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春より参られし桜華様!
第20話 野望と希望
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地味な採取クエストの作業効率を上げるため、小頼が提案した班対抗の勝負は、明らかに桃馬を陥れるための罠であった。
勝負時間は、九十分。
本来、班のメンバーが密集して採取作業をするところだが、今の桃馬に至っては、性欲に飢えたジェルドとギールの二匹の駄犬から穴とプライドを守るため、"ルコの実"一点狙いで一人行動をしていた。
そして、残り時間四十五分……。
未だに桃馬は、密林地帯を駆け回りながら"ルコの実"を探していた。
一応、ギルドから配布された植物マニュアルを参考にしながら捜索はしているが、流石に希少なルコの実だけあって、植生条件が揃っていても、必ずそこにあるとは限らなかった。
更に不運な事に、桃馬が道中で見つけたのは薬草だけで、他の万漢にんじん、シゴロダケ、カルミ花の根は、一つも見つけられないでいた。
桃馬「くそぉ、どこを探しても薬草しか見つからない。他の素材も見つからないし……、はぁ、やっぱりルコの実は、希少なだけあって見つからないな。うぅ、このままじゃ俺…、あの二匹の淫獣に……。」
桃馬の妄想。
ギール「さぁ、桃馬~♪そろそろ無駄な抵抗はやめて、大人しく力を抜いて諦めたらどうだ~。」
ジェルド「そうだぞ桃馬?それに、お前のここも既に硬くして期待してるじゃないか。」
桃馬「ざ、ざけんな。このクソ淫獣が……、誰のせいでこんな……っ!?こ、これ以上触ったら許さんぞ。」
ギール「ふっ、はぁはぁ、相変わらず立場が分かってないご主人様だな……。そんな、ご主人様には……、はぁはぁ、体で思い知らせてやらないとな!」
ジェルド「はぁはぁ、俺はその口うるさい口でも黙らせてやろうかな~。」
桃馬「っ、お、おい、お前ら何脱いで……、お、おいコラやめ…。」
想像するだけでも、身の毛もよだつ程の地獄絵図だ……。
しかし、あの二匹の性格を考えると、五割くらい有り得る展開である。
イケメンの駄犬に、好き放題弄ばれる……。
腐女子に取っては、ご褒美展開かもしれないが、桃馬に取っては地獄以上に、男としてのプライドをズタズタにされると言う、一種の処刑場であった。
背筋を凍らせる程の焦りを感じ始めた桃馬は、地獄の様な展開から逃れるため、残り時間は少ないが、希望を信じてルコの実の捜索を再開するのであった。
一方その頃、桃馬が必死でルコの実を捜索している裏では……。
なんと、ジェルドとギールが結託して"ルコの実狩り"をしていたのであった。
ギール「クンクン……こっちか。」
ジェルド「おっ、あったあった!」
二匹の駄犬は、桃馬が向かう所を先回りしては、自慢の鼻を使って順調にルコの実を採取していた。
シャル「何してるのだギール?」
エルゼ「お兄ちゃん……、みんなと一緒に探さないの?」
桃馬と言う、目先の欲望に目を眩んだジェルドとギールは、互いの妹を背中に"おぶさった"まま、ルコの実の採取に夢中になっていた。
ギール「ん?何ってシャル?見ての通り、ルコの実の採取だけど?」
シャル「ルコの実……?そんなのを探してるのか?」
採取作業が始まるまで、ギールの背中で"ふて寝"をしていたシャルは、今回引き受けたクエストの依頼品を何一つ知らなかった。
ギール「"そんなの"とは何だよ?これはな、沢山取れば取るほど、桃馬を好き放題命じられる可能性を秘めた引換券なんだぞ?」
シャル「むっ、桃馬を好き放題?うわぁ、ギールってそんな趣味があったのか、と言う事は、あそこで気持ち悪い顔をしながら採取しているジェルドもそうなのだな。」
ギールの変態的な性癖を知ったシャルは、少し呆れながら軽蔑すると、近くでギールと同じオーラを漂わせるジェルドに視線を向けた。
ジェルド「はぁはぁ、桃馬を好き放題できる大チャンスだ…、はぁはぁ、薬草よりもルコの実だ…、桃馬には取らせないぞ。」
ギールと同様に駄犬属性を拗らせ、邪な表情を浮かべながらルコの実を探し出すジェルドの姿は、まさに淫獣であった。
エルゼ「…わふぅ。(お兄ちゃんが、"夜のお兄ちゃん"になっちゃってるよ……。う~、恥ずかしいよ~。)」
駄犬モード全開な兄の姿に、複雑な思いを寄せる純粋無垢なエルゼは、そんな兄の背中にしがみつきながら顔を埋めて動揺していた。
もはや、どうにもならないバカ兄たちの醜態に、危機感を覚えたシャルは、心の中で完全に呆れていた。
シャル(このバカ兄たちは、もはやダメなのだ……。今からでもエルゼとジェルドを引き剥がさないと、エルゼが黒い淫気に飲まれてしまうのだ……。早いところディノと合流して三人で居た方が安全なのだ。)
その後シャルは、突然ギールの背中から降りるなり、エルゼを身柄を要求するのであった。
その後、二十分経過。
ジェルドとギールの妨害を受けている事など、夢にも思っていない桃馬は、休憩する事なく目に付いた素材を採取しながら、ルコの実を探していた。
ここまでの桃馬の成果。
薬草 十束
シゴロダケ 五個
気がつけば、シゴロダケのノルマはクリアしていた。
桃馬「はぁはぁ、やばい…、全然見つからない。シゴロダケだけノルマ達成しても意味ないのに~。」
残り時間は二十五分。
地味な成果に落胆した桃馬は、その場に腰を下ろすと悔しさと焦りを噛み締めていた。
桃馬「ちくしょう……。これじゃあ、ジェルドとギールの玩具(おもちゃ)になってしまう。……はぁ、このマニュアルも録なこと書いてないな。」
ダメ元でギルドから配布された植物マニュアルを開くも、ルコの実に関しては、実の形と生息条件しか書かれていないため、そもそもルコの実が、どんな風に実らせているのか分からないため、ド素人の桃馬が見つけ出すには、かなり厳しい条件であった。
もはや万事休すと感じた桃馬は、そのまま目を閉じながら大の字になると、突如脳裏にとある記憶が蘇った。
蒼紫「っ、桃馬、見ろ見ろ!ルコの実だぞ!」
桃馬「ルコの実?」
蒼紫「あぁ!異世界の市場でもあまり出回らない珍しい植物の実だよ!」
桃馬「ふぅ~ん、珍しいって言ってもら何だかクルミ見たいな形だね?それっておいしいの?」
蒼紫「うーん、美味しいと聞かれると分からないけど、俺が読んでいた本には、薬草より苦くて、食用と言うよりは、漢方として重宝されているらしいよ。」
桃馬「薬草より苦くて、漢方として重宝……、そ、それじゃあ、薬草よりも効くって事だよね!?」
蒼紫「そうだ!これでお母さんの風邪も直ぐに良くなるよ!」
桃馬「おぉ~、お母さん元気になるね!」
蒼紫「あはは、そうだな♪おっ、桃馬向こうを見てみろ薬草が沢山あるぞ!ついでに沢山積んで帰ろう。」
桃馬「うん!沢山積んでお母さんの風邪を治そう~♪」
桃馬(そう言えば昔、母さんが普通の風邪で寝込んでる時、兄さんが難病と勘違いして、二人でこっそり異世界に行っては、薬草を積んでたっけな。)
桃馬(帰ったらむちゃくちゃ怒られて、最後は抱き締められて母さん泣いてたっけな。)
桃馬(そうだあの時兄さんは、ルコの実をどこで見つけたんだっけな。)
桃馬に取って窮地に陥っているのにも関わらず、不思議と過去の思い出を振り返っていると、ルコの実のヒントを思い出した。
桃馬「確か、あの時兄貴が見つけたルコの実は、地面に埋もれた"大きな石"と地面の境目に生えた小さい植物だったかな。それで、クルミの様な形をした実が二つ、葉っぱの影に隠れていた様な……。ん?」
体を起こしながら過去を振り返る桃馬は、何となく辺りをキョロキョロと見渡した。すると近くに地面に半分ほど埋まった"大きな石"があった。
桃馬は、まさかと思いながらダメ元で"大きな石"に近寄り、手当り次第探して見ると、なんと見覚えのある"クルミの様な形をした実"が、二つ出て来たのであった。
