錯覚に見舞われる。
だが、結衣はその赤い眼に、深い翠の瞳で応える。
あらゆるものを全て包み込むような深く、優しい翠。
しかし、今はその色を鋭く光らせていた。
そしてまたチラリと視線を変えると、グラウンドに倒れている人達をその瞳が映す。
「ステッキ…………あの人は、関係ないみんなを巻き込んだ。そんな人に、あなたを奪われるわけにはいかない!」
「結衣様……! へへへ、嬉しいです……ならば! 私もその“願い”、応えてやらないわけにはいきませんねぇ!」
そう高らかに叫ぶと、一直線に敵へ接近した。
遠距離戦ではなく、近接戦へ持ち込むことにしたのだ。
しかし、今もなお降り注ぐ矢の嵐は止まることを知らず、結衣を殺さんとして迫ってくる。
だが、そんな簡単に殺られるほど、結衣はヤワではない。
次はどうしようかと考えながら、矢の嵐を見やる。
治癒も防壁も、願うだけで、イメージするだけで自分のものとして扱うことが出来た。
ならば――
「どんなことだって! 願えば、叶う! ――増幅!」
ヒイイイィィンと言う音を伴って急加速した結衣の身体は、物理限界さえ突破しようとしていた。
そしてこれは取っておき、と薄く笑って――
「ステッキ! 行くよ! ――認識阻害!」
「……! なるほど! 了解しましたぁ!」
結衣の言葉の意図が分かったらしいステッキは、一層高らかな声を出す。
そして、認識が阻害された結衣を見つけることは叶わなかったのか、敵は不気味な瞳で焦るように辺りを見回す。
だが、結衣は敵――結衣と同じぐらいの歳の少女の姿を、少女の真後ろから捉えた。
「全力全開!! ――大砲!」
魔法で編んだ大きな鉄砲玉――のようなキラキラした何かを、獣耳の少女にぶつける。
ぶつける前に、ようやくこちらを見据えた少女は、一度も表情を変えることなく佇んでいた。
だが、その時一瞬――ものすごく、悔しそうな顔をした…………ような気がした。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件
霜月雹花
ファンタジー
15歳を迎えた者は神よりスキルを授かる。
どんなスキルを得られたのか神殿で確認した少年、アルフレッドは【経験値固定】という訳の分からないスキルだけを授かり、無能として扱われた。
そして一年後、一つ下の妹が才能がある者だと分かるとアルフレッドは家から追放処分となった。
しかし、一年という歳月があったおかげで覚悟が決まっていたアルフレッドは動揺する事なく、今後の生活基盤として冒険者になろうと考えていた。
「スキルが一つですか? それも攻撃系でも魔法系のスキルでもないスキル……すみませんが、それでは冒険者として務まらないと思うので登録は出来ません」
だがそこで待っていたのは、無能なアルフレッドは冒険者にすらなれないという現実だった。
受付との会話を聞いていた冒険者達から逃げるようにギルドを出ていき、これからどうしようと悩んでいると目の前で苦しんでいる老人が目に入った。
アルフレッドとその老人、この出会いにより無能な少年として終わるはずだったアルフレッドの人生は大きく変わる事となった。
2024/10/05 HOT男性向けランキング一位。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
無感情だった僕が、明るい君に恋をして【完結済み】
青季 ふゆ
ライト文芸
地元の大学を休学して東京で暮らす主人公、望月治(おさむ)の隣室には、恐ろしいほど可憐な女子高生、有村日和(ひより)が住んでいる。
日和との関わりは無に等しく、これからもお隣さん以上の関係になるはずがないと思っていたが……。
「これから私が、君の晩御飯を作ってあげるよ」
「いや、なんで?」
ひょんなことから、日和にグイグイ絡まれるようになるった治。
手料理を作りに来たり、映画に連行されたり、旅行に連れて行かれたり……ぎゅっとハグされたり。
ドライで感情の起伏に乏しい治は最初こそ冷たく接していたものの、明るくて優しい日和と過ごすうちに少しずつ心を開いていって……。
これは、趣味も性格も正反対だった二人が、ゆっくりとゆっくりと距離を縮めながら心が触れ合うまでの物語。
●完結済みです
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
もふもふ相棒と異世界で新生活!! 神の愛し子? そんなことは知りません!!
ありぽん
ファンタジー
[第3回次世代ファンタジーカップエントリー]
特別賞受賞 書籍化決定!!
応援くださった皆様、ありがとうございます!!
望月奏(中学1年生)は、ある日車に撥ねられそうになっていた子犬を庇い、命を落としてしまう。
そして気づけば奏の前には白く輝く玉がふわふわと浮いていて。光り輝く玉は何と神様。
神様によれば、今回奏が死んだのは、神様のせいだったらしく。
そこで奏は神様のお詫びとして、新しい世界で生きることに。
これは自分では規格外ではないと思っている奏が、規格外の力でもふもふ相棒と、
たくさんのもふもふ達と楽しく幸せに暮らす物語。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる