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リクエスト小説
あかずきんちゃんと狼~IF物語~
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※なろうの方で、苺たると様からリクエストをいただいて作った話です^^
「香帆、不本意だろうが、冴帆おばあちゃんとこにワインとパンを持って行ってくれ」
「いやですよ。なんで、私が行かなきゃいけないんですか?」
「それはお前があかずきんちゃんだからだ」
「赤ずきんちゃんって歳でもないんですが」
「仕方がない、そういう世界にいるんだから・・・帰ったら志帆の夕食が待っているぞ」
「仕方がないですねぇ」
真帆が真剣な顔で言うため、香帆はしぶしぶ立ち上がった。
赤い頭巾をかぶって、乗り気でないおつかいに出かけることにした。途中で、友達とおしゃべりしたり、買い物したりしたせいですっかり辺りは夕方です。よほど乗り気がしないのがありありと伝わってきますね、ええ、わかりますとも。
それに痺れを切らしたのは、狼の八尋。
「香帆が全然来ない!!もしかして攫われた?それとも、可愛い香帆のことだからナンパされたとか。ぐぬ・・・どうしよう、会いに行った方がイイかな?でも真帆さんに怒られそうで怖い。なぁ、どうしたらいいと思う?」
八尋がうろたえながらも聞いた相手は、何故か猟師の癖に八尋の親友である虎矢。こっちは興味なさげに林檎を食べながら寝転がっていた。
「さぁな。どうせ沙帆さんのところへ行きたくないからギリギリまで来ないつもりなんだろ」
「えー、そうしたら、香帆の可愛い赤ずきんちゃんが見れねーじゃんか」
「知るか」
「ヒドイ。俺のこの恋のときめきをどうしてくれるのー。香帆たんに一目ぼれしたあの運命の瞬間、俺は狼にした作者を恨んだ。どうせなら、香帆をお姫様に、俺を王子様にして欲しかった」
「・・・多分それは作者と香帆ちゃんファンが許さないと思うぞ」
「リアルな意見を持ち込まないでっ!」
わっと泣いている八尋を余所に、香帆がすたすたと通り過ぎるのを見た虎矢は敢えて沈黙を貫いた。
その方が面白いからというのは言うまでもない。無論、虎矢の意図に気づいた香帆もさり気にサムズアップしつつ、消えていった。
「うう。香帆たん、会いたいよう・・・赤ずきんちゃんをスマホに撮るまでは帰れないっ!!」
「あほらし。あ、今夜の夕飯はカレーかぁ。莉里ちゃんが待っているからもう帰る」
「ええー、一緒にまちぶせしようよ?」
「俺は猟師。本来なら敵であるところを撃たないだけありがたいと思え」
そういいながら消えていった虎矢。
八尋はブーブー言いながらも、とことんまちぶせすることに決めたようで、草むらにもぐって待機している。
一方の、香帆は冴帆の暑苦しい抱擁にぐったりとしていました。
「んもう、香帆ちゃんったら、なかなか来てくれないんだからっ!!そうそう、今日のお土産は、シンデレラのドレスに、白雪姫の衣装よっ。きっと似合うわぁ」
「だが、断る」
「暖炉に捨てないで!私の力作が~!」
「では、永遠にさようなら」
冴帆の悲鳴を余所に、そっけない香帆さんはすたこらと帰り道を歩いています。と、その途中で見つけたのは隠れたようで隠れていない狼の尻尾。
「・・・・やっぱり、八尋だ」
尻尾の主を探してみれば、待ちくたびれたのか、ぐーすかとスマホを持ったまま寝ていた。こういう寝顔だけ見るとカワイイんだけれど・・・と思いながら、香帆は自分のスマホを取り出した。
八尋の顔をパシャリ。
画像をチェックして満足した香帆は、かごから取り出した。何故か、途中で会った親友の莉里からもらったマジックセット。
「きっと役に立つからと言われたけれど・・・こういうことですか」
香帆はノリノリで八尋の顔に落書きをし、満足してからスキップで帰って行きました。すっかり日は暮れ、夜もそのままひたすら寝ていた八尋は朝に虎矢に起こされるまでまったく気づかないまま。
「ぎゃあっははっは・・・っ!!!」
「・・・何を朝っぱらから笑ってんの」
「だって、お前の顔っ・・・・・!!!!!」