桃馬「っ、こ、これはもしかして……。」
桃馬はその実を摘み取り、すぐに植物マニュアルを開いて見比べてると、間違いなくルコの実であると判明した。
桃馬「おぉ~!こ、これで、助かるー!よ、よし、早速みんなの所に戻ろう。」
諦めかけていた中での奇跡の発見に、桃馬は拳を天に掲げて喜んだ。
その後、直ぐにルコの実を袋に入れた桃馬は、急いで桜華たちがいるポイントへ向けて、気分良く走り出したのであった。
すると、桃馬が去ってから間もなく、茂みから桃馬の様子を伺っていた二匹の影が、目を光らせながら桃馬の後を追うのであった。
一方その頃。
ジェルドとギールの醜態ぶりに呆れてしまったシャルは、危機感を感じて自らギールの背中から降りると、すぐにエルゼの身柄を要求し、何とか駄犬の背中から引き剥がす事に成功していた。
その後、二匹の枷でも外れたか。
ジェルドとギールは、目の色を変えてどこかへと走り去ってしまった。
ポツンと取り残された二人の幼女。
エルゼは、"ポカン"としたまま硬直し、シャルはため息をしながら呆れていた。
取り敢えずシャルは、エルゼの手を取り序盤で"はぐれた"ディノの気配を追って合流した。
魔力は失ったシャルでも、気配は強く感じる様であった。
シャル「はぁ、全くギールとジェルドは、余とエルゼが降りた途端、どこかに行ってしまうから困ったものだ。しかも、か弱いエルゼちゃんを残して、なりふり構わず去るとは、非常に許せんのだ。」
ディノ「あ、あはは、ま、まあ、小頼さんが勝負の話を持ちかけた時点で、既に興奮していらっしゃいましたからね。」
シャル「むっ?そうなのか?」
ディノ「はい、尻尾と耳が直立してましたからね。」
シャル「ふむ、あの二人がその様な事をした時は、桃馬を狙っている訳だな。」
エルゼ「うぅ、お兄ちゃん…お兄ちゃん。」
普段エルゼの前では、"かっこいい"お兄ちゃんを演じていたジェルドであったが、目先の欲望に負けて堕落し、情けない姿を見せてしまった兄に対して、エルゼはショックを受けて弱々しい声で"お兄ちゃん"と連呼していた。
今の話で拗らせてしまったと思ったディノは、慌てて今にも闇落ちしそうなエルゼに声をかけた。
ディノ「エルゼちゃん?大丈夫ですか?」
エルゼ「きゃふっ!?」
ディノの声に驚いたエルゼは、シャルの後ろへ回り込んだ。
シャル「ふぅ、ディノよ?今のエルゼは酷く動揺しているのだ。その様な堅苦しい声のかけ方では、内気なエルゼに取って逆効果だぞ?」
ディノ「っ、も、申し訳ありません。で、ではどうしたら?」
シャル「ふぅ。まぁ見ておれ。なあ、エルゼよ?少しお主をもふらせよ。」
エルゼ「ふぇ?」
シャル「今のエルゼが動揺している気持ちは良く分かるが、そのまま動揺し続けても、絶対に気分は晴れないのだ。だから、まずはお主の可愛らしい笑顔を見せよ~♪」
兄のジェルドが見せてしまった醜態に、ショックを受けて動揺しているエルゼに対して、シャルは優しく声をかけながら優しく頭を撫でた。
わがままな一面が印象的なシャルではあるが、弱々しいエルゼに対しては、"お姉ちゃん"の様な感じでエルゼに寄り添っていた。
おそらく、ディノと言う弟が出来た事で、意識し始めたのであろう。
エルゼ「わ、わふぅ~。シャル…先輩、くすぐったいですよ。」
シャル「にしし、エルゼは可愛いのだ~♪ほれほれ~♪」
徐々にエスカレートするシャルの"もふもふ"は、ついに"コリコリ"とした犬耳まで触り始めた。
エルゼ「はぅ~♪」
シャル「なるほど、ここがいいのだな♪それそれ~♪」
エルゼはとても気持ち良さそうに、幸せそうな笑みを見せながら喜んだ。
ディノ「さ、さすがです!シャル様!」
思わずディノも、シャルの凄さに敬服した。
シャル「ディノもどうだ?ふわふわで気持ちがよいぞ♪」
ディノ「ぜ、ぜひ。」
シャル「エルゼよ、よいか?」
シャルの声に、エルゼは黙って頷いた。
ディノ「で、では失礼します。」
見ただけでも分かるほどの"ふわふわ"としたエルゼの頭に、ディノは緊張しながらも手を伸ばし、優しく頭を撫でた。
シャル「どうじゃディノよ?」
ディノ「ごくり、こ、これは……す、すごいですね。」
最高級の毛布みたいな毛並みに、ディノは思わずほっこりとしてしまった。
一方のエルゼも喜んでいるご様子で、尻尾を左右に"ぶんぶん"振っていた。
愛くるしいエルゼの姿に、シャルとディノは、採取クエストの事を忘れて夢中になって撫で始めるのであった。
ちなみに、この様なほのぼのしい展開が行われている中で、近くの茂みでは、京骨とルシアによる、口では言えない行為が行われていた。
たださえ、妖気切れでフラフラな京骨に対して、未だに収まりがつかないルシアは、採取クエスト開始から数分後。
激しく抵抗できない京骨を押し倒しては、十八禁展開に続いて、妖気を吸っては、魔力で返し、また吸っては返すと言う、ハードプレイが行われていた。
抵抗出来ない京骨の上にルシアが跨り、激しいプレイに京骨が白目を向いて死にかけたら、ハート型の尻尾の先端に隠している、紫色に発光している針を出しては、サキュバス特性の元気が出るフェロモンをぶち込んでいた。
ちなみに、サキュバスと付き合う場合は、相手をしっかり選び節度のある子を選びましょう。可愛いからと言って適当に選んでしまうと、普通に寿命が縮みます。
結果、三班の成果は、
大量のルコの実を乱獲したギールの他。
ディノが頑張って見つけた
薬草 十束、
万漢にんじん 三個
シゴロダケ 七個
カルミ花の根 一個
だけであった。
つまり、ノルマ未達成である。
その頃、二班では、
一度班のメンバーを集めて成果の確認をしていた。
しかしそこには、ジェルドとエルゼが無かった。
吉田「なあ小頼?ジェルドとエルゼはどうした?」
小頼「あぁ~、二人なら開始早々に三班のギールと一緒に、ルコの実の捜索に出ていますよ。」
吉田「っ、それでは班に分かれた意味がないじゃないか。まして、この密林地帯は初心者向けとは言っても、低級亜種族などの危害を加えて来る輩が、彷徨いていたりすると言うに……。」
時奈「まあまあ、彼らは異世界の出身ですよ?そう心配しなくても良いではないですか?」
吉田「しかし、異世界出身とは言えども、学園の生徒だ。そりゃあ、心配するだろう。」
時奈「ふぅ、それでは、気軽に部活動も出来ませんよ?それより、今のジェルドは、エルゼちゃんを降ろしてギールと一緒に行動している様ですね。一方のエルゼちゃんは……、シャルちゃんとディノくんの二人と一緒に居る様ですから、心配はないですよ。」
吉田先生の心配に、時奈は目を閉じて詮索スキルを使いジェルドとエルゼの居場所を突き止めた。
小頼「ふふっ♪(ジェルドとギールったら、相当桃馬が欲しい様ね。このまま桃馬が"ルコの実"を取れなければ、あれやこれやと写真を撮りまくって、同志たちにお宝を売り捌くわよ!!)」
小頼を慕う同士のため、BLを愛する同士のため、そしてお小遣いアップのため、小頼の歪んだ野望は、今日も密かに実行される。
今回は桃馬を餌にして、目先の欲望に目が眩んだジェルドとギールを狂わせたが、相変わらず予想通りで期待を裏切らない二匹の淫獣は、桃馬への妨害作業に勤しんでくれている様だ。
ある意味、勝ちを感じた小頼は、どんな写真集にしてやるかを早速脳内で作り始めた。
既に桃馬が、"ルコの実"を手に入れたとは知らずに……。
二班の採取結果。
薬草 五十二束
万漢にんじん 十一個
シゴロダケ 十四個
カルミ花の根 十個
ルコの実は手に入らずとも、ジェルドとエルゼ抜きで、大半のノルマをクリアする成果であった。
それから五分後。
残り時間が、十五分の頃。
なんと、桃馬に取って大きな事件が発生した。
やっとの思いで、ルコの実を手に入れた桃馬は、最悪を回避した喜びと共に、意気揚々と桜華たちが待つ、一班へ向けて走っていました。
