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GL
【GL】スイカと海
しおりを挟む「涼子、行くよ!」
目を閉じれば、暗闇の中。
聞こえる彼女の声にドキッとした。
「うわ、うわわっと・・・」
「はい、GO-!!」
足踏みしながら3回転。足の裏につく砂が熱い。
とんと、背中を押される。行けの合図に応えるように足を一歩前へと出した。
後ろや少し離れた先から掛け声が聞こえる。
「お、もうちょっと先だ」
「ちょっとやばいよ、右、右!」
「いやいや、ここはもうちょっと左!」
好き勝手にからかってくる声に呆れながら、手に持った木の棒で、下をつついてみる。
振り回しても、何かに当たる気配はない。となると、まだ先だ。
「ずるいぞ、涼子!!」
「そーだよ、あたりつけるのなしっ!!」
ブーイングがあがった。
しょうがない。一歩前に進む。そろり、そろりと。
すると慎重すぎると言われた。これは近いかもしれないと思い切って前へ出て、棒を振り下ろした。
何かが割れた音に、手ごたえあったと感じた涼子は満足だったが、周りからは惜しいという声。
「あああー惜しいっ!」
「マジ、惜しかった・・・・!!」
おかしいと思い、目隠しを外すと、目の前には、砂に埋もれた男が一人。そして腹の上には割れたスイカ。
彼女を含めた面々が惜しいという理由に納得だ。
確かに、目の前にいる男に一撃食らわせられなかったことは惜しい。
「・・・確かに、惜しかった」
「おぃいいっ、涼子ぉおっ!!!!???」
残念そうな声を出しながら、腹を軽く踏んづけると、どっと周りが笑った。
もちろん、当の砂に埋もれた男は違う反応だが、砂が固まっていることもあり、すぐに反応できなかった。
その時、青と白色のシマシマを着た夏鈴が割れたスイカを切りそろえ、他の人に配っていた。
仕切り屋の夏鈴らしいと呆れながら見ていると、当の夏鈴がスイカを渡しに来た。
「素早いね、夏鈴」
「んふー、涼子も食べてよ!!」
「はいはい」
スイカを受け取り、目の前にある海を眺めながら一口食いついた。
「うまーい。」
何故か夏鈴が隣に立っていた。
思いもしなかった人物がいつの間にか隣に立っていたことに驚いた。
「・・・あんた、アイツはいいの?」
「え?」
「さっきのバカ、あんたの彼氏じゃん」
さっきのスイカの下で砂に埋もれていた奴。アイツはよく夏鈴と喋ることもあって、彼氏じゃないかと噂されている。
「えー。彼氏じゃないよ」
「ふーん。あっちはどう見ても夏鈴に気がありそうなんだけれど・・・あ、種だ・・・」
種の扱いに困っていると、夏鈴が袋を取り出してきた・・・谷間から。
思わず種を吹きそうになったが、なんとか堪えて袋に吐き出した。
袋を返しながら、疑問を口にするが、当の夏鈴はあっけらんとしていた。
「・・・・夏鈴、それ、リボンじゃなかったんだ。っていうか、なんでそこから?」
「え、だって、水着だもん。ここ以外にないでしょ?」
「・・・・男どもが見なくて良かったね」
「えー、涼子以外に見せる気ないよ」
一瞬、ドキッとした。
もしかして・・・と期待したが、すぐに考えを打ち消した。
夏鈴がそこまで考えているわけないと。
「ああ、まぁ、女の子同士だしね。」
「うーん、まあ、それもあるけど・・・涼子と来ることができたことも嬉しい」
「・・・変な子だね。」
照れくさいのを隠しながら、夏鈴の方を見ると、彼女は珍しく視線を逸らさなかった。
「本当に、本当だよ。どうせなら、涼子と2人が良かったのに」
「あっそ・・・じゃ、今度は2人で行く?」
「・・・・っ、本当に!?嬉しい!!」
ぱっと笑顔になった夏鈴は涼子の手を思いっきり握った。呆然と為すがままになっていると、他の友人から声がかかった。
「おーい、涼子、夏鈴、バーべーキューを始めるぞー!!」
「あっ、呼んでる。涼子、行こう!!」
「え、あ・・・・うん・・・・。」
手を繋げられたまま、涼子は夏鈴に引きずられていった。
(・・・・・なんだかなぁ。でも・・・・、なんだか、悪くない。)
ふと、海の方を見てみると、やけに日差しが眩しく、波に反射して海が輝いて見えた。
(・・・今度、デートに行きたいって夏鈴を誘ってみようかな。そうしたら、彼女はどんな反応を見せるんだろう。ああ、今年の夏は楽しくなりそう!!)
砂に足跡を残して、2人はバーベキューする方へと走って行った。
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