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春より参られし桜華様!
第5話 白黒の駄犬
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どうしてこんなことになったのだろうか‥。
意識を取り戻すと視界は真っ暗で、
目の辺りには布のような感触がある。
どうやら目隠しされているようだ。
しかも、体を起こそうとするも縛られてるせいで動けない。
さて、犯人は誰だろうか‥。
さしずめ、桜華が彼女であることへの当て付けだろう。とりあえず、口は塞がれていないようだし喋ってみよう。
桃馬「おい‥誰かいるのか?」
ジェルド「っ!そ、その声は桃馬か!?」
桃馬「っ、ジェルド!?そこにいるのか?」
ジェルド「あ、あぁ‥、目隠しさせられて前が見えないんだ。動こうにも縛られてて‥くそっ。」
桃馬「俺と同じか‥。ジェルド、何か心当たりあるか?」
ジェルド「‥ギールの仕業だよ。」
桃馬「なっ、ギールだと?な、なんだよ、桜華の件で当て付けか。」
ギール「それは違うぜ桃馬?」
桃馬が今の状態を推測していると、
そこへ黒髪のイケメンけも耳男子が姿を現す。
桃馬「ぎ、ギール‥なんのつもりだ!」
ギール「うるせぇ‥お前は俺のご主人様だ。それをたっぷりと教え込んでやる。」
桃馬「教え込むって、毎週土曜の散歩じゃ足りないのか!?てか、何する気だ、ご主人様ってなんだよ!?」
ギール「今更何を言ってるんだ。あの時、桃馬が俺を倒した"一件"で、俺は黒狼族のしきたりで、あの日から桃馬の所有物なんだよ。」
あの"一件"とは、半年前の事。
当時のギールは、少し荒れた同級生たちとつるんでいた。
とある放課後の日、ギールはいつもの数人の男たちと共に、人気が無くなった廊下で、一人のエルフ族の女子をしつこく追いかけ回していた。
そんな時、たまたま通りかかった桃馬と憲明と出会わせた。
エルフ族の女子は、桃馬と憲明に駆け寄り助けを求めた。
これに対してギールは、自分を差し置いて獲物を奪われたと思い、腹いせに桃馬と憲明に襲いかかった。
ギールの拳が、一番手前にいた桃馬を殴り倒すと、桃馬は、不敵に笑みを浮かべながら立ち上がった。
桃馬「‥宣戦布告‥ありがたく頂戴するよ‥。」
憲明「ありゃりゃ、俺知らねぇ‥。」
殴り倒された桃馬は、鬼の様な表情へと変わり、
人間ながら危険なオーラを出していた。
ギール「へっ、人間風情がかっこつけやがって、お前ら行くぞ!」
普通の人間にナメられたギールは、悪友たちに呼び掛け、再び桃馬に襲いかかろうとする。
しかし、ギールが悪友に呼び掛ける際、桃馬から視線を外した事が運の尽きだった。
桃馬「よそ見してんじゃねぇ!!」
ギール「がはっ!?」
よそ見をした一瞬を見逃さなかった桃馬は、容赦くギールのみぞおちに重い拳をねじ込んだ。
今まだ味わったことない苦痛に、ギールが怯んでよろけると、更に桃馬はギールの頬に重い拳を見舞った。
固い廊下に殴り倒され、そのまま気絶したギールの姿に、数人の悪友たちは鼻で笑い、恐れることなく桃馬と憲明に襲いかかった。
しかし、この悪友たちも一瞬にして桃馬と憲明に倒され、そのまま放課後の廊下に放置されたのであった。
ちなみに、この時助けたエルフ族の女子が、後に憲明の彼女になる"リフィル"である。
まさか、この日を境に付き合うとは思わなかった桃馬は、"なんで俺ではないんだ‥"っと、ショックを受けたそうな。
それからと言うもの、桜華と出会うまで、桃馬はブルーな学園生活を送るのであった。
