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鬼人族のメンバーの恋
【羊編】ブラックオニキスのピアス
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※グダグダなうえに長いです((;'∀')
とあるブティックのウィンドーで飾ってあったブラックオニキスのピアスに目がいく。つい足を止めてほんの少し過去が過ぎった。
『あ、これ可愛い。これお揃いでつけようよ!どうせなら、片方だけにしよ!』
『どうせならっていう意味が解らない・・・そもそもなんでピアス?』
『だって、ピアスだったらずっとつけていられるし』
『・・・・そういうもんか?じゃ、なんで片方だけつけるんだよ』
『だって、お互いがお互いのを持ってるってなんかロマンチックじゃん。あれだよね、お互いが惹かれ合うというかさぁ!』
『つまり深い意味はないってことかよ・・・はぁ。それだけのためにコレ着けるのか・・・』
彼はそこまで乗り気じゃなかった。でも、なんだかんだいって、付けてくれていたから大丈夫だって高を括っていたんだ。
「・・・前の私だったらきっとすぐ買ってただろうなぁ」
苦笑しながらも、思いだすのは1年前ぐらいに別れた人のこと。彼とは幼馴染で、中学校の時からずっと付き合っていて、大学でもきっと一緒に過ごして、そしてゆくゆくは結婚して生涯をともに歩むんだろうなと思っていた。
でも、大学に入ってすぐにスカウトされてから彼はどんどん違う人になっていった。最初はあった会話も連絡もどんどん減って、なくなっていって・・・なんていうか、遠い人になった。それは無理ないことだった。だって、彼は・・・今やテレビで見ない人がいないほどの超有名なアイドル兼モデルになっているんだから。
コンビニでも本屋でも、彼が表紙を飾っているので、見ない日はない。テレビでも彼の名前が必ずといっていいほど出るほど有名。
だから、私は憂鬱で仕方がなかった。
そっと右耳のピアスに触れる。今は星型のピアスを付けているけれど、昔は彼とお揃いで右耳にだけブラックオニキスがついたピアスを付けていた。彼は私と反対に左耳にだけつけてくれていて。
「高校を卒業する記念にってつけたのに、もう一年も経たないうちに外しちゃうもんな」
目を瞑れば思い出すのは、大学で久々に再会したときの事。
「おー、久しぶりじゃんか」
「・・・久しぶりだね。うわぁ、髪の毛すんごい派手な色になってる」
「ああ、染めたんだ。あいつらからもめっちゃすごい色って言われた」
「うん、真っ青だもんね。でも似合ってる」
「そ、そうかな」
お互いなんとなく、空気を和らげようとしたんだと思う。彼は友達もいたし、私も半年ぶりに会って何をいえばいいのかわからなかったし。もうここは友達感覚でいいかと思ってふつーに話をしていた。そんな時、だった。彼の腕にぎゅっと抱き着いてきた彼女を見たのは。
「みつけたよー絢也!」
「あ、ああ」
「もーおそーい。今日は予定詰まってるんだし、早くいこっ!」
「ちょ、ちょっと待てよ」
「ほらほら、はやく!今日は講義は無理って言っていたでしょ。もう約束の30分すぎてるし!早くいかないと」
超美人なおねーさんにずるずると引きずられていく彼を啞然と見守っていた。その時、やっと気づいた。彼の耳にブラックオニキスがついてなかったことに。
だけれど、なんとなくあのピアスはもう付けてもらえないんだろうなっていう予感は前々からあったから、やっぱりかって感じだった。
(・・・あんな綺麗なおねーさんいるんじゃ、私が彼女っていうのも申し訳ないよなぁ)
そもそも、有名人になっちゃったから、もともと入っていた鬼人族も引退かって話がでていたけれど、本人から休止扱いでお願いしたいとか連絡があったらしくて。副総長がマスターに愚痴ってるのを聞いたことがある。
確かに休止扱いって・・・笑っちゃった。相変わらず抜けてるというかどこかで生真面目というか。とりあえず、その日の夜電話してみた。やっと出てくれた彼は凄く機嫌が悪いみたいで、そっけなかった。
