鈍感王子の背徳なる性事情

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第十五話

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 やらかした。
 本当にやらかした。

「入って」
「……ああ」

 なぜ保健室を利用するのかは聞くまでもなかった。なにせ、ここは誰も使うことがない空き教室だったからだ。

 校内で怪我をすることは特になく、あったとしても回復魔法が使える生徒がその場で治すことがほとんど。実習には必ず一人以上は回復魔法を使える教師がいるし、どうしても周りに怪我を治せる人間がいない時や病気にかかったとしたら、学園の魔女がいる第三実験室に向かうのが通例だった。

 保健室は本懐を果たせず、やがて魔女の薬が効くと広まってからは担当する先生がいても利用されず、職員室にある鍵さえ持っていれば自由に出入りできる場所になっていた。

 しかし、なぜ保健室の鍵をトトナが持っているのかというと、疑問に残ることがある。本来、職員室にある鍵の貸し出しは教師、或いは認められた生徒のみが許されていて、ショコラータ侯爵家の人間とはいえ、初等生のうちから借りることは出来なかったはずだ。

 とりあえず、これからの話が誰にも聞かれないという目的に保健室は適しているし、気にはしていてもまずは話をすることが優先だ。

 少し部屋の中を見渡して、使われることが少ない割には掃除が行き届いてそうなところを見て意外に思う。
 薬品棚は空で、本棚には少しの資料と本が積まれているだけ。後は机と、今はカーテンですべて隠れている療養のための寝台があるくらいだ。

 俺は尚もトトナに手を引かれて、一番端の寝台のカーテンが開けられたと思えば、先にトトナが座ってから隣に座るように促される。

「ここに座って」
「……なら、お言葉に甘えようか」

 内側から施錠したが念のためカーテンを閉めて、俺はトトナの隣に腰掛けた。トトナはカーテンを閉めたことを不思議そうにして見ていたが、若干危機意識が低いようだ。

 今も、魔法使いのオリジナルらしき逆鱗に触れたも関わらず、自然体でいるのが何よりもの証拠だ。
 仮にも序列二位になるのだから駆け引きが弱いわけではないだろうが、政略的な思考は、全く育てていないのか。

 警戒しようにもこの表情がわかりづらい人形のように美しい少女を相手に、どう接すれば良いのか少し困った。
 たとえ周辺諸国の王族相手だろうとまったく動じない自信のある俺にとっては珍しい悩みだと思う。

 理由は分かっている。
 トトナが、弟たちの幼馴染であるからだ。
 下手な手段で口封じすれば、身近な人間が悲しんでしまう。だから扱いに困るし、面倒くさい。

 もういっそのこと、直球で対応するか?
 その方が俺らしく楽だし何より正解のような気がする。

 もっといえば、遠回りするだけ無駄。何故かトトナは御しやすいという直感がある。
 以前、レイチェルと突発的にキスをすることになった時も、強引に事故だと言いくるめることができたことも根拠の一つだろう。

「それで、話とはなんだったかな?」

 ないとは分かっているが、聞き間違いだったかもしれないという期待から、トトナに尋ねた。

「うん……私に潜在魔力の増やし方を教えて欲しい」

 返ってきたのは、やはりリブートについてだった。
 トトナがーーいや、魔法使いなら誰しもが望むだろう結果を見られたのだから当然か。

 潜在魔力の量は肉体の成長とともに増えていくとされ、その絶対量や成長量を増やすための実験がいくつも行われてきたが、文字通り見ただけで分かるくらい顕著な結果を得たというものは聞いたことがない。

 だからこそ、身体能力に加えて魔力量まで跳ね上げる魔法は規格外の秘奥であり、決して漏らしてはいけないものだった。

 よりにもよって、人の目がある場所でしてしまったのは、図に乗りすぎた。やらかした以外、言いようがないことである。

 とは言え、だ。

 直球で聞いてくるトトナに関しても問題があるだろう。
 普通、魔法使いは、オリジナルの詮索を嫌っている。唯一無二のはずの魔法を継ぐのは、その血脈にある者たちだと考えられていて、もし摸倣だろうとオリジナルだろうと、似た効果をもつ魔法を作ったとすれば、秘密裏にその研究成果ごと抹消されることがあると婆やから教わったことがある。昔の話なのだろうが、それだけシビアなのが魔法使いの世情なのだ。

 だからこそ分かる。本当に魔法についてしか興味がなく、立ち振る舞いや世渡りについては疎いようだ。惚けるにしても、ただ魔力を回復していたと誤魔化しても信じられないに違いない。どう言い繕ったところで、トトナは真実を見たのだから、やはり徒労に終わるだけだろう。

 小さく人形のように美しく愛らしい見た目のくせして。ああ、本当に厄介な相手である。

 まさか、抹消するわけにもいかない。ならば、残された選択肢は一つしかない。

「つまりトトナは俺に師事したいと、そう言ってるんだな?」
「うん。そう」

 表情一つ崩さず、淡々としているようにすら見える目で、トトナははっきりと頷いた。
 分かりきっていた返答だったので、返す言葉も変わることはなかった。

「そうか。なら、結論から言うぞ。俺はお前を弟子にするつもりはさらさらない」
「え……なんで……?」

 瞳が不安そうに揺れたのを見た。
 表情は特に変わっていないのに、こういう小さな変化がトトナの内面を表出させると思えばちゃんと感情豊かな人間だとすぐに分かった。ただ見えにくいだけで、人形のように美しいだけの、ただの人間だった。それも、まだ年下の少女である。