「ふへ・・・・?」
猟師が腹を抱えて笑うとかいいのか・・・と思いながら、八尋は湖を覗いた。その瞬間、ぎゃーと悲鳴が出たのは当然のことで。その悲鳴が聞こえたのか、可哀そうに小鳥が何匹か飛んで行ってしまった。
「これ、これ、どうしよう!!!!」
「しらねーよ」
「殺生な!!あっ、そうだ、冴帆さんの家に行けばいいんだ!」
ダッシュで冴帆の家に向かった八尋の背中を見ながら、虎矢は神妙に手を合わせた。
「・・・・・アイツもこりないなぁ」
そして、冴帆の家に着いた八尋だが、何故か、嗚咽を漏らしている冴帆に困惑状態だった。
「ど、どうしたんすか、冴帆さん。」
「うう、八尋?聞いて頂戴っ、香帆ちゃんが酷いのよー衣裳をこれっぽちも着てくれなくてっ!!昨日も、あれやこれや頑張って作った力作を燃やされてっ!!!」
「・・・どんな服を?」
「シンデレラのドレス、白雪姫の衣装、おまけにバニーガール」
「なにソレ、超見たかったっ!!!!あわよくば、カメラに収めたかった!!」
「そうでしょうっ!!香帆ちゃんったら、いけずなんだから・・・あら、どうしてあんたそんな顔になってんのよ?」
「あー、どうも、寝ている間に誰かかにやられたみてーで。そうだ、これ落としたいんで、洗面所貸してくれますかね?」
「・・・・・もったいないじゃないの。マジックにしてはよくできた化粧よ。そうだわっ、確かちょっとゴリラ用のドレスがあったはず・・・・ちょっと着てごらんなさい。あら、似合う」
「え、あの、いろいろ突っ込みたいんすが」
「うーん、この色・・・いえ、こっちの方が似合いそうねっ、ちょっとお待ちなさいなっ!!」
スイッチが入ってテンションアゲアゲな冴帆と裏腹にテンションが下がりっぱなしの八尋はこっそりと逃げ出そうとしたが時は遅し。
逃がさないとばかりに、衣装を着せられる八尋。まさに踏んだり蹴ったり。
「んなぁあああああ、俺は香帆のを見たいのであって、自分が着せられたくはないぃいい!!」
そして、家に帰った香帆はというと、ご褒美に志帆手作りの料理を堪能していたのでありました。
「美味しいです♪やっぱり、一仕事した後は一段と美味しく感じますね」
END
「香帆、不本意だろうが、冴帆おばあちゃんとこにワインとパンを持って行ってくれ」
「いやですよ。なんで、私が行かなきゃいけないんですか?」
「それはお前があかずきんちゃんだからだ」
「赤ずきんちゃんって歳でもないんですが」
「仕方がない、そういう世界にいるんだから・・・帰ったら志帆の夕食が待っているぞ」
「仕方がないですねぇ」
真帆が真剣な顔で言うため、香帆はしぶしぶ立ち上がった。
赤い頭巾をかぶって、乗り気でないおつかいに出かけることにした。途中で、友達とおしゃべりしたり、買い物したりしたせいですっかり辺りは夕方です。よほど乗り気がしないのがありありと伝わってきますね、ええ、わかりますとも。
それに痺れを切らしたのは、狼の八尋。
「香帆が全然来ない!!もしかして攫われた?それとも、可愛い香帆のことだからナンパされたとか。ぐぬ・・・どうしよう、会いに行った方がイイかな?でも真帆さんに怒られそうで怖い。なぁ、どうしたらいいと思う?」
八尋がうろたえながらも聞いた相手は、何故か猟師の癖に八尋の親友である虎矢。こっちは興味なさげに林檎を食べながら寝転がっていた。
「さぁな。どうせ沙帆さんのところへ行きたくないからギリギリまで来ないつもりなんだろ」
「えー、そうしたら、香帆の可愛い赤ずきんちゃんが見れねーじゃんか」
「知るか」
「ヒドイ。俺のこの恋のときめきをどうしてくれるのー。香帆たんに一目ぼれしたあの運命の瞬間、俺は狼にした作者を恨んだ。どうせなら、香帆をお姫様に、俺を王子様にして欲しかった」
「・・・多分それは作者と香帆ちゃんファンが許さないと思うぞ」
「リアルな意見を持ち込まないでっ!」
わっと泣いている八尋を余所に、香帆がすたすたと通り過ぎるのを見た虎矢は敢えて沈黙を貫いた。
その方が面白いからというのは言うまでもない。無論、虎矢の意図に気づいた香帆もさり気にサムズアップしつつ、消えていった。