『・・・何?』
「絢也、私達ね、もう終わりなんじゃないかなって思う」
『いきなりなんでそんなこというかな。誰がそんなこといつ決めたの?周りに何か言われた?』
「うん、私の気持ちは変わってないつもりだよ。でもね、ずっと連絡がない状態じゃあ不安になるのも当然じゃない?大学で会った時も悪びれもせずに言うし、ほんと、ふつーすぎてびっくりしたよ」
『は?大学の方はお前が会おうって言ってたんじゃ』
「いったい何を言ってるのかわからないけれど、私に言わせれば、ずっと連絡もなくて、ブラックオニキスもつけてなくて・・・もう、ごめん。言い方悪いけれど、なんていうのかな、今の絢也とは付き合いたくない」
なんかギャーギャー言ってたけれど、電源を落としたら静かになった。鼻水と涙で顔がぐしょぐしょになったけれど、しょうがない。
次の日に、長かった髪をばっさり切って、頭切り替えて勉強に励んだ。おかげで、高校の時より頭よくなった気がする。あの日以来彼とは会っていない。喫茶店の方は、鬼人族の幹部たちの彼女と仲良くなっていたから彼女たちと会うためだけに通ってた。
きゃいきゃいわきあいと話す女子たちの会は一ヶ月に1度の頻度で行われている。総長が高校生ということもあって、ほとんどが年下だけれど、1年ぐらい違うだけだし、すっごく明るくて楽しいから、ここの雰囲気が好きだ。
そして、今日も女子のみんなと集まって騒いでいる。もちろん、アジトには鬼人族の面々が揃っているので、かなり賑やかだ。総長がたまにこうやって女子会みたいなことを開くことを許してくれるのは、もちろん香帆ちゃんへの気遣いもあるんだろう。総長がもうすぐ卒業することもあって、女子同士で交流することで少しでも彼女の負担や悩みを楽にしてやろうっていう配慮からきてる。さすが、できる男は違うよねー。香帆ちゃんにすごいって言った時は首を傾げてあれで・・・?と呟いていたけれど。
「あー、また喧嘩?」
「うん。例によって総長と莉里たんの喧嘩だよー」
「仲がいいですわね、あの二人も。あ、香帆さんが巻き込まれましたわ」
「香帆なら大丈夫でしょうよ。マスター、ワインもっとちょうだい!」
カウンターでマスターとしゃべっていると、扉が開く音が聞こえた。それと同時に、懐かしい声に目を丸くした。
「お、久しぶりじゃねえか、ヒツジ」
「よう、マスター。総長は・・・あっちか。悪いけれど、足止めを頼む」
「おいおい、あの電話本気だったのかよ・・・おう」
わけのわからん会話をした後、絢也は総長のいる方へと向かった。ひときわ大きな悲鳴が上がった後、なぜか急に静かになった。あれと思いながらも、とりあえず彼がいるんじゃ、気まずいことこの上ないし、いらん過去を思い出したくない。
ここを離れようと立ち上がると慌てたようにマスターが新しい新作を食べてほしいと言い出した。
「えー、もうお腹いっぱい」
「いやいや、デザートは別腹っていうだろ。美味しいからよ・・・え、無理?じゃ、せめてドリンクだけでも!」
慌てながらも、無料であげるから!とドリンクを押し付けてくるマスターに首を傾げるが、他の女性たちはピンときたようで、なぜかさっきより食い気味に話しかけてきている。お蔭で逃げられず、しぶしぶと座りなおすことにした。・・・何故マスターがほっとしているのかさっぱりわからないけれど。
「ところでさぁ。未来ちゃんは好きなタイプとかある?」
「えっと・・・懐が大きい人、かな」
「そんな内面じゃなくってぇー」
「顔のタイプに決まってるでしょう。もちろん絢也クン以外でですよ!」
「ええ・・・鬼人族でいうなら、サル君とかかな」
なぜか後ろで猿君の悲鳴が聞こえたけれど・・・・気のせいだよね。多分。
だって、彼まだ彼女いないはずだし、恨まれる要素もないしね。
「なんでサル君なの?」
「ほら、なんていうかな、ぱっと見爽やか系だけれど、快活陽気って感じじゃない。それに笑顔も素敵だし」
・・・さっきからサル君の叫び声が煩いけれど、何をしてるんだろう?
