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第一章 少女たちの願い(前編)

どんなことだって、願えば叶う!

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 そして――と、視線を変える。
 すると、猫耳を付けた人が、いつの間にか結衣と距離を保ちながらグラウンドの真ん中にいた。
 その人は、血のような赤い眼で結衣の様子を窺っているのがわかる。

 金色の――陽の光に負けていない煌びやかな髪の毛は、飾りでしかないのではと思うほど異様な眼。
 血を欲し、血に塗れ、そのものが血であるかのような不気味な瞳。
 ――結衣は、ゾクリと背筋が凍るような錯覚に見舞われる。

 だが、結衣はその赤い眼に、深い翠の瞳で応える。
 あらゆるものを全て包み込むような深く、優しい翠。

 しかし、今はその色を鋭く光らせていた。
 そしてまたチラリと視線を変えると、グラウンドに倒れている人達をその瞳が映す。

「ステッキ…………あの人は、関係ないみんなを巻き込んだ。そんな人に、あなたを奪われるわけにはいかない!」
「結衣様……! へへへ、嬉しいです……ならば! 私もその“願い”、応えてやらないわけにはいきませんねぇ!」

 そう高らかに叫ぶと、一直線に敵へ接近した。
 遠距離戦ではなく、近接戦へ持ち込むことにしたのだ。
 しかし、今もなお降り注ぐ矢の嵐は止まることを知らず、結衣を殺さんとして迫ってくる。

 だが、そんな簡単に殺られるほど、結衣はヤワではない。
 次はどうしようかと考えながら、矢の嵐を見やる。

 治癒も防壁も、願うだけで、イメージするだけで自分のものとして扱うことが出来た。
 ならば――

「どんなことだって! 願えば、叶う! ――増幅ブースト!」

 ヒイイイィィンと言う音を伴って急加速した結衣の身体は、物理限界さえ突破しようとしていた。
 そしてこれは取っておき、と薄く笑って――

「ステッキ! 行くよ! ――認識阻害シャットアウト!」
「……! なるほど! 了解しましたぁ!」

 結衣の言葉の意図が分かったらしいステッキは、一層高らかな声を出す。

 そして、認識が阻害された結衣を見つけることは叶わなかったのか、敵は不気味な瞳で焦るように辺りを見回す。

 だが、結衣は敵――結衣と同じぐらいの歳の少女の姿を、少女の真後ろから捉えた。

「全力全開!! ――大砲バング!」

 魔法で編んだ大きな鉄砲玉――のようなキラキラした何かを、獣耳の少女にぶつける。

 ぶつける前に、ようやくこちらを見据えた少女は、一度も表情を変えることなく佇んでいた。
 だが、その時一瞬――ものすごく、悔しそうな顔をした…………ような気がした。
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