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春より参られし桜華様!
第27話 ジャーナリストX(前編)
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この番組は、小頼商会の提供でお送りします。
3‥‥2‥‥1‥‥。
ジャーナリストX……平和な交流の果てへ……。
映果「さてさて、始まりましたジャーナリストX。今回勝手にお邪魔させてもらいました部活は、異世界へのロマンが溢れる部活だと言うのに、何故か部員が文化部程度の異種交流会を追ってみました。」
映果「えー、本とうさっ…、こほん、本資料映像は録画による物となりますので、映像を見ながら実況を重ねてお送り致します。」
映果「それでは、ジャーナリストXを放送する前に、本日の実況を務めさせて頂きます私し亀田映果と、特別ゲスト兼解説役の佐渡桃馬さんにお越し頂きました。桃馬さん、よろしくお願いします。」
桃馬「あ、よろしくお願いします……じゃねぇよ!?何だよこれは!?人を縛り付けて何を見せる気だ!? 」
映果に呼び出され、不覚にも小頼商会の同志たちによって眠らされた桃馬は、とある放送室で椅子に縛られながらモニターを見ていた。
放送室には、映果を始め小頼商会の息が掛かった放送部の生徒が十人ほど裏方に回っていた。
映果「何って、一昨日撮影した部活動の映像ですけど?」
桃馬「一昨日って、いつの間に撮ってたんだよ!?」
映果「まあまあ、それは機密事項って事で……ね。」
わざとらしく、自らの口元に人差し指を置くと不敵なドヤ顔を見せた。
桃馬「そんな機密事項なんて興味はねぇよ。早く解放しろ!」
映果「あれ~?良いのかな桃馬くーん?これは生放送だよ~?下手に喋ると誤解されちゃうからね??」
桃馬「なっ!?な、何でやつだ……。」
映果の言う通り、このふざけたジャーナリストXは、お昼休みを利用して学園全体に放送していたのであった。
更にもう一つ、映果の目的としては、異種交流会の後を追う事で、願わくばお宝映像としてデータに収める事を目的としていた。
映果「さて、気を取り直しまして、早速異種交流会のメンバー紹介から行きましょうか。」
桃馬「……はぁ、早く映像を流して終わってくれ。」
映果「何やらゲストの桃馬くんは、やる気が無いご様子ですが、ここは無視して先に進みます。それでは、部員の紹介です。テロップをどうぞ♪」
異種交流会部長
新潟時奈
奴隷
佐渡桃馬
村上憲明
湯沢京骨
健全女子
柿崎桜華
長岡小頼
リフィル・ナーシェル
破天荒女子
ルシア
シャル・イヴェルア
駄犬
ジェルド・ヴラント
ギール・フォルト
純粋生徒
ディノ
エルゼ・ヴラント
顧問
吉田鷹幸
桃馬「おい、なんだこれは……。」
映果「見ての通り紹介テロップですが?」
桃馬「いや、そこ聞いてるんじゃないんだよ。俺が言ってるのは、この悪意に満ちたテロップは何なんだって話しよ。」
映果「それでは、少し早送りします。」
桃馬「おいこら、話を聞けって。」
椅子に縛られ拘束されているが、これでも解説役として起用されている桃馬だが、運営権に口出し出来る程の力はなかった。
映果「さてさて、今ご覧頂いているのは、冒険者の始まりの街と言われている"ルクステリア"ですね。そう言えば桃馬さんは、以前の採取クエスト対決で、見事な大敗をしたと伺ってますが、その時の感想を一言お願いします。」
桃馬「……し、シンプルに最悪であったとしか言えませんね。それより、もう解放して貰ってもいいですか?」
映果「なるほど、感極まる感情に涙を流したと……。」
桃馬「……何か、俺が思っているのと違う捉え方をしてないか?」
映果「まさか~、そんな事ないですよ♪現に桃馬くんは、泣かされていたではないですか~♪
桃馬「…っ、ど、どさくさに紛れて二つの意味を込めやがって……。」
表向きの表現では、如何にも嬉しい感情で涙を流していた風に聞こえるが、実際のところ、ジェルドとギールの美男子に弄ばれる事に絶望した、桃馬の悲痛な想いを裏で表現されていた。
映果「さて、無駄話はここまでにして、早速この番組をご覧の皆さんには、純愛カップル堂々の一位に君臨する。サキュバスのルシアさんと、大妖怪"がしゃどくろ"の末裔である京骨さんの営みシーンからスタートして、本編をお届けしたいと思います。」
桃馬「そんなのお届けするな!てか、何撮ってるんだよ!」
プチュン!
ここは、駆け出し冒険者の街"ルクステリア"。
個性豊かな人々が集まり、また現実世界からの出入りも激しい賑やかな街である。
そんな賑やかな街を活動拠点にしている異種交流会は、ルクステリアの街にあるギルドの中でも、最も多くの変わり者が所属している"カオス"ギルドに足を運んでいた。
どうやら今回、異種交流会が受けるクエストは、採取クエストではなく、狩猟クエストの様であった。
狩猟クエスト "肉屋の依頼"
ペペ 五頭。
ペペペンポ 一頭。
肉屋の主人から一言。
保存していたペペ肉を保存管理のミスで腐らせてしまいした。明後日には大きなパーティーの予約が入っているため、多くのぺぺ肉が必要になるため困り果てています。ギルドの方々にはどうか、ペペ肉とペペペンポの上質な肉の採取をお願いします。
桃馬「うわぁ……まじかよ。」
憲明「ペペはともかく……ペペペンポもかよ。」
狩猟クエストに少し不満でもあるのか、桃馬と憲明は表情を引きつりながら嫌そうにしていた。
一方、今回のクエストで狩猟本能を掻き立たせるジェルドとギールは、ヨダレを垂らしながら張り切っていた。
ジェルド「ペペか、じゅる……。」
ギール「……ごくり。ここで桃馬に良いところを見せつけて、ご褒美に"なでなで"を…、はぁはぁ……。」
二匹の狼に取って今回のクエストは、物心ついた時から馴染みのあるクエストであった。
そのため、先の暴走行為で地に落ちた桃馬の信頼を回復させるため、あわよくば二匹の好物である、ぺぺ肉までも食べてやろうと尻尾をブンブンと振り回していた。
桜華「ペペとペペペンポ……、面白い名前ですね♪」
リフィル「そうそう♪でもね、面白い名前だけど結構手強いんだよ♪」
桜華「そ、そうなのですか?」
桃馬「あぁ、特にぺぺペンポはかなり手強い。」
憲明「うぅ、あんなのを狩るくらいなら、その辺の狂獣でも狩っていた方がましだよ。」
二人の男たちは体育座りをしながら、乗る気の無い声で訴えた。
小頼「もう~、二人共しっかりしてよね?そもそも手強い以前に、あの時桃馬がぺぺペンポの尻尾を踏みつけたのが悪いんでしょ?」
桃馬「そ、そうだけどよ~。あんな闘牛以上に危険な生物は、尻尾を踏む以前に危険だよ。」
憲明「うんうん、特に俺の場合は、ぺぺペンポの角が危うく穴に刺さりそうだったからな。」
珍しくやる気を出さない二人の惨めな姿に、桜華は二人の過去に何が起きたのか気になっていた。
ピッ!