「ほうほう。じゃ、絢也についてはどこがタイプだったの?」
なぜかノリノリな女性陣・・・ここに香帆ちゃんや莉里ちゃんがいなくてよかったかもしれない。まぁ10人もいたらバラエティー豊かにもなるか。
「彼は・・・もう幼馴染で一番私のことを解っててくれて。私も彼なら気負わずに済んだし、彼のパターン解っていたから、大丈夫って甘えていた部分があって。だから、なんというか傍にいてくれる安心感が一番あったんだと思う」
「いや、だから顏のタイプを聞いてるんだけれど・・・」
「顏はそりゃ嫌いなわけないよ。ずっと見てるから見慣れているけれど、中学校の時からもててたし。だから告白された時も私でいいのかって思ったぐらい」
「だそうよ~こりゃ、あれですよね。THE すれ違いだと思います!」
「・・んなの、言われなくても解ってますよ、真唯さん」
なぜか、後ろに向かって罰を作る美人さん・・・確か鳥丸さんの彼女じゃなかったかな。なんで後ろに話してるんだろうと思って振り返ってみたら、総長のところに行ったはずの絢也が不機嫌そうに立っていた。それも私の真後ろに。
「やっと来たかよ・・・もうさっさと連れていけ」
「マスター、ありがと。ほら、行くぞ。あと、サル、また会った時に教育指導するから」
「いやいや、もう勘弁してっ!!俺は、蛇だけでもう手いっぱいだから!」
なぜか私の腕を引っ張って喫茶店の外へと向かう絢也。一年ぶりに見た彼の髪はごくごくふつーの茶色になってて、ピアスもつけてなかった。でも、穴は開いているから、ふだんは付けてるってことなんだろう。
訳が解らず混乱している私をよそに、彼は私の手を握ったまま、表通りの方へと歩いて行った。何をと思った時、彼の足が止まったのは『Perfume』。
まさかと思って、必死に抵抗するが、当然ながら体力差で彼の勝ち・・・有無を言わせず『Perfume』に入店・・・。
「な、なんでこんな高級店に!!こんなラフな服で入っていい店じゃないんだよ!」
「大丈夫、香帆さんに頼んで予約してあるから・・・あ、はい、予約していた日辻です。よろしくお願いします」
「うう・・・なんでよりによってここ・・・めっちゃいい席だよ。ピアノが目の前にあるし、窓際だし、何よりこれ、どう見てもカップル席!」
いたたまれない・・・とブツブツ言っていると、彼が呆れたようにスマホを取り出して目の前に出してきた。
何をと首を傾げていると、「いいから、それ読んでみ」と言われたので、スマホに出ていたニュースを読んでみる。
「・・・えーとKENYA引退!彼は記者会見で何を語るのか・・・へーそう、引退するんだ、あんたが・・・え?!」
「俺がな。一週間後に引退会見することが決まってる」
「なんで・・・?せっかくここまで有名になったのに!」
「どれもこれも俺がやりたいことじゃねーもん。人脈と金が必要だったからやっていただけ。むしろ・・・俺にとっては苦痛でしかなかった」
「そんなに忙しかったんだ」
「忙しい・・・ってのはまぁそれもあるけれど、一番はお前と会えなかったこと」
真顔で自分をまっすぐ見詰めてくるその目はまるで私が変わったと言いたげな感じだ。だってあの時はしょうがなかった。彼と距離ができたようで、たまらなくて寂しくて、心にっぽっかりと穴があいたような感じだった。
「・・・未来が言ってたあの最後の電話で、どうしても腑に落ちないことがあって」
「何が?」
「連絡がまったくない状態だって言っていたよな。で、おかしいと思ったんだ。だって俺は毎晩のようにお前と連絡をとっているつもりだったから」
「え?」
彼の言葉に思わず目を見開く。空気を呼んだできる店員さんがタイミングよく料理を運んでくれる。うん。ありがとう、おかげで頭を整理する時間ができた・・・ってそんなことよりも!
