香帆と鬼人族シリーズ

巴月のん

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待ちに待ったクリスマス(後編)

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今日は待ちに待ったクリスマスということで、八尋はそわそわと玄関をうろうろしていた。父親は友人と旅行へ行くといって病院を休んてて不在。
本当は駅で待ち合わせようかと思ったが、さすがに昨日の今日だし、お泊りの約束(ここ大事!)なので、香帆が八尋の家へ来ることになっている。

「あっ、香帆、メリークリスマス!」
「メリークリスマスです、八尋先輩」

白いコートを羽織り、荷物を持ってやってきた香帆を見た八尋はすでにデレデレだった。もしここに、莉里や虎矢がいたらキモイとツッコんでいただろう。(いないことが残念である←)

「どうぞ~(うっわ、本当に荷物持ってきてる!お泊りだ、オトマリ―!!)」
「あれ、なんかお見舞いに来た時より綺麗になってるし、あ、布団も新しく買い替えたんですね!」
「はっはっ、ちょっと掃除して、布団も買い変えたのー」

八尋はすでに一昨日期待を込めて大掃除を終えていたとか、昨日は買い替えた布団の中で寂しく寝ていたなんて言わない。ついでに前の布団の匂いを嗅いで香帆が嫌うかも知れない・・・なんて妄想からダッシュで買い替えたなんてことも絶対口にできない★

「さすが八尋先輩、綺麗好きなんですね~これは女性にもてて当然です」
「ふはっ?!チガウからね、香帆だから綺麗にしてるんだよー?」
「どういう意味ですか?」
「俺、家に連れてきたのも部屋に入れたのも、香帆だけだもん」
「・・・・・・ほんとで、すか?」
「ホントホントー(だって今まで外か女の部屋だったしぃ・・・だなんてイエナイ)」

荷物を脇において、白いコートをハンガーにかけている香帆を見ながら八尋は首を縦にふって頷いた。

「昔はともかくも、今の俺結構いい感じよ。香帆のお蔭だね」
「あはは、それ自分で言っちゃうんですか。さすが女狂いのタラシですね」
「・・・・香帆さん、お願いだからイジメナイデクダサイ」

きょとんとしている香帆に天然かとがっくりしながら、八尋は香帆の服装を眺めた。

香帆の服装は可愛らしいボンボンがついたピンクのセーターに、グレイ色のミニスカートに黒いストッキングだった。髪の毛もいつものおさげじゃなく、おろした状態でリボンをつけている。
何気にボンボンがついているので、セーターと合わせたのかもしれない。少しだけピンクのリップを塗ったのか、ぷるんとしている唇が何気に目を引いた。

八尋はジュースを準備するといって、階段を降りていった。香帆はそれを見送った後、座る場所を迷った末に、ベッドに上がって座ることにした。掛け布団がおもわぬ柔らかさだったのでおもわず頬ずりしてみた。

「わ、ふっかふっか・・・干したのかな、気持ちいい」

ガチャと音がした時、八尋が何故か固まってしまった。布団に頬ずりしている香帆はどうみても猫のように横たわって座っているようにしかみえなかった。しかも、スカートが少し乱れ、裾がめくれていることに香帆は気づいていない。

「・・・・えっろ・・・・。」

八尋が思わず口にした言葉に香帆も気づいたのかあわててスカートを直した。ヒリヒリする頭を抑えながら八尋は香帆へジュースを差し出したが、香帆はまだ拗ねていた。

「もう・・・・八尋先輩ってば、本当に油断も隙も無いですよね」
「香帆さーん、もう拗ねないで―!!」

しょんぼりと肩を落とす八尋にため息をついた香帆はコップを受け取った。

「改めて、メリークリスマスです」
「メリークリスマス!」
「今日は家でのデートってことで、ゲームにピッタリかと思って、コレを持ってきました!」
「・・・サイコロトーク?!」
「ええ、こういうのは嫌いですか?」
「嫌いじゃないけれど・・・・あれ、このサイコロって手作りなの?」
「はい、実はこれ、莉里が八尋先輩にプレゼントって作ったものなんですよ」
「・・・あの小娘が?ちょっと見せてくれる?」

