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※yuka様からのリクエスト小説です
電車に揺られる中、二人の高校生が、ノートを広げながら会話していた。片方は茶髪にピアスをつけ、黒い学ランを無造作に着こなしている。もう片方の子はグレーのチェック柄のブレザーズボンに白い半袖ブラウスをすらっと着こなし、イヤホンをかけている眼鏡男子。
違う制服ながらも毎日つるむほど仲がいいのは、陸上大会で知り合った縁によるものだ。
普段なら、はしゃぎながらいろんなことを話し合う二人だが、今日ばかりは異なっていた。琉生がいつになくノートに集中していて、なかなか会話が盛り上がらない。一方的に疾風がしゃべっているが、琉生の反応がないので面白くないと不機嫌になっていた。
「ちぇ」
「何がちぇだよ・・・」
「だって、大会終わったし、俺ら受験生だから引退するじゃん?ってことはさ?」
「ああ、これから頻繫に会う機会が減るってことだね」
「そーだぞ。それなのに会話あんまりないし!お前は俺と一緒にいたくないわけ?」
「うーん。夏休みだってほぼ会っていたし、離れるっていう実感もないからわからないなぁ」
ノートから目を離さずに淡々としゃべる琉生に疾風は膨れっ面になった。琉生の左耳にはめられたイヤホンを無理やり奪い、自分の耳へとはめる。琉生は一瞬嫌そうな顔をしたが、すぐにあきらめたようで、手元にあるスイッチで曲を変えた。疾風はどちらかというとロック系を好んでいる。
「お、この曲いいな♪」
「悪いけれど静かにして。今日の1限目小テストだから真面目に覚えたいんだよ」
「へいへい・・・」
大学志望の琉生を応援する気持ちもあるので、おとなしく引いた疾風だが、内心では面白くなかったりする。
疾風が琉生と出会ったのは、高校1年生の時の大会。同じ種目で隣のレーン同士で走っていた。記録がほぼ一緒だったということもあり、あっという間に意気投合した。しかも、会話するにつれ、通学ルートが同じ駅から電車で行くことも判明。降りる駅も一駅しか違わないということもわかり、それ以来一緒に電車通学していた。
最初は敬語だった琉生も、今ではすっかり打ち解けて砕けた口調になっている。たまにおばあちゃんの影響で方言が飛び出るので、びっくりすることもあった。
今日まで楽しく電車通学していたが、疾風は目を瞑った。琉生も受験に集中したいならしばらくは離れたほうがいいかもと思ったからだ。イヤホンを返すついでに琉生に提案してみる。
「琉生、しばらく別々に通学しようぜ」
「え、ああ。うん、別にいいよ」
琉生の返事がおざなりなのはノートに集中しているからだ。その様子にため息をついた疾風は挨拶もそこそこに駅に降りて行った。
それ以来、琉生と疾風は別々の電車に乗るようになった。
電車に揺られる中、二人の高校生が、ノートを広げながら会話していた。片方は茶髪にピアスをつけ、黒い学ランを無造作に着こなしている。もう片方の子はグレーのチェック柄のブレザーズボンに白い半袖ブラウスをすらっと着こなし、イヤホンをかけている眼鏡男子。
違う制服ながらも毎日つるむほど仲がいいのは、陸上大会で知り合った縁によるものだ。
普段なら、はしゃぎながらいろんなことを話し合う二人だが、今日ばかりは異なっていた。琉生がいつになくノートに集中していて、なかなか会話が盛り上がらない。一方的に疾風がしゃべっているが、琉生の反応がないので面白くないと不機嫌になっていた。
「ちぇ」
「何がちぇだよ・・・」
「だって、大会終わったし、俺ら受験生だから引退するじゃん?ってことはさ?」
「ああ、これから頻繫に会う機会が減るってことだね」
「そーだぞ。それなのに会話あんまりないし!お前は俺と一緒にいたくないわけ?」
「うーん。夏休みだってほぼ会っていたし、離れるっていう実感もないからわからないなぁ」
ノートから目を離さずに淡々としゃべる琉生に疾風は膨れっ面になった。琉生の左耳にはめられたイヤホンを無理やり奪い、自分の耳へとはめる。琉生は一瞬嫌そうな顔をしたが、すぐにあきらめたようで、手元にあるスイッチで曲を変えた。疾風はどちらかというとロック系を好んでいる。
「お、この曲いいな♪」
「悪いけれど静かにして。今日の1限目小テストだから真面目に覚えたいんだよ」
「へいへい・・・」
大学志望の琉生を応援する気持ちもあるので、おとなしく引いた疾風だが、内心では面白くなかったりする。
疾風が琉生と出会ったのは、高校1年生の時の大会。同じ種目で隣のレーン同士で走っていた。記録がほぼ一緒だったということもあり、あっという間に意気投合した。しかも、会話するにつれ、通学ルートが同じ駅から電車で行くことも判明。降りる駅も一駅しか違わないということもわかり、それ以来一緒に電車通学していた。
最初は敬語だった琉生も、今ではすっかり打ち解けて砕けた口調になっている。たまにおばあちゃんの影響で方言が飛び出るので、びっくりすることもあった。
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「琉生、しばらく別々に通学しようぜ」
「え、ああ。うん、別にいいよ」
琉生の返事がおざなりなのはノートに集中しているからだ。その様子にため息をついた疾風は挨拶もそこそこに駅に降りて行った。
それ以来、琉生と疾風は別々の電車に乗るようになった。
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