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待ちに待ったクリスマス(前編)
しおりを挟む今日は八尋があれほど待ち望んでいたクリスマスイブ。
クリスマスは香帆がお兄ちゃん達と約束しているからということでイブにデートしようということでお互いに示し合わせて楽しみにしていた。
そして、デート当日。
普通ならデートで浮かれるのが当然のはずなのに、香帆は困惑していた。
待ち合わせの時間なのに、八尋先輩が来ないことなんてありえないと思いながらスマホを取り出す。しかし、そのスマホのラインにも変化がない。これが10分程度ならまだいいと思うがさすがに20分すぎるとなると不安が募るというもの。
ここまで来たら電話した方がいいのだろうか。そう思い、電話してみても・・・
「・・・・・あれ、出ない、なんでですかね・・・?」
おかしいと思い、今度は虎矢さんに電話してみる。こちらはすぐに出てくれた。
「もしもし・・・あっ、虎矢さん。実は、八尋先輩が来ないんです・・・いえ、ありえないと言われても本当に待ち合わせ場所に来ていないんですよ。ええ、電話しても出なくて・・・はい、はい。じゃ、お店の方に行ってみます」
一旦電話を切って、ブロッサムの方へと向かう。前に何度か八尋に連れられて行ったことが何度かあるので、店の場所も覚えていた。
「・・・あの、マスターさん、こんにちは」
「おう香帆ちゃん。俺も虎矢から連絡をうけて探したけれど、こっちにはいねぇなぁ」
「何かあったのでしょうか」
マスターと2人で腕を組む。確かに辺りを見回しても八尋がいる気配は感じられない。念のため幹部用の部屋や、八尋の休憩部屋も見たが不在だった。
マスターと香帆は顔を見合わせて悩みあっていたが、ふとマスターが思いだしたように叫んだ。
「うーん・・・あっ!もしかしたら、香帆ちゃんのお兄さんと会っているとか?」
「え、どういうことですか!?」
目を丸くした香帆はマスターから経緯を聞き唖然としていた。
一番上の真帆お兄ちゃんはともかくも、まさかの志帆お兄ちゃんまで会っていたとは知らなかった。しかも、冴帆お兄ちゃんが邪魔する可能性さえあると言い残していたとか。
そこまで言われて、兄と連絡を取らないなんてことはできない。香帆はすぐさま、真帆に電話を掛けた。
「もしもし、真帆お兄ちゃん?冴帆お兄ちゃんがどこにいるか知ってる?え、何故って、八尋先輩とちっとも連絡が取れないからだよ。・・・・本当に、知らないの・・・うん、わかった。」
眉間に皺がよった香帆の顔を見て、いい反応じゃないと気づきつつも、どうしたかと質問するマスターに香帆はため息をついた。
「真帆お兄ちゃんはびっくりしていました。そばに志帆お兄ちゃんもいたみたいで、2人ともしらないと。冴帆お兄ちゃんについては、2人が連絡を取ってみるといってくれています」
「冴帆さんってどんな人なんだい?暴走族で有名な人とは言え、詳しくは知らないんだが・・・」
「あの兄達の中では一番メンドクサイ人ではありますね」
それしか言えることがないですと呟いた香帆の顔は珍しく真っ青になっていた。と、そこへやってきたのは虎矢と莉里だった。
「虎矢さんに莉里ちゃん・・・デートの途中だったのに、ごめんなさい」
「いやいや、親友の俺としてもほっておけることじゃないし。しっかし、おかしいな」
「八尋先輩の家に行った方がいいんでしょうか」
「・・・行けば。隆を貸す」
「莉里、ごめんな」
「いい。ここで、見捨てる、ただの馬鹿。そのかわり、明日やり直し」
「やっぱり、莉里は俺の最高の彼女!もちろん、今晩連絡するから明日絶対デートしようね。香帆ちゃん、送っていくからバイクに乗って」
きっぱり言った莉里を抱きしめた後、虎矢は先に外へ出た。莉里とマスターの励ましを背に、香帆もまた外へと出ていった。
バイクの走る音を聞いた莉里は心配そうに座り込んだ。それに慌てたマスターは莉里を心配するが、そこはさすがに莉里の答えにズッコケた。
「大丈夫?」
「・・・・・お腹、ヘッタ」
「えっ、心配していたんじゃなかったの?!」
「・・・・心配して、何になる? 心配する、族長、戻るの?」
至極まっとうな言葉にぐうの音も出なかったマスターはしぶしぶと莉里にサンドイッチと珈琲を出した。
「これ 族長に ツケ。 よろしく」
「・・・・・なるほど、八尋がコテンパンにされるわけだわ」
マスターは遠い目でポツリと呟き、莉里が差し出してきたコップにお代わりを注いでやった。
ピンポーン!