しかし幸いにも、この件は満更無駄と言うわけでもなく、翌日には、喧嘩に負けたギールから大変懐かれる様になり、既に桃馬の犬宣言をしているジェルドと、ギールと言う"けも耳"美男子に好かれるモテ男になっていった。
桃馬「あの一件って、ギールがリフィルにナンパしていた時のことか?」
ギール「そうだ!あの頃から俺は桃馬の所有物だ!だから俺は、毎週土曜日、散歩と称して桃馬を守ってたんだよ。」
桃馬「ま、守ってた?」
桃馬の脳裏には、散歩中にモフられまくって喜んでいるギールの姿しか思い浮かばなかった。
ジェルド「ぷっ、あはは!ギールに桃馬が守れるわけないだろ?」
ギール「っ!なんだとジェルド‥?」
ジェルド「お前は大人しく仔犬になって、可愛らしく尻尾を振っていればいいんだよ。」
ギール「言ってくれるな?お前も似たような犬の癖に。」
桃馬「あぁー!もういいから早く解放しろ!」
段々いつもの取り合いを始める二匹に、桃馬は強引に話しに割り込んだ。
ギール「ふん、嫌なこった。それに言っただろ?教え込んでやるって‥。」
ギールは、桃馬に付けた目隠しを少し乱暴に取った。
桃馬「っ、な、何してるんだ!?」
真っ暗な光景から光が差し込むと、少し衝撃な光景が桃馬の目に映った。
そこには、リード付きの首輪を付けたギールが立っていた。更に、右手にはリードを持ち、飼い主の帰りを待つ仔犬のような悲しい表情をしていた。
ギール「桃馬‥お前の犬は‥俺だ。ジェルドじゃなくて、俺を選んでくれよ。」
桃馬「な、ちょっ!?何言って‥、」
ジェルド「ふ、ふざけるなよギール!?桃馬の犬は俺だ!」
ギール「黙れ!お前は小頼の犬にでもなって大人しくしていろ!」
ジェルド「うぐっ、こ、これは小頼も理解している事だ!と、桃馬は俺の毛並みの方が好きだよな?」
ギール「それなら俺の毛並みだって負けてないよな桃馬!」
桃馬「…ぅぅ。(なんで、けも耳美男子に挟まれてんだ俺は、普通この展開は俺見たいな男じゃなくて可愛い美少女だろうが。)」
相も変わらない何かとズレた展開に、
今日も桃馬は心の中でツッコミを入れた。
だがしかし、そんな悠長なこともして入られないのも事実。
実際桃馬は、この二匹のけも耳美男子から半分性的に狙われており、このままでは、いつかこの二匹のどちらかに貞操を奪われる可能性が大いにあった。
桃馬としては、男としてでも、何として避けたい展開である。
桃馬「おい、駄犬ども‥いい加減にしないと、もう構ってやらないぞ?」
ギール&ジェルド「わふっ!?それは嫌だ!」
桃馬「それが嫌ならバカな真似はやめて早く解放しろ…ギール。」
桃馬は心を鬼にしてギールを睨んだ。
ギール「わ、わふぅ‥すまん。」
桃馬の圧にあっさり負けたギールは、愛する桃馬に嫌われたくないがために、桃馬とジェルドを解放した。
しかし、それだけで桃馬の機嫌が治るはずもなく、桃馬は、ギールの首輪に繋がれているリードを掴むと、少し乱暴に引っ張った。
ギール「わうっ…くっ、そ、そうだ…桃馬…はぁはぁ。主人に歯向かった俺を…誰の犬…じゃなくて、狼なのかを教え込んでくれ。」
桃馬「ギールが狼だと?おいおい、笑わせるなよ。お前はただの駄犬だ。」
ギール「っ、くっ、俺は駄犬じゃ…、わうっ!?」
口答えする悪い犬に対して、桃馬は再びリードを引っ張ると、駄犬ギールの口から甘い声が漏れる。
傍から見れば、ギールに対して酷い事をしている様に見えるが、実際この様に主従関係を分からせておかないと、桃馬の貞操は、飢えた駄犬に貫かれてしまうリスクがある。
※貞操、それは"|処男(しょだん)"と呼んだり、あるい薔薇と表現したりする。もっと簡単に言えば"ケツ"である。
もし貫かれた暁には、まず間違いなく、同級生が見ていようがお構いなしで、淫らに腰を振って見せつけようとするだろう。