「待って、どういうこと?私全く連絡なかったし、こっちからもちゃんと送ってたよ」
「ああ、今となってはお前が言っていることが正しいと解っている。だけれど、当時は違った。なんでかって、マネージャーが勝手にスマホを弄って、お前と連絡がとれないようにしてた。んで、あいつ別のスマホ使ってお前のふりして俺に連絡してやがった。あと、ブラックオニキスを捨てたからあんたも捨てておいてっていったのもあの女だ。納得いかなかったから、大学まで行ったのにそれも邪魔されて・・・思い出すだけでムカつく」
「マネージャー・・・って、それいいの?てか、なんでそんなこと・・・」
「いいわけないだろうが。あいつ曰く俺にふさわしくないからってよ。俺に言わせればお前の方が相応しくねぇってガンガン言ってやったけれど」
「うわぁ・・・それある意味スゴイ・・・てか、マネージャーさんって女だったんだ」
「お前も会ってるはずだ。ほら、大学に来たあの女だ」
「あのポンキュッポンな人!えー、新しい彼女かなって思ってた!」
「お前は一体俺をなんだと・・・いっておくが、芸能界では誰とも付き合ってないし、彼女も作ってねぇからな。お前がいるのに作る理由なんかない」
「え、ああ・・・うん?待って、じゃ、そのマネージャーさんのせいで私達すれ違ったってこと?」
ようやく整理できた時、私の頭はもうヒートオーバー気味だった。とりあえず食えという彼の言葉に従って、なんとか食事を平らげることができた。
「あーうん、やっとわかった。誤解を解きたくて私と話したかったんだね。納得納得。教えてくれてありがとう」
「・・・それだけ?」
「うん?」
「・・・別れた理由なくしたつもりだけれど、これでもダメなわけ?あのさ、前々から聞きたかったんだけれどさ、お前俺をなんだと思ってるの?さっき聞いてたら、安心感っつーやつってなにあれ?俺、お前の母親のつもりまったくないんだけれど」
「ごめん、言ってる意味がよくわかんない・・・なんで怒ってるの?」
「・・・怒ってるっつーか、サルがなんで男扱いされてて、俺が人工自然マイナスイオンみたいな扱いっつーのが納得いかない。俺はずっと中学校の時からお前を彼女とおもってたのに、お前はなんていうかそっちかよ!っていうもやもや感というかなんというか」
「・・・なんか、久々によくしゃべるね」
「喋らなきゃやってらんねぇっつーの。とりあえず、俺も引退したから一般人ってことでもっかいお前の彼氏になる。ちなみにお前に拒否権はないから諦めろ」
「え、待って。まさか引退ってそれだけのためにするんじゃないよね?」
「・・・この引退のためだけに半年近く我慢してきた」
そういいながら、彼はポケットから小さな箱を取り出してこれまた私の前に差し出してきた。視線が突き刺さってくるってことは、開けろってことなんですね、うん・・・ちょっと怖い気持ちもあるけれど、恐る恐る開けてみる。
「・・・あ、ブラックオニキスのピアス!」
昔つけていたあの一粒とは比べ物にならない。店に陳列されていたあのピアスでさえこんなに輝いていなかった。
しかも、片方じゃない。両方・・・つまり、一組揃ってる。でもどうみても女性向けだ。だって、ハート形になってるし、ダイヤがぶら下がってるもん。
「・・・コレどういうこと?もしかして」
「言っておくが、俺が片方つけるとかってのはナシな」
「あ、先手打たれた!」
「それは俺がデザインして作ったヤツだから世界に一つしかない。それならお前の言うロマンチックとやらも入ってるから納得するだろ」
・・・この人がデザインしたとかロマンチックって言ったことを覚えていたとかなんというかいろいろ衝撃的だけれど、今はただ、嬉しさで涙しか出でこない。
「ふっ・・・・な、んで・・・・私、なの・・・」
「なんでって・・・言わせんな。そんなの惹かれ合っているからに決まってるだろ」
・・・私はたぶん、一生この人に勝てない。
そう思った私はピアスを手に取って、彼に差し出した。は?と驚く彼を他所に私は零れる涙をぬぐいながらはっきりと言った。
「穴、ふさがってるから、責任取って、開けて。そして、私につけて頂戴」
余談
「うう・・・コワイコワイヒツジがやってくる・・・」
「ああ、今日くるのか、ヒツジさん」
「なんかガールズトーク会ってやつに参加するんじゃない?俺の彼女もくるって言ってたしー」