八尋が不安そうな表情でサイコロを見てみると・・・やっぱりというかなというか、アレだった。犬猿の仲とまではいわないが、バトル仲間である莉里が素直に作るはずがないのだ。

「やっぱりあの小娘はすげーな。出てくる目の確率までかなり計算して俺に不利な内容だけれど、言えないってこともないっていうギリギリのテーマをしっかり書き込んでやがる」
「それに気づける八尋先輩も凄いと思いますよ」
「・・・香帆に不利な内容もあるけれど、これはいいのー?」
「覚悟の上ですよ、八尋先輩」
「・・・うーん、しかし、これどうやって判断するのかな」
「出されたテーマで言いたくないもしくは言えないって思ったら負けということでどうでしょう?」
「イイね。当然、罰ゲームありだよね?」
「じゃ、私が勝ったら八尋先輩は何をしてくれますか?」
「思いつかないけど、とりあえず、1日香帆の言うことを聞くってことでいいー?香帆の場合は何をしてくれるのー?」
「そうですね。何をして欲しいですか?」
「・・・メイド服で1日ご奉仕とか、ナース服で添い寝とかやってほしいことはたくさんあるんだけれど、今はとにかく香帆を愛でたいなぁ」

ぎゅっと香帆を引き寄せて抱きしめた八尋はよほど我慢しているらしい。それに気づいた香帆は苦笑しながらも、頷いた。

「いいですよ。もし、私が負けたら大人しく愛でられますね」

成立!とばかりにやる気になった八尋がじゃんけんで勝ったため、先にサイコロを振った。

『初めて○○した話~族長編:はじめてキスした話~』

「・・・・ちっちゃい字でなんで付け足してるのさ、あの小娘」
「初めてキスしたのっていつ誰ですかー?」
「香帆さんノリノリですね・・・中1の時に先輩からされました」
「その人が初めての人とか?」
「香帆さんの番ですよ、どうぞー」

八尋が否定しなかったことに香帆はふーんと楽し気に笑っている。それがどういう感情を孕んでいるかまでは掴めなかった。香帆がサイコロを振ってでてきたテーマはというと。

『あきれてものも言えない話』

「・・・・中学生の時にお兄ちゃんの店でちょっと3回ぐらい、期間限定のバイトをしていたことがあるんです。その時に見るからにドピンク頭の学生服の男と、胸を強調したスーツの美女が入ってきたんですよね。特に学生の方はすっごい悪目立ちする髪の毛の色だったし、迷惑な客だったので未だによく覚えています」
「ぎゃーーーーーー!!」
「その人達は気づかれていないと思っていたようですけれど、隠れてやっていたことはバレバレでしたね。その人は連れてくる彼女をひっかえとっかえて、やっぱり同じパターンに持ち込んでいたので、あれは彼なりのルーティンかなんかなのかなと思うのですが。最初に胸揉みとティープキス、角の個室が取れた時は騎乗位とかフェラとか・・・。お蔭で事後処理が大変でしたよ。臭い消しとか、床の掃除とか」
「・・・・(過去の俺の脳みそを叩き割ってやりたい。なんで気づかれていないって思ったのー!?)」
「スゴイなって思ったのは、支払いを全部自分のカードでポンッと出していたことぐらいですかね。むかついたので、全部何も聞かずに一括払いで落としたんですけれど、あの1回だけで2ケタ行く金額をあっさりと支払ったのでこれまたムカつきました。こっちは頑張って臭い消したり清掃しているのに!と」
「・・・・・清掃とレジ担当もシテタンデスネ」
「ちなみに、金額上乗せするから代わりにホテルの予約しといてって言われたこともありますよ。何故かここ最近は来ていないみたいですが、あの迷惑だったピンク頭のお客様は元気なんでしょうか」
「き、きっと今は健全に過ごしていると思われますです、ハイ」