しかも、この淫行を企んでいるのはジェルドも同様であった。
そのため桃馬は、己の貞操とプライドを守るため、今日もまた、駄犬二匹を調教するのである。
ギールの調教に、ある意味我慢できそうもないジェルドは、隠し持っていた自前の首輪とリードを取り出しては口に咥え、尻尾を振りながら桃馬を見つめ始めた。
普段はかっこいいけも耳男子なのだが、こうして甘える時は不思議と可愛く見えてしまう、とんでもない犬である。
そのため桃馬は、ジェルドが咥えた首輪とリードを一旦手に取ると、ジェルドの首元に首輪とリードを付けた。
完全に変態的な光景だが、桃馬は構わず二つのリードを引っ張り多目的感のある教室を後にした。
しかも道中は、犬化禁止の上、イケメンけも耳男子のままで、異種交流会の部室へと向かうプレイである。
そのため、女子生徒と廊下ですれ違う度に視線を集め、中には興奮のあまり歓声を上げながら、首輪を付けた二匹のイケメンを撮影していた。
ちなみに、男子生徒とすれ違う時は、ほとんどは引いていたそうな。
桃馬とジェルドが、ギールに監禁されてから二十分後。
桃馬がリードで繋がれた二匹の駄犬を部室に連れて来たことにより、ようやく、異種交流会の部員が揃った。
異種交流会の部員からして見れば、差ほど珍しくない桃馬と二匹の光景だが、初見の桜華に取っては異様な光景であった。
桜華「と、桃馬?後ろの二人は何してるの?」
桃馬「あぁ、ちょっと変かもしれないけど、別に気にしなくてもいいよ。これはただの駄犬の趣味だから、ほらよ。」
変態的なプレイに動揺する桜華に、桃馬は少しでも落ち着かせようと、二匹に繋がれたリードを強く引くと、二匹は嬉しそうに鳴いた。
ギール「わふっ、はぁはぁ‥いい‥。」
ジェルド「‥うむ、落ち着く。」
普通なら嫌がる様な仕打ちだが、
むしろ喜びに感じる二匹の姿に桜華は引いた。
だが、まわりの女子たちは絶賛であった。
小頼「うんうん、二匹ともよく似合っているよ♪」
ルシア「クスッ、愛でたいわね~♪」
リフィル「あはは、いつも通りですね♪」
時奈「うむ、このまま二人を四つん這いに並べ、下半身を脱がした所に、桃馬のいきり立った"あれ"を二匹の穴の…。」
桃馬「先輩、黙ってください。さもないと触手の森に投げ飛ばしますよ?」
時奈「ほう、そんな事言って良いのかな?返り討ちにして、夜のゲイバーに投げ込むぞ?」
桃馬「っ、ごめんなさい、僕が悪かったです。え、えっと、そ、それより早く歓迎会を‥。」
時奈「ほう、うまく話を逸らしたね?まあいいさ、こほん、それでは仕切り直して桜華さんの歓迎会をしよう。みんな位置についてくれ。」
桃馬「位置??」
時奈「取り敢えず、桃馬、ジェルド、ギールの三人はこっちに来てくれ。」
桃馬「お、おう。(俺がギールに捕まっている間に段取りを決めた様だな。)」
時奈の誘導により、ルシアに搾られた京骨は除き。異種交流会の部員たちは、桜華の前に立つ。
時奈「こほん、それじゃあ改めて。」
"ようこそ、異種交流会へ"
異種交流会の部員たちは、暖かく桜華を迎え入れ、桜華自身も初めて味わう感覚に嬉しさを感じていた。
その後、一通りの自己紹介を済ませると、早速、異種交流会の部活動が開始した。
時奈「さて、今日の部活は新入部員の桜華さんを交えての初めての活動だ。ちにみに、今回の活動場所は、予てより予定にしていた廃ダンジョンに向かおうと思う。」
桃馬「おぉ、それなら危険は少ないですね。」
憲明「うんうん、異界に慣れるにはうってつけの活動だな。」
時奈「うむ、それと魔物や不審な者もいないと情報は得ているから、初めての桜華さんには良いだろう。それじゃあ、みんな早速支度をしてくれ。」
時奈の号令に京骨以外の部員たちは瞬時に武装した。突然の事に桜華は戸惑った。
桜華「ちょっ!?皆さん何してるのですか!?安全なところに行くのですよね!?」
桃馬「あっ、ごめん。これは異世界を味わうために必要な装備なんだよ。よっと、ほら、桜華も好きな武器を選んでくれ。」
桃馬が天井から延びている紐を引っ張ると、
陳列された武器が降りてきた。
桜華「な、なんで学校にこんなものがあるのですか!?」
桃馬「ま、まあ‥、」
時奈「前部長にして前生徒会長‥、エルガ先輩が残した物だ。」
桜華「エルガ先輩?」
桃馬「ほら、部室に入る前に少し話したゲートを開いたって言う、去年卒業した凄い先輩だよ。今思えば、才色兼備で文武両道で誰にでも優しくて‥。」
ジェルド「長い黒髪に健康的な褐色肌。」
ギール「男女問わず憧れの的。」
憲明「完璧なダークエルフ。」
男子たちはこぞって懐かしさに浸った。
桜華「そんな人が‥これを。」
桜華は無意識に花柄の刀を手にした。
憲明「おぉ~、やっぱり日本刀だよな~。確か、桃馬の刀も花柄だから、やっぱり二人は気が合うな。」
桜華「‥へぇ~♪桃馬とお揃いね♪」
桃馬「か、からかうなよ憲明。俺はかっこ良かったから選んだだけで‥。」
憲明「まあまあ、何はともあれ気が合うってことだ。しっかりエスコートしてやんな。」
背中を押されまくる桃馬は耐えきれず、頬を赤らめながら頷いた。それを見た一匹の黒い犬は、目を光らせていた。
ギール「‥なんであんなに距離近いんだよ。」
ジェルド「彼女だからだろ?」
ギール「‥グルル、羨ましい。」
ジェルド「‥はぁ、(早くなんとかしないと、桃馬のケツに風穴が開くな。)」
時奈「ふふっ、桃馬にも一年遅咲きの春が来たようだな。」
今日も変わりのない賑やかな部室であった。
その後、部員たちは、未だにやつれて動けない京骨を無理矢理起こしては、早々に異界の地へと向かうのであった。
意識を取り戻すと視界は真っ暗で、
目の辺りには布のような感触がある。
どうやら目隠しされているようだ。
しかも、体を起こそうとするも縛られてるせいで動けない。
さて、犯人は誰だろうか‥。
さしずめ、桜華が彼女であることへの当て付けだろう。とりあえず、口は塞がれていないようだし喋ってみよう。
桃馬「おい‥誰かいるのか?」
ジェルド「っ!そ、その声は桃馬か!?」
桃馬「っ、ジェルド!?そこにいるのか?」
ジェルド「あ、あぁ‥、目隠しさせられて前が見えないんだ。動こうにも縛られてて‥くそっ。」
桃馬「俺と同じか‥。ジェルド、何か心当たりあるか?」
ジェルド「‥ギールの仕業だよ。」
桃馬「なっ、ギールだと?な、なんだよ、桜華の件で当て付けか。」
ギール「それは違うぜ桃馬?」
桃馬が今の状態を推測していると、
そこへ黒髪のイケメンけも耳男子が姿を現す。
桃馬「ぎ、ギール‥なんのつもりだ!」
ギール「うるせぇ‥お前は俺のご主人様だ。それをたっぷりと教え込んでやる。」
桃馬「教え込むって、毎週土曜の散歩じゃ足りないのか!?てか、何する気だ、ご主人様ってなんだよ!?」
ギール「今更何を言ってるんだ。あの時、桃馬が俺を倒した"一件"で、俺は黒狼族のしきたりで、あの日から桃馬の所有物なんだよ。」
あの"一件"とは、半年前の事。
当時のギールは、少し荒れた同級生たちとつるんでいた。
とある放課後の日、ギールはいつもの数人の男たちと共に、人気が無くなった廊下で、一人のエルフ族の女子をしつこく追いかけ回していた。
そんな時、たまたま通りかかった桃馬と憲明と出会わせた。
エルフ族の女子は、桃馬と憲明に駆け寄り助けを求めた。
これに対してギールは、自分を差し置いて獲物を奪われたと思い、腹いせに桃馬と憲明に襲いかかった。
ギールの拳が、一番手前にいた桃馬を殴り倒すと、桃馬は、不敵に笑みを浮かべながら立ち上がった。
桃馬「‥宣戦布告‥ありがたく頂戴するよ‥。」
憲明「ありゃりゃ、俺知らねぇ‥。」
殴り倒された桃馬は、鬼の様な表情へと変わり、
人間ながら危険なオーラを出していた。
ギール「へっ、人間風情がかっこつけやがって、お前ら行くぞ!」
普通の人間にナメられたギールは、悪友たちに呼び掛け、再び桃馬に襲いかかろうとする。
しかし、ギールが悪友に呼び掛ける際、桃馬から視線を外した事が運の尽きだった。
桃馬「よそ見してんじゃねぇ!!」
ギール「がはっ!?」
よそ見をした一瞬を見逃さなかった桃馬は、容赦くギールのみぞおちに重い拳をねじ込んだ。
今まだ味わったことない苦痛に、ギールが怯んでよろけると、更に桃馬はギールの頬に重い拳を見舞った。
固い廊下に殴り倒され、そのまま気絶したギールの姿に、数人の悪友たちは鼻で笑い、恐れることなく桃馬と憲明に襲いかかった。
しかし、この悪友たちも一瞬にして桃馬と憲明に倒され、そのまま放課後の廊下に放置されたのであった。
ちなみに、この時助けたエルフ族の女子が、後に憲明の彼女になる"リフィル"である。
まさか、この日を境に付き合うとは思わなかった桃馬は、"なんで俺ではないんだ‥"っと、ショックを受けたそうな。
それからと言うもの、桜華と出会うまで、桃馬はブルーな学園生活を送るのであった。
しかし幸いにも、この件は満更無駄と言うわけでもなく、翌日には、喧嘩に負けたギールから大変懐かれる様になり、既に桃馬の犬宣言をしているジェルドと、ギールと言う"けも耳"美男子に好かれるモテ男になっていった。
桃馬「あの一件って、ギールがリフィルにナンパしていた時のことか?」
ギール「そうだ!あの頃から俺は桃馬の所有物だ!だから俺は、毎週土曜日、散歩と称して桃馬を守ってたんだよ。」
桃馬「ま、守ってた?」
桃馬の脳裏には、散歩中にモフられまくって喜んでいるギールの姿しか思い浮かばなかった。
ジェルド「ぷっ、あはは!ギールに桃馬が守れるわけないだろ?」
ギール「っ!なんだとジェルド‥?」
ジェルド「お前は大人しく仔犬になって、可愛らしく尻尾を振っていればいいんだよ。」
ギール「言ってくれるな?お前も似たような犬の癖に。」
桃馬「あぁー!もういいから早く解放しろ!」
段々いつもの取り合いを始める二匹に、桃馬は強引に話しに割り込んだ。
ギール「ふん、嫌なこった。それに言っただろ?教え込んでやるって‥。」
ギールは、桃馬に付けた目隠しを少し乱暴に取った。
桃馬「っ、な、何してるんだ!?」
真っ暗な光景から光が差し込むと、少し衝撃な光景が桃馬の目に映った。
そこには、リード付きの首輪を付けたギールが立っていた。更に、右手にはリードを持ち、飼い主の帰りを待つ仔犬のような悲しい表情をしていた。
ギール「桃馬‥お前の犬は‥俺だ。ジェルドじゃなくて、俺を選んでくれよ。」
桃馬「な、ちょっ!?何言って‥、」
ジェルド「ふ、ふざけるなよギール!?桃馬の犬は俺だ!」
ギール「黙れ!お前は小頼の犬にでもなって大人しくしていろ!」
ジェルド「うぐっ、こ、これは小頼も理解している事だ!と、桃馬は俺の毛並みの方が好きだよな?」
ギール「それなら俺の毛並みだって負けてないよな桃馬!」
桃馬「…ぅぅ。(なんで、けも耳美男子に挟まれてんだ俺は、普通この展開は俺見たいな男じゃなくて可愛い美少女だろうが。)」
相も変わらない何かとズレた展開に、
今日も桃馬は心の中でツッコミを入れた。
だがしかし、そんな悠長なこともして入られないのも事実。
実際桃馬は、この二匹のけも耳美男子から半分性的に狙われており、このままでは、いつかこの二匹のどちらかに貞操を奪われる可能性が大いにあった。
桃馬としては、男としてでも、何として避けたい展開である。
桃馬「おい、駄犬ども‥いい加減にしないと、もう構ってやらないぞ?」
ギール&ジェルド「わふっ!?それは嫌だ!」
桃馬「それが嫌ならバカな真似はやめて早く解放しろ…ギール。」
桃馬は心を鬼にしてギールを睨んだ。
ギール「わ、わふぅ‥すまん。」
桃馬の圧にあっさり負けたギールは、愛する桃馬に嫌われたくないがために、桃馬とジェルドを解放した。
しかし、それだけで桃馬の機嫌が治るはずもなく、桃馬は、ギールの首輪に繋がれているリードを掴むと、少し乱暴に引っ張った。
ギール「わうっ…くっ、そ、そうだ…桃馬…はぁはぁ。主人に歯向かった俺を…誰の犬…じゃなくて、狼なのかを教え込んでくれ。」
桃馬「ギールが狼だと?おいおい、笑わせるなよ。お前はただの駄犬だ。」
ギール「っ、くっ、俺は駄犬じゃ…、わうっ!?」
口答えする悪い犬に対して、桃馬は再びリードを引っ張ると、駄犬ギールの口から甘い声が漏れる。
傍から見れば、ギールに対して酷い事をしている様に見えるが、実際この様に主従関係を分からせておかないと、桃馬の貞操は、飢えた駄犬に貫かれてしまうリスクがある。
※貞操、それは"|処男(しょだん)"と呼んだり、あるい薔薇と表現したりする。もっと簡単に言えば"ケツ"である。
もし貫かれた暁には、まず間違いなく、同級生が見ていようがお構いなしで、淫らに腰を振って見せつけようとするだろう。
しかも、この淫行を企んでいるのはジェルドも同様であった。
そのため桃馬は、己の貞操とプライドを守るため、今日もまた、駄犬二匹を調教するのである。
ギールの調教に、ある意味我慢できそうもないジェルドは、隠し持っていた自前の首輪とリードを取り出しては口に咥え、尻尾を振りながら桃馬を見つめ始めた。
普段はかっこいいけも耳男子なのだが、こうして甘える時は不思議と可愛く見えてしまう、とんでもない犬である。
そのため桃馬は、ジェルドが咥えた首輪とリードを一旦手に取ると、ジェルドの首元に首輪とリードを付けた。
完全に変態的な光景だが、桃馬は構わず二つのリードを引っ張り多目的感のある教室を後にした。
しかも道中は、犬化禁止の上、イケメンけも耳男子のままで、異種交流会の部室へと向かうプレイである。
そのため、女子生徒と廊下ですれ違う度に視線を集め、中には興奮のあまり歓声を上げながら、首輪を付けた二匹のイケメンを撮影していた。
ちなみに、男子生徒とすれ違う時は、ほとんどは引いていたそうな。
桃馬とジェルドが、ギールに監禁されてから二十分後。
桃馬がリードで繋がれた二匹の駄犬を部室に連れて来たことにより、ようやく、異種交流会の部員が揃った。
異種交流会の部員からして見れば、差ほど珍しくない桃馬と二匹の光景だが、初見の桜華に取っては異様な光景であった。
桜華「と、桃馬?後ろの二人は何してるの?」
桃馬「あぁ、ちょっと変かもしれないけど、別に気にしなくてもいいよ。これはただの駄犬の趣味だから、ほらよ。」
変態的なプレイに動揺する桜華に、桃馬は少しでも落ち着かせようと、二匹に繋がれたリードを強く引くと、二匹は嬉しそうに鳴いた。
ギール「わふっ、はぁはぁ‥いい‥。」
ジェルド「‥うむ、落ち着く。」
普通なら嫌がる様な仕打ちだが、
むしろ喜びに感じる二匹の姿に桜華は引いた。
だが、まわりの女子たちは絶賛であった。
小頼「うんうん、二匹ともよく似合っているよ♪」
ルシア「クスッ、愛でたいわね~♪」
リフィル「あはは、いつも通りですね♪」
時奈「うむ、このまま二人を四つん這いに並べ、下半身を脱がした所に、桃馬のいきり立った"あれ"を二匹の穴の…。」
桃馬「先輩、黙ってください。さもないと触手の森に投げ飛ばしますよ?」
時奈「ほう、そんな事言って良いのかな?返り討ちにして、夜のゲイバーに投げ込むぞ?」
桃馬「っ、ごめんなさい、僕が悪かったです。え、えっと、そ、それより早く歓迎会を‥。」
時奈「ほう、うまく話を逸らしたね?まあいいさ、こほん、それでは仕切り直して桜華さんの歓迎会をしよう。みんな位置についてくれ。」
桃馬「位置??」
時奈「取り敢えず、桃馬、ジェルド、ギールの三人はこっちに来てくれ。」
桃馬「お、おう。(俺がギールに捕まっている間に段取りを決めた様だな。)」
時奈の誘導により、ルシアに搾られた京骨は除き。異種交流会の部員たちは、桜華の前に立つ。
時奈「こほん、それじゃあ改めて。」
"ようこそ、異種交流会へ"
異種交流会の部員たちは、暖かく桜華を迎え入れ、桜華自身も初めて味わう感覚に嬉しさを感じていた。
その後、一通りの自己紹介を済ませると、早速、異種交流会の部活動が開始した。
時奈「さて、今日の部活は新入部員の桜華さんを交えての初めての活動だ。ちにみに、今回の活動場所は、予てより予定にしていた廃ダンジョンに向かおうと思う。」
桃馬「おぉ、それなら危険は少ないですね。」
憲明「うんうん、異界に慣れるにはうってつけの活動だな。」
時奈「うむ、それと魔物や不審な者もいないと情報は得ているから、初めての桜華さんには良いだろう。それじゃあ、みんな早速支度をしてくれ。」
時奈の号令に京骨以外の部員たちは瞬時に武装した。突然の事に桜華は戸惑った。
桜華「ちょっ!?皆さん何してるのですか!?安全なところに行くのですよね!?」
桃馬「あっ、ごめん。これは異世界を味わうために必要な装備なんだよ。よっと、ほら、桜華も好きな武器を選んでくれ。」
桃馬が天井から延びている紐を引っ張ると、
陳列された武器が降りてきた。
桜華「な、なんで学校にこんなものがあるのですか!?」
桃馬「ま、まあ‥、」
時奈「前部長にして前生徒会長‥、エルガ先輩が残した物だ。」
桜華「エルガ先輩?」
桃馬「ほら、部室に入る前に少し話したゲートを開いたって言う、去年卒業した凄い先輩だよ。今思えば、才色兼備で文武両道で誰にでも優しくて‥。」
ジェルド「長い黒髪に健康的な褐色肌。」
ギール「男女問わず憧れの的。」
憲明「完璧なダークエルフ。」
男子たちはこぞって懐かしさに浸った。
桜華「そんな人が‥これを。」
桜華は無意識に花柄の刀を手にした。
憲明「おぉ~、やっぱり日本刀だよな~。確か、桃馬の刀も花柄だから、やっぱり二人は気が合うな。」
桜華「‥へぇ~♪桃馬とお揃いね♪」
桃馬「か、からかうなよ憲明。俺はかっこ良かったから選んだだけで‥。」
憲明「まあまあ、何はともあれ気が合うってことだ。しっかりエスコートしてやんな。」
背中を押されまくる桃馬は耐えきれず、頬を赤らめながら頷いた。それを見た一匹の黒い犬は、目を光らせていた。
ギール「‥なんであんなに距離近いんだよ。」
ジェルド「彼女だからだろ?」
ギール「‥グルル、羨ましい。」
ジェルド「‥はぁ、(早くなんとかしないと、桃馬のケツに風穴が開くな。)」
時奈「ふふっ、桃馬にも一年遅咲きの春が来たようだな。」
今日も変わりのない賑やかな部室であった。
その後、部員たちは、未だにやつれて動けない京骨を無理矢理起こしては、早々に異界の地へと向かうのであった。
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