「……前提の話からしようか。これは俺を強くするものであって、他人を強くするものじゃない」
「……どういうこと?」
「お前が使っても意味がないということだ」

 そうなるように、制限をかけた。
 王族の血脈を持つ者だけが資格がある。さらに言えば、無数の生きた精子を殺すことで対価を得られるので、女の身ではどう足掻いたところで使えるわけがなかった。

「そんな……」

 顔を伏せて、見るからに落ち込むトトナにかけてやる言葉はなかった。俺という存在を見て魔力を伸ばす可能性を知り期待していたようだが、そう上手くいくわけがないのは分かっていた筈だ。

「……ちなみに訊くが俺のことを誰かに話したりはしたか?」
「……ううん。誰にも、話してない」
「そうか。なら良かった」

 ならここでトトナの口を塞げば、これ以上知られる可能性がなくなるわけだ。

「これから先も誰にも話すなよ」
「? うん、分かった」
「……やけに素直だな」
「話す必要がないから」
「なるほど」

 話さないと約束してくれるのはありがたいが、それを信用するほど俺もお人好しではないと自覚している。
 少なくとも俺が信頼している人間は、俺を信頼してくれている人間だ。

 だから俺がトトナを信頼するためには、トトナに俺を信頼させることが必要だった。

「つまり、話す必要ができたら話すということだな」
「……そんなことしない」
「確約できるか?」
「それは……無理、だけど」
「だろう? ーーだから取引をしよう」

 俺は穏やかな笑みをトトナに向けた。揚げ足をとって年下の子をいじめる状況に少し気分が上がってきた。
 どうやら俺は、異性を可愛がる手段の一つとしていじめることにも興奮する性質だったみたいだ。

「取引……?」
「ああ、そうだ。貴族なら知っての通り、魔法は対価と代償で成り立ってる。それと同じだ。対価として『トトナは俺の秘密を見なかった』ことにする、その代償に『俺がトトナの協力者』になってやる」
「……協力者?」

 先ほどから受け身ばかりのトトナの相手はやり易かった。主導権がこちらにある以上、俺は恩を押し付けることができて、信頼を勝ち取りやすくなる。それに、よっぽど性根が腐ったやつでなければ恩を仇で返す真似はしないだろう。信頼するのはそれからだ。

「俺はトトナがまったく信用できないからな。弟と婚約者の幼馴染という程度で、知り合ったばかり。何を根拠に信じるか決める時、俺はトトナに貸しを作ることぐらいしか根拠にするものがないと思った。……だから、トトナが何を思って、どうして魔力量を増やそうとしているのかまだ知らないが、手助けしてやる。だから協力者だ」
「具体的には何をしてくれるの……?」
「それを決めるのは、先に理由を聞いてからだ」
「……手伝ってくれるの?」
「ああ。恩を返し切れないくらい売りつけて、俺に逆らえないようになるくらい手伝ってやる」
「そこまでしなくていい」
「そうか?」

 断ってくるが、残念ながらこれは決定事項だった。
 狙いは伏せながら、俺はトトナの頭に手を置いた。
 驚いたように片目を伏せて見上げてくる紫髪の少女の頭を撫でて一通り堪能したところで、手のひらを差し出した。

「で、どうするーートトナに俺は必要ないか? それとも俺を頼って安心させてくれるのか?」

 二択を突きつけたが、手を差し出されて、意図的に断りにくく話した。トトナなら断れないだろうーー恩の押し売りである。

「頼っても良いの?」
「もちろんだ」

 トトナは、それからゆっくりと俺の手を取った。

「なら、頼ることにする」

 ダンスの時のようにそっと小さな手を乗せて、協力関係が結ばれた瞬間だった。




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 それから、トトナは俺に魔力量を増やしたかった理由を打ち明けてくれた。

「つまり、序列一位の友達に勝ちたくて強くなる方法を探していたのか」
「そうだけど……レイチェルに凄い魔法使いになるって約束したから。アリスにはもう負けたくない」

 聞けば、【魔法人形】と蔑称の意味で呼ばれるようになってから初めてできた友達が俺の婚約者レイチェルだったようで、ある言葉に救われてからは「一番凄い魔法使い」になることを目標にしてきたのだと言う。

 となれば俺も越えたいのかと思ったが、俺は魔法使いよりも王様らしい。ただテシアを強く意識しているのは意外だった。レイモンドやエリノーラなんかはどうだと聞いてもあれは魔法を手段の一つにした戦士らしい。
 なんでテシアの戦う姿を知っているのかは聞かないでおいたが、つまり純正の魔法使いとして強くなりたいと言うことらしい。ならトトナが知っているのかは分からないが婆やが最終の目標ということか。

「ということはアリスも魔法だけで戦うスタイルなのか?」
「うん。しかもアリスは特殊な魔法を使うから厄介」
「特殊? どんな魔法を使うんだ?」
「一言で言うなら……鏡」
「鏡か」

 トトナを下したという事実から俺がティアをいじめるために思いついた《魔法鏡/マジックミラー》とはおおよそ別物なんだろうと分かる。
 それからトトナが話すアリスの魔法はおおよそ想像がつかないものだった。

 ・物理衝撃や放出系魔法の反射
 ・鏡による上からの圧迫
 ・浮遊した鏡に乗り、そして移動もする

「……」
「アリスが魔力を使うのは鏡を出す時だけで、移動とかは全く魔力が消費されていなかった」
「確か大楯で似たようなことをしている騎士がいたが……」
「本当……?」
「ああ。だが、ほかにしている奴がいるとは思わなかったし、まさか初等生が更にアレンジを加えて扱いこなしてるとはもっと思わなかった。……トトナはどうやって対抗したんだ?」