がしかし、その道中で思いもよらぬ事が起きました。
桃馬「んんっ!?んん!!」
そう……。
なんと桃馬は、性欲に飢えた二匹の駄犬に捕まってしまったのでした。
勝負時間は、九十分。
本来、班のメンバーが密集して採取作業をするところだが、今の桃馬に至っては、性欲に飢えたジェルドとギールの二匹の駄犬から穴とプライドを守るため、"ルコの実"一点狙いで一人行動をしていた。
そして、残り時間四十五分……。
未だに桃馬は、密林地帯を駆け回りながら"ルコの実"を探していた。
一応、ギルドから配布された植物マニュアルを参考にしながら捜索はしているが、流石に希少なルコの実だけあって、植生条件が揃っていても、必ずそこにあるとは限らなかった。
更に不運な事に、桃馬が道中で見つけたのは薬草だけで、他の万漢にんじん、シゴロダケ、カルミ花の根は、一つも見つけられないでいた。
桃馬「くそぉ、どこを探しても薬草しか見つからない。他の素材も見つからないし……、はぁ、やっぱりルコの実は、希少なだけあって見つからないな。うぅ、このままじゃ俺…、あの二匹の淫獣に……。」
桃馬の妄想。
ギール「さぁ、桃馬~♪そろそろ無駄な抵抗はやめて、大人しく力を抜いて諦めたらどうだ~。」
ジェルド「そうだぞ桃馬?それに、お前のここも既に硬くして期待してるじゃないか。」
桃馬「ざ、ざけんな。このクソ淫獣が……、誰のせいでこんな……っ!?こ、これ以上触ったら許さんぞ。」
ギール「ふっ、はぁはぁ、相変わらず立場が分かってないご主人様だな……。そんな、ご主人様には……、はぁはぁ、体で思い知らせてやらないとな!」
ジェルド「はぁはぁ、俺はその口うるさい口でも黙らせてやろうかな~。」
桃馬「っ、お、おい、お前ら何脱いで……、お、おいコラやめ…。」
想像するだけでも、身の毛もよだつ程の地獄絵図だ……。
しかし、あの二匹の性格を考えると、五割くらい有り得る展開である。
イケメンの駄犬に、好き放題弄ばれる……。
腐女子に取っては、ご褒美展開かもしれないが、桃馬に取っては地獄以上に、男としてのプライドをズタズタにされると言う、一種の処刑場であった。
背筋を凍らせる程の焦りを感じ始めた桃馬は、地獄の様な展開から逃れるため、残り時間は少ないが、希望を信じてルコの実の捜索を再開するのであった。
一方その頃、桃馬が必死でルコの実を捜索している裏では……。
なんと、ジェルドとギールが結託して"ルコの実狩り"をしていたのであった。
ギール「クンクン……こっちか。」
ジェルド「おっ、あったあった!」
二匹の駄犬は、桃馬が向かう所を先回りしては、自慢の鼻を使って順調にルコの実を採取していた。
シャル「何してるのだギール?」
エルゼ「お兄ちゃん……、みんなと一緒に探さないの?」
桃馬と言う、目先の欲望に目を眩んだジェルドとギールは、互いの妹を背中に"おぶさった"まま、ルコの実の採取に夢中になっていた。
ギール「ん?何ってシャル?見ての通り、ルコの実の採取だけど?」
シャル「ルコの実……?そんなのを探してるのか?」
採取作業が始まるまで、ギールの背中で"ふて寝"をしていたシャルは、今回引き受けたクエストの依頼品を何一つ知らなかった。
ギール「"そんなの"とは何だよ?これはな、沢山取れば取るほど、桃馬を好き放題命じられる可能性を秘めた引換券なんだぞ?」
シャル「むっ、桃馬を好き放題?うわぁ、ギールってそんな趣味があったのか、と言う事は、あそこで気持ち悪い顔をしながら採取しているジェルドもそうなのだな。」
ギールの変態的な性癖を知ったシャルは、少し呆れながら軽蔑すると、近くでギールと同じオーラを漂わせるジェルドに視線を向けた。
ジェルド「はぁはぁ、桃馬を好き放題できる大チャンスだ…、はぁはぁ、薬草よりもルコの実だ…、桃馬には取らせないぞ。」
ギールと同様に駄犬属性を拗らせ、邪な表情を浮かべながらルコの実を探し出すジェルドの姿は、まさに淫獣であった。