「・・・出ないですね」
「おかしいな、鍵がかかっているってことはもう外に出てるってことなのに。部屋もカーテンが閉まっているから間違いなく外にいるはずなんだが」
「・・・・待ち合わせ場所、一回戻ってみます」
「OK。・・・くそ、俺のトークも既読がついていない。本当に珍しいぞ、こんなこと」
気づけば、約束の時間からすでに二時間が経過している。それに焦りを感じながら香帆は虎矢のバイクで再び、待ち合わせ場所に戻ってきた。
「・・・いないですね」
「ああ」
辺りを見回していたその時、香帆のスマホが鳴った。それに慌てながら電話に出た香帆は、虎矢にも聞こえるようにと、スピーカー設定を起動させた。
「もしもし、志帆お兄ちゃん、どうしたの?」
『あ、香帆!!!冴帆兄貴と八尋クンの場所が解ったぞ』
「どこですか!?」
『やっぱりというかなんというか・・・冴帆兄貴の店だ』
「・・・・アソコですか。あまり行きたくなかったんですが」
『俺達も向かっているから、大丈夫。ただ、八尋クンが無事かどうかは解らんが』
「解りました。すぐに向かいます」
電話を切った香帆に、心配そうに虎矢が話しかけた。
「ど、どういうこと、無事かどうかっていうのは・・・?」
「ひとまず、バイクで向かいましょう。ちゃんと説明します」
少し遠くに置いていたバイクに乗るために戻った道で、香帆は虎矢に説明し出した。
「・・・じゃ、冴帆さんの経営している店って、仕立て屋さんなんだ?」
「ええ。本当に服作りが好きで。ただ、問題があって・・・その、冴帆お兄ちゃんの趣味が・・・」
「趣味が?」
「女装なんです・・・だから、その、男モノでも、女の子らしいカンジのやつで、いわゆるそのアレなんです」
「・・・つ、つまり、その、冴帆さんはコレ?」
言葉にせず、手の甲を反対側の頬に寄せた虎矢。つまりはオカマ?と聞きたいのだ。それが伝わったのは幸いだったが、答えがさらに衝撃的だった。
「いえ、ノーマルの癖にオネェ言葉で女装が好きなんですよ。・・・八尋先輩はお兄ちゃんが服を着せたがるような好みにはあっていないですが、嫌がらせで女装させられる可能性はあります」
そりゃ、遠い目にもなるわ・・・と思いながら、虎矢は香帆の誘導の下、冴帆の店へと向かった。冴帆の店は駅近くの大通りから一本離れた所にあるが、店は大き目で、豪華だった。それこそ下手したらラブホテルの趣向かなんかかと思われるほどの少し小さいお城みたいな外観をした店の前へバイクを止めた虎矢は、目の前にある看板に思いっきり引いた。
「えっと、『CHERRY(ちぇりー)』で、いいのかな?」
「英語の読み方はほぼあっていますが、現実逃避はヤメテクダサイ。入りますよー!」
香帆と虎矢が入った時、真っ先に聞こえたのは、冴帆の声と・・・八尋の声だった。
「ハイっ、やり直しよ~声が小さいわっ!」
「う、うう・・・は、はい、い、いらっしゃいませぇえええ」
「アナタ、やる気はあるのかしら?さっさとここを出たいのならしっかりと声をお出しなさい!」
奥の方へ行くと、半端ない美女と何故か女装してる八尋が声出しをしていた。美女の方を見ると、確かによくよく見れば、真帆にそっくりで、元々が細いせいか女性と間違われても仕方がないぐらいに合っている。しかし、八尋は・・・体型がガタイ方ということもあり、すぐに男と見破られるレベルなので、女装しても・・・とりあえず察してクダサイ、似合わないことだけは確かです。
・・・・とりあえず、八尋の無事も確認できた。
できたのはいいのだが、脱力感がものすごく半端ない。
虎矢は皮肉を込めて、香帆に聞いた。
「・・・ね、君のお兄さんを悪くは言いたくないんだけれど、空気読めない人なのかな?」
「兄の場合、例え、読めても読まない人ですから悪いどころかずる賢いかと思います。・・・冴帆お兄ちゃん、これはどういうことですか!!」
「あっ、あ、あら~香帆?ど、どうしてここが?」
「お兄ちゃんなんて嫌いです。こっちがどれだけ八尋先輩がいないって心配したと思っているんですか?」
慌てたように香帆に近づいてきた美女だが、香帆が一歩引いて微笑んだとたん泣き崩れてしまった。それを見て呆気にとられた八尋は、慣れないスカートの裾をつまみながら香帆に近寄ってきた。
「香帆、大丈夫なのか?早めに来て待っていたら、君のお兄さんが、香帆は風邪を引いたから来れない。今日は私が代わりに見定めするから店にいらっしゃいとか言われて・・・え、スマホ?スマホなら、そっちの机の上・・・あ、電源切れてる・・・なんだ、このラインのメッセージの多さ!」
「うっわ!!!騙されたんだね、香帆ちゃんのお兄さんに☆」
「八尋先輩がすっごく楽しみにしていたのと同じぐらい私も楽しみにしていたんですから、来ないわけないですよ。お兄ちゃん、なんで邪魔したんですか!」
「うっ・・・だ、だって~香帆ちゃんてば、なかなか構ってくれないし、あたしの作った服も着てくれないしっ!」
「店で3時間もひっかえとっかえコスプレさせられてみてください。会う気も失せます。それに、お兄ちゃんの作った服は全部メイド服かナース服とか。とにかくコスプレの王道ばっかりでしょう。着る気にもなれませんっ!」
「は、ハロウィンの衣装は着てくれたのに!!!」
「あれは莉里ちゃんがお揃いで着ようって言ってくれたから着たのです。ひとりだったら絶対着ませんでしたよ」
わあああんと泣きじゃくる冴帆に対し、香帆は憮然とした表情で化粧落としを探していた。八尋が化粧されていたので、それを取るためにと離れて行ったのである。兄と妹の言い合いを見ていた八尋と虎矢は現実から逃避するようにひそひそと会話していた。
「あっ、あの超可愛い赤ずきんはお兄様の作品だったのか。そりゃ似合うわ・・・ナース・・・メイド・・・そりゃ萌える、着てほしいな・・・」
「莉里も着たのか。それは見たかったな、きっと可愛かっただろうに。いや、そんなことより、八尋はさっさと着替えろよ、キモイし似合っていないから。・・・あっ、最後に写真撮らせて。莉里に送るから」
「オイ、似合わないのはともかく、なぜあの娘に送る必要が!」
「俺のデートもお前のせいでパーになったから、その八つ当たりだよ!」
「ううっ・・・俺のせいじゃないのにぃいい――――!」
パシャパシャとフラッシュをわざとたきながら撮りまくった虎矢に涙目になった八尋だったが、さらに香帆の残りの兄二人が登場し、さらに涙目になった。
「ぎゃ・・・なんで、香帆のおに~さんのお2人が!!」
「うっわ、やっぱり女装させられていたーーーめちゃくちゃ似合わねぇな、オイ!」
「・・・すまん、八尋君。さすがにこれはやりすぎだ。冴帆!」
「うう・・・いやぁん、真帆まで怒るぅうううう!」
「いやー怒って当然のことだからな、冴帆兄貴。さすがに嘘をついてまで邪魔するのはやりすぎぃ」
腹を抱えて笑い出した志帆の頭を引っ張たたきながら真帆は謝った。さすが長男と言うこともあり、しっかりとしていて、その足ですぐに冴帆に対して説教していた。それと同時に、志帆もようやく笑いを収めて真帆の説教に加わっていた。
八尋はというと、香帆の手で丁寧に化粧を落とされ、かんざしを付けられた頭を直してもらっているため、椅子から動けず固まっていた。
何故って、椅子に座っていると、八尋の頭を前からいじっていた香帆の胸が顔にあたっ・・・・ゲフンゲフン、とにかく、八尋にとっては密かな幸せな一時だったであろう。
ようやく、元通りの八尋の姿になったことに香帆たちはほっとした。ただ一人、冴帆だけが真っ赤に泣きはらして項垂れていたが、当然のように全員同情しなかった。
「冴帆お兄ちゃん、八尋先輩に謝ってください」
「うう・・・」
「でないと一生キライになりますよ」
「それは嫌・・・うう、・・・・ごめん、なさい」
「冴帆お兄ちゃん、もう二度としないでください。もしまた邪魔したら、今度こそ縁切りですからね」
「うっ・・・わ、わかりました」
「縁切り?また邪魔?」
しゅんとなった冴帆はそれ以上何も言えず黙ってしまったが、香帆はまだ膨れ面で怒っていた。首を傾げた八尋と虎矢だが、志帆や真帆が思いだしたくもないと言いつつ、説明してくれた。
「ああ・・・香帆が中3の時に、このバカ、母親代わりにならなきゃ!とか言い出して、女装して授業参観に行った上に、本当は真帆兄貴が行く予定だったはずの進路面談まで乗り込んだもんで、香帆がブチ切れて家出してしまったんだよ」
「幸いにして莉里ちゃんの所にいたからそこは安心していたんだが、これがきっかけでそれこそ家庭崩壊するかと思うぐらい盛大に喧嘩になってな。最終的には、門限付き、帰宅後に必ず電話という条件で香帆の一人暮らしを許すという形で縁切りはナシになったんだが」
「・・・そんな経緯があっての一人暮らしだったのー!」
驚く八尋に対して、真帆や志帆はただひたすら謝るしかなかった。その横ではまだ香帆の尋問が続いていた。そしてそれは思わぬ方向へ向き・・・。
「大体、なんで八尋先輩と私の待ち合わせ場所や時間が解ったんです?」
「そりゃ、いつものようにとうちょ・・・あっ、ち、違うの!」
「・・・・・盗聴器を作れるのは、志帆お兄ちゃんでしたよね・・・・もしやグルでやったのですか?」
「ちがっーーーーう!!!俺は単に香帆の一人暮らしが心配だからと香帆の部屋に盗聴器を仕掛けただけ!ひぃいい・・・兄貴のばかぁああ、なんで口を滑らすんだよ!」
「志帆お兄ちゃんもこっちに来て座ってください!」
「うっ・・・は、はい」
一瞬にして店の中にブリザードが吹き荒れたのは、香帆の目が尋常じゃないぐらい冷たくなっていたからだ。その怒りを目にした八尋はぽつりと呟いた。
「俺、ヘタレと言われてもいい。だって、香帆を絶対怒らせないようにすることの方が大事だと思うの」
「お、俺も・・・そ、その方がいいと思う。家庭平和のためにはやっぱり・・・その、奥さんが強くないとな」
「愚弟どもがいろいろと恥をさらしてしまってすまん・・・八尋君、虎矢君」
唯一マトモといえる真帆がげっそりとした表情で八尋と虎矢に頭を下げていたが、ここまでくるともう真帆の責任じゃないように思えるので、2人は謝罪は不要だと慌てて宥めにかかっていた。ようやく香帆の怒りが落ち着いた頃には夕方になっており、怒られた兄2人はボロボロになっていた。