 そもそも、俺はトトナのスタイルを知らない。
 どんな魔法を使えるのか、魔法適正がどうなのかなど、アドバイスするにはまずそれを聞いておかなくてはならなかった。

「私が使ったのはこれ」

 そう言ってトトナが、俺と繋ぎ続けている手と反対の方の手を差し出してきて、一言唱えた。

「《創造/リアライズ》マリオネットドール」

 リアライズ? そう思ったのも、束の間に、トトナの手の中に二体の人形が生み出された。そして人形は手のひらに整列してから、頭を下げてくる。

「そう言えば何年か前に人形と踊っていたな」
「うん。【魔法人形】を蔑称にしないようにするためにレイチェルと考えた。実際にあるものを再現する私のオリジナル」
「この人形を使ってアリスと戦わせたのか?」
「半分正解。私も人形を操りながら戦った」
「ん? ならトトナは一人で二役の戦いをしたのか?」
「うん」

 何気なく頷いてみせるが、その意味を本当に分かっているのだろうか。

「ちなみに人形だとどういうことができるんだ?」
「出来ること……ダンスをさせる、武器を持たせて戦わせる、あと浮くこともできる」
「浮かすこともできるのか……」
「魔力消費が大きいからあまり使いたくない」
 
 指折りしながら言っているがもっとできることがあるのだろう。
 ということはだーーいや、今これを教えても使えないのは分かっているからやめておこう。

「人形とどういう連携をしているんだ?」
「人形を前で戦わせて、私が遠距離から攻撃。盾にして時間稼ぎするときもあるし、すばしっこい相手は抱きつかせて纏めて焼きはらう」

 聞いている限りでも単純だが、それゆえに強い戦法だ。
 一対一の状況下だと単純な手数の差で圧倒できることの方が多いだろう。だが、負けた。その理由は明らかだ。

「アリスとの勝負ではどうなったんだ?」

 初等生の初月の順位戦は暫定序列と言われるように、トーナメント形式で行われる。
 さっきレイチェルから聞いた結果だと、トトナはアリスに敗れ、その後ラレスを撃破し暫定3位になったらしい。

 ラレスを撃破したことから実質ネクトよりは上とわかることから、本来の順位戦なら2位に終わったはずだ。

「アリスには、いつも通り人形で攻撃しながら遠距離から攻撃した……でも手も足も出なかった」

  トトナと繋いだ手が強く握り締められた。

「人形で攻撃したら弾き飛ばされて、魔法攻撃は鏡の中に吸い込まれたあと別の鏡から出てきて跳ね返された。アリスは鏡で移動しながら、手元で魔法を打って鏡伝いに全方位から攻撃してきて……」

 トトナの説明はそこで終わった。

「そうか」

 俺は頷くだけで、トトナの小さな手を強く握り返した。
 トトナから直接聞いて感じたのが、“やはり”という感想と、“まさか”という疑念だった。

 前者は、トトナの戦法の限界についてだ。
 魔法使いの戦闘は、一騎当千が存在する。
 トトナの人形使いは一見数の差を覆しているように見えて、たった一体しか増えていないーー要するに火力不足である。

 それこそ英雄級ならともかく、ただの歩兵が一体増えたところで、なんの脅威も感じない。だが、初等生では通用しているというから、火力面では十分に通用するーーまだ低水準だというのがわかる。

 つまり、トトナは決して弱くはないが、明確な強者と弱者の線引きのラインにしかなっていないということだ。

 トトナより上のアリスが強者であり、トトナより下の初等生たちがまだ強者の水準に踏み入れていないだけということだ。

 これは、非常にもったいないことだと思った。

「トトナが人形を使うのは何か理由があるのか?」
「……人形を使って勝ちたいだけ」

 人形によっぽどの思い入れがあるのか。

「そうか。なら仕方ないな」
「だめ……?」
「いいや。人形を使って勝ちたいんだろう? なら、仕方ない。トトナが人形を使って勝てるように頑張れば良いだけだ」

 やりたいことを出来ないのは、たとえそれが無理筋だろうと辛いことだ。レイモンドに諌められながらも我を貫き続けた俺が、実害もないのに止めろなんてと到底言えたことではない。

「とりあえず、アリスの情報については俺が少し集めてみるからそっちは任せろ。で、トトナがアリスに勝つための方法なんだが……ってそう言えば、なんで魔力量を底上げしたいのか聞いていなかったな。どうしてだ?」

 トトナの魔力量は、水晶なしでも感じ取れる限りだと、今まで感じた中でも一番魔力量が多かった近衛魔法師団の副団長に並ぶほどだ。
 仮に、人形を動かすことに魔力が割かれていたとしても、トトナ自身が魔法を使えるだけの余地はごまんとあるはずだった。

「……それは、まだ足りてないから」
「何が足りてないんだ?」
「人形を動かすための魔力が」
「……ん?」

 人形を動かして順位戦を戦っていたと言っていたが、より精密な動きをしたいということだろうか? 
 だとしたら、アリス相手にそれはただの小細工。なんのプラスにもなりはしない。

 いや、そうじゃない。トトナが言おうとする言葉に、少しだけ予想することができた。
 そうだ。俺は、今さっき、トトナに何を見せられた。

「アリス相手には、今はあれが限界だった。でも、あと少しだけ魔力があれば、私が魔法を使う余地を残しながらギリギリだけど動かすことができるようになる」

 トトナの手のひらで踊る二つの人形を見ながら、トトナが魔力を求めた理由を答えた。

「二つの人形を同時に動かす。アリスも後ろに目はないから挟撃して隙をつくる」

 ーートトナは、自身を含めて、三つの体を操作することができるということだ。

「ははッ、面白いことを考えたな。なるほど、もはや【魔法人形】どころか【傀儡子】の方が妥当だな。さしずめ、一人小隊と言ったところか? ああ、良いな! すごく良い! もっと別の方法も考えていたが、もしそれができるのなら俺も見てみたい」

 いや、予想外。そうか、複数操作もできないわけじゃないからな。トトナが攻撃に参加するだけの魔力を残すために、2体動かすのは魔力消費量から考えて難しかったのだろう。

 だが、魔力量が増えたとしたら?