エルゼ「…わふぅ。(お兄ちゃんが、"夜のお兄ちゃん"になっちゃってるよ……。う~、恥ずかしいよ~。)」
駄犬モード全開な兄の姿に、複雑な思いを寄せる純粋無垢なエルゼは、そんな兄の背中にしがみつきながら顔を埋めて動揺していた。
もはや、どうにもならないバカ兄たちの醜態に、危機感を覚えたシャルは、心の中で完全に呆れていた。
シャル(このバカ兄たちは、もはやダメなのだ……。今からでもエルゼとジェルドを引き剥がさないと、エルゼが黒い淫気に飲まれてしまうのだ……。早いところディノと合流して三人で居た方が安全なのだ。)
その後シャルは、突然ギールの背中から降りるなり、エルゼを身柄を要求するのであった。
その後、二十分経過。
ジェルドとギールの妨害を受けている事など、夢にも思っていない桃馬は、休憩する事なく目に付いた素材を採取しながら、ルコの実を探していた。
ここまでの桃馬の成果。
薬草 十束
シゴロダケ 五個
気がつけば、シゴロダケのノルマはクリアしていた。
桃馬「はぁはぁ、やばい…、全然見つからない。シゴロダケだけノルマ達成しても意味ないのに~。」
残り時間は二十五分。
地味な成果に落胆した桃馬は、その場に腰を下ろすと悔しさと焦りを噛み締めていた。
桃馬「ちくしょう……。これじゃあ、ジェルドとギールの玩具(おもちゃ)になってしまう。……はぁ、このマニュアルも録なこと書いてないな。」
ダメ元でギルドから配布された植物マニュアルを開くも、ルコの実に関しては、実の形と生息条件しか書かれていないため、そもそもルコの実が、どんな風に実らせているのか分からないため、ド素人の桃馬が見つけ出すには、かなり厳しい条件であった。
もはや万事休すと感じた桃馬は、そのまま目を閉じながら大の字になると、突如脳裏にとある記憶が蘇った。
蒼紫「っ、桃馬、見ろ見ろ!ルコの実だぞ!」
桃馬「ルコの実?」
蒼紫「あぁ!異世界の市場でもあまり出回らない珍しい植物の実だよ!」
桃馬「ふぅ~ん、珍しいって言ってもら何だかクルミ見たいな形だね?それっておいしいの?」
蒼紫「うーん、美味しいと聞かれると分からないけど、俺が読んでいた本には、薬草より苦くて、食用と言うよりは、漢方として重宝されているらしいよ。」
桃馬「薬草より苦くて、漢方として重宝……、そ、それじゃあ、薬草よりも効くって事だよね!?」
蒼紫「そうだ!これでお母さんの風邪も直ぐに良くなるよ!」
桃馬「おぉ~、お母さん元気になるね!」
蒼紫「あはは、そうだな♪おっ、桃馬向こうを見てみろ薬草が沢山あるぞ!ついでに沢山積んで帰ろう。」
桃馬「うん!沢山積んでお母さんの風邪を治そう~♪」
桃馬(そう言えば昔、母さんが普通の風邪で寝込んでる時、兄さんが難病と勘違いして、二人でこっそり異世界に行っては、薬草を積んでたっけな。)
桃馬(帰ったらむちゃくちゃ怒られて、最後は抱き締められて母さん泣いてたっけな。)
桃馬(そうだあの時兄さんは、ルコの実をどこで見つけたんだっけな。)
桃馬に取って窮地に陥っているのにも関わらず、不思議と過去の思い出を振り返っていると、ルコの実のヒントを思い出した。
桃馬「確か、あの時兄貴が見つけたルコの実は、地面に埋もれた"大きな石"と地面の境目に生えた小さい植物だったかな。それで、クルミの様な形をした実が二つ、葉っぱの影に隠れていた様な……。ん?」
体を起こしながら過去を振り返る桃馬は、何となく辺りをキョロキョロと見渡した。すると近くに地面に半分ほど埋まった"大きな石"があった。
桃馬は、まさかと思いながらダメ元で"大きな石"に近寄り、手当り次第探して見ると、なんと見覚えのある"クルミの様な形をした実"が、二つ出て来たのであった。
桃馬「っ、こ、これはもしかして……。」
桃馬はその実を摘み取り、すぐに植物マニュアルを開いて見比べてると、間違いなくルコの実であると判明した。
桃馬「おぉ~!こ、これで、助かるー!よ、よし、早速みんなの所に戻ろう。」