「お前ら吞気だな?俺は怖くてしょうがねぇよ!!なんで俺ばっかり狙われるの!」
「そりゃ、お前無駄に顔だけはいいからな・・・お前、結構女性陣から人気あるよ。顏がタイプなだけで性格は色々とあれだが」
「あああだだふぁれあがだ・・・・いやいや、俺も彼女欲しいんだよ。でもなんでかできないんだよなぁあああああ」
「事実だからあきらめろ、サル。ついでにいえば、お前に彼女はたぶん厳しい」
「シビアだね、ヘビさんや・・・ちきしょう、プリンちゃんに言いつけてやる」
「あっそ、じゃ、俺はヒツジさんに・・・」
「あっ、すいません。ヘビ様、このわたしめがわるうございました。何卒お許しください」
「・・・ヒツジはあのさばさばな見た目に反してかなりねちっこいからなぁ」
「八尋、それをいったら幹部全員そうだよー」
「俺とお前も含まれてんだぞ、そこに」
「・・・・・・・うん、俺が悪かった」
「しっかし、彼女持ち増えてないか」
「俺達の影響でしょー。彼女いないのは後2人だけだけれど・・・サルは当分なさそうだね」
「だなぁ」
とあるブティックのウィンドーで飾ってあったブラックオニキスのピアスに目がいく。つい足を止めてほんの少し過去が過ぎった。
『あ、これ可愛い。これお揃いでつけようよ!どうせなら、片方だけにしよ!』
『どうせならっていう意味が解らない・・・そもそもなんでピアス?』
『だって、ピアスだったらずっとつけていられるし』
『・・・・そういうもんか?じゃ、なんで片方だけつけるんだよ』
『だって、お互いがお互いのを持ってるってなんかロマンチックじゃん。あれだよね、お互いが惹かれ合うというかさぁ!』
『つまり深い意味はないってことかよ・・・はぁ。それだけのためにコレ着けるのか・・・』
彼はそこまで乗り気じゃなかった。でも、なんだかんだいって、付けてくれていたから大丈夫だって高を括っていたんだ。
「・・・前の私だったらきっとすぐ買ってただろうなぁ」
苦笑しながらも、思いだすのは1年前ぐらいに別れた人のこと。彼とは幼馴染で、中学校の時からずっと付き合っていて、大学でもきっと一緒に過ごして、そしてゆくゆくは結婚して生涯をともに歩むんだろうなと思っていた。
でも、大学に入ってすぐにスカウトされてから彼はどんどん違う人になっていった。最初はあった会話も連絡もどんどん減って、なくなっていって・・・なんていうか、遠い人になった。それは無理ないことだった。だって、彼は・・・今やテレビで見ない人がいないほどの超有名なアイドル兼モデルになっているんだから。
コンビニでも本屋でも、彼が表紙を飾っているので、見ない日はない。テレビでも彼の名前が必ずといっていいほど出るほど有名。
だから、私は憂鬱で仕方がなかった。
そっと右耳のピアスに触れる。今は星型のピアスを付けているけれど、昔は彼とお揃いで右耳にだけブラックオニキスがついたピアスを付けていた。彼は私と反対に左耳にだけつけてくれていて。
「高校を卒業する記念にってつけたのに、もう一年も経たないうちに外しちゃうもんな」
目を瞑れば思い出すのは、大学で久々に再会したときの事。
「おー、久しぶりじゃんか」
「・・・久しぶりだね。うわぁ、髪の毛すんごい派手な色になってる」
「ああ、染めたんだ。あいつらからもめっちゃすごい色って言われた」
「うん、真っ青だもんね。でも似合ってる」
「そ、そうかな」
お互いなんとなく、空気を和らげようとしたんだと思う。彼は友達もいたし、私も半年ぶりに会って何をいえばいいのかわからなかったし。もうここは友達感覚でいいかと思ってふつーに話をしていた。そんな時、だった。彼の腕にぎゅっと抱き着いてきた彼女を見たのは。
「みつけたよー絢也!」
「あ、ああ」
「もーおそーい。今日は予定詰まってるんだし、早くいこっ!」
「ちょ、ちょっと待てよ」
「ほらほら、はやく!今日は講義は無理って言っていたでしょ。もう約束の30分すぎてるし!早くいかないと」
超美人なおねーさんにずるずると引きずられていく彼を啞然と見守っていた。その時、やっと気づいた。彼の耳にブラックオニキスがついてなかったことに。
だけれど、なんとなくあのピアスはもう付けてもらえないんだろうなっていう予感は前々からあったから、やっぱりかって感じだった。
(・・・あんな綺麗なおねーさんいるんじゃ、私が彼女っていうのも申し訳ないよなぁ)