 トトナがいう通り、三位一体が完成する。そしてそれは、単純な手数の増加と、相手の狙う的が増加することを意味している。ただ歩兵の一体が増えただけだが、これは、対抗手段がなければ強者だろうが抗えないはずだ。

 もちろん、それで一番すごい魔法使いになれるわけがない。たかが歩兵人形が複数体いたところで、広域殲滅魔法一撃には敵わないだろう。

 だがしかし、複数体同時操作することができるということは、人一倍優秀な成績を残せることもまた事実。

 色に溺れて少しの間忘れていた遊びの欲求が蘇る。
 トトナを手放すな! と、心の奥底からこの紫髪の少女を求める気持ちが溢れてくる。

 トトナと繋いだ手を更に握りしめる。不思議そうに見てくるトトナに向けて、多分俺はワクワクを抑えきれない笑顔を向けていたんだろうと思う。

 俺は知っている。女の子を繋ぎ止めるための方法を、ティアと、エリノーラと、レイチェルで学び、そして実行してきていた。愛だ恋だまだまだよくわかっていないことだが、それでも、この執着心だけは全く偽れそうもない。

「予定変更だ。トトナに対して俺ができる協力は、トトナの魔力を底上げすること。そして、トトナの魔法を使って、アリスに勝つための戦い方を教えてやる」
「え、でも魔力量は増やせないって……?」
「嘘は言ってないぞ。トトナが見た方法は俺が強化されるための魔法だからな。ーー“だから”、それをベースに俺が一から新しく魔法を作ってやる」

 淫紋とはまた別だ。もともと構想はしていたが、まだ計画段階だったそれを使用する。エリノーラの追加強化のために使うつもりだったが、あとは成長効率の追求だけの段階だったので使用上の問題は皆無だった。

「魔力、増やせるの……?」
「ああ」
「今度はアリスと対等に戦える……?」
「互角以上に戦えるだろうな」
「レイチェルとの約束、守れるの?」
「すべてはトトナの頑張り次第だ」

 トトナは、俺の突然の変わり身に驚いているのだろう。
 だが、少しの逡巡の後、迷いのない目で、トトナは首を縦に振った。

「ん。頑張る」

 その一言で、運命が決定づけられたと、トトナはまだ知らなかった。



「じゃあ早速、授業が終わるまでの時間、練習するか」
「……練習って……?」
「とりあえずキスからだな」

 意味がわかっていないらしいトトナを抱き寄せてから、俺は反対側の手を掴んで、両手を握り合うように寝台で向かい合った。
 トトナの手のひらで思っていた人形は、床に落ちて衝撃を受けた途端に形を失って魔力霧散のように空気に溶け始めるが、これはたぶん、トトナが人形を解除したんだろうと思う。

「なんで……キスするの?」
「嫌なのか?」
「…………うん、いや」

 おお……こうもはっきりと言われるのは新鮮だった。ティアにも嫌だと言われるがあれは照れ隠しの一種だと思って特に間に受けたりしなかったがトトナの場合は少し考えてから全く表情を変えずに淡々というので真実味が増している。

「そうか……でもそのローブを着ているということは、魔力回復する手段に当てが無いんじゃないのか?」
「それは……そうだけど」
「ちなみに、俺は体液を媒介に魔力譲渡する魔法があるんだが……訓練するなら全快していたほうが身も入るだろ」
「…………分かった」

 ひとまずは交渉の成立と考えて良いだろう。
 俺はトトナと両手を絡ませながらジト目のように見上げてくる顔をマジマジと見る。

 紫髪のツインテールが子供らしさを強調して、もちもちとした肌の輝きは、レイチェルの時も思ったことだがティアやエリノーラと比べて、やはり美しさよりも幼さからくる瑞々しさがやけに目立っていた。

「じゃあするぞ……」
「うん……ーーん」

 一度目は、唇を触れ合わせるだけですぐに離れた。
 目を閉じた幼い顔にある小さな口の感触はレイチェルと似ていると思った。

 それにしても、トトナはただ唇を触れさせるだけじゃ魔力回復できないことを理解しているのだろうか。
 おそらく初めてな口付けで緊張して、普通にソフトなキスをしたんだろう。そう思えば途端にトトナが愛らしく感じてしまう。

「ん……ん……」

 二回目もまだ口は開かなかった。
 籠城するかのように口を閉ざして、ただ触れさせるだけのキスだが、俺はそれを指摘するつもりもない。トトナが俺を受け入れるまで、何度も唇をつけては顔を離すことを繰り返す。

 やがてトトナの頬は赤みを帯び始めるが、それでも頑なに口を開けようとはしなかった。
 埒が開かないので少し変化を加えようと、目を閉じたままキスを待つ姿勢のトトナを放置する。
 唇に刺激がこなくなったことを不思議に思ったのか、顔を真っ赤にしながら少しずつ瞼を上げたトトナの瞳を覗き込みながら、今度は長いキスをお見舞いした。

