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魔法使いに捕まったシンデレラ
5)痛む脇腹の傷跡
しおりを挟むギシッとベッドが揺れる。布団のシーツは皺だらけになり、一部は捲れている。高級そうな枕はたくさんあるのに、どれもが枕としての役目を果たしていない。
シーツを握り、洩れそうになる声をなんとか堪えているのは、さっきから蕾を攻められているからだ。ぐちゅぐちゅと聞こえる水音が舐めかしく聞こえるのは、彼の舌使いが直に伝わってきているからだろう。
「ああ、蕩けているね。汁がこんなにあふれているよ。見てみる?」
「あっああ、ぜ、絶対……いやっ、そんなの、見たくない……っあああっ!!」
言葉がうまく紡げないのもこれまた彼が意地悪だからだ。喋っていたというのにいきなり吸い付いてきたから。震える手を必死に伸ばして、彼の頭を押しのけようとするが、彼の舌と唇は蕾を舐めたり吸ったりと一生懸命でなかなか離れてくれない。
股で整った顔立ちの彼の頭を挟んでいるというのも、なかなか慣れない。自分は佳音ほどかわいくないと自覚しているから尚更。
彼が自分を抱くのも、佳音の親友だったからでーーー
そんなことを考えたせいが、胸がツキンとする。考えないように首を振っていると、下の方から彼が見上げていることに気付いた。
「んっ…‥‥、なあに……?」
「ねぇ、麻友。今何を考えていたのか教えてくれる? もちろん、言えるよね? もしかして俺に言えないようなことを考えていたのかな?」
彼の手が股を掴んで大きく開かせてくる。彼は吸っていた汁を全部飲み干してから体のあちこちを舐めながら少しずつ上へと手を這わせながら登ってきた。体は密着したままなので、汗でべとべとのはずだ。なのに、興奮からか、身体は火照ったまま。彼の手が厭らしく胸を揉み、唇は谷間に吸い付いている。
与えられる快感にビクンと震えていると、いつの間にか彼の顏が目の前にあった。
「ねぇ、麻友?」
「な、なんも、考えてないよ…‥んっ、いたっ!」
そういったとたん痛みが走ったのは、彼が乳首に吸い付いたから。乳頭の先端を舌で弄りながら、片方のおっぱいを揉んでいる。男性的に硬く大きな手を眺めながらも、時折感じる痛みに思わず彼の背中に爪を立てた。ささやかな抗議に気付いたのか、彼は吸うことを止めて、麻友の顔を両手で挟んだ。この体勢で体重が全部かからないのってある意味スゴイとへんな方向に感心していた麻友だが、それを顏に出さずに彼に言いたいことを言ってみた。
「ねぇ、もう寝かせて……?」
「ダメ。麻友がちゃんとコレを説明しない限りはこのまま」
コレというのは、麻友の脇腹にある傷のこと。深めだったせいか、ちょっと痕が残っている。それが気になった彼に質問されたのだが、麻友としては言いたくなかったのではぐらかしたら、思いのほかしつこく、4回目も絡み合う羽目になった。
つまり、これから5回目ということで、そりゃお互いの声もかすれてくるってもんですよ。
「だって、たいしたことじゃな…あんんっ……」
「へー? こんなにはっきりと痕があるのに? これどう見たって刺された感じだよね」
傷跡に触れてくる大きな手にくすぐったさを感じながらも、麻友はキスを為すがままに受け止めた。
