琉生と疾風の話【BL注意】

巴月のん

文字の大きさ
上 下
3 / 5

しおりを挟む




「・・・まだかなぁ」

下校時間を狙って疾風の学校に着いた琉生は門の前で次々と下校する生徒たちを眺めていた。疾風は茶髪だし、ピアスもしているからかなり目立つ。見たらすぐにわかるのだが、今のところ、疾風らしき人は出てきていない。
テストも終わったこともあり、琉生の学校では進路学習に対応する形で自由登校が認められている。琉生も例にもれず、時間を調整して早めに帰れたクチである。だからこそ、ここで待つことができている。だが、待てども待てども、疾風は出てこない。
琉生が不安に思っていると、女子生徒が一人近寄ってきていることに気付いた。怪しさ満点だなと疑っていると、ツインテールの女子生徒は琉生をじろじろと眺めてきた。
一体何を・・・と思っていると、彼女はニヤリと笑いながら口を開いた。

「思い出した。あの日女の子とハンバーガーを食べていた人!!」
「は?」
「彼からいつも聞いていたし、あの日も苦々し気に見ていたからね。そかそか~」

疾風の名前が出たことに目を見開かせる。一体どういうことだと聞くと、彼女はどうしようかなーという態度。何が目的かわからないと琉生は眉間にしわを寄せた。

「君は誰なのかな?突然話しかけてきていい気分はしないんだけれど」
「私?ふーん、疾風から聞いてないのねぇ。ふふふ。あ、疾風なら運動場グラウンドにいるよ。じゃーね!!」

ふふふ~んと鼻歌を歌いながら帰っていく彼女の後姿を見送った後、運動場へと走っていった。
ほどなくして網越しに見えたのは、何人かの仲間と一緒に笑っている疾風。
クラブのウェアを着こなし、汗をかいている様子が見えた。おそらく自主的に運動しているか、後輩の指導のためだろうと思った琉生は声をかけるか迷った。と、その時に疾風と目が合ったことに気付き、手を振ったが、睨みつけられた。
思いもしなかった反応にびっくりした琉生は振ろうとした手を困惑顔でおろした。何故睨みつけられたのかはわからないとしても、現状では邪魔になると判断した琉生は帰ろうと決めた。その矢先、声をかけてきたのは、疾風と同じ陸上部に入っている聡だった。疾風とも仲がいいので、琉生と疾風の関係も知っていて黙っていてくれているヤツでもある。

「あれ、琉生・・・お前、受験で忙しいんじゃなかったか?」
「うん・・・息抜きにと思って疾風に会いに来たんだけれど、集中しているみたいだから」
「ああ、そうなんだよね。あいつ最近せっつぱっているというか・・・余裕がないんだよな」
「そうなんだ・・・」
「疾風がお前に女ができたみたいだとかいっていたけれど噓だよな?」

は?と琉生はあっけにとられる。あの疾風がそんなことを言うとは思いもしなかったから。だが、よく考えてみれば、さっきの女子生徒もそんなことを言っていたように思う。

「・・・は?なんでそんな話がでるの?」
「え?なんかお店で女と食べていたとか・・・」
「女・・・?姉さんと食べに行った記憶はあるけれど、彼女なんかつくるわけないよ」
「だよな!あー良かった。疾風にそれ言ってやれよ。なんだか気にしていたみたいだ」

聡はほっとしていたが、琉生としては複雑な気持ちだ。そんなあらぬ誤解をする癖に自分はどうなんだというもやもやが沸き上がる。
つまりは、疾風は琉生が浮気でもしたと思っているのだろう。それは嫉妬を通り越して

「ああ、そういうことね。ばかばかしいから帰る」
「お、おい?もうすぐ終わるから、待てばいいんじゃ?!」
「さっき手を振ったのも無視されたから待ってても意味ないと思う。じゃあね」

手を振ってさっさと駅の方へ向かう。聡が何か叫んでいるか無視だ。疾風の学校から駅までは七分ほど。今から行けば、電車もちょうどいいタイミングで来るだろう。


「・・・ばっかじゃないの。変な誤解して勝手に怒って、何やってんだか。疾風なんてもう知るか。勝手にやってろ!」


悪態をつくも、その足取りが重いことは自分でも解っていた琉生だったが、気づかないふりをした。気付いてしまうと、涙がでそうで嫌だったから。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。 何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。 同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。 もうやめる。 カイン様との婚約は解消する。 でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。 愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛されない花嫁はいなくなりました。

豆狸
恋愛
私には以前の記憶がありません。 侍女のジータと川遊びに行ったとき、はしゃぎ過ぎて船から落ちてしまい、水に流されているうちに岩で頭を打って記憶を失ってしまったのです。 ……間抜け過ぎて自分が恥ずかしいです。

探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?

雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。 最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。 ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。 もう限界です。 探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。

処理中です...