そもそも、有名人になっちゃったから、もともと入っていた鬼人族も引退かって話がでていたけれど、本人から休止扱いでお願いしたいとか連絡があったらしくて。副総長がマスターに愚痴ってるのを聞いたことがある。
確かに休止扱いって・・・笑っちゃった。相変わらず抜けてるというかどこかで生真面目というか。とりあえず、その日の夜電話してみた。やっと出てくれた彼は凄く機嫌が悪いみたいで、そっけなかった。
『・・・何?』
「絢也、私達ね、もう終わりなんじゃないかなって思う」
『いきなりなんでそんなこというかな。誰がそんなこといつ決めたの?周りに何か言われた?』
「うん、私の気持ちは変わってないつもりだよ。でもね、ずっと連絡がない状態じゃあ不安になるのも当然じゃない?大学で会った時も悪びれもせずに言うし、ほんと、ふつーすぎてびっくりしたよ」
『は?大学の方はお前が会おうって言ってたんじゃ』
「いったい何を言ってるのかわからないけれど、私に言わせれば、ずっと連絡もなくて、ブラックオニキスもつけてなくて・・・もう、ごめん。言い方悪いけれど、なんていうのかな、今の絢也とは付き合いたくない」
なんかギャーギャー言ってたけれど、電源を落としたら静かになった。鼻水と涙で顔がぐしょぐしょになったけれど、しょうがない。
次の日に、長かった髪をばっさり切って、頭切り替えて勉強に励んだ。おかげで、高校の時より頭よくなった気がする。あの日以来彼とは会っていない。喫茶店の方は、鬼人族の幹部たちの彼女と仲良くなっていたから彼女たちと会うためだけに通ってた。
きゃいきゃいわきあいと話す女子たちの会は一ヶ月に1度の頻度で行われている。総長が高校生ということもあって、ほとんどが年下だけれど、1年ぐらい違うだけだし、すっごく明るくて楽しいから、ここの雰囲気が好きだ。
そして、今日も女子のみんなと集まって騒いでいる。もちろん、アジトには鬼人族の面々が揃っているので、かなり賑やかだ。総長がたまにこうやって女子会みたいなことを開くことを許してくれるのは、もちろん香帆ちゃんへの気遣いもあるんだろう。総長がもうすぐ卒業することもあって、女子同士で交流することで少しでも彼女の負担や悩みを楽にしてやろうっていう配慮からきてる。さすが、できる男は違うよねー。香帆ちゃんにすごいって言った時は首を傾げてあれで・・・?と呟いていたけれど。
「あー、また喧嘩?」
「うん。例によって総長と莉里たんの喧嘩だよー」
「仲がいいですわね、あの二人も。あ、香帆さんが巻き込まれましたわ」
「香帆なら大丈夫でしょうよ。マスター、ワインもっとちょうだい!」
カウンターでマスターとしゃべっていると、扉が開く音が聞こえた。それと同時に、懐かしい声に目を丸くした。
「お、久しぶりじゃねえか、ヒツジ」
「よう、マスター。総長は・・・あっちか。悪いけれど、足止めを頼む」
「おいおい、あの電話本気だったのかよ・・・おう」
わけのわからん会話をした後、絢也は総長のいる方へと向かった。ひときわ大きな悲鳴が上がった後、なぜか急に静かになった。あれと思いながらも、とりあえず彼がいるんじゃ、気まずいことこの上ないし、いらん過去を思い出したくない。
ここを離れようと立ち上がると慌てたようにマスターが新しい新作を食べてほしいと言い出した。
「えー、もうお腹いっぱい」
「いやいや、デザートは別腹っていうだろ。美味しいからよ・・・え、無理?じゃ、せめてドリンクだけでも!」
慌てながらも、無料であげるから!とドリンクを押し付けてくるマスターに首を傾げるが、他の女性たちはピンときたようで、なぜかさっきより食い気味に話しかけてきている。お蔭で逃げられず、しぶしぶと座りなおすことにした。・・・何故マスターがほっとしているのかさっぱりわからないけれど。
「ところでさぁ。未来ちゃんは好きなタイプとかある?」
「えっと・・・懐が大きい人、かな」
「そんな内面じゃなくってぇー」
「顔のタイプに決まってるでしょう。もちろん絢也クン以外でですよ!」
「ええ・・・鬼人族でいうなら、サル君とかかな」
なぜか後ろで猿君の悲鳴が聞こえたけれど・・・・気のせいだよね。多分。
だって、彼まだ彼女いないはずだし、恨まれる要素もないしね。
「なんでサル君なの?」
「ほら、なんていうかな、ぱっと見爽やか系だけれど、快活陽気って感じじゃない。それに笑顔も素敵だし」
・・・さっきからサル君の叫び声が煩いけれど、何をしてるんだろう?