映果「ここで実況ターイム!さぁさぁ、桃馬くん?ちょっと情けないシーンで止めて申し訳ないのですが~。早速、質問良いですか?」
桃馬「うん、非常に悪意がありますね?申し訳ないと思うなら、もう少し先に進めてはどうかな?」
映果「え~っと、今回は狩猟クエストの様ですけど、このペペロンチーノ風の狩猟対象はどんな生き物なのですか?」
桃馬「……。(どうせ無視するって事は、分かっていたよ。)」
番組の進行についての物言いは、全く受け付けない映果の姿勢に、吐き口の無い桃馬は心の中でツッコんだ。
桃馬「はぁ、俺と憲明が怯えていたぺぺペンポとは、言わばぺぺの上位種に当たる生物です。その姿は、闘牛とマンモスを足し合わせた様な感じであり、ペペロンチーノとは全く関係ありません。」
映果「ちょっと何を言っているのか分からないですね。」
桃馬「何でだよ!?あと、そのボケはやめろ。色々アウトな気がするから!」
映果「一部不適切な表現がありました。心よりお詫び申し上げます。」
桃馬「全責任を俺に擦り付けないでもらえますか?」
映果「えーっと、それではここで、ぺぺとぺぺペンポの詳細の映像がある様なので、そちらをご覧ください。」
桃馬「っ、結局映像があるなら質問すんなよ!?時間の無駄だろ!?」
完全に映果の掌で踊らされている桃馬は、厄介な無限映果ゾーンに嵌っていた。
そのため今の桃馬は、どんなツッコミを入れても、全て独り言の様な扱いを受けてしまうため、現状生殺しに近い扱いを受けていた。
そして、桃馬の話を聞き流し続けた映果は、ぺぺとぺぺペンポの生態映像を流し始めた。
するとここで、トラブルが発生した。
ザーーザーー。(砂嵐)
映果「あれ?おかしいな……?」
桃馬「おいおい故障か?それなら、VTRを見せた方が早いだろう?」
?「あっ…………あ、……んっ……。」
映果「おっ、繋がったかな?」
砂嵐の中で、途切れ途切れだが、女性と思われる淫靡な声が聞こえた。
桃馬「……おい。」
?「……こつ♪……も……と……。」
聞き覚えのある声が聞こえた瞬間。
桃馬は、かなり危ない生態映像が流れてると確信した。
桃馬「おぉい!ストップ!」
桃馬は、普段使わない魔力を使って縄を解くと、瞬時に映果が持っているリモコンを取り上げ、危険な映像を止めた。
桃馬「はぁはぁ、映果……、今のは何だ?」
映果「そ、それでは続きをどうぞ~♪」
ピッ!
吉田「ほらほら二人とも?今回の狩猟クエストには人手がいるんだ。この際、狩りには参加しなくて良いから、せめてクエスト後の運搬くらいは手伝ってくれないか?」
桃馬&憲明「……は、はぁ~い。」
いつも陽気で明るい二人とは思えない程の姿に、桜華は二人をここまで追い込んだ、ペペペンポについて、どんな生物なのか気になるのであった。
その一方で、聞き覚えのない生物に興味を持ったシャルは、一般的知識が豊富なディノに尋ねていた。
シャル「ディノよ?ペペとペペペンポとは何なのだ?」
ディノ「ふぇ、ぺぺとぺぺペンポですか?えっと、あっ、そうか、シャル様の時代では呼び名が違いましたね。えーっと、確か、"ビービー"と"ビビレルボ"と言えば分かりますか?」
シャル「うむ、それなら知っているのだ。確か、魔界でも食用肉として食べられてい生物であったな?」
ディノ「はい、仰る通りです。魔界とこの地での呼び方は違っていますが、示している生物は同じですね。」
シャル「ふむ、なるほどな。しかし今思えば、向こうの世界で食した肉と比べたら、ぺぺとやらの肉は獣臭い上に、硬いイメージであったな。」
ディノ「そ、そうなのですか?わ、私はそのまま溶かしてしまうのであまり気にしていませんでしたが……。」
シャル「まあ、スライムの姿で食せばそうなるのだ。」
ディノ「す、すみません。」
シャル「ふむぅ、それにしてもだ。やはり、この世界の食文化は、"異世界"より劣っているのだ。」
ディノ「ま、まあ、この世界の食文化レベルは、"異世界"の五百年以上前の食文化と同じ見たいですからね。」
シャル「ふむぅ、そう考えると……、この世界より向こうの方が住みやすいのだ。」
ディノ「シャル様……、それはあまり言わない方が。」
シャル「冗談なのだ。さぁ、今回のクエストやらは、余の力を見せつけるチャンスであるから頑張るのだ!」