にこにこと笑っている香帆に対して八尋が何を言えようか。だらだらと流れる汗を必死に拭いながら八尋は次いくよーとばかりにサイコロを振った。

『きっかけは○○~族長:香帆への告白のきっかけ編~』

「だから、ちっちゃく後足しする理由は何なのー!?」
「そういえば、告白された理由が未だに思い当たらないって莉里ちゃんに話したことがあります」
「あ、そういうことねー。えっと、引き出しに・・・あった」

思いだしたように、八尋はテレビ台の引き出しから可愛らしいハンカチを取り出して香帆の前に見せた。それに香帆も思い当たったのか、目を丸くさせていた。この目の前にあるピンクの水玉ハンカチはかつて、香帆が血まみれになっていたとある学生を助けた時に手放したものだったから。

「このハンカチって!
「覚えていてくれた―?あの時は怪我を手当てしてくれてありがとねー」
「・・・私は、八尋先輩が覚えていたことに驚きです」
「ひどっ!!さすがに恩人の上に胸キュンした初恋の子を忘れる気はないよー」
「・・・・初恋?」
「俺の初恋は香帆だからねー。嘘じゃなく大マジで・・・香帆も俺のこと覚えていてくれたのー?」
「・・・さっき言ったように、ドピンクの頭が目立っていましたから」
「初恋を知ってからは、ほんっとうに香帆だけだからそこだけは信じて?」

そっと香帆の顎を持ち上げてついばむようになんどかキスしてくる八尋に香帆は困ったような表情でポツリと呟いた。

「何故、後輩の私なのかなって。ずっと手を出さなかったのに、ハロウィンにわざわざ告白した理由って何だろうなとずっと疑問に思っていたんですよ」
「うーん、本当はね、俺をちゃんと見てもらった上で、香帆の誕生日まで待とうと思ったんだよな。卒業して、仕事すれば何かプレゼントと一緒に告白できそうだし。でもね、あの日どうしても我慢できなくて、告白したのさー香帆が可愛すぎてたまんなくて!」

頭をなでてくる八尋に香帆はちょっと後ろめたい気持ちになった。

(今さら言えない。この人が中学生の時に初体験した人がまさかの小学校の時の友達のお姉さんで知り合いだとか。友達の家に行った時に廊下でかちあったこともあったから、お店でもすぐに気づいたとか・・・この調子だとこの人、怪我をした時が初対面だとか思ってそうだなぁ・・・。)

「・・・私だって、まさかの八尋先輩と付き合うことになるなんて思わなかったですよ。遊びだと思っていたからここまで続くとか予想外でした」
「うっぐ。遊びじゃないよー?香帆に対しては本当に本気だからね」
「それ、聞き飽きたのでもういいです」
「・・・うう、香帆さんヒドイ」
「とかいいながら、服の中へ手を入れようとしてるじゃないですか」
「だって、昨日でお触り禁止は解除されたでしょー?」

ベシッと手を叩くが、効果はない。というか、胸を触られるのはこれがハジメテなのに、さらっとやってしまう八尋はやっぱり女慣れしてるんだなと内心でびっくりする。
そのままブラの中へと手を伸ばして触ってくる手の感触に香帆はほんのりと顔を赤くしたが、すぐに八尋を見上げて耳元で囁いた。

「んっ・・・やっ・・・これ以上はダメです、夜でなきゃ・・」
「・・・まぁいっか。夜のお楽しみってことで。というか、もうサイコロトークはいいのー?」
「サイコロトークの目的はもう終わったんでいいです。それより、八尋先輩のアルバム見せて下さい」
「あ、やっぱり目的あったのね。ええ、俺のアルバム―?別にいいけれど見ても何もないよー?」
「いつからピンク頭だったんだろうとか、赤ちゃん時代の八尋先輩とか探すと面白いと思います」

丁度八尋のベッドの下にある引き出しに入っているのか、アルバムとともに卒業文集とかが机の上に放り投げられた。好きに見ていいということなのだろう。八尋の胡坐の上に座っていた香帆はそのままアルバムに没頭し、八尋はテレビを見ながら時々、香帆を触りながら、香帆の質問に答えていた。

