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春より参られし桜華様!
第53話 妖楼温泉街編(10) 水楽祭ノ章
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熱湯系のお遊びで波乱万丈な展開をもたらした桃馬たちは、進行役でもある直人からの提案でプール施設に赴く事になった。
すると桃馬たちは、かなり散らかった"灼熱湯ノ間"を片付けた後、既にギールとシャルが遊んでいるプール施設へと向かった。
道中、誰かの声が微かに聞こえる中、桃馬たちがプール施設の入口に着くと、その声は更に大きくなり、シャルと思われる元気の良い声が響き渡っていた。
これに対して桃馬たちは、響き渡るシャルの声を頼りに、ギールとシャルの元へと向かった。
少し足速に歩くと、目の前に大きな水鉄砲を二丁持ったシャルが、大きな岩に目掛けて無双していた。
シャル「ほれほれ~、出て来るのだギール!男として情けないぞ~!」
ギール「っ、くっ。("連戦連敗"で凹んだシャルにハンデを与えたとは言え…、こんな威力クソ弱な竹筒じゃあ、まともに戦えないな。)」
シャル「ほれほれ~、来ないのなら余からいくぞ~?」
完全に勝機を掴んだシャルは、水鉄砲を乱射しながら"ジリジリ"と距離を詰め始めた。
シャル「ギ~ィ~ル~♪あ~そ~ぼ~♪」
ここまで敗北に直結する慢心を繰り広げて来たシャルは、ここでも込み上げて来る慢心を抑えきれずに、再び敗北フラグを立ててしまった。
これに対してギールは、自慢の嗅覚と、無駄な圧を掛けながら迫り来る"マヌケ"なシャルの声を頼りに、シャルの立ち位置を分析していた。
ギール「はぁはぁ、クンクン……(近いな…、どうせシャルの事だ。少し距離を縮めたから、すぐに回り込んで来るだろうな。)」
シャル「の~、ギ~ルよ~♪今すぐ顔立ちの良いお主の顔に…、大量の水を"ぶっかけ"てやろうぞ~♪にしし~、そこなのだっ!」
ギールとの距離を十分に縮めたシャルは、瞬時に岩の裏側へと回り込むと、満面な笑みを浮かべながら水鉄砲を乱射した。
だがしかし、そこにはギールの姿はなかった。
シャル「ぬわっ!?い、いない!?ど、どこなのだ!?」
ギール「ここだよ。」
シャル「っ、そこか、って、なっ!?」
背後から聞こえたギールの声に素早く振り向いたシャルではあったが、既にシャルの目の前には、竹筒が向けられていた。
ギール「俺の勝ちだ。」
完全にシャルの不意を突いたギールは、手に持っている竹筒を"グイッ"と押し込み、驚いたシャルの顔に少ない水をぶっかけた。
シャル「ぬわぁっ!?あぅ……うぅ、また負けたのだ。」
ギール「はぁ、全く…、声を上げながら近寄るバカがいるかよ。あれじゃあ、自分の位置を教えてる様なものだろ?」
シャル「うぅ、だ、だって……、勝てると思ったのだ。」
ギール「だとしてもだ。そもそも、さっきから勝てそうな勝負は、全部その慢心したせいで負けてるじゃないか?これじゃあ、どんなハンデを与えても勝てないぞ?」
シャル「むぅ、それならギールが、もっと手加減すれば良い事なのだ!」
ギール「ここまで十分過ぎるほど手を抜いて来たと思うけどな……。」
シャル「た、足りないのだ!お兄ちゃんならもっと妹に優しくするべきなのだ!」
ギール「や、優しくって……、おいおい、シャルは仮にも魔王だろ?この程度のお遊びで駄々を捏ねていいのかよ。」
シャル「ぐぬぬ、だ、駄々を捏ねては……むっ、あぁっ!桃馬たちなのだ!」
ギール「っ、勝てないからって、今度は不意打ちか?」
シャル「ほ、本当なのだ!?」
今のシャルならやりかねない不意打ちを警戒したギールは、少し目を細めながら疑いの眼差しを向けた。
シャル「うぅ、も、もういいのだ~!」
ギールに疑いの眼差しを向けられたシャルは、堪らず桃馬たちの元へ走り出した。
ギール「あ、おい!プールサイドは走るな…って、あ、あれ、本当だ。」
まさかの本当の事に、ギールは思わず戸惑った。
これに対して疑われたシャルは、か弱い妹感を出しながら、桃馬たちの元へと駆け寄った。
シャル「ふぇーん、桜華~、小頼~、ディノ~!」
桜華「あっ、先にシャルちゃんが気づいた様ですね~♪」
小頼「そうだけど、何か泣いてない?」
ディノ「えっ、っ!?」
シャルの様子を見たディノは、慌ててシャルの元へと駆け寄った。
ディノ「シャル様!?どうしたのですか!?」
シャル「うぅ~、ディノ~、ギールがいじめるのだ~!」
ディノ「に、兄さんが?」
シャル「うむ、そうなのだ。余は本当の事を言っているのに、ギールは疑いの目で睨んで来るし……、終いには……、余の顔に水を"ぶっかけ"たのだ~!」
少しでも味方を増やそうと、シャルは大声で要点だけを伝えた。
そのため、"ぶっかけ"と言うワードに反応した一部は、ギールに対して軽蔑な視線を向け始めた。
桃馬「"ぶっかけ"って、あ、あの駄犬…、とうとう本性を出しやがったな。例え義理だとしても、大切な妹にそんな卑猥な事をするなんて……。」
ジェルド「桃馬、これで分かっただろ?ギールは、シスロリの変態だ。今の内に叩き潰した方がいいぞ。」
小頼「おぉ~、シスロリか~。うーん、これはもしかしたら売れるかも。」
リフィル「嫌がるシャルちゃんの顔に水をぶっかけて興奮するギール…、ごくり、やった事は腐れ外道ですけど、これはこれで…、た、たまりまひぇんね♪」
鬼畜の疑いをかけられているギールは、桃馬とジェルドから軽蔑の眼差しを向けられ、更に小頼とリフィルからは、色々な期待を込められた眼差しを向けられていた。
一方の冷静組みはと言うと、言葉の足りないシャルの言葉に惑わされずに現状を把握していた。
憲明「いやいや、ただ水鉄砲で遊んでいただけだろう?」
晴斗「はぁ、この四人には水鉄砲が見えていないのか。」
憲明と晴斗が冷静にツッコむ中、中立な立場にいる桜華及び、直人、リール、エルンの四人は、心の中で気まずい思いをしていた。
するとそこへ、要らぬ誤解を作るシャルの言動に慌てたギールが、大声を上げながら走って来る。
ギール「こらシャル!また根も葉もない事を言うな!?」
シャル「ひゃう…。」
ギールの威圧に恐れた振りをするシャルは、可愛い声を出しながらディノの背後に隠れた。
ギール「おい、ディノ!今すぐにシャルを差し出せ!」
ディノ「ま、まあまあ、落ち着いてください兄さん。シャル様の話を聞けば、兄さんにも至らぬ所があったのでは無いですか?」
ギール「っ、そ、それは…、ま、まあ、確かに…、桃馬たちが来た事を疑ったけどよ……。」
ディノ「それなら、兄さんにも非があるのではないですか?」
ギール「うぐっ、うぅ……、だ、だけどよ。最後の水を"ぶっかけ"たなんて、一方的に俺がいじめた様じゃないか?そもそも、俺とシャルは水鉄砲で遊んでいただけなんだぞ?」
ディノに対しては、何故か強気に言い出せないギールは、シャルに対する小さな不満をディノに訴えた。
ディノ「水鉄砲?うーん、さっきシャル様が楽しそうに水を飛ばしていた"あれ"ですか?」
ギール「そうそう、しかも俺の武器を見ろ。ハンデとは言え、こんなにも貧弱な竹筒を使っていたんだぞ?」
ギールは誤解の無い様に、使用していた竹筒を見せながら自分の言い分を述べた。
ディノ「た、確かに、シャル様が使っていたのと比べると、かなり劣悪ですね。」
ギール「だ、だろ!?」
ディノ「うーん、なるほど、となるとシャル様?少し話を盛りましたね?」
シャル「あぅ…、そ、それは…。」
ディノに見破られたシャルは、返す言葉もなく再び可愛い声を漏らした。
何とも実の兄妹にも見える微笑ましい三人の光景であるが、するとそこへ、シャルの言葉を下手に真に受けた二人の"バカ"が、ギールの肩を掴むなり尋問を始めた。
ジェルド「おい、ギール?本当は水じゃなくて、シャルに何を"ぶっかけ"たんだ?」
ギール「はっ?いきなりお前は何を言っているんだ?」
ジェルド「ふっ、簡単に言えばこうだ…。竹筒の中に入っていた水を何かしらの液体とすり替え…、そしてシャルの顔にぶっかける事によって、込み上げる欲情を発散させていたんじゃないか?」
桃馬「鬼畜だな…。」
ギール「っ、な、何を言っているんだお前ら!?そんなクソみたいな事をする訳ないだろ!?」
桃馬&ジェルド「本当かな~?」
ギール「本当だよ!?そ、それよりジェルドは、鼻が良いから分かるだろ!」
流石の悪ふざけに怒ったギールは、狼としての強い眼差しを向けながら反論した。
桃馬「うっ、す、すまない。流石に"からかい"過ぎた。」
ジェルド「ちっ、陥れるチャンスだったのに……。」
珍しく怒ったギールの様子に、思わず"からかい"過ぎてしまったと感じた桃馬は素直に謝った
しかしその一方で、忠犬としてのライバルが減らせるチャンスだと思っていたジェルドは、ぬか喜びと言う結果に悔しがっていた。
すると桃馬は、罪滅ぼしのためかギールの肩を持ち始めるなり、シャルに対して注意を呼び掛ける。
桃馬「こほん、えーっと、シャル?いくらギールに 水鉄砲で負けたからと言って、陥れる行為は駄目だぞ?」
シャル「うぅ、ごめんなのだ。」
直人「……。(おいおい、酷い掌返しだな。正直、見るに堪えないぞ。)」
正直、桃馬に対して"お前が言うな"と言いたい直人であるが、要らぬ事を言って巻き込まれたくないため、様子を見ながら心の中でツッコんだ。
しかし、水鉄砲っと言う話が上がる中で、直人は全員で遊べる候補として前向きに考え始めた。
直人「うーん、水鉄砲か…。」
晴斗「どうした直人?新しい遊びでも思い付いたか?」
直人「あぁ、水鉄砲を使った遊びなら熱湯の時よりも、男女平等かつ安心して楽しめるかなって。」
晴斗「うーん、水鉄砲か~。確かにそれなら、熱湯の時よりも安心して楽しめそうだね。」
直人「晴斗もそう思うだろ?水鉄砲なら少し濡れるだけで済むだろうし、酷く落ち込む様な事態にもならないと思うからな。」
晴斗「あはは、それは大いに言えてるね。そうと決まれば、個人戦とチーム戦のどっちにするんだ?」
直人「まあ、ここは無難に、三、四チーム程作って総当り戦のデスマッチかな。」
晴斗「ふむふむ、悪くは無いね。後は、桃馬たちの反応を見てからルール決めだね。」
その後、直人と晴斗からの提案により、プール施設全域使った水鉄砲合戦が決まった。
更に、勝負のスタンスは、チーム戦の総当りデスマッチとなった。
そして気になるチームであるが、四組程出来上がった。
チーム編成。
一班、桃馬、桜華、憲明、リフィル
二班、ジェルド、小頼、※ハンデあり
三班、ギール、シャル、ディノ ※ハンデあり
四班、直人、晴斗、エルン、リール
人数が少ない二班と三班には、ハンデが与えられ、二班のジェルドと小頼、そして三班のシャルに対して、水鉄砲の二丁所持が許された。
その後。
各班が所定の位置に着くと、勝負開始の空砲が放たれるのであった。
※一班視点より。
桃馬「さて、これからどうしようかな。」
憲明「そうだな。ここは先に、二丁持ちのジェルドと小頼を探して叩くか?」
桃馬「うーん、そうだな。二人が無双して来る前に早めに叩いた方がいいな。そうすれば、二人の装備も奪えるからな。」
桃馬と憲明が作戦を立てる中、一方の桜華とリフィルは、どこから攻めて来るか分からない緊張感からか、"わくわく"感と"ドキドキ"感を味わっていた。
桜華「ね、熱湯の時とは、また違う緊張感ですね。」
リフィル「うんうん!どこから襲われるか分からないこの緊張感……、はぁはぁ、本当にたまりゃにゃいよね♪」
緊張感の温度差が激しい二人の様子に、既に危険なオーラを漂わしているリフィルに対して、桃馬は一抹の不安を抱えていた。