ディノ「はい、シャル様!」
エルゼ「おぉ~。」
シャル「およ?今日はエルゼもやる気なのだな♪」
ディノ「え、エルゼ様、無理はしないでくださいよ?」
エルゼは首を縦に振り、シャルの右手を掴んだ。
シャル「ふっふっ、エルゼは甘えん坊よな~♪うむうむ、可愛い"もふもふ"なのだ~♪」
ディノ「……まるで姉妹の様ですね♪」
意外にもお姉ちゃんらしい事をするシャルに、ディノも思わず微笑んだ。
ルシア「クスッ♪みんなやる気あるわね♪」
京骨「…………。」
ルシア「私たちも負けられないわね♪」
京骨「…………。」
今日もルシアに妖気を吸われ、のっけから力尽きた京骨は、情けなくもルシアの背中にもたれかかりながら"ぐったり"としていた。
ルシア「もう~♪しっかりしなよ♪」
愛する京骨の反応がない寂しさからか。
ルシアはハート型の尻尾の先端に隠し持っていた、紫色に発光している針を出しては、サキュバス特性の元気が出るフェロモンを京骨の背中にぶち込んだ。
京骨「はぐっ!?る、ルシア!?」
ルシア「おはよう京骨♪」
京骨「はぁはぁ、また死ぬところだったよ……。」
ルシア「ごめんごめん♪ほら、狩猟クエストが始まるから、準備してよね♪」
京骨「っ、お、おぉ……。」
ピッ!
桃馬「……。(なるほど、さっきの砂嵐の映像がこれか。)」
映果「もし良かったら、機材のクリーニングをかけて最初から見ますか?それとも、買いますか?」
桃馬「か、買わないよ。そ、それより、危ない会話は出来る限りカットした方が良いよ?」
映果「ふっふっ~。ご心配には及びませんよ。ジャーナリストにもルールがありますからね。」
桃馬「……信用できませんね。」
映果「さてさて、ここで疑いの目を向けられている所で、テープの交換が来たようです♪中編、後編になるか分かりませんが、次のテープでお会いしましょう。」
桃馬「もう中途半端でも良いので、これで終わって欲しいですね。」
この番組は、小頼商会の提供でお送りしました。
3‥‥2‥‥1‥‥。
ジャーナリストX……平和な交流の果てへ……。
映果「さてさて、始まりましたジャーナリストX。今回勝手にお邪魔させてもらいました部活は、異世界へのロマンが溢れる部活だと言うのに、何故か部員が文化部程度の異種交流会を追ってみました。」
映果「えー、本とうさっ…、こほん、本資料映像は録画による物となりますので、映像を見ながら実況を重ねてお送り致します。」
映果「それでは、ジャーナリストXを放送する前に、本日の実況を務めさせて頂きます私し亀田映果と、特別ゲスト兼解説役の佐渡桃馬さんにお越し頂きました。桃馬さん、よろしくお願いします。」
桃馬「あ、よろしくお願いします……じゃねぇよ!?何だよこれは!?人を縛り付けて何を見せる気だ!? 」
映果に呼び出され、不覚にも小頼商会の同志たちによって眠らされた桃馬は、とある放送室で椅子に縛られながらモニターを見ていた。
放送室には、映果を始め小頼商会の息が掛かった放送部の生徒が十人ほど裏方に回っていた。
映果「何って、一昨日撮影した部活動の映像ですけど?」
桃馬「一昨日って、いつの間に撮ってたんだよ!?」
映果「まあまあ、それは機密事項って事で……ね。」
わざとらしく、自らの口元に人差し指を置くと不敵なドヤ顔を見せた。
桃馬「そんな機密事項なんて興味はねぇよ。早く解放しろ!」
映果「あれ~?良いのかな桃馬くーん?これは生放送だよ~?下手に喋ると誤解されちゃうからね??」
桃馬「なっ!?な、何でやつだ……。」
映果の言う通り、このふざけたジャーナリストXは、お昼休みを利用して学園全体に放送していたのであった。
更にもう一つ、映果の目的としては、異種交流会の後を追う事で、願わくばお宝映像としてデータに収める事を目的としていた。
映果「さて、気を取り直しまして、早速異種交流会のメンバー紹介から行きましょうか。」
桃馬「……はぁ、早く映像を流して終わってくれ。」
映果「何やらゲストの桃馬くんは、やる気が無いご様子ですが、ここは無視して先に進みます。それでは、部員の紹介です。テロップをどうぞ♪」
異種交流会部長
新潟時奈
奴隷
佐渡桃馬
村上憲明
湯沢京骨
健全女子
柿崎桜華
長岡小頼
リフィル・ナーシェル
破天荒女子
ルシア
