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リクエスト小説
シンデレラと王子~IF物語~(後日談:ガラスの靴)
しおりを挟む「きれー」
「きれいだねー」
「当然だろう、香帆・・・ゲフン、お前達の母様のものだぞ」
王子と王女が部屋の中央に飾ってあるガラスの靴をうっとりと眺めていることに気づいた八尋は、それが目のまえにいる子ども達の母のモノだと説明すると、王女が目を輝かせている。
王子も乗り気な声ではないものの、妹の王女のフォローのためにと、質問してきた。
「おしえてー」
「・・・母様とのお付き合いはいつからなの?」
急かしてくる王女に目を細めながら、八尋は誕生日パーティーが初めての出会いだと話し、まだ幼い2人には解りもしないのに、これでもかと香帆との出会いの素晴らしさを力説していた。
「・・・ということだ。そして、このガラスの靴は、母様にデートの約束の証としてもらったものなのだ。いわば、初めてのプレゼントというやつだな。それ以来大事にずっと飾っている」
「すてき!!」
「なんで、両方あるの?約束なら、普通は片方残すよね・・・ここに両方あるっていうkとは、母様は裸足で帰ったの?」
王子の鋭いツッコミに、八尋は一瞬固まるが、それも愛ゆえだよと誤魔化して微笑んだ。突っ込んだ王子は疑いの目で、八尋の方を見ているが、まだ幼い王女の方はうっとりと飽きることなく、ガラスの靴を眺めていた。とそこへ、ドアが開く音が聞こえる。全員が振り向いた時には香帆がお茶と共に、部屋の中へ入ってきていた。
「失礼します、陛下・・・あら、王子も王女もここにいらしたのですね。丁度よい時間ですし、みなさんでケーキを食べましょうね」
「お母様っ!」
「母様」
「香帆たんー!!!」
香帆は幼い王女と王子には微笑んだが、当の王様である八尋に対しては右腕でマテをするように待機させた。
「・・・あなた、子どもの前では何というのでしたか」
「・・・・・・うう、妃・・・です。でも、でもっ、名前を呼びたいよう」
「陛下、夜まで我慢なさいませ」
抱き着いてくる王女を微笑ましくあやしながら、ケーキの用意をしていた香帆はふと、ガラスの靴に目を向けた。
「あら・・・まだ処分されていなかったのですか?」
「妃、そ、それについては、その、後で説明するから・・・今はその、よしなさい」
「父様にプレゼントしたのではないの?」
「え、ああ。そういうことですか。・・・そうですね、そういうことにしておきましょう」
「やっぱりプレゼントされたのですね!わぁ、デートにガラスの靴・・・すてきだわ!!」
歯切れが悪い八尋を訝しく思っていると、王女のテンションが高いことで、八尋が過去を脚色して美化した内容を伝えたのだと悟った。八尋に微笑みながら、香帆はケーキを差し出した。
「さ、今日は陛下の大好物のチョコケーキですわ、どうぞお召し上がりくださいな」
「香帆・・・いや、妃よ・・・・その、あれだ、あれだよ・・・子ども達の前では・・な、解るだろう?」
「私への愛がまだおありなら、くだくだ言わずにととっと食べて下さいませ」
にこにこと微笑みながら「あーんしてくださいな」と、口を開かせようとしてくる香帆に逆らえるはずもなく。愛する香帆のために我慢とばかりに、八尋は心の中で泣き叫びながら、チョコケーキを頬張った。しかも、心優しい妃は、せっかくですからお代わりもと、差し出してきた。
香帆が内心で怒り狂っていることに気づいた八尋だが、拒否すればさらなる地獄が待っていることはわかりきっていた。心を無にし、何度も差し出されるスプーンを飲み込んだ。
「美味しいですわね?」
「ううっ・・・おい、しいです・・・」
そんなヘタレな王様としっかり者の王妃を見た王子と王女は顔を見合わせた。ただし、王女はうっとりとした笑顔で、王子は引きつった顔をみせていたが。
「わたしも母様のように、素敵な人にガラスの靴をプレゼントしたいなぁ」
「・・・なんとなく真相が解ったような気がするが・・・母様には聞かない方がいいな」
おわれ←
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