諦めかけていた中での奇跡の発見に、桃馬は拳を天に掲げて喜んだ。
その後、直ぐにルコの実を袋に入れた桃馬は、急いで桜華たちがいるポイントへ向けて、気分良く走り出したのであった。
すると、桃馬が去ってから間もなく、茂みから桃馬の様子を伺っていた二匹の影が、目を光らせながら桃馬の後を追うのであった。
一方その頃。
ジェルドとギールの醜態ぶりに呆れてしまったシャルは、危機感を感じて自らギールの背中から降りると、すぐにエルゼの身柄を要求し、何とか駄犬の背中から引き剥がす事に成功していた。
その後、二匹の枷でも外れたか。
ジェルドとギールは、目の色を変えてどこかへと走り去ってしまった。
ポツンと取り残された二人の幼女。
エルゼは、"ポカン"としたまま硬直し、シャルはため息をしながら呆れていた。
取り敢えずシャルは、エルゼの手を取り序盤で"はぐれた"ディノの気配を追って合流した。
魔力は失ったシャルでも、気配は強く感じる様であった。
シャル「はぁ、全くギールとジェルドは、余とエルゼが降りた途端、どこかに行ってしまうから困ったものだ。しかも、か弱いエルゼちゃんを残して、なりふり構わず去るとは、非常に許せんのだ。」
ディノ「あ、あはは、ま、まあ、小頼さんが勝負の話を持ちかけた時点で、既に興奮していらっしゃいましたからね。」
シャル「むっ?そうなのか?」
ディノ「はい、尻尾と耳が直立してましたからね。」
シャル「ふむ、あの二人がその様な事をした時は、桃馬を狙っている訳だな。」
エルゼ「うぅ、お兄ちゃん…お兄ちゃん。」
普段エルゼの前では、"かっこいい"お兄ちゃんを演じていたジェルドであったが、目先の欲望に負けて堕落し、情けない姿を見せてしまった兄に対して、エルゼはショックを受けて弱々しい声で"お兄ちゃん"と連呼していた。
今の話で拗らせてしまったと思ったディノは、慌てて今にも闇落ちしそうなエルゼに声をかけた。
ディノ「エルゼちゃん?大丈夫ですか?」
エルゼ「きゃふっ!?」
ディノの声に驚いたエルゼは、シャルの後ろへ回り込んだ。
シャル「ふぅ、ディノよ?今のエルゼは酷く動揺しているのだ。その様な堅苦しい声のかけ方では、内気なエルゼに取って逆効果だぞ?」
ディノ「っ、も、申し訳ありません。で、ではどうしたら?」
シャル「ふぅ。まぁ見ておれ。なあ、エルゼよ?少しお主をもふらせよ。」
エルゼ「ふぇ?」
シャル「今のエルゼが動揺している気持ちは良く分かるが、そのまま動揺し続けても、絶対に気分は晴れないのだ。だから、まずはお主の可愛らしい笑顔を見せよ~♪」
兄のジェルドが見せてしまった醜態に、ショックを受けて動揺しているエルゼに対して、シャルは優しく声をかけながら優しく頭を撫でた。
わがままな一面が印象的なシャルではあるが、弱々しいエルゼに対しては、"お姉ちゃん"の様な感じでエルゼに寄り添っていた。
おそらく、ディノと言う弟が出来た事で、意識し始めたのであろう。
エルゼ「わ、わふぅ~。シャル…先輩、くすぐったいですよ。」
シャル「にしし、エルゼは可愛いのだ~♪ほれほれ~♪」
徐々にエスカレートするシャルの"もふもふ"は、ついに"コリコリ"とした犬耳まで触り始めた。
エルゼ「はぅ~♪」
シャル「なるほど、ここがいいのだな♪それそれ~♪」
エルゼはとても気持ち良さそうに、幸せそうな笑みを見せながら喜んだ。
ディノ「さ、さすがです!シャル様!」
思わずディノも、シャルの凄さに敬服した。
シャル「ディノもどうだ?ふわふわで気持ちがよいぞ♪」
ディノ「ぜ、ぜひ。」
シャル「エルゼよ、よいか?」
シャルの声に、エルゼは黙って頷いた。
ディノ「で、では失礼します。」
見ただけでも分かるほどの"ふわふわ"としたエルゼの頭に、ディノは緊張しながらも手を伸ばし、優しく頭を撫でた。
シャル「どうじゃディノよ?」
ディノ「ごくり、こ、これは……す、すごいですね。」
最高級の毛布みたいな毛並みに、ディノは思わずほっこりとしてしまった。
