香帆と鬼人族シリーズ

巴月のん

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鬼人族のメンバーの恋

【巳編】捻れた好き*12*

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プリンを食べながらじっと彼の方を見る。
ぱっと見は、暴走族には見えない。まぁ、本人が上手く隠しているということもあるんだろうけれど。背も結構高いし、クラスで人気があるのもよく解る。

(この人が私の義兄あに・・・うん、確かに、バレたら大変なことになりそうだから、結果的に、学校で内緒にしてもらったのは正解かも。)

しばらく無言だった錦蛇君が、何故か、前のめりになって聞いてきた。

「あのさぁ、正直に言ってほしいんだけれど、俺のことをどう思ってんの?俺が巳園を妹と思えないという理由についてはどう考えている?」

突然近くなった距離に戸惑いしつつ、今脳内で思ったことを素直に伝えた。

「え、えっと・・・正直に言うなら、学校では人気者で、私とは同級生ということしか接点がない人。で、多分、理由は・・・同級生が妹になるというのが嫌なのかなぁと」

(だから、彼が家族になると解った時、びっくりしたんだよね。)

「あーまー、巳園ならそう言うよなぁ、あまり接点もなかったし」
「なんで遼河が口を挟むんだよ」
「いいじゃん。ちなみに、コイツ人気あるんだけれど、付き合いたいとか思わない?」

何故か、錦蛇君を押しのけて、猿渡君が質問してきたが・・・さすがにそれはない。

(うーん、確かにカッコいいとは思うけれど・・・クラス別で接点もないし、兄になった人だしなぁ・・・。)

「うーん。思ったこともないですね」
「・・・・・・え」
「・・・・・・え」

何故か目を丸くしている錦蛇君にこっちまで丸くなってしまう。
何故か猿渡君があんぐりと口をあけながら念を押すように再び聞いてきた。

「えっとぉ・・・こいつ、これでも人気があるんだけれど・・・興味ない?」
「人気はすごいなとは思うけれど、家族だし・・・」
「・・・・・・」

何故か沈黙が降りてきた。
険しい表情を見せる錦蛇君に、冷や汗をたらして顔を背けた猿渡君。

(あれ、何、この気まずさは・・・・でも、私・・変なこと言ってないよね?)

異様な雰囲気に戸惑っていると何故か錦蛇君が猿渡君をどけて、こっち側の席へ座ってきた。

「・・・・いくらなんでも、認識が浅くないか」
「え、でも、接点なんてないし・・・そっちもあまり家族ということを言いたくなさそうだったし・・・」

なぜか凄みのある声で話しかけられて、思わず言葉尻が萎むように声が小さくなってしまった。
しかも、何故かどんどん距離をつめられて、椅子から立ち上がることができない。

「か、翔、落ち着け、落ちつけよ・・・・巳園からしてみれば、当然のことだと思うぞ?」
「・・・なぁ、遼河・・・これ、落ち着けると思うか?コンビニで気づかれてなかった上に、友人どころか同級生としての認識?俺、どんなに人気があろうと、もてようと、たった一人に気づかれてなかったらマジで意味ないと思っているんだが、どうよ」
「・・・まーあー。で、でも、ちゃんと話もしてないし、行動で示していないお前が悪いし」
「つまり、ちゃんと行動で示せばいいわけだな」

彼らの会話はどう見ても、自分を無視している。一体何の話なのかさっぱり分からないが、錦蛇君が怒っている、それも多分、私に対して・・・ということだけはなんとか理解できた。

(あれ、モテてるつもりだったのに、私の反応にがっかりしたとか?いや、でも・・・。)

首を傾げていると、いきなり首ねっこを掴まれて引き寄せられた。

「うわっ・・・・!!」
「頭では理解してるつもりなんだが・・・まったく、意識されていないってのもムカつくな」
「え、あの・・な、何のこと・・んっ・・・・・んっんんーーーー!!!!」

こつんとおでこをぶつけられたと思ったら、いきなり口を塞がれた。
それがどういう意味を持つかなど、考える余裕もない。
息が出来ない。でも、離してくれないから呼吸ができない。
抗議しようと、何度も胸を叩くが、効果などなく、向こうは平然と続けている。