 両手を握り合いながら、唇が触れるだけ。互いに鼻息を感じながら、やがてトトナは眠たそうに瞼を落とす。俺はそんなトトナをゆっくりと体重をかけるように寝台に押し倒して、両手を頭の横に押さえつけながら、唇を離した。

「……トトナ」

 俺は名前を呼んで、眠たそうにするトトナの目を開けさせて舌を伸ばした。決して、トトナの口に届くことはなく、上から垂らされた俺の舌を見て、トトナの目が動揺で揺れるのを見逃さなかった。

 やがて、空気に触れて舌が乾き始めたが、俺は戻すつもりはなかった。

「んぇ……」

 そして、トトナはゆっくりと、小さな口を開けて、俺の舌目掛けて、自分の舌を伸ばしてーー俺の舌にちょん、と触れた。
 触れた部分が、乾きを潤す。

 しかし、トトナは舌同士の触れ合いに驚いたのかすぐに引っ込めてしまう。それでも俺はなおも強情に舌を伸ばし続けた。

 いい加減、唾液が溜まってきて辛いものがあるが、あくまでトトナが求めることに意味がある。

「……んっ……」

 普段、無表情な顔を、照れや恥で化粧して年相応の感情が見えるようになったトトナは、自分が動かなければ何も終わらないと悟ったらしい。ゆっくりともう一度舌を伸ばしてきて、ちょんと触れる。
 また離れるかと思ったが手をぎゅっと握り返してきて、今度こそ、舌どうしが絡み合った。

「ん……ぇ……んん……」

 トトナの暖かく湿った舌が俺の舌を濡らす。全体が潤うよう回して絡めとるように舌を動かしてから、俺の口内に誘い込むように、トトナの舌に吸い付いた。

 そして、何度か唇で噛むように舌を挟んでから、今度は俺の方からトトナの小さい口に舌を差し込んだ。

「ん……ッ」

 トトナが舌で押し返そうと抵抗するが、むしろ、逆効果だった。舌が力強く触れ合って、加えて抵抗するトトナを一方的に蹂躙するような背徳感が興奮を促した。

 強引に口をこじ開けて、口を覆うようにキスしながら、俺は魔力を溜め込んだ唾液をトトナの口の中に流し込んだ。

「ん、んんっ……!? ーーぷはっ」

 嚥下して、俺の唾液を取り込んだトトナは目を見開いて、息を荒く俺を見つめてきた。

「どうだ、普通の魔力譲渡は効率が悪いって分かるだろ?」

 身をもって体感したなら、魔法使いなら一発で分かるはずだ。十ある魔力で一しか譲渡できない本来の魔力譲渡よりも、こうして体液を媒介に取り込ませることでほぼ十の魔力を回復させてやることができる。その効果は原液のポーションに匹敵して、錬金術師で原液ポーションに慣れているティアですら酔わせることができることを実証済みだった。

 おそらく、トトナは原液を知らないのだろう。流通している薄めたポーションしか知らないはずのトトナは、はじめてのハイ状態に目を瞬かせながら、戸惑った。

「さて、完全な回復まであと五回くらいか?」
「ま、待って……もういい。これ以上はーーんんッ!?」
「はい、一回目」

「はぁ……はぁ……も、ダメ……んッ、ッ!」
「二回目」

「……許して……はぁ……ん、んっ」
「三回目」

「はぁ……はぁ……んんっ、んくっ」
「四回目」

「んっ……はぁ……はぁ……ん、んんっ……♡」
「五回目」

 五回終わる頃には、トトナは目を虚にして俺の唾液を飲まされることに抵抗は無くなっていた。
 もはや協力はそっちのけで、トトナとも愛し合うこともやぶさかではなくなってきたのだが、レイチェルとは頑張って一線を超えないように耐えているのにそれはどうなのかとも思う。

「終わった……」
「あっ、もう少し回復できそうだから最後にもう一回するぞ」
「い、要らない。もう要らない、ぃ……んんッ♡」

 最後に許容量を超えた魔力を譲渡すると、限界まで回復することができたようだ。
 トトナは俺に両手を押さえつけられて、下で覆い被されながら息を荒くして、眠たそうに目を閉じかけていた。
 たぶん、魔力回復が気持ちよすぎて、その暖かさに眠気を誘われた結果だ。ティアとする時は、性的刺激を与えながらなのでこうはならないが……一線を越えなければ大丈夫か。

 俺はトトナの両手を頭の上に持ってこさせて、片手で押さえつける。残った方の手で、眠たそうにするトトナの服を脱がせようと、スカートのチャックを下ろしてから剥ぎ取った。

「……え」

 上に、制服とその上からローブを羽織ったまま、トトナの下半身は白のティーバックとハイソックスだけの格好になってしまった。

「だ、ダメ。このローブ着れなくなるから、そこだけは……だめ……」
「……そういえば、処女しか着れないローブだったな」

 別に、処女を奪うつもりではなかったのだが、泣きそうな声で止められると、勘違いさせた俺の非は認めなければならなかった。

 しかし正直言って、このローブを着るメリットは俺が協力者になる以上ほとんどないに等しい。
 魔力の自然回復量を高める効果があるが、確か聖教の信仰力を魔力に変える衣装を参考に作られた魔道具だったはずだ。
 だが俺の場合は魔力を完全に回復させることができる。

 ……まぁ、まだ信頼が足りていないということだろう。

「ローブが着れなくなることはしないから安心しろ」
「……何するの?」
「本当は、丹田に近いほうが効率がいいんだが……ま、今日のところはちょっとした体験だけでも十分か」

 トトナが逃げられないように、お腹の上に負担をかけない程度に体重を乗せて上半身に着ている制服を全て脱ぐ。

 半裸の状態で、今度はトトナの服をはだけさせて、小さな魔法使いを下着姿にした。
 胸はふっくらと育ちはじめの果実のようにが初々しくも主張している。見た感じだとレイチェルよりは育っているのか……? レイチェルとは婚約者としてなるべく自重した結果、キスをしながら胸を揉みしだくくらいに留めているので、やはり触ってみないと分かりそうもない。

「触ってもいいか?」
「なんで触るの……?」
「? トトナが気持ちよくなるから」
「……ならない」
「なら試してみるしかないな」

 俺はそっぽを向いて、両手が解放されても律儀に手を頭の上に残し続けているトトナの胸に手を伸ばした。

「……んっ」

 ふにゅっとした感触が下着越しに手に伝わるが、揉むだけの量にはまだ足りていない。
 しばらくトトナの胸を弄り続けてもいいが、どうせなら、もっと直で感じたくなった。

「ッや、やぁ……!? だ、め……ッ」
「おお……これがトトナの胸か」

 ふにふにと、手から滑りそうなすべすべの肌ざわり、そしてなにより、ティアやエリノーラよりも小さな乳首が、人差し指と中指の間で擦るたびに硬くなっていく。
 我慢できなくなり、俺はトトナの小さな胸を隠す下着を上にずらして、その正体を見た。

「だ、ダメっ」

 トトナがついに両手を使って胸を隠すが、涙目になっているそんな状況こそ、俺の興奮は強くなってしまう。

「ほら、手を退けろ」
「いやっ、だ、ダメなの」

 無理矢理手を退かして今度こそ、至近距離から、ツンと上に向いた薄い桜色の先端を見た。
 トトナは観念したようで、大人しく胸を曝け出した状態で、耳を真っ赤に充血させながら、すまし顔でそっぽを向く。

「もう……好きにしていい」

 自棄になったか。
 とはいえ、許可されたのだ。存分に可愛がってやらないと、気持ちよくしてやるという言葉に嘘をつくことになる。

「なら、お言葉に甘えて」

 両胸に手を当てて、人差し指を立てる。
 円を描く意識で痛くならないようにじっくりと揉みほぐしながら、先端を弾いては撫で、刺激を加え続けた。

「はっ……んっ……あ”ッ♡」
「可愛いぞトトナ」

 喘ぎ始めたトトナにトドメを刺すべく、俺はトトナの胸に顔を落として、柔らかな胸を口いっぱいに含んだ。

「ん”ーーッ♡」

 ちゅうううッ、と吸い付いた。それから口を離して、舌全体を使って舐め上げたり、ほじくったりして、綺麗な白い肌を俺の唾液で汚したあと、反対の胸も同じように汚す。

 もちろん、空いている乳首は、周りを指でなぞったり、直接指の腹で転がして刺激したりして、快楽を途切れさせない。

「はっ♡ はーっ♡ はぁ……♡」

 乳首責めが終わる頃にはすっかりトトナも快楽で昂ぶりきっていた。
 相手がティアやエリノーラならこのまま挿入までするのだが、今日は趣向が違う。

「どうだトトナ、気持ち良かったろ」
「……これに、なんの意味があるの?」
「まぁ、気分を高めるくらいの意味しかないな。あとは本番の前の準備だな……それじゃ、本題に移るか」

 俺はトトナの上から退いて、ズボンのファスナーを下ろした。トトナは相変わらず寝転がったまま起き上がろうとせず、小さな胸を上下させて息を整えていた。
 よくよく見れば、乳首周りに俺が吸った後がついていて、背徳感が込み上げてくる。

 仕込みは万全。トトナを一気に性体験に慣れさせることが出来たし、何より俺の股間の雄棒がそびえ勃たせるのが本当の狙いだった。

 下着一枚、その中から突き出すように主張するイチモツに向けて魔法をかける。
 唱えるのはいつもとは違う。リブートを元に俺が編み出したオリジナル。

「《避妊/ブースト》」

 本来、一時的なバフ効果を与えるはずの《強化/ブースト》の完全上位互換。
 精子を代償にして得る対価は、俺の精液を媒介にして吸収したものにリブートと同じ効果を与えるというもの。

 流石に、自身を強化するよりも多くの工程を挟むことで成長率が大幅に下がってしまったのだが、それでも破格の効果に変わりはなかった。

 仮にリブートを広めたとすれば、いつどこで王族に牙を剥く強者が生まれるかわからないが、《避妊/ブースト》さえあれば、俺の裁量で広がる範囲を決定することができる。

 トトナも、どのような魔法が使われているのか分からないまま効果を得るのだから、これは師事ではなく、協力というテイを保つことができるし、完全な流出を抑えている。

 知られた以上もうトトナの未来はどんなことがあろうと決定しているので、開き直ったとも言えるだろう。

 口封じももちろんするが、それ以上に、トトナはもう俺のものだ。そうするというエゴを貫く所存である。
 そしてなによりもーー

「トトナ、『一番すごい魔法使いになる』約束のために頑張ると言ったが、その言葉に嘘偽りはないか……?」
「……うん。レイチェルとの約束は絶対に守る。アリスにも、もう負けたくない」
「そうか……なら、頑張って掴み取れ。そして俺の精子を飲んでみろ。ーーそうすればトトナは、今よりずっと強くなれる」

 そう言って俺はトトナを起こして、その手を俺の股間に誘導した。
 何を言っているのか理解したらしいトトナが、下着の中ではちきれんばかりに膨れ上がったそれを見て息を呑み、誘導した小さか細い指がゆっくりと伸ばされた。

「ここから精子が出るの……?」
「そうだ」
「……どうやって飲むの?」
「頑張って小さい口で頬張ればいい」
「……本当に魔力が増えるの?」
「自分で視て確認しろ」

 トトナの手が、俺の下着を下ろしてーー脈動する肉棒がバネが反動する様にぶんっと跳ね上がった。
 驚いて顔を下げたトトナだったが、俺がそのまま下着を脱ぐと、天井へ向かってそそり立つモノを、躊躇なく掴み取った。

「あついし……かたい」
「トトナの手はひんやりしてるし、小さいな」

 感想を言い合いながら、ティーバックとハイソックスだけのトトナが全裸の俺の股間に顔を近づけて、頭頂部を見せた。

 俺はトトナの頭に手を置いて優しく撫でる。そうしている間に、剥き出しになった亀頭にトトナの息が吹きかかった。
 まるで猫のように体を小さく畳む姿が小動物のように愛らしく見えてきた。そんな彼女にこれから俺の雄棒を咥えさせようとしている。背徳感による興奮も一入だった。

「……」
「……どうしたんだ?」
「はじめは舐めたらいいの……?」
「やり方なんて決まってないから好きにすればいい……だけど、トトナは初めてだからな。教えながら実践するか」

 俺の肉棒を握りながら顔を上げて聞いてくるトトナの頬に手のひらを当てる。猫の顎を撫でるように下から撫でると、くすぐったそうに首を振って逃げようとした。

「まずは、そうだな。飴を舐めるように先端を舐めてくれ」
「……ん。わかった。やってみる」

 トトナは言われてからすぐに、肉棒を口元に向けるようにしてから、舌先を出してぺろぺろと舐め始めた。

「ん……いいぞ……気持ちいいぞトトナ」

 ペチャ、くちゅ、と音を立てて、ぼーっとした目で一心に舐め続けるトトナの頭を撫で続ける。

「じゃあ次は、口の中に咥えてみろ。歯が当たらないようにゆっくりな」
「……ん」

 トトナは言われた通りに、唇から触れさせて、歯が当たらないようにゆっくりと俺のイチモツを咥え込んでいった。
 小さな口では、先端を含むので精一杯だったらしい。トトナの口内の生暖かさに新鮮味を覚えながら、次の指示はどうしようかと逡巡する。

「次はそうだな……唇で噛むようにしてそのあと、ストローでジュースを飲むように吸い込んでくれ」
「ん……あむはむ……んっ、ちゅうッ……ふッ……ちゅぱっ、ちゅッ」
「くっ……いいぞ、そのまま手でもしごいてみてくれ」
「わふぁっは」

 俺の肉棒を咥えながら、トトナは先端をチロチロと舐める。そのまま両手を使って咥えきれない竿の部分を細指で圧迫して、ちょうどいい刺激で上は下へと動かし始める。トトナには案外資質があったのか、もしかすると、ほとんど毎朝ご奉仕してくれるエリノーラと遜色ないだけの快楽が生まれて、射精まで秒読みだった。

「んッ、んむっ……んぅ……ちゅ、ちゅる、ちゅぱ」
「もう……ッ、出すぞ。俺の精液ちゃんと飲めよトトナ。そうすれば魔力量が上がるからな……!」

 気がつけば俺は、トトナの頭に両手を置いて、腰を振っていた。先端よりももっと深く入っているが、トトナは柔軟に対応して、奉仕の手を止めずに俺をじっと観察するように見つめている。

「ーー射精るッ!」

 俺はそんなトトナの意気込みを買って、トトナのために、小さな口の中で射精した。

 びゅッ、と一度に大量の精子を吐き出して、トトナが目を見開いて頬をいっぱいに膨らませた。
 だが、当然一度だけで終わるわけがなく、びゅるるるるるッとトトナの口内に追加の精子が流し込まれた。

「っ、んん”……ッ!?」

 本音を言えばもっと射精できるのだが、もはや口に入り切らず、竿を伝ってこぼれ落ちているので一旦止めてしまう。なのでビンビンになっている愚息はそのままなのだが、トトナが粘っこい白濁をどうにかして、音を立てながらごくり頼み込んだのを見て声をかける。

「ん……んくっ…………はぁっ」
「よく頑張ったなトトナ。トトナの奉仕が上手かったから張り切って出しすぎた。それで、俺の精液を飲んだ感想はどうだった?」
「……精子って普通は甘いの……?」
「いや? 飲んだことないから分からないが苦いらしいぞ」

 エリノーラも精飲をするとき、しんどそうだった。
 苦くてその上粘っこくて、それでもいつも飲んでくれているエリノーラから強い愛を感じている。
 それにしても、トトナの質問はどういうことだろうか。

「まさかトトナは俺の精液が甘く感じたのか……?」
「うん……ちょっとだけ美味しかった」

 少し照れた様子で、トトナが俺の竿を伝って溢れている白濁をみる。そして、何も言わずに、俺の股間にもう一度顔を埋めて、溢れた白濁を舐めとるようにぺろぺろと舌を伸ばして舐め始めた。

 急な態度の軟化を感じて少し疑問も感じるのだが、まさか《避妊/ブースト》によって精液の味が変質したのか?
 しかもそれがトトナの好みの味だったから……いや、それだけではなさそうだ。