やっと吹雪が去ったか・・・と思ってもそれを口に出さないあたり賢いと思う。とにかくとまとめるように真帆が口を開いた。
「八尋君、香帆、愚弟が申し訳ない。お詫びといっちゃなんだが、今日から3日間は門限ナシにする。もちろん、その間に香帆がマンションに戻らなくても、文句は一切言わないと約束しよう。それが俺からの詫びで。で、冴帆からは、明日の家族でのクリスマス会キャンセルでいいな?」
「えええっ、それって香帆が明日家に来ないってことでしょ??!!!!」
「当然だろう、香帆が楽しみにしていたデートをぶち壊したんだから、お前の一番楽しみにしていたクリスマス会をぶち壊されても仕方がない・・・それとも、香帆の言うように縁切りの方がイイか?」
「うっ・・・・く、クリスマス会ナシでいいです」
「志帆、お前からは?」
「俺の店、明日は家族パーティーのために貸し切りにしていたけど、パーティーするなら開ける。食事は4人分用意できるから、そこにいる虎矢君とか、莉里ちゃんも連れてお店に来るがいい」
「えっ、お、俺も行っていいんですか!?」
「香帆と八尋君をずっと二人きりにするぐらいなら、4人でパーティーしてもらった方がよほどマシ」
「志帆お兄ちゃん、いいコトいってますけど、盗聴器の方はどうするつもりですか?」
「ちっ、そっちは、仲間に言って今日中に外させる」
「お願いしますね、さすがにお兄ちゃん達を結婚式にまで呼びたくないレベルで嫌いにはなりたくはないので」
「・・・了解」
微笑んだ香帆の笑顔が、以前みた真帆の静かな笑みにそっくりなのを思いだした八尋は深く頷き、改めて誓った。絶対に、香帆を怒らせないようにしようと、この調子なら絶対何かあったら即座に別れを切り出されるレベルだろうとも思えたからだ。
ようやく怒りを解いた香帆が八尋と虎矢にパーティーをどうするかと相談し、明日の夜の6時半にお店に集合ということを決めた。
虎矢はこれから莉里と合流して明日のデートを相談するからと、バイクで去っていった。落ちついた香帆と八尋は、店の前で兄達にお辞儀してから駅の方に向かって歩き出した。
「うう・・・もう5時じゃないですか!今日は本当にお兄ちゃんがごめんなさい」
「いや、なんていうか・・・うん、香帆が・・・怒ってくれて嬉しかったからいいのー」
「えっと・・・」
「香帆も、楽しみにしてくれていたんだなって解って、ホッとした。ありがとう、香帆」
「・・・顔にゴミついているので、ちょっとこっちに顔を下げてください」
「はーい、コレでいいー?」
ゴミと言われて素直に八尋は顔を香帆の方に向けた。すると、香帆がマフラーで八尋の目を塞いだ。それにあれと思う間もなく、唇に温かい温もりが触れる。それも2,3度あって、それが夢じゃないことを証明していた。マフラーが外されたときパクパクと口を開かせた八尋の前には真っ赤になった香帆が立っていた。
「・・・っ!?」
「・・・・私からのお詫びです。じゃあ、また明日」
呆然とする八尋をよそに香帆はマフラーを巻きなおして走って行った。しばらく固まっていた八尋だったが、我に返ったとき気づいた。
「あれ?明日はってことは・・・今夜はナシなの―――?何、このじらしプレイは王道なの?それとも、俺に対する嫌がらせなの~~?!」
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