【R18】階段で転げ落ちたシンデレラ

巴月のん

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7)佳音のもやもやと謎の美女

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「こんにちは。なぜかショッピングモールに来て、しかも手つなぎでドイケメンと歩いております、佳音です」
「誰に向かって言ってるのさ。あと、俺の名前を呼べ」
「そんな、こんな目立つところで名前なんて呼べませんよ、先輩で十分です」
「色々棘があるように聞こえるが」

呆れ顔の右京だが、手を離す気はないらしい。はぁと佳音はため息をつきながらも、某スッターバのドリンクを飲んでいた。カフェオレフラベチーノがまた美味い。
ちなみに右京は普通のアイスコーヒー。しかも見たところ無糖のミルクなし・・・大人だな。
突っ込まれた佳音は何でもないとばかりに歩き出した。

「んーん、キノセイデスヨ」
「いいとこ見つけたから行くぞ」

右京が店に入りたいというのでふり返ってみればそこは女性用のブティック。ちょっとおまちくださいな、右京さんや?そこ、有名なブランドものですよ?確かにかわいいし、珍しく下着とお揃いで着れる服もありますけれども、ここってテレビで出るようなアイドルが着る服が多いんですよ?お願いだから私のお小遣いを考えてー!!

「佳音、本音が全部ただ漏れだ。あと、お前に払わせるつもりはない」
「おごられるのもまっぴらですから、残念!」
「いいから行くぞ」

どこぞの某芸人が言うようなことを言った佳音は後から湧き上がる羞恥心からつないでいた手を外したくなったが、右京の力に適うはずもなく、結局店の中へ入るはめに。

「うわぁ」
「佳音、下着はこっち。Cのーーいたっ!」
「なんで目ざとく調べてるんですか、先輩!」
「揉めば大概は解るだろう?ブラだって外すし」

わきわきと手を動かす右京にちょっと引いた佳音がパジャマコーナーに行こうと右京の傍を離れようとしたその時、後ろにいた人にぶつかってしまった。

「あっ、すみませんすみません」
「こちらこそ、ごめんなさ……あら、右京じゃないの」
「げっ!」

なんでここにいるんだよと珍しく顔をびっくりさせている右京と長い三つ編みを垂らした美女を見比べる。あれ、知り合いだったみたい。
佳音は、先輩のこんな顏初めて見たなと思いつつ、なぜかもやもやする胸の内を必死に抑え込んでいた。
なぜか美女はこちらを見て目を輝かせているが、右京は慌ててその女性を引き寄せ、佳音に対しては少し待ってくれと言い残して隅の方へと逃げていった。


あれ、これもしや私いらないパターンでは?


さっきよりももやもや感が増えているが、これはあれだ。体を結んだせいできっと余計な独占欲でもでてきたんじゃなかろうか。あれだ、どら〇もんのジャイ〇ン的なお前のものは俺のもの的な。

いかんいかん。こんなことを考えている時点で私らしくない!

佳音は首を横に振って迷いを断ち切ることに決めた。すなわちここを出て帰るのが一番安全で楽な道に他ならない!そうと決めたら動かねばなるまいと、佳音は入口に向かって速足で進んだ。
が、人生そこまで甘くないということで。タイミングよく、2人が戻ってきた。

「だから、まだ早いんだって!」
「え~でも、佳音ちゃんと話したいし・・・あら、佳音ちゃん、どこへ行こうとしてるの?」
「あ。いえ、お邪魔なようなので帰ろうかと・・・」
「いやいや、全然邪魔じゃない。むしろこの人の方が邪魔だから」
「ほんっとう、口が悪いんだから。佳音ちゃん、この子迷惑かけてないかしら?」

ええ、本当に迷惑かかりっぱなしですよ・・・と口を開こうとしたら、なぜか右京が口を塞いできた。しかも、唇で。つまりあれですよ、キスです・・・訂正、ディープキスでした。

「んっ・・・・ん、ん~””!!!」

佳音は息苦しさから足をバタバタさせるが、そんなことで止まる男じゃない右京はたっぷりと時間をかけて佳音が逃げられないぐらい唇に吸い付いていた。だが、ここで一番スゴイのは、そのキスを動画に撮っていた美女だろうか。

「いいのが撮れたわ~。後で左京にも送っておきましょう」
「ヤメロ」
「ちょ、ちょっと待ってください!それは私も困りますっ!」
「あら、大丈夫よ。佳音ちゃんの顏にはちゃんとモザイクかけておくわ」
「あ、それなら大丈夫か・・・」
「佳音、そういう問題じゃねぇって」

右京から騙されるなとばかりに頭をガシッと掴まれる佳音。オゥと無駄にいい発音で唸ってみたら、目の前にいた美女がクスクスと笑いながらさりげなくシャッターを押して・・・・