「ん……綺麗になった」

 満足そうにするトトナの頭を撫でて、まぁ、検証は後でもいいかと思った。

「ありがとう。それより確認しなくていいのか」
「確認……?」
「何のために精飲したのか忘れたのか」

 トトナが、「あ」と間抜けな言葉をこぼしてから体を起こして、さっきまで俺の肉棒を握っていた手を見る。

 上半身は相変わらず裸で下半身も白のティーバックとハイソックスだけ。華奢だが触り心地良さそうな綺麗な身体を隠さない姿は、一時的な慣れから来るものだろうか。

 まだ二つ年下で13らしいが、俺の雄棒は余裕でこの幼い少女を抱けると判定して、萎えることを知らなかった。

 そうこうして、トトナの身体を視姦していると、表情の変化こそ少なかったがいい、トトナが驚きの表情をしたのだと感じ取った。

「魔力が……増えてる」
「当然だが、成功だな。どの程度増えてるんだ?」
「たぶん……前の1%くらい。魔力指数なら……300?」
「そうか」

 リブートだと、俺は一回の射精で10000上がる。丹田付近でない口からの吸収にしても、成長効率がまだまだ低すぎるか。完成度としては口からでもせめて1000は増えるくらいにしたいところだが……まぁ、それはおいおい近づければいい話だ。

「……それで、まだ“残ってる”けどトトナはどうしたい?」

 俺は、トトナに問いかけた。
 トトナはピンと立ち上がった俺の雄棒を見て、無言でもう一度尻を突き出すように体を折り畳んで顔を近づけてきた。

「魔力を増やすためだから」

 そんな言い訳を残して、今度は竿の根元にある玉袋から怒張の先端までなぞるように舐め上げた。











 それから、トトナが俺の精子を二回ほど抜いたところで、授業の終わりを知らせるチャイムが響いた。
 渋々行為を終わらせて、お互いにその場で制服を着るのだが、保健室でついさっきまで裸を見せていたトトナが一枚ずつ肌を隠すように着ていくところを見ると、妙に興奮した。
 そういえば、トトナは弟らや婚約者のレイチェルの幼馴染なんだとふと思い返せば、秘密でトトナを調教しているように思えて背徳感が増す。

 着替えを済ませて、また寝台で同じように隣に座って手を握りあう。次の講義に出席する前に、色々と話をまとめることにした。

「これからも俺の秘密を守り続ける限り俺はトトナの協力者としてアリス嬢に勝つための手伝いをする。監視者を一人つけるが、目に見える範囲にうつらないし護衛の役割も兼ねさせるからあまり気にする必要はないが……もし露見しそうにになればすぐに口封じするだろうから気をつけろよ」
「うん」
「魔力が足りなくなったら俺に声をかけろ。すぐに回復させてやる。アリスに勝つための特訓は……そうだな、トトナが訓練室を借りて俺を呼べ。よっぽどの用事がない限り、二人きりで面倒を見てやる。遠慮なく俺を頼れ」
「分かった」
「あと、今回は口から吸収させたが、“下”からの方が成長効率は良いはずだ。まぁアブノーマルだが処女のままでいたいなら、後ろでも理論上は可能だ。もし興味があるならそれなりに準備しておけよ。俺もまだしたことないが、痛いとは聞いたことがあるからな」
「……うん」

 トトナは俺の言葉に全て頷き、時折何が楽しいのか繋いだ小さな手をにぎにぎとして、俺の手の感触を確かめていた。
 別に不快というわけではないので、俺もにぎにぎと握り返すと、トトナが俺のことを不思議そうに見つめてくる。

 俺は最後に、そんなトトナの顎をつまんでから、唇を押し当てキスをした。

「ん……それじゃ、戸締りは任せたぞ」

 そう言い残して、俺は先に寝台から降りて、保健室を出た。
 これからレイモンドの小言を聞かされると思えば憂鬱だが、あの未成熟の美しい少女を味わえたのだから結果オーライである。これからどうやってトトナを俺のものにしようか考えながら、俺は教室を目指して廊下を歩いた。





「忍者、トトナの護衛ともしあの魔法・・・・・・について口が滑りそうだと判断したら口封じを頼む。ああ、あと、初等生のアリスという少女を探ってくれ。バックボーンから魔法のことまで全部だ」
「御意」


『テシア、聞こえてるか?』
『お、王子……!? なんで講義に出席しなかったの。レイモンドが「最近欠席しすぎじゃないか」って怒ってたよ』
『あー、レイモンドには後輩の相談に乗ってたって伝えておく。それよりテシアに頼みがある』
『頼み……?』
『初等生のアリスという少女について、俺の名前を出さずに聞き込みをしてくれ。対象者はお前の判断に任せる』
『いつまで?』
『なるべく早く。できれば三日後までには終わらせろ。不自然になりすぎない程度で頼む』
『分かった。……その、三日後の夜に王子の部屋に行くから』
『いや、別に部屋に来なくても』……って切られたか」

 まぁ、良い。
 忍者を通して、俺の護衛隊が各自の術で情報を集めるだろう。生徒側からの情報はついでのようなものだからテシアに任せておいて問題はない。

 それにしてもーー愛しの婚約者はどこまで分かっているのやら。

『たぶん、ジルクニール様も気にいると思いますよ?』


 その言葉の真意が、どこにあるのか。
 偶然だとしても、末恐ろしい。
 好奇心の塊のような、あの少女の期待に応えられるのだろうか。

 ……まぁ、性行為に持ち込めば負ける気がしないので、最悪そっちで制御しよう。

 そんなことを考えながら、未来の義兄の説教を避けるために、教室の外で話しかけてくる令嬢たちの相手をしながら講義が始まるギリギリの時間を見計らった。
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みんなの感想(1件)

たかし
2022.02.09 たかし

めちゃくちゃ自分好みの小説です!
続き楽しみにしてます!

解除

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