桃馬「…な、なあ、憲明?なんかリフィルの様子が、さっきから変な気がするんだけど気のせいかな?」
憲明「えっ?うーん、そうかな?俺には…、いつものリフィルに見えるけどな?」
普段の日常生活において、リフィルのスケベな一面を間近で見ている憲明に取っては、今のリフィルは気にするレベルではなかった。
桃馬「いやいや!?どう見ても興奮状態だろ!?」
憲明「うーん、多少興奮はしているけど、リフィル見たいに、四六時中"はぁはぁ"しているエルフはそう珍しくはないだろ?」
桃馬「…憲明。そのセリフだけは、絶対に他のエルフには言うなよ?(こりゃあ、班編成ミスったかもな。)」
若干違和感を感じさせる憲明の発言に、ここへ来て不安の念に駆られた桃馬は、心の中で組んでしまった事を後悔するのであった。
するとそこへ、突如近くから誰かの叫び声が響いた。
?「ぐあぁぁっ!!?」
桃馬「っ!?」
憲明「ん?」
桜華「ふえっ!?い、今の声は!?」
リフィル「うーん、今のは"ジェルド"かしら?」
聴覚に優れているリフィルは、尖った長い耳をピコピコと動かしながら叫んだ声の主を予想した。
桃馬「ちっ、もうこの近くで戦闘しているのか。」
憲明「うーん、もし近くで戦闘が起きているのなら…、ある意味これは、漁夫れるチャンスかもな。」
桃馬「っ、そ、そうだな。ここで漁夫の利を成功させれば、戦局を有利に進められるな。」
その後、桃馬たちは漁夫の利を成功させるため、早速"ジェルド"と思われる声がした方向へと急ぐのであった。
すると桃馬たちは、かなり散らかった"灼熱湯ノ間"を片付けた後、既にギールとシャルが遊んでいるプール施設へと向かった。
道中、誰かの声が微かに聞こえる中、桃馬たちがプール施設の入口に着くと、その声は更に大きくなり、シャルと思われる元気の良い声が響き渡っていた。
これに対して桃馬たちは、響き渡るシャルの声を頼りに、ギールとシャルの元へと向かった。
少し足速に歩くと、目の前に大きな水鉄砲を二丁持ったシャルが、大きな岩に目掛けて無双していた。
シャル「ほれほれ~、出て来るのだギール!男として情けないぞ~!」
ギール「っ、くっ。("連戦連敗"で凹んだシャルにハンデを与えたとは言え…、こんな威力クソ弱な竹筒じゃあ、まともに戦えないな。)」
シャル「ほれほれ~、来ないのなら余からいくぞ~?」
完全に勝機を掴んだシャルは、水鉄砲を乱射しながら"ジリジリ"と距離を詰め始めた。
シャル「ギ~ィ~ル~♪あ~そ~ぼ~♪」
ここまで敗北に直結する慢心を繰り広げて来たシャルは、ここでも込み上げて来る慢心を抑えきれずに、再び敗北フラグを立ててしまった。
これに対してギールは、自慢の嗅覚と、無駄な圧を掛けながら迫り来る"マヌケ"なシャルの声を頼りに、シャルの立ち位置を分析していた。
ギール「はぁはぁ、クンクン……(近いな…、どうせシャルの事だ。少し距離を縮めたから、すぐに回り込んで来るだろうな。)」
シャル「の~、ギ~ルよ~♪今すぐ顔立ちの良いお主の顔に…、大量の水を"ぶっかけ"てやろうぞ~♪にしし~、そこなのだっ!」
ギールとの距離を十分に縮めたシャルは、瞬時に岩の裏側へと回り込むと、満面な笑みを浮かべながら水鉄砲を乱射した。
だがしかし、そこにはギールの姿はなかった。
シャル「ぬわっ!?い、いない!?ど、どこなのだ!?」
ギール「ここだよ。」
シャル「っ、そこか、って、なっ!?」
背後から聞こえたギールの声に素早く振り向いたシャルではあったが、既にシャルの目の前には、竹筒が向けられていた。
ギール「俺の勝ちだ。」
完全にシャルの不意を突いたギールは、手に持っている竹筒を"グイッ"と押し込み、驚いたシャルの顔に少ない水をぶっかけた。
シャル「ぬわぁっ!?あぅ……うぅ、また負けたのだ。」
ギール「はぁ、全く…、声を上げながら近寄るバカがいるかよ。あれじゃあ、自分の位置を教えてる様なものだろ?」
シャル「うぅ、だ、だって……、勝てると思ったのだ。」
ギール「だとしてもだ。そもそも、さっきから勝てそうな勝負は、全部その慢心したせいで負けてるじゃないか?これじゃあ、どんなハンデを与えても勝てないぞ?」
シャル「むぅ、それならギールが、もっと手加減すれば良い事なのだ!」
ギール「ここまで十分過ぎるほど手を抜いて来たと思うけどな……。」
シャル「た、足りないのだ!お兄ちゃんならもっと妹に優しくするべきなのだ!」
ギール「や、優しくって……、おいおい、シャルは仮にも魔王だろ?この程度のお遊びで駄々を捏ねていいのかよ。」
シャル「ぐぬぬ、だ、駄々を捏ねては……むっ、あぁっ!桃馬たちなのだ!」
ギール「っ、勝てないからって、今度は不意打ちか?」
シャル「ほ、本当なのだ!?」
今のシャルならやりかねない不意打ちを警戒したギールは、少し目を細めながら疑いの眼差しを向けた。
シャル「うぅ、も、もういいのだ~!」
ギールに疑いの眼差しを向けられたシャルは、堪らず桃馬たちの元へ走り出した。
ギール「あ、おい!プールサイドは走るな…って、あ、あれ、本当だ。」
まさかの本当の事に、ギールは思わず戸惑った。
これに対して疑われたシャルは、か弱い妹感を出しながら、桃馬たちの元へと駆け寄った。
シャル「ふぇーん、桜華~、小頼~、ディノ~!」
桜華「あっ、先にシャルちゃんが気づいた様ですね~♪」
小頼「そうだけど、何か泣いてない?」
ディノ「えっ、っ!?」
シャルの様子を見たディノは、慌ててシャルの元へと駆け寄った。
ディノ「シャル様!?どうしたのですか!?」
シャル「うぅ~、ディノ~、ギールがいじめるのだ~!」
ディノ「に、兄さんが?」
シャル「うむ、そうなのだ。余は本当の事を言っているのに、ギールは疑いの目で睨んで来るし……、終いには……、余の顔に水を"ぶっかけ"たのだ~!」
少しでも味方を増やそうと、シャルは大声で要点だけを伝えた。
そのため、"ぶっかけ"と言うワードに反応した一部は、ギールに対して軽蔑な視線を向け始めた。
桃馬「"ぶっかけ"って、あ、あの駄犬…、とうとう本性を出しやがったな。例え義理だとしても、大切な妹にそんな卑猥な事をするなんて……。」
ジェルド「桃馬、これで分かっただろ?ギールは、シスロリの変態だ。今の内に叩き潰した方がいいぞ。」
小頼「おぉ~、シスロリか~。うーん、これはもしかしたら売れるかも。」
リフィル「嫌がるシャルちゃんの顔に水をぶっかけて興奮するギール…、ごくり、やった事は腐れ外道ですけど、これはこれで…、た、たまりまひぇんね♪」
鬼畜の疑いをかけられているギールは、桃馬とジェルドから軽蔑の眼差しを向けられ、更に小頼とリフィルからは、色々な期待を込められた眼差しを向けられていた。
一方の冷静組みはと言うと、言葉の足りないシャルの言葉に惑わされずに現状を把握していた。
憲明「いやいや、ただ水鉄砲で遊んでいただけだろう?」
晴斗「はぁ、この四人には水鉄砲が見えていないのか。」
憲明と晴斗が冷静にツッコむ中、中立な立場にいる桜華及び、直人、リール、エルンの四人は、心の中で気まずい思いをしていた。
するとそこへ、要らぬ誤解を作るシャルの言動に慌てたギールが、大声を上げながら走って来る。
ギール「こらシャル!また根も葉もない事を言うな!?」
シャル「ひゃう…。」
ギールの威圧に恐れた振りをするシャルは、可愛い声を出しながらディノの背後に隠れた。
ギール「おい、ディノ!今すぐにシャルを差し出せ!」
ディノ「ま、まあまあ、落ち着いてください兄さん。シャル様の話を聞けば、兄さんにも至らぬ所があったのでは無いですか?」
ギール「っ、そ、それは…、ま、まあ、確かに…、桃馬たちが来た事を疑ったけどよ……。」
ディノ「それなら、兄さんにも非があるのではないですか?」
ギール「うぐっ、うぅ……、だ、だけどよ。最後の水を"ぶっかけ"たなんて、一方的に俺がいじめた様じゃないか?そもそも、俺とシャルは水鉄砲で遊んでいただけなんだぞ?」
ディノに対しては、何故か強気に言い出せないギールは、シャルに対する小さな不満をディノに訴えた。
ディノ「水鉄砲?うーん、さっきシャル様が楽しそうに水を飛ばしていた"あれ"ですか?」
ギール「そうそう、しかも俺の武器を見ろ。ハンデとは言え、こんなにも貧弱な竹筒を使っていたんだぞ?」
ギールは誤解の無い様に、使用していた竹筒を見せながら自分の言い分を述べた。
ディノ「た、確かに、シャル様が使っていたのと比べると、かなり劣悪ですね。」
ギール「だ、だろ!?」
ディノ「うーん、なるほど、となるとシャル様?少し話を盛りましたね?」
シャル「あぅ…、そ、それは…。」
ディノに見破られたシャルは、返す言葉もなく再び可愛い声を漏らした。
何とも実の兄妹にも見える微笑ましい三人の光景であるが、するとそこへ、シャルの言葉を下手に真に受けた二人の"バカ"が、ギールの肩を掴むなり尋問を始めた。
ジェルド「おい、ギール?本当は水じゃなくて、シャルに何を"ぶっかけ"たんだ?」
ギール「はっ?いきなりお前は何を言っているんだ?」
ジェルド「ふっ、簡単に言えばこうだ…。竹筒の中に入っていた水を何かしらの液体とすり替え…、そしてシャルの顔にぶっかける事によって、込み上げる欲情を発散させていたんじゃないか?」
桃馬「鬼畜だな…。」
ギール「っ、な、何を言っているんだお前ら!?そんなクソみたいな事をする訳ないだろ!?」
桃馬&ジェルド「本当かな~?」
ギール「本当だよ!?そ、それよりジェルドは、鼻が良いから分かるだろ!」
流石の悪ふざけに怒ったギールは、狼としての強い眼差しを向けながら反論した。
桃馬「うっ、す、すまない。流石に"からかい"過ぎた。」
ジェルド「ちっ、陥れるチャンスだったのに……。」
珍しく怒ったギールの様子に、思わず"からかい"過ぎてしまったと感じた桃馬は素直に謝った
しかしその一方で、忠犬としてのライバルが減らせるチャンスだと思っていたジェルドは、ぬか喜びと言う結果に悔しがっていた。
すると桃馬は、罪滅ぼしのためかギールの肩を持ち始めるなり、シャルに対して注意を呼び掛ける。
桃馬「こほん、えーっと、シャル?いくらギールに 水鉄砲で負けたからと言って、陥れる行為は駄目だぞ?」
シャル「うぅ、ごめんなのだ。」
直人「……。(おいおい、酷い掌返しだな。正直、見るに堪えないぞ。)」
正直、桃馬に対して"お前が言うな"と言いたい直人であるが、要らぬ事を言って巻き込まれたくないため、様子を見ながら心の中でツッコんだ。
しかし、水鉄砲っと言う話が上がる中で、直人は全員で遊べる候補として前向きに考え始めた。
直人「うーん、水鉄砲か…。」
晴斗「どうした直人?新しい遊びでも思い付いたか?」
直人「あぁ、水鉄砲を使った遊びなら熱湯の時よりも、男女平等かつ安心して楽しめるかなって。」
晴斗「うーん、水鉄砲か~。確かにそれなら、熱湯の時よりも安心して楽しめそうだね。」
直人「晴斗もそう思うだろ?水鉄砲なら少し濡れるだけで済むだろうし、酷く落ち込む様な事態にもならないと思うからな。」
晴斗「あはは、それは大いに言えてるね。そうと決まれば、個人戦とチーム戦のどっちにするんだ?」
直人「まあ、ここは無難に、三、四チーム程作って総当り戦のデスマッチかな。」
晴斗「ふむふむ、悪くは無いね。後は、桃馬たちの反応を見てからルール決めだね。」
その後、直人と晴斗からの提案により、プール施設全域使った水鉄砲合戦が決まった。
更に、勝負のスタンスは、チーム戦の総当りデスマッチとなった。
そして気になるチームであるが、四組程出来上がった。
チーム編成。
一班、桃馬、桜華、憲明、リフィル
二班、ジェルド、小頼、※ハンデあり
三班、ギール、シャル、ディノ ※ハンデあり