ようやく離れた・・・と思ったら、息を整える間もなく、また角度を変えて口を塞がれた。
苦しい・・・と思っていたその時、向かい側にいる猿渡君の声が聞こえてきた。
助力に感謝しつつ、錦蛇君を睨むが文句を言う気力はない。
ちなみに彼は平然としていた。解せぬ。

「おいおーいっ、かけるさかるな、やりすぎだ!!ここは公共の場!!」

私が呼吸を整えたのを見計らってか、また近づいてきた。
今度は何だと警戒していると、顎を掴まれた。
訳が分からないままじっとしていると、ぬるっとした感触が唇に当たるのが解った。
まさかと思いながらごわごわと目を開けると、ドアップの錦蛇君の顔と、舌が見えていた。

(な、なに、なんなの・・・え、なに、ないがあったの?というか、今されたのって・・・!!)

「き、き・・・・な、なんで・・・キス・・・?」
「・・・唸り声がうるさいから、鼻で息をして。はい、もう一度」
「え、えええ?」

頭が未だに混乱しているのに、錦蛇君は平然としている。
しかも今度は右の手首を掴んできた。
・・・ちなみにずっと手に握っていたスプーンもポイッと机に放り投げられた。
そして、またキスされた。

(しかも今度は舌まで入れてきやがった!!!!もう遠慮しているこっちがバカみたいじゃない!しかも、どう考えても女好きのケダモノだ!絶対そうに違いない!!)

訳が解らずパニックになって、猿渡君の方を見ると、あーあというように頭を抱えていた。

「・・・お前なぁ・・・巳園が泣きそうな顔だぞ」

猿渡君の一言で、ピタッと錦蛇君の動きが止まった・・・

(やっと止まってくれた・・・・!)

「うう・・・・なんで、なんでなの・・・もう、わかんないよ!!!!」

もう何も考えられない。
頭が混乱して、処理が追い付かない。

気付けば、ぽろぽろと涙がこぼれていた。
さすがにもうキスは止めてくれるらしい、錦蛇君は手首を掴んでいた手を外してくれた。
だが、隣に座ったままなのは変わらない。
何故か、ため息をついて質問してきたが、その意図さえ全く分からない。

「・・・巳園、なんで俺がキスしたと思ってんの?」
「知らない・・・わかんないよ・・・女の子ならだれでも良かったとか・・・あ、また、嫌がらせ?あのプリンの時みたいにからかったとか?」
「・・・・うわぁ、巳園、その答えは悪手・・・!!」

今度は、猿渡君が必死に首を振り、手を伸ばしている。
間違った答えを言ってしまったと一瞬ビクッとしてしまったが、錦蛇君は机に伏して額をぶつけていた。

「もういい、俺が悪かった。最初っから、遼河が言うようにストレートにはっきり言えばよかったんだな、そうしたらこんなまどろっこしくてややこしいことになることもなかった」
「いや、それに気づく前にキスしなければもっとややこしいことにはならなかったと」
「黙れ、遼河」
「事実だろ、コレは誤解されても無理ないっつーの。鬼人族の幹部とあろうものがなさけねぇ。もっとはっきりストレートにすばっと言ってやれよ」
「・・・・・?」

のろのろと起き上がった錦蛇君はこちらを見て、さらりととんでもないことを言った。

「巳園奈津、俺がお前を妹だと思えないのは、お前を女の子として意識しているから」
「・・・・はい?」
「だから、お前を妹だと思いたくないし、思ったことは一切ない」
「えっと・・・・女の子としてというのは・・・」
「彼女になってほしい、触りたい、キスしたい。俺のものにしたい。お前とセックスして結婚して子どもを作るっつー関係になりたい。さすがにここまで言えばお前でも通じるだろう?」



・・・・・・巳園奈津、高校2年生。血液型は呑気なO型。



平凡極まりない私ですが、どうやら・・・・嫌われていると思った義兄あにから告白されたようです。
しかも・・・・人生初のキスまでされてしまったし・・・私のファーストキスがぁ・・・



というかですねっ!!!!



(怒涛の展開でどうしたらいいのか、わからないっ!!!!神様、私なんか悪いことしましたかっぁああああああ!誰か、私をここから救い出してぇえええ―――!!)




「なに、この展開は――――――――――――――!!」



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