「これは、中学生の時ですか?」
「あーそれね、確か小学校6年生の時かな。初めてバイクを見て興奮している時。ちなみに、これマスターのバイクね」

八尋は結構覚えてるもんだねーといいながら話していると、ふと目に入った写真に目を丸くした。

「・・・・あれ、コレ・・・よ、横向きだけれど香帆だよね!?なんで、俺の隣にいるの?なんで!?」
「えっ・・・・あ。コレ、あの時の・・・」
「あの時のって、どういうこと!これ、俺が中学1年生の時で初体験の時の彼女の家で撮ったヤツだよ?!」

八尋はコカンが萎む感覚を感じていたがそれを気にしている暇はない。香帆に問いただすと、何度か目を逸らされたが、必死に懇願してようやく話をしてくれた。

「八尋先輩の初体験のお姉さん、私の同級生のお姉さんなんですよ。で、たまたま同級生の家に行ったら、エッチする声や音が聞こえて。彼氏かなと思ったんで気にすることなく、友達とゲームをしていたんですよ。で、お腹すいたからお菓子を取りに行こうとしたら、廊下でピンク頭、上半身裸の八尋先輩とあって、言われたんです。カメラある?写真撮りたいんだけれどって。それで同級生に伝えて、カメラを持っていったら、同級生のお姉さんから一緒に取ろうよって誘われました。その写真は貴方と同級生のお姉さんに巻き込まれて撮った時のですね」
「も、もしかして・・・この時から、俺のこと知っていたのー?」
「少なくとも、私にとっての先輩との初対面はこの時です」
「すっごいすっごい恥ずかしいんだけれど、ナニコレ、写真まで一緒に写っておいてなんで気づいてなかったの、俺!!!」

香帆は遠い目をしながら、揺さぶられるままになっていた。ようやく落ち着いた八尋は香帆を降ろして、何故か目の前で土下座し出した。

「まったく気づかなくてゴメン。俺にとっての初対面はあの怪我を手当てしてもらった時だったから、店とかこの写真とかまったく気づかなかった」
「ああ、うん・・・やっぱりですか」
「その分、これから一生かけて大事にするから」
「・・・一生?」
「そうだよー。はっ、ま、まさか別れる前提でとか?いやいや、俺は別れるつもりないよ?かなり本気だって言ったでしょ?結婚はもちろん、一緒に老人ホーム入るまでちゃんと考えてるからね!?」

必死に説得する八尋に香帆は目を丸くした。ここまで言われるとは思っていなかったから。まさかの一生宣言に香帆はぽろぽろと涙を零した。びっくりした八尋はあわてて、タオルで香帆の顔を拭いている。その間に香帆から聞かされた話は八尋にとって衝撃的なものだった。

「・・・先輩から告白を受けた時は、遊ばれ覚悟だったけど・・・後輩として接してもらえた期間があったので、少し別れた後も気まずくないかなと・・・思ってました。でも、髪の毛も変えてくれて、付き合いが長く続いていて、禁欲期間も守ってくれて・・・今、告白を受け容れてよかったって思いました」
「・・・・手当してもらった時から禁欲していたからね、禁欲期間なんてどーってことないよ~」
「今夜のパーティーが終わった後はお楽しみのお泊まりですしね」
「香帆さんっーーーー心を読まないでぇ!!」

きゃーんと虎矢が見たらキモイというぐらい乙女チックに自分の頬を手で挟んでいた八尋だが、香帆は気にした様子もなく、恥ずかしそうに八尋に近寄って囁いた。


「・・・今夜は優しくしてくださいね」


八尋がパーティーを入れたのは間違いだったかもと苦悩するのはこの後すぐ。そしてパーティーの後、酔いつぶれた香帆を家に連れ帰り、寂しく添い寝する未来もこの後すぐだ。



・・・・・うん、香帆が酔いつぶれて寝てしまったのは予想外デシタネ。(棒読み)





「結局こういうオチで終わるのねっ!!!ちきしょう!!」







追伸、2人がやっと結ばれたのはクリスマスの次の日の朝でした。


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