「ほうほう。じゃ、絢也についてはどこがタイプだったの?」
なぜかノリノリな女性陣・・・ここに香帆ちゃんや莉里ちゃんがいなくてよかったかもしれない。まぁ10人もいたらバラエティー豊かにもなるか。
「彼は・・・もう幼馴染で一番私のことを解っててくれて。私も彼なら気負わずに済んだし、彼のパターン解っていたから、大丈夫って甘えていた部分があって。だから、なんというか傍にいてくれる安心感が一番あったんだと思う」
「いや、だから顏のタイプを聞いてるんだけれど・・・」
「顏はそりゃ嫌いなわけないよ。ずっと見てるから見慣れているけれど、中学校の時からもててたし。だから告白された時も私でいいのかって思ったぐらい」
「だそうよ~こりゃ、あれですよね。THE すれ違いだと思います!」
「・・んなの、言われなくても解ってますよ、真唯さん」
なぜか、後ろに向かって罰を作る美人さん・・・確か鳥丸さんの彼女じゃなかったかな。なんで後ろに話してるんだろうと思って振り返ってみたら、総長のところに行ったはずの絢也が不機嫌そうに立っていた。それも私の真後ろに。
「やっと来たかよ・・・もうさっさと連れていけ」
「マスター、ありがと。ほら、行くぞ。あと、サル、また会った時に教育指導するから」
「いやいや、もう勘弁してっ!!俺は、蛇だけでもう手いっぱいだから!」
なぜか私の腕を引っ張って喫茶店の外へと向かう絢也。一年ぶりに見た彼の髪はごくごくふつーの茶色になってて、ピアスもつけてなかった。でも、穴は開いているから、ふだんは付けてるってことなんだろう。
訳が解らず混乱している私をよそに、彼は私の手を握ったまま、表通りの方へと歩いて行った。何をと思った時、彼の足が止まったのは『Perfume』。
まさかと思って、必死に抵抗するが、当然ながら体力差で彼の勝ち・・・有無を言わせず『Perfume』に入店・・・。
「な、なんでこんな高級店に!!こんなラフな服で入っていい店じゃないんだよ!」
「大丈夫、香帆さんに頼んで予約してあるから・・・あ、はい、予約していた日辻です。よろしくお願いします」
「うう・・・なんでよりによってここ・・・めっちゃいい席だよ。ピアノが目の前にあるし、窓際だし、何よりこれ、どう見てもカップル席!」
いたたまれない・・・とブツブツ言っていると、彼が呆れたようにスマホを取り出して目の前に出してきた。
何をと首を傾げていると、「いいから、それ読んでみ」と言われたので、スマホに出ていたニュースを読んでみる。
「・・・えーとKENYA引退!彼は記者会見で何を語るのか・・・へーそう、引退するんだ、あんたが・・・え?!」
「俺がな。一週間後に引退会見することが決まってる」
「なんで・・・?せっかくここまで有名になったのに!」
「どれもこれも俺がやりたいことじゃねーもん。人脈と金が必要だったからやっていただけ。むしろ・・・俺にとっては苦痛でしかなかった」
「そんなに忙しかったんだ」
「忙しい・・・ってのはまぁそれもあるけれど、一番はお前と会えなかったこと」
真顔で自分をまっすぐ見詰めてくるその目はまるで私が変わったと言いたげな感じだ。だってあの時はしょうがなかった。彼と距離ができたようで、たまらなくて寂しくて、心にっぽっかりと穴があいたような感じだった。
「・・・未来が言ってたあの最後の電話で、どうしても腑に落ちないことがあって」
「何が?」
「連絡がまったくない状態だって言っていたよな。で、おかしいと思ったんだ。だって俺は毎晩のようにお前と連絡をとっているつもりだったから」
「え?」
彼の言葉に思わず目を見開く。空気を呼んだできる店員さんがタイミングよく料理を運んでくれる。うん。ありがとう、おかげで頭を整理する時間ができた・・・ってそんなことよりも!