四班、直人、晴斗、エルン、リール
人数が少ない二班と三班には、ハンデが与えられ、二班のジェルドと小頼、そして三班のシャルに対して、水鉄砲の二丁所持が許された。
その後。
各班が所定の位置に着くと、勝負開始の空砲が放たれるのであった。
※一班視点より。
桃馬「さて、これからどうしようかな。」
憲明「そうだな。ここは先に、二丁持ちのジェルドと小頼を探して叩くか?」
桃馬「うーん、そうだな。二人が無双して来る前に早めに叩いた方がいいな。そうすれば、二人の装備も奪えるからな。」
桃馬と憲明が作戦を立てる中、一方の桜華とリフィルは、どこから攻めて来るか分からない緊張感からか、"わくわく"感と"ドキドキ"感を味わっていた。
桜華「ね、熱湯の時とは、また違う緊張感ですね。」
リフィル「うんうん!どこから襲われるか分からないこの緊張感……、はぁはぁ、本当にたまりゃにゃいよね♪」
緊張感の温度差が激しい二人の様子に、既に危険なオーラを漂わしているリフィルに対して、桃馬は一抹の不安を抱えていた。
桃馬「…な、なあ、憲明?なんかリフィルの様子が、さっきから変な気がするんだけど気のせいかな?」
憲明「えっ?うーん、そうかな?俺には…、いつものリフィルに見えるけどな?」
普段の日常生活において、リフィルのスケベな一面を間近で見ている憲明に取っては、今のリフィルは気にするレベルではなかった。
桃馬「いやいや!?どう見ても興奮状態だろ!?」
憲明「うーん、多少興奮はしているけど、リフィル見たいに、四六時中"はぁはぁ"しているエルフはそう珍しくはないだろ?」
桃馬「…憲明。そのセリフだけは、絶対に他のエルフには言うなよ?(こりゃあ、班編成ミスったかもな。)」
若干違和感を感じさせる憲明の発言に、ここへ来て不安の念に駆られた桃馬は、心の中で組んでしまった事を後悔するのであった。
するとそこへ、突如近くから誰かの叫び声が響いた。
?「ぐあぁぁっ!!?」
桃馬「っ!?」
憲明「ん?」
桜華「ふえっ!?い、今の声は!?」
リフィル「うーん、今のは"ジェルド"かしら?」
聴覚に優れているリフィルは、尖った長い耳をピコピコと動かしながら叫んだ声の主を予想した。
桃馬「ちっ、もうこの近くで戦闘しているのか。」
憲明「うーん、もし近くで戦闘が起きているのなら…、ある意味これは、漁夫れるチャンスかもな。」
桃馬「っ、そ、そうだな。ここで漁夫の利を成功させれば、戦局を有利に進められるな。」
その後、桃馬たちは漁夫の利を成功させるため、早速"ジェルド"と思われる声がした方向へと急ぐのであった。
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第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
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ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
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貧弱の英雄
カタナヅキ
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この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
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【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
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