「あとさ……」
「ん?」
「いい加減、俺の名前を呼んで? まさか覚えてないってことはないよね?」
「ん……覚えてる。佐野さん」
「麻友」
「はいはい、左京…‥‥んっ…はっ、はぁ……」
よくできましたと言わんばかりに左京は麻友の奥に指を差し入れた。さっき舌で解したから程よく柔らかくなっている。スムーズに入る指で彼女の中をかき回すと、柔らかな胸がぷるんと揺れた。さっきよりも抱き着く力が強くなったのを確認しながら、麻友の柔らかな太ももを持ち上げ、高ぶった自身の雄をさっき解したところへと差し入れる。
程よい抵抗を受けながらも彼女の身体を抱きしめながら奥へと入っていく。彼女は苦しそうだが、口づけたり、耳を舐めたりしながら少しでも緊張をほぐす。そうでないとなかなか奥までたどり着けないから。何度も入っているというのに、彼女はなかなかの難関だった。ようやく最後まで入ったのを確認してから、彼女の顔を見ると、疲れが少し見えたものの、目は欲情を帯びて潤んでいた。これだから、たまらない。
「動くからね……大丈夫、麻友は可愛く啼くだけでよい」
耳元で囁けば、麻友は縋っていた腕にギュッと力を込め、足も密着させようと絡めてくる。
少しでも快感に抗うためにしているのだろうが、逆効果だとは言わない。
腰を揺らせば、小さく喘ぎ声が漏れる。ああ、可愛い。堪えようとしているが、この部屋は防音完備。いくらでも出せばいいのに、敢えて我慢するあたりがまた可愛い。
「やっ、はげ、しいよっ……っ…‥あ、あああっん、んんーーーッ!!」
激しい腰づかいに、何度も流れ落ちる汗。密着して感じる彼の匂いと身体。それら全部、嫌いなわけじゃない。むしろ好き。だけれど、彼はきっとそうじゃないのだろう。
だって、彼は自分がイキそうになる時に限って、ぎりぎりで止めてくるのだから。絡み合っていても、温度差があるなと感じるのはこういう時だ。翻弄されているのは自分だけで、彼はベッドの上では優越感を持って操っている。
……普段は佳音に頭が上がらないぐらいヘタレなくせに。
「麻友、ダメだよ。もう妥協できないんだから」
「や……は、やく」
「ダメ。イきたいなら、この怪我痕の説明をしてくれ」
どういうわけか、彼……左京はこの傷をかなり気にしている。一体何故、ここまで気にするのだろうか。もしかして、佳音に何か聞いたのかと思ったのだが、思い直した。彼女はあのことを思い出したくないはず。だとしたら絶対言っていないに違いない。それに、右京さんにも言っていないのにこの人に話すとは思えない。
考えことをしていると、彼の男根が弱いところを攻めてきた。擦ってはまた止める。その動作を繰り返しながら、身体を愛撫している。本当に余裕があって嫌な人。
それにいい加減解放されたい。そう思ったから言える範囲で言おうと決めた。
「前に、ちょっとトラブルで、刺された、だけ…‥それ以上は、んっあ、いい、たくなっ……い、や、んっ……」
なんとか口にしたとたん一気に腰の動きが激しくなった。かと思うと、いきなり抜いたものだから、汁がどろっとあふれ、太ももにも流れてきた。何をと思ったら、今度は四つん這いにさせられた。何をと思う間もなく、性急につっこまれ、激しく腰を打ち付けられた上に果てた。
本当、何を考えているのかわかんないよ、この人!!
