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GