オニネコ

鬱宗光

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第8話 調子に乗ったセクハラ

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 未だ一歳も満たないヨリくんの闘病生活は、二ヶ月と半月が経っても完治せず、思った以上に長期戦となっていた。

まだ免疫が弱いと言う事もあり、今は点々とカビの箇所を見つけては、薬を塗って様子を見ている状態です。

幸い、見つかるカビの箇所は、どれも早期発見であったため、ほとんど皮膚が赤くなるだけの軽傷な物でした。

しかし、カビの箇所が広がっているのは事実のため、お兄さんはこの先の闘病について、お医者さんに相談しました。


お医者さんからは、二つの提案を出されました。

飲み薬を追加して様子を見るか。

イタチごっこ覚悟で塗り薬で様子を見るか。

確かにカビの箇所が治ったと思ったら、外側が侵食していたり、また新たなカビを見つけて治している様な状態の中、いっその事、飲み薬を与えた方が良いのかもしれないと、お兄さんは思いました。

しかしお兄さんは、全身のカビを治すための薬はそこそこ強い薬という事で、幼いヨリくんに与える事に少し抵抗がありました。

そのためお兄さんは、もう一週間塗り薬で様子を見た上で、状態が変わらなければ、飲み薬に踏み切ろうと考えました。


しかし、例え与えようとしてもヨリくんが素直に飲んでくれるかが心配な点です。

現に今のヨリくんは、猫耳ショタになって意思疎通が取れ、味覚の方もだんだん人間寄りになっています。

そんなヨリくんに、苦い飲み薬を与えたらどうなるか。

お兄さんには、容易で予想がつきました。


まず、苦い薬を猫の姿で与えて見る。

初めて薬を飲むヨリくんは、新手のおやつかと思って、興味本位でペロッと舐める。

その瞬間、苦い薬の味に衝撃を受けたヨリくんは、その影響で猫耳ショタになるなり、"苦い苦い"と叫びながら暴れ回るだろう。

そして最後は、薬を飲む事を拒絶しては、無理やり飲ませる事になるだろう……。

※この時点のお兄さんは、お得意の考え過ぎに陥り、ちゅ~るに混ぜて与えると言う簡単な発想がありませんでした。


そして考え過ぎから導き出した結果。

猫耳ショタの状態でも効果があるなら、ヨーグルトに混ぜて与えられるのでは……、と言う、斜め上の発想を思い付いてしまいました。


しかしヨリくんは、本来この世に存在しない猫耳ショタです。

突然お医者さんに、"猫耳ショタにも効果はありますか?"などと聞けば、当然、"はい?"っと、未知の言葉を聞かされた様な反応をするに違いありません。

とまあ確かに、現時点のヨリくんは未知の生物だ。


取り敢えず、猫耳ショタとしのヨリくんではなく、猫としてのヨリくんで対応するしかない。


兄「うーん、薬か……。」

ヨリ「兄さん兄さん♪お薬って美味しいのかな??」

兄「うーん、どうなんだろうな。液体系なのか、粉系なのか、それともカプセルか…、あ~、聞いておけば良かったな。」

未だに、薬の苦いと言う感覚を知らないヨリくんは、少し薬に対して興味を持っていた。


本来人間でも嫌いな薬に、興味を持つヨリくんの姿勢に敢えてお兄さんは、ヨリくんが薬を飲もうとする意欲を削がないために、"不味い"、"苦い"と言う単語を言わない様に気をつけていた。

ちなみにお兄さんは、薬に対して一番苦いと思っているのは、インフルエンザなどに感染して高熱が出た時に解熱剤として飲まされた、粉状で激苦、更に量が多い"頓服とんぷく"であった。


ヨリ「ねぇねぇ~♪兄さん兄さん♪もし来週までにカビが落ち着かなくて、またカビを見つけたらそのお薬を飲んでみたいな~♪」

兄「う、うーん、その意気は良いけど、薬は体の調子を良くさせるための毒物だからね。一歳にもなってないヨリに、あまり強い薬を飲ませたくないなんだよな。」

ヨリ「~っ。兄さ~ん♪」

お兄さんから体の心配をされたヨリくんは、感極まって、お兄さんの右半身に抱きついた。

兄「っ、こらこら、過度な密着は禁止って言っただろ?」


ヨリ「ゴロゴロ~♪兄さんが優しいからいけないんだよ~♪」

兄「なら、厳しくしてやろうか?」

ヨリ「厳しくしてもこうするよ~♪」

兄「…っ…全く。」

ヨリ「ふふ~♪かぷっ♪」

兄「っ!?こ、こらヨリ!?」

無理やり剥がそうとしないお兄さんに、調子に乗ったヨリは、お兄さんの首筋に甘噛みを始めた。


ここ最近のヨリくんは、一ヶ月以上の闘病生活とお兄さんの小説活動などが重なり、例えゲージから出してもらっても、お兄さんに構って貰えない日が続きました。


そのため、お兄さんと遊びたいヨリくんに取っては、一人で遊んでいても楽しい訳もなく、ただただストレスを感じてしまいました。


そのためヨリくんは、構って貰えない退屈した日々に嫌気が差したのか、とうとう行動で訴えかけ始めます。

それはお兄さんが、ヨリくんと同じ部屋で小説を書いている時、ヨリくんは猫の姿で、日課の窓の外を眺めては、突然部屋中をウロウロしながら歩き始めました。

構って欲しいヨリくんですが、もしここで下手に"みゃーみゃー"鳴いたり、暴れたりすれば、間違いなくゲージに戻され、お兄さんは隣の部屋へ行ってしまうだろうと思いました


しかしそれでも、お兄さんに遊んで欲しいヨリくんは、日頃から我慢していた感情を爆発させ、お兄さんの右腕に飛び掛かるなり、少し強い甘噛みを始めました。


当然、噛む力に感情を込めているため、お兄さんに叱られた挙句、ゲージに戻されてしまいました。

甘噛みの感覚で噛んでしまったとは言え、少し感情を込めて強く噛み過ぎたヨリくんは、今日はもう遊ぶどころか、ゲージから出して貰えず、夜まで一人ぼっちになると思い凄く反省しました。


しかしお兄さんは、すぐに隣の部屋に行こうとせずに、ヨリくんが甘噛みをしたのは、一種の構ってアピールではないかと察し、咄嗟に叱りつけてしまった事を反省しました。

その後お兄さんは、再びヨリくんをゲージから出すと、ヨリくんの感極まった捨て身の遊びに付き合うのでした。


その後、この捨て身の遊びを"闘いごっこ"と称し、カジカジと甘噛みして来るヨリくんを、素手でお兄さんが応戦すると言う、一方的にお兄さんが痛い思いをする遊びが流行りました。



そして話は戻し、

ヨリくんが、お兄さんの首筋に甘噛みしたのも、その応用な訳で……。


ヨリ「ペロッペロッ♪」

兄「っ、こ、こらヨリ!?舐め上げは……ひっ!?」

ヨリ「にぃひゃんは、はむはむ、くびしゅじあひゃり…レロッ、にいひゃん、結構弱いよね~♪」

兄「こ、この……、調子に乗るな。」

ヨリ「うん♪調子に乗るよ♪ぺろっ。」

お兄さんの右半身は、ヨリくんの小さな体でホールドされていました。

そのためお兄さんは、直ぐにヨリくんを剥がそうとしますが、少しでも動くとヨリくんが反応して、首筋を舐め上げて来るため、お兄さんは抵抗する力を失い、現に"やられ放題"になっていました。


兄「っ、よ、ヨリ!?次は、な、何を…くっ。(こ、こいつ、今度は耳を!?)」

ヨリ「はむはむ♪ちゅっ、れるっ♪(どうだ、兄さん!いつも僕の耳を弄んでいるお返しだよ♪ついでに、僕と遊んでくれないこの想いを思い知れぇ~。)」

ヨリくんなりに、日頃の鬱憤を一生懸命晴らそうとする責めの姿勢に、思わずお兄さんの口から声が漏れてしまう。

兄「くっ、こ、こら…、ヨリ…うっ、くっ…、そ、そろそろ、やめ……。(ま、まずい、このまま調子に乗らせたら、明日から色んな意味でナメられてしまう。)」

これ以上ヨリくんを好きにさせては、家族としての序列はもとより、お兄さんの肉体的な観点においても危うかった。

そのためお兄さんは、ヨリくんに首筋を舐められて力が入らない中、左腕に力を込めてヨリくんの引き剥がしに掛かりました。

対してヨリくんは、右手でお兄さんの左腕を掴みました。

ヨリ「ふふ~ん、兄さんの手口は読んでるよ~♪(単純な兄さんだ♪これで何回か首筋を舐めてあげれば、完全に戦闘不能だ♪)」

完全に勝利を感じたヨリくんは、お兄さんにトドメの舐め上げをしようとしました。


しかし、ここで体格差による誤算が発生。

お兄さんの左手は、既にヨリくんの背中を掴んでおり、そのまま呆気なく引き剥がされて、捕まってしまいました。

兄「はぁはぁ、ヨリめ…、調子に乗ってぺろぺろと舐めまわしやがって……。」

ヨリ「うわぁ~ん、兄さん離せ~!?」

兄「誰が離すかよ。全く、やっぱりヨリは、調子に乗らせちゃダメな子だ。セクハラ染みた事をした罰として、朝まで出さないからな!」

ヨリ「ふぇ~!?そ、そんな~!?せめて夜までにしてよ~!?」

兄「だーめ、夜に出したら、また変な事する気だろ?」

ヨリ「うわぁ~、もうしないよ~。」


その後、ヨリくんは、猫の姿に戻ろうとせず激しく抵抗するも、結局お兄さんに敵う事は無く、猫耳ショタのままゲージの中へ入れられてしまいました。

更にお兄さんは、隣の部屋へ行ってしまい、観念したヨリくんは、渋々猫の姿になると、大人しく"夜"までゲージの中で過ごすのでした。


そう、朝ではなく、夜までは……。

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