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しおりを挟む「っていうことがあってさ。それでなかなか会えていないんだ」
「えー、でも。電話とかはしてるんでしょ?」
「ううん。気を使っているのか、ばったりと止んでさ。こっちからってのもなかなか踏ん切りつかなくて」
「あんたら、本当にカップルなの?言っちゃ悪いけれど、冷めてない?」
痛いところをつくポニーテルの眼鏡っ子は琉生と同じ制服を着ている。琉生のおごりであるハンバーガーを頬張り、ポテトをつまんでいる。彼女の言葉につまった琉生はぼそぼそと言い訳をしだした。
「長くても1週間ぐらいだと思ってたし。まさか、2か月とかいくと思わなかったんだ・・・」
「あらまぁ。でも、話を聞く限り、適当に聞いていたあんたが悪いわよ」
「うう…それは否定できないし、申し訳ないって思っているよ。でも、さすがに2か月も会えてないと・・・なんだか、さみしいを通り越して不安なんだよね」
「しかも、あんた、寂しくないのって聞かれて適当に答えてるしね」
「そうなんだよ!今思うと適当に言わなきゃよかったなって後悔してさ。これやばくね?って思って!なんていうか、冷められたのかなとか悪いほうに考えちゃう」
バンバンと机をたたいた琉生だが、うるさいと怒られてへたり込んだ。はぁとため息をつきながら琉生はポテトをつまみながら呟いた。
「んでね、思い切って疾風の学校に行こうかなって思っているんだよ、どう思う?」
「勝手にいけば?私には関係ないし」
適当に返している彼女に琉生はうーんと唸った。疾風の学校には合同練習で何度も行くからから、案内なしでも行けるぐらいよく知っていた。躊躇していたのは、やはり疾風の反応が怖いということが大きい。
それでも、自分が動かない限りこのなかなか会えない事態を打破することはできないとも感じている。
「よし・・・決めた、今週あるテストが終わったら会いに行こう!」
「頑張れ、我が弟よ」
「超適当な返事だね!!!こっちはすっごく悩んでるのに!」
「ふ、私には関係ないことだもの。あ、このソース美味しいわね」
拳を握り締める琉生に彼女はやっぱり適当に拍手して後はチキンナゲットに夢中になっていた。だから、琉生は気付かなかった。窓越しに外から自分を見ていた人間がいたことに。
「・・・ふーん?ほんと、どうでもいいのな、俺のことなんて」
疾風は道路を挟んで反対側にある店にいる琉生を見つけて立ち止まっていた。
不機嫌になるのは、琉生が女連れで楽しそうに会話しているのが見えたからだ。そうでなくても受験を応援するためにと2か月も我慢している。それだけに、どういう了見だと乗り込みたくなった。だが、今は連れがいることもあって勝手な行動はできない。
「お待たせ、どうしたの?」
「なんでもない。ちょっと知り合いがいたけれど、彼女連れみたいだからやめとくわ」
「その割には随分不機嫌な顏ね。本当にいいのかしら?」
「いーんだよ、ほら、行くぞ」
疾風は耳元で揺れるピアスをひと撫でした後、歩き出す。
店の方を振り返ることもなく、連れと一緒に商店街へと向かって歩き出すその足取りは諦めと怒りを感じさせた。
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