シャル・イヴェルア
駄犬
ジェルド・ヴラント
ギール・フォルト
純粋生徒
ディノ
エルゼ・ヴラント
顧問
吉田鷹幸
桃馬「おい、なんだこれは……。」
映果「見ての通り紹介テロップですが?」
桃馬「いや、そこ聞いてるんじゃないんだよ。俺が言ってるのは、この悪意に満ちたテロップは何なんだって話しよ。」
映果「それでは、少し早送りします。」
桃馬「おいこら、話を聞けって。」
椅子に縛られ拘束されているが、これでも解説役として起用されている桃馬だが、運営権に口出し出来る程の力はなかった。
映果「さてさて、今ご覧頂いているのは、冒険者の始まりの街と言われている"ルクステリア"ですね。そう言えば桃馬さんは、以前の採取クエスト対決で、見事な大敗をしたと伺ってますが、その時の感想を一言お願いします。」
桃馬「……し、シンプルに最悪であったとしか言えませんね。それより、もう解放して貰ってもいいですか?」
映果「なるほど、感極まる感情に涙を流したと……。」
桃馬「……何か、俺が思っているのと違う捉え方をしてないか?」
映果「まさか~、そんな事ないですよ♪現に桃馬くんは、泣かされていたではないですか~♪
桃馬「…っ、ど、どさくさに紛れて二つの意味を込めやがって……。」
表向きの表現では、如何にも嬉しい感情で涙を流していた風に聞こえるが、実際のところ、ジェルドとギールの美男子に弄ばれる事に絶望した、桃馬の悲痛な想いを裏で表現されていた。
映果「さて、無駄話はここまでにして、早速この番組をご覧の皆さんには、純愛カップル堂々の一位に君臨する。サキュバスのルシアさんと、大妖怪"がしゃどくろ"の末裔である京骨さんの営みシーンからスタートして、本編をお届けしたいと思います。」
桃馬「そんなのお届けするな!てか、何撮ってるんだよ!」
プチュン!
ここは、駆け出し冒険者の街"ルクステリア"。
個性豊かな人々が集まり、また現実世界からの出入りも激しい賑やかな街である。
そんな賑やかな街を活動拠点にしている異種交流会は、ルクステリアの街にあるギルドの中でも、最も多くの変わり者が所属している"カオス"ギルドに足を運んでいた。
どうやら今回、異種交流会が受けるクエストは、採取クエストではなく、狩猟クエストの様であった。
狩猟クエスト "肉屋の依頼"
ペペ 五頭。
ペペペンポ 一頭。
肉屋の主人から一言。
保存していたペペ肉を保存管理のミスで腐らせてしまいした。明後日には大きなパーティーの予約が入っているため、多くのぺぺ肉が必要になるため困り果てています。ギルドの方々にはどうか、ペペ肉とペペペンポの上質な肉の採取をお願いします。
桃馬「うわぁ……まじかよ。」
憲明「ペペはともかく……ペペペンポもかよ。」
狩猟クエストに少し不満でもあるのか、桃馬と憲明は表情を引きつりながら嫌そうにしていた。
一方、今回のクエストで狩猟本能を掻き立たせるジェルドとギールは、ヨダレを垂らしながら張り切っていた。
ジェルド「ペペか、じゅる……。」
ギール「……ごくり。ここで桃馬に良いところを見せつけて、ご褒美に"なでなで"を…、はぁはぁ……。」
二匹の狼に取って今回のクエストは、物心ついた時から馴染みのあるクエストであった。
そのため、先の暴走行為で地に落ちた桃馬の信頼を回復させるため、あわよくば二匹の好物である、ぺぺ肉までも食べてやろうと尻尾をブンブンと振り回していた。
桜華「ペペとペペペンポ……、面白い名前ですね♪」
リフィル「そうそう♪でもね、面白い名前だけど結構手強いんだよ♪」
桜華「そ、そうなのですか?」
桃馬「あぁ、特にぺぺペンポはかなり手強い。」
憲明「うぅ、あんなのを狩るくらいなら、その辺の狂獣でも狩っていた方がましだよ。」
二人の男たちは体育座りをしながら、乗る気の無い声で訴えた。
小頼「もう~、二人共しっかりしてよね?そもそも手強い以前に、あの時桃馬がぺぺペンポの尻尾を踏みつけたのが悪いんでしょ?」
桃馬「そ、そうだけどよ~。あんな闘牛以上に危険な生物は、尻尾を踏む以前に危険だよ。」
憲明「うんうん、特に俺の場合は、ぺぺペンポの角が危うく穴に刺さりそうだったからな。」
珍しくやる気を出さない二人の惨めな姿に、桜華は二人の過去に何が起きたのか気になっていた。
ピッ!
映果「ここで実況ターイム!さぁさぁ、桃馬くん?ちょっと情けないシーンで止めて申し訳ないのですが~。早速、質問良いですか?」
桃馬「うん、非常に悪意がありますね?申し訳ないと思うなら、もう少し先に進めてはどうかな?」
映果「え~っと、今回は狩猟クエストの様ですけど、このペペロンチーノ風の狩猟対象はどんな生き物なのですか?」
桃馬「……。(どうせ無視するって事は、分かっていたよ。)」
番組の進行についての物言いは、全く受け付けない映果の姿勢に、吐き口の無い桃馬は心の中でツッコんだ。
桃馬「はぁ、俺と憲明が怯えていたぺぺペンポとは、言わばぺぺの上位種に当たる生物です。その姿は、闘牛とマンモスを足し合わせた様な感じであり、ペペロンチーノとは全く関係ありません。」
映果「ちょっと何を言っているのか分からないですね。」
桃馬「何でだよ!?あと、そのボケはやめろ。色々アウトな気がするから!」
映果「一部不適切な表現がありました。心よりお詫び申し上げます。」
桃馬「全責任を俺に擦り付けないでもらえますか?」
映果「えーっと、それではここで、ぺぺとぺぺペンポの詳細の映像がある様なので、そちらをご覧ください。」
桃馬「っ、結局映像があるなら質問すんなよ!?時間の無駄だろ!?」
完全に映果の掌で踊らされている桃馬は、厄介な無限映果ゾーンに嵌っていた。
そのため今の桃馬は、どんなツッコミを入れても、全て独り言の様な扱いを受けてしまうため、現状生殺しに近い扱いを受けていた。
そして、桃馬の話を聞き流し続けた映果は、ぺぺとぺぺペンポの生態映像を流し始めた。
するとここで、トラブルが発生した。
ザーーザーー。(砂嵐)
映果「あれ?おかしいな……?」
桃馬「おいおい故障か?それなら、VTRを見せた方が早いだろう?」
?「あっ…………あ、……んっ……。」
映果「おっ、繋がったかな?」
砂嵐の中で、途切れ途切れだが、女性と思われる淫靡な声が聞こえた。
桃馬「……おい。」
?「……こつ♪……も……と……。」
聞き覚えのある声が聞こえた瞬間。
桃馬は、かなり危ない生態映像が流れてると確信した。
桃馬「おぉい!ストップ!」
桃馬は、普段使わない魔力を使って縄を解くと、瞬時に映果が持っているリモコンを取り上げ、危険な映像を止めた。
桃馬「はぁはぁ、映果……、今のは何だ?」
映果「そ、それでは続きをどうぞ~♪」
ピッ!