「ちょっと待ってください、今写真撮りましたね?何故私とこの人を撮る必要性が?」
「見せてよ。あ、いいじゃん。俺に頂戴」
「後で送るわ~」

うふふと笑いながらスマホを何やら操作している美女。どうも恋人同士ではなさそうな雰囲気ですが、一体誰ですかね・・・?と唸っていると、美女のスマホが鳴り出した。どうやら、着信音のようで、いったん黙っておく。
美女はスマホに耳を傾けるとぱっとさらに顔を綻ばせた。

「あら、左京。丁度よかったわ。今ね、佳音ちゃんと右京と会ったのよ。え、来たいって、ここはね、えっと」
「待て、左京に電話するな、おい、左京、お前は来なくていい!ってか、早く帰れよ!」
「ええ~」

佳音の耳にはどうも美女の残念そうな声に交じって左京の声が聞こえる気がした。だが、そこで止まる右京ではない。ついには美女からスマホを取り上げ勝手に切ってしまった。おお、強い・・・!というか、やはり優しいんだなぁと思いながら佳音は一人満足気に頷いていた。

が、突っ込みは入るもので。

「うん、左京さんは忙しいから、ここに来れないものね。うんうん」
「そうじゃねぇよ!」「違うと思うわ」
「え、じゃあなんで?」

仕事に関係ないなら別に来てもいいのではないかと加えつけると、みるみる右京の眉間に皺が寄りだした。・・・めっちゃイケメンなのに不細工になってる。いいのか、それは。

「先輩、美女さんが笑ってますよ」
「ふふふ、ご、ごめんなさい。右京がスゴイ顏をしていたから……ぶっ!」
「お願いだから帰ってください。まだデートすらまともにできていませんから」
「えー貴方がそんなことに気を遣うとは思わなかったわ」
「またきちんと紹介しますから」

突然敬語を使いだした右京にびっくりした佳音だったが、美女はつまらなそうな表情。うん、慣れているみたいですね、これは。
2人のやり取りに口をはさむべきじゃないなと思いつつも、今度は右京がちゃっかりしっかりと手を握っているから逃げられない。しばらく無言でいた美女も折れたのか、渋々と頷いた。

「んもう、解ったわ。じゃあ、この佳音ちゃんとのキス動画を左京に送ることでチャラにするわね。じゃあ、名残り惜しいけれど、また会いましょう、佳音ちゃん」

なぜか私の両手を握り締め、潤んだ目で見つめてくる美女。
すみません。私の方が陥落しそうです。思わずうんと頷いたの悪くないと思う。

「は、はいっ!」
「ありがとう。じゃあ、私はここで失礼しますわ。ご機嫌よう」

優雅に手を振って消えた美女を見送った佳音は思いもよらない出会いにぼーっとしていた。


「すっごい美人さん。でも、なんだかどっかで見たような雰囲気があるんだけれど」


気付けば、胸のもやもやもさっきと比べたら小さくなっているが、敢えて口には出さない。その代わり、右京に向かって微笑んでみる。

「ということで、私もかえらーーぐへっ!」

さり気に出ていこうとしたがやっぱりバレた。右京に首根っこを掴まれたまま試着室へと入れられる。一体何をと思ったら、右京がいくつかの下着とネグリジェを持って入ってきた。


あれ。これ嫌なパターンじゃね?


「さ、試着しようか」
「のぉおおおおおおおおお!!!!!」


右京が狼になったのを認識したとたん悲鳴が出るが、当然そんなことで逃がす右京では(以下略)
「かくして二人はこの後の試着はお楽しみもいろいろ含めて楽しんだご様子でした」「あ、ご心配無用です。こちらの試着室の壁は防音になっております・・・壁によほど近づかない限りは聞こえません」とは、密かに試着室でのやり取りを聞いていた店員さん談。


「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております~」


店員さんの挨拶をバックに外に出た佳音は涙目になっていた。もうあそこには行けないとぐちぐちいいながらよたよた歩いている。それを支えながらも右京は問題ないんじゃねと、けろりとしている。そういう問題じゃねぇんですよ! と、内心で突っ込みながらも、佳音はこれ以上は藪蛇なことを言うまいと口を噤んだ。


こうして、佳音は右京と過ごした二日間でかなりのことを学んだ。彼と過ごして唯一の収穫がそれとは悲しいことではあるが。



「たった二日、されど二日。明日は休もうかな」
「じゃ、俺も休もうかな」
「あ、課題あるから行かないと」
「・・・・・・・・お前な」








余談(美女と???の会話)

「うふふ」
「機嫌がいいな。どうした?」
「右京の未来のお嫁さんに会えたのよ。左京が言うようにかわいい子ね」
「ほう」
「いずれ紹介してくださるそうだから待ちましょう」
「なるほど、そういうことであれば俺も待つとしようかな」
「そうなさった方がいいと思いますわ」


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