麻友がぐったりと布団に沈んでいると、左京がちょっと拗ねながらも、隣に寝転がってきた。
「強情だなぁ」
「……なんで、この傷跡についてこだわっているの?」
「ライブの練習の休憩の時に、シノが言っていたんだよ。傷跡があるからたまに脇腹を気にするんだよなって」
「元凶はシノかぁ。今度シメておこう」
合点がいったとばかりに麻友は拳を握り締める。だが、左京としては複雑なのだ。シノは左京が麻友の彼氏だからこそ話してきたんだろう。だが、自分と麻友はどちらかというと恋人というより、セックスフレンドに近い関係。事実、麻友はライブをしていることも、練習で夜忙しいこともなかなか言わない。そう考えたら、シノやハナの方が麻友に近い。それがちょっとどころかかなりもやもやした。シノが知っているだろうとばかりに話してくるのもイラっときた。
「麻友、今度からちゃんと練習とか予定とかある時は教えて。あいつらに何かを言われても何も言えないのはムカつくから」
「ああ…そっか、一応彼氏ってことになってるから」
「―――そうだよ、だから教えて。俺のことも予定も教えてあげるから」
そういいながら麻友の鞄からスマホをかりて、自分のスマホのスケジュールを同期させる。幸い、麻友も自分のスケジュールをスマホに入れていたのでお互いにリンクさせるのは簡単だった。
「これでいいよ。俺のことで知りたいこととかってある?」
「んー特にないかな」
そういいながらも、麻友は左京に返してもらったスマホを操作する。左京のスケジュールを見るとけっこう予定が詰まっていた。見ると、会議やら会食やらとどうみても仕事関係の内容が多いことに顔をひきつらせた。これだけ忙しいなら、そりゃ彼女作っても意味ないなと納得した。そりゃあ、性欲を発散させるぐらいが精々…と考えた時、昨日の予定をみてみると、仕事が入っていた。
「え、昨日仕事あったのに、ライブの練習を見に来たの?」
「ああ、たまたまなくなったからね」
「あ、良かった。さすがに仕事を潰してまで来られるのも困るし、気まずいから」
ほっとすると、左京が腕枕する形で抱きしめられた。眠気もつよくなってきたので、スマホを放り出して、右京の胸に顔を埋めて目を瞑った。ポンポンとあやされながら、深い眠りについた。
次の日の朝、講義が別だからと左京と別れて、講義室へ行く。丁度佳音も同じ講義をうけているので来るはずなのだが、嫌に遅い。もうすぐ先生が来るのにどうしたのだろうと佳音に電話をするが、なかなか出てこない。
嫌な予感を感じた麻友は立ち上がり、講義室を出た。なかなかでない電話を一旦切って、今度は別の人に電話を掛ける。
「もしもし、あ、右京さんですか。佳音とは一緒にいますか?」
「いや、いない。昼から入れ替わるつもりだったが……佳音に何かあったか?」
「佳音が電話に出ないんです。こんなのは珍しいから、調べていただけないかと。……できますよね、佐野グループの御曹司なら」
「愚問だな。すぐに手配する。何かわかったら折り返し知らせるから、君も知らせてくれ」
「了解です」
さすができる人は違うと思いながら、再度佳音に電話を掛けようとしたら、スマホが鳴った。画面を見ると佳音の名前が出ている。すぐに電話を受けると、息を切らしたような声が聞こえた。
「ま、まゆ、どうしよう、どうしよう。あの人が、いるの!」
「あの人……って、まさか、あいつ?」
「そう、なの。大学に行ったら、あの人が、いて。怖くて」
「今、どこ? ちゃんと隠れているんだね? そこを動かないで。鍵をかけて絶対部屋から出ないで!あと、ちゃんと右京さんに電話して来てもらいな!」
佳音から告げられた所は、E棟4階の部屋。幸いここからは遠くない。さっさとここから出よう。そして、佳音を追い掛けている奴をなんとかして止めなければならない。意を決した麻友は階段を駆け下りて、外へと出た。
あの日もこうやって探していた。そして、今日もまた同じように探している。
「まっさか、左京に聞かれて話した後すぐにこれとはね」
ここ最近感じたことのなかった痛みを思い出しながら脇腹をさする。
今はひとまず佳音を探そうと、E棟に向かう。階段をあがり、4階へと着いた時、廊下にいた男と目が合った。
「……久しぶり」
「よう、久しぶりだな、お前からも言ってくれよ。佳音にココ開けるようにって」
「それをあたしが聞くとでも?」
「だよなぁ。となると、あの時と同じように聞くしかないか、コレで」
そういいながらナイフを取り出してきた男。ああ、本当にあの時と全く変わらない顏に性格と行動。
本当にもったいない男だ。DVさえしなきゃ、佳音の愛情を受けることができたというのに。
だが、今の佳音の彼氏は右京さんだ。
震える体をなんとか抑えながらも、麻友ははっきりと目の前にいる男に忠告を促した。
……それを素直に聞く男とは思えなかったけれど。
「ほんと、いい加減に佳音を諦めなよ」
「わかってんだろう……断る。それぐらいで諦められるならぁああああ、警察いってねぇんだようううううううう!!」
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