吉田「ほらほら二人とも?今回の狩猟クエストには人手がいるんだ。この際、狩りには参加しなくて良いから、せめてクエスト後の運搬くらいは手伝ってくれないか?」
桃馬&憲明「……は、はぁ~い。」
いつも陽気で明るい二人とは思えない程の姿に、桜華は二人をここまで追い込んだ、ペペペンポについて、どんな生物なのか気になるのであった。
その一方で、聞き覚えのない生物に興味を持ったシャルは、一般的知識が豊富なディノに尋ねていた。
シャル「ディノよ?ペペとペペペンポとは何なのだ?」
ディノ「ふぇ、ぺぺとぺぺペンポですか?えっと、あっ、そうか、シャル様の時代では呼び名が違いましたね。えーっと、確か、"ビービー"と"ビビレルボ"と言えば分かりますか?」
シャル「うむ、それなら知っているのだ。確か、魔界でも食用肉として食べられてい生物であったな?」
ディノ「はい、仰る通りです。魔界とこの地での呼び方は違っていますが、示している生物は同じですね。」
シャル「ふむ、なるほどな。しかし今思えば、向こうの世界で食した肉と比べたら、ぺぺとやらの肉は獣臭い上に、硬いイメージであったな。」
ディノ「そ、そうなのですか?わ、私はそのまま溶かしてしまうのであまり気にしていませんでしたが……。」
シャル「まあ、スライムの姿で食せばそうなるのだ。」
ディノ「す、すみません。」
シャル「ふむぅ、それにしてもだ。やはり、この世界の食文化は、"異世界"より劣っているのだ。」
ディノ「ま、まあ、この世界の食文化レベルは、"異世界"の五百年以上前の食文化と同じ見たいですからね。」
シャル「ふむぅ、そう考えると……、この世界より向こうの方が住みやすいのだ。」
ディノ「シャル様……、それはあまり言わない方が。」
シャル「冗談なのだ。さぁ、今回のクエストやらは、余の力を見せつけるチャンスであるから頑張るのだ!」
ディノ「はい、シャル様!」
エルゼ「おぉ~。」
シャル「およ?今日はエルゼもやる気なのだな♪」
ディノ「え、エルゼ様、無理はしないでくださいよ?」
エルゼは首を縦に振り、シャルの右手を掴んだ。
シャル「ふっふっ、エルゼは甘えん坊よな~♪うむうむ、可愛い"もふもふ"なのだ~♪」
ディノ「……まるで姉妹の様ですね♪」
意外にもお姉ちゃんらしい事をするシャルに、ディノも思わず微笑んだ。
ルシア「クスッ♪みんなやる気あるわね♪」
京骨「…………。」
ルシア「私たちも負けられないわね♪」
京骨「…………。」
今日もルシアに妖気を吸われ、のっけから力尽きた京骨は、情けなくもルシアの背中にもたれかかりながら"ぐったり"としていた。
ルシア「もう~♪しっかりしなよ♪」
愛する京骨の反応がない寂しさからか。
ルシアはハート型の尻尾の先端に隠し持っていた、紫色に発光している針を出しては、サキュバス特性の元気が出るフェロモンを京骨の背中にぶち込んだ。
京骨「はぐっ!?る、ルシア!?」
ルシア「おはよう京骨♪」
京骨「はぁはぁ、また死ぬところだったよ……。」
ルシア「ごめんごめん♪ほら、狩猟クエストが始まるから、準備してよね♪」
京骨「っ、お、おぉ……。」
ピッ!
桃馬「……。(なるほど、さっきの砂嵐の映像がこれか。)」
映果「もし良かったら、機材のクリーニングをかけて最初から見ますか?それとも、買いますか?」
桃馬「か、買わないよ。そ、それより、危ない会話は出来る限りカットした方が良いよ?」
映果「ふっふっ~。ご心配には及びませんよ。ジャーナリストにもルールがありますからね。」
桃馬「……信用できませんね。」
映果「さてさて、ここで疑いの目を向けられている所で、テープの交換が来たようです♪中編、後編になるか分かりませんが、次のテープでお会いしましょう。」
桃馬「もう中途半端でも良いので、これで終わって欲しいですね。」
この番組は、小頼商会の提供でお送りしました。
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