「待って、どういうこと?私全く連絡なかったし、こっちからもちゃんと送ってたよ」
「ああ、今となってはお前が言っていることが正しいと解っている。だけれど、当時は違った。なんでかって、マネージャーが勝手にスマホを弄って、お前と連絡がとれないようにしてた。んで、あいつ別のスマホ使ってお前のふりして俺に連絡してやがった。あと、ブラックオニキスを捨てたからあんたも捨てておいてっていったのもあの女だ。納得いかなかったから、大学まで行ったのにそれも邪魔されて・・・思い出すだけでムカつく」
「マネージャー・・・って、それいいの?てか、なんでそんなこと・・・」
「いいわけないだろうが。あいつ曰く俺にふさわしくないからってよ。俺に言わせればお前の方が相応しくねぇってガンガン言ってやったけれど」
「うわぁ・・・それある意味スゴイ・・・てか、マネージャーさんって女だったんだ」
「お前も会ってるはずだ。ほら、大学に来たあの女だ」
「あのポンキュッポンな人!えー、新しい彼女かなって思ってた!」
「お前は一体俺をなんだと・・・いっておくが、芸能界では誰とも付き合ってないし、彼女も作ってねぇからな。お前がいるのに作る理由なんかない」
「え、ああ・・・うん?待って、じゃ、そのマネージャーさんのせいで私達すれ違ったってこと?」
ようやく整理できた時、私の頭はもうヒートオーバー気味だった。とりあえず食えという彼の言葉に従って、なんとか食事を平らげることができた。
「あーうん、やっとわかった。誤解を解きたくて私と話したかったんだね。納得納得。教えてくれてありがとう」
「・・・それだけ?」
「うん?」
「・・・別れた理由なくしたつもりだけれど、これでもダメなわけ?あのさ、前々から聞きたかったんだけれどさ、お前俺をなんだと思ってるの?さっき聞いてたら、安心感っつーやつってなにあれ?俺、お前の母親のつもりまったくないんだけれど」
「ごめん、言ってる意味がよくわかんない・・・なんで怒ってるの?」
「・・・怒ってるっつーか、サルがなんで男扱いされてて、俺が人工自然マイナスイオンみたいな扱いっつーのが納得いかない。俺はずっと中学校の時からお前を彼女とおもってたのに、お前はなんていうかそっちかよ!っていうもやもや感というかなんというか」
「・・・なんか、久々によくしゃべるね」
「喋らなきゃやってらんねぇっつーの。とりあえず、俺も引退したから一般人ってことでもっかいお前の彼氏になる。ちなみにお前に拒否権はないから諦めろ」
「え、待って。まさか引退ってそれだけのためにするんじゃないよね?」
「・・・この引退のためだけに半年近く我慢してきた」
そういいながら、彼はポケットから小さな箱を取り出してこれまた私の前に差し出してきた。視線が突き刺さってくるってことは、開けろってことなんですね、うん・・・ちょっと怖い気持ちもあるけれど、恐る恐る開けてみる。
「・・・あ、ブラックオニキスのピアス!」
昔つけていたあの一粒とは比べ物にならない。店に陳列されていたあのピアスでさえこんなに輝いていなかった。
しかも、片方じゃない。両方・・・つまり、一組揃ってる。でもどうみても女性向けだ。だって、ハート形になってるし、ダイヤがぶら下がってるもん。
「・・・コレどういうこと?もしかして」
「言っておくが、俺が片方つけるとかってのはナシな」
「あ、先手打たれた!」
「それは俺がデザインして作ったヤツだから世界に一つしかない。それならお前の言うロマンチックとやらも入ってるから納得するだろ」
・・・この人がデザインしたとかロマンチックって言ったことを覚えていたとかなんというかいろいろ衝撃的だけれど、今はただ、嬉しさで涙しか出でこない。
「ふっ・・・・な、んで・・・・私、なの・・・」
「なんでって・・・言わせんな。そんなの惹かれ合っているからに決まってるだろ」
・・・私はたぶん、一生この人に勝てない。
そう思った私はピアスを手に取って、彼に差し出した。は?と驚く彼を他所に私は零れる涙をぬぐいながらはっきりと言った。
「穴、ふさがってるから、責任取って、開けて。そして、私につけて頂戴」
余談
「うう・・・コワイコワイヒツジがやってくる・・・」
「ああ、今日くるのか、ヒツジさん」
「なんかガールズトーク会ってやつに参加するんじゃない?俺の彼女もくるって言ってたしー」
「お前ら吞気だな?俺は怖くてしょうがねぇよ!!なんで俺ばっかり狙われるの!」
「そりゃ、お前無駄に顔だけはいいからな・・・お前、結構女性陣から人気あるよ。顏がタイプなだけで性格は色々とあれだが」
「あああだだふぁれあがだ・・・・いやいや、俺も彼女欲しいんだよ。でもなんでかできないんだよなぁあああああ」
「事実だからあきらめろ、サル。ついでにいえば、お前に彼女はたぶん厳しい」
「シビアだね、ヘビさんや・・・ちきしょう、プリンちゃんに言いつけてやる」
「あっそ、じゃ、俺はヒツジさんに・・・」
「あっ、すいません。ヘビ様、このわたしめがわるうございました。何卒お許しください」
「・・・ヒツジはあのさばさばな見た目に反してかなりねちっこいからなぁ」
「八尋、それをいったら幹部全員そうだよー」
「俺とお前も含まれてんだぞ、そこに」
「・・・・・・・うん、俺が悪かった」
「しっかし、彼女持ち増えてないか」
「俺達の影響でしょー。彼女いないのは後2人だけだけれど・・・サルは当分なさそうだね」
「だなぁ」
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