一方のエルゼも喜んでいるご様子で、尻尾を左右に"ぶんぶん"振っていた。
愛くるしいエルゼの姿に、シャルとディノは、採取クエストの事を忘れて夢中になって撫で始めるのであった。
ちなみに、この様なほのぼのしい展開が行われている中で、近くの茂みでは、京骨とルシアによる、口では言えない行為が行われていた。
たださえ、妖気切れでフラフラな京骨に対して、未だに収まりがつかないルシアは、採取クエスト開始から数分後。
激しく抵抗できない京骨を押し倒しては、十八禁展開に続いて、妖気を吸っては、魔力で返し、また吸っては返すと言う、ハードプレイが行われていた。
抵抗出来ない京骨の上にルシアが跨り、激しいプレイに京骨が白目を向いて死にかけたら、ハート型の尻尾の先端に隠している、紫色に発光している針を出しては、サキュバス特性の元気が出るフェロモンをぶち込んでいた。
ちなみに、サキュバスと付き合う場合は、相手をしっかり選び節度のある子を選びましょう。可愛いからと言って適当に選んでしまうと、普通に寿命が縮みます。
結果、三班の成果は、
大量のルコの実を乱獲したギールの他。
ディノが頑張って見つけた
薬草 十束、
万漢にんじん 三個
シゴロダケ 七個
カルミ花の根 一個
だけであった。
つまり、ノルマ未達成である。
その頃、二班では、
一度班のメンバーを集めて成果の確認をしていた。
しかしそこには、ジェルドとエルゼが無かった。
吉田「なあ小頼?ジェルドとエルゼはどうした?」
小頼「あぁ~、二人なら開始早々に三班のギールと一緒に、ルコの実の捜索に出ていますよ。」
吉田「っ、それでは班に分かれた意味がないじゃないか。まして、この密林地帯は初心者向けとは言っても、低級亜種族などの危害を加えて来る輩が、彷徨いていたりすると言うに……。」
時奈「まあまあ、彼らは異世界の出身ですよ?そう心配しなくても良いではないですか?」
吉田「しかし、異世界出身とは言えども、学園の生徒だ。そりゃあ、心配するだろう。」
時奈「ふぅ、それでは、気軽に部活動も出来ませんよ?それより、今のジェルドは、エルゼちゃんを降ろしてギールと一緒に行動している様ですね。一方のエルゼちゃんは……、シャルちゃんとディノくんの二人と一緒に居る様ですから、心配はないですよ。」
吉田先生の心配に、時奈は目を閉じて詮索スキルを使いジェルドとエルゼの居場所を突き止めた。
小頼「ふふっ♪(ジェルドとギールったら、相当桃馬が欲しい様ね。このまま桃馬が"ルコの実"を取れなければ、あれやこれやと写真を撮りまくって、同志たちにお宝を売り捌くわよ!!)」
小頼を慕う同士のため、BLを愛する同士のため、そしてお小遣いアップのため、小頼の歪んだ野望は、今日も密かに実行される。
今回は桃馬を餌にして、目先の欲望に目が眩んだジェルドとギールを狂わせたが、相変わらず予想通りで期待を裏切らない二匹の淫獣は、桃馬への妨害作業に勤しんでくれている様だ。
ある意味、勝ちを感じた小頼は、どんな写真集にしてやるかを早速脳内で作り始めた。
既に桃馬が、"ルコの実"を手に入れたとは知らずに……。
二班の採取結果。
薬草 五十二束
万漢にんじん 十一個
シゴロダケ 十四個
カルミ花の根 十個
ルコの実は手に入らずとも、ジェルドとエルゼ抜きで、大半のノルマをクリアする成果であった。
それから五分後。
残り時間が、十五分の頃。
なんと、桃馬に取って大きな事件が発生した。
やっとの思いで、ルコの実を手に入れた桃馬は、最悪を回避した喜びと共に、意気揚々と桜華たちが待つ、一班へ向けて走っていました。
がしかし、その道中で思いもよらぬ事が起きました。
桃馬「んんっ!?んん!!」
そう……。
なんと桃馬は、性欲に飢えた二匹の駄犬に捕まってしまったのでした。
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