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第一章 少女たちの願い(前編)
やり方なんて単純で……
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「結衣様! 防壁を張って矢を防ぎましょう!」
「ふぇ!? どうすればいいの!?」
突然ステッキに防壁を張れと言われ、戸惑う結衣。
そんなの、結衣は魔法なんて使ったことがないから分かるはずもない。
だが――そんな結衣の戸惑いに上書きするように、声が響く。
(大丈夫です、結衣様。魔法はイメージするだけで自由に扱う事が出来ます。私を――信じてください!)
(う、うん……! や、やってみる!)
結衣たちは心の中で会話をし、浮かんだ言葉を口にする。
「い、行くよ! ――防壁!」
そう言うと同時、魔法で出来たドーム状の――いかにもバリアというような、透明の膜が結衣の周りを包む。
そして次々に襲いくる矢を弾き、膜は役目終了とばかりに姿を消した。
「え、す、すごっ……!」
こんなにすごいことが出来るとは……と、結衣は高揚感に満ち溢れていた。
「では、ひと段落した所で先程の話の続きと行きましょうか」
「あ、うん。そうだね。説明してくれるとありがたい……」
そう言えば、まだ何の説明を受けていないことに気が付いた。
結衣は気分が高鳴るのを抑えて、近くの茂みに隠れ、ステッキの話を聞く。
「結衣様が魔法少女の力を手にしたのは、一般人――つまり、力を持っていない邪悪な人達から私を守ってもらうためです」
「あー、うん。それは前にも聞いたよ?」
コクリと確認するようにステッキは頷き、次の瞬間――思いもよらない言葉を放った。
「ですが、世の中には結衣様と同じように強い願いを持っている人達がいるのです。その人達は何がなんでも私を奪いたいでしょう」
そこで一旦言葉を切って、覚悟を決めたように強く言い放つ。
「ですから、私がある人をマスターと定めた瞬間。強い願いを持つ人達は願いの強さに合わせ、それぞれ強い力を手に入れてしまう……というわけです」
「――……は? え、なにそれ……どーゆう――」
そこまで言って、今度は結衣が言葉を切った。
禍々しい気配を感じ、勢いよく振り向く。
その時、金色に輝く髪と獣耳が見えた。
回避も防御も間に合わず、矢が結衣の腕を掠っていく。
「うっ……!」
「ゆ、結衣様!」
桜色のアームカバーが破け、腕からは少し血が滲んでくる。……どうやら、かすり傷を負ったようだ。
矢を放った張本人は、とっくに姿を消し、どこかへ隠れたのだろう。
だが――
「こ、これじゃ……戦えない、よ……っ」
声も出せるか出せないかのギリギリのライン。こんなことでは、すぐに殺られるのは目に見えている。
「諦めないでください。あなたを選んだこの私を――信じてください!」
「す、ステッキ……めっちゃ、えらそう……だよ……」
「あっははぁ。それは今に始まったことでもないでしょう」
真剣な雰囲気から一変、いつも通りのふざけた雰囲気に戻る。
――だが、結衣は不思議と、嫌な感じはしなかった。
「さあ、治癒魔法をかけますよ……!」
「うん、お願い。――治癒」
そう言って、治癒魔法をかける。
腕の怪我した部分にステッキを翳すと、みるみるうちに怪我が治ってゆく。
痛みも徐々に消えてゆき、やがて怪我をする前の状態に戻る。
結衣は何故かそれが楽しくて――嬉しくて、気分が高鳴ったのを覚えている。
「ふぇ!? どうすればいいの!?」
突然ステッキに防壁を張れと言われ、戸惑う結衣。
そんなの、結衣は魔法なんて使ったことがないから分かるはずもない。
だが――そんな結衣の戸惑いに上書きするように、声が響く。
(大丈夫です、結衣様。魔法はイメージするだけで自由に扱う事が出来ます。私を――信じてください!)
(う、うん……! や、やってみる!)
結衣たちは心の中で会話をし、浮かんだ言葉を口にする。
「い、行くよ! ――防壁!」
そう言うと同時、魔法で出来たドーム状の――いかにもバリアというような、透明の膜が結衣の周りを包む。
そして次々に襲いくる矢を弾き、膜は役目終了とばかりに姿を消した。
「え、す、すごっ……!」
こんなにすごいことが出来るとは……と、結衣は高揚感に満ち溢れていた。
「では、ひと段落した所で先程の話の続きと行きましょうか」
「あ、うん。そうだね。説明してくれるとありがたい……」
そう言えば、まだ何の説明を受けていないことに気が付いた。
結衣は気分が高鳴るのを抑えて、近くの茂みに隠れ、ステッキの話を聞く。
「結衣様が魔法少女の力を手にしたのは、一般人――つまり、力を持っていない邪悪な人達から私を守ってもらうためです」
「あー、うん。それは前にも聞いたよ?」
コクリと確認するようにステッキは頷き、次の瞬間――思いもよらない言葉を放った。
「ですが、世の中には結衣様と同じように強い願いを持っている人達がいるのです。その人達は何がなんでも私を奪いたいでしょう」
そこで一旦言葉を切って、覚悟を決めたように強く言い放つ。
「ですから、私がある人をマスターと定めた瞬間。強い願いを持つ人達は願いの強さに合わせ、それぞれ強い力を手に入れてしまう……というわけです」
「――……は? え、なにそれ……どーゆう――」
そこまで言って、今度は結衣が言葉を切った。
禍々しい気配を感じ、勢いよく振り向く。
その時、金色に輝く髪と獣耳が見えた。
回避も防御も間に合わず、矢が結衣の腕を掠っていく。
「うっ……!」
「ゆ、結衣様!」
桜色のアームカバーが破け、腕からは少し血が滲んでくる。……どうやら、かすり傷を負ったようだ。
矢を放った張本人は、とっくに姿を消し、どこかへ隠れたのだろう。
だが――
「こ、これじゃ……戦えない、よ……っ」
声も出せるか出せないかのギリギリのライン。こんなことでは、すぐに殺られるのは目に見えている。
「諦めないでください。あなたを選んだこの私を――信じてください!」
「す、ステッキ……めっちゃ、えらそう……だよ……」
「あっははぁ。それは今に始まったことでもないでしょう」
真剣な雰囲気から一変、いつも通りのふざけた雰囲気に戻る。
――だが、結衣は不思議と、嫌な感じはしなかった。
「さあ、治癒魔法をかけますよ……!」
「うん、お願い。――治癒」
そう言って、治癒魔法をかける。
腕の怪我した部分にステッキを翳すと、みるみるうちに怪我が治ってゆく。
痛みも徐々に消えてゆき、やがて怪我をする前の状態に戻る。
結衣は何故かそれが楽しくて――嬉しくて、気分が高鳴ったのを覚えている。
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