「うう。香帆たん、会いたいよう・・・赤ずきんちゃんをスマホに撮るまでは帰れないっ!!」
「あほらし。あ、今夜の夕飯はカレーかぁ。莉里ちゃんが待っているからもう帰る」
「ええー、一緒にまちぶせしようよ?」
「俺は猟師。本来なら敵であるところを撃たないだけありがたいと思え」
そういいながら消えていった虎矢。
八尋はブーブー言いながらも、とことんまちぶせすることに決めたようで、草むらにもぐって待機している。
一方の、香帆は冴帆の暑苦しい抱擁にぐったりとしていました。
「んもう、香帆ちゃんったら、なかなか来てくれないんだからっ!!そうそう、今日のお土産は、シンデレラのドレスに、白雪姫の衣装よっ。きっと似合うわぁ」
「だが、断る」
「暖炉に捨てないで!私の力作が~!」
「では、永遠にさようなら」
冴帆の悲鳴を余所に、そっけない香帆さんはすたこらと帰り道を歩いています。と、その途中で見つけたのは隠れたようで隠れていない狼の尻尾。
「・・・・やっぱり、八尋だ」
尻尾の主を探してみれば、待ちくたびれたのか、ぐーすかとスマホを持ったまま寝ていた。こういう寝顔だけ見るとカワイイんだけれど・・・と思いながら、香帆は自分のスマホを取り出した。
八尋の顔をパシャリ。
画像をチェックして満足した香帆は、かごから取り出した。何故か、途中で会った親友の莉里からもらったマジックセット。
「きっと役に立つからと言われたけれど・・・こういうことですか」
香帆はノリノリで八尋の顔に落書きをし、満足してからスキップで帰って行きました。すっかり日は暮れ、夜もそのままひたすら寝ていた八尋は朝に虎矢に起こされるまでまったく気づかないまま。
「ぎゃあっははっは・・・っ!!!」
「・・・何を朝っぱらから笑ってんの」
「だって、お前の顔っ・・・・・!!!!!」
「ふへ・・・・?」
猟師が腹を抱えて笑うとかいいのか・・・と思いながら、八尋は湖を覗いた。その瞬間、ぎゃーと悲鳴が出たのは当然のことで。その悲鳴が聞こえたのか、可哀そうに小鳥が何匹か飛んで行ってしまった。
「これ、これ、どうしよう!!!!」
「しらねーよ」
「殺生な!!あっ、そうだ、冴帆さんの家に行けばいいんだ!」
ダッシュで冴帆の家に向かった八尋の背中を見ながら、虎矢は神妙に手を合わせた。
「・・・・・アイツもこりないなぁ」
そして、冴帆の家に着いた八尋だが、何故か、嗚咽を漏らしている冴帆に困惑状態だった。
「ど、どうしたんすか、冴帆さん。」
「うう、八尋?聞いて頂戴っ、香帆ちゃんが酷いのよー衣裳をこれっぽちも着てくれなくてっ!!昨日も、あれやこれや頑張って作った力作を燃やされてっ!!!」
「・・・どんな服を?」
「シンデレラのドレス、白雪姫の衣装、おまけにバニーガール」
「なにソレ、超見たかったっ!!!!あわよくば、カメラに収めたかった!!」
「そうでしょうっ!!香帆ちゃんったら、いけずなんだから・・・あら、どうしてあんたそんな顔になってんのよ?」
「あー、どうも、寝ている間に誰かかにやられたみてーで。そうだ、これ落としたいんで、洗面所貸してくれますかね?」
「・・・・・もったいないじゃないの。マジックにしてはよくできた化粧よ。そうだわっ、確かちょっとゴリラ用のドレスがあったはず・・・・ちょっと着てごらんなさい。あら、似合う」
「え、あの、いろいろ突っ込みたいんすが」
「うーん、この色・・・いえ、こっちの方が似合いそうねっ、ちょっとお待ちなさいなっ!!」
スイッチが入ってテンションアゲアゲな冴帆と裏腹にテンションが下がりっぱなしの八尋はこっそりと逃げ出そうとしたが時は遅し。
逃がさないとばかりに、衣装を着せられる八尋。まさに踏んだり蹴ったり。
「んなぁあああああ、俺は香帆のを見たいのであって、自分が着せられたくはないぃいい!!」
そして、家に帰った香帆はというと、ご褒美に志帆手作りの料理を堪能していたのでありました。
「美味しいです♪やっぱり、一仕事した後は一段と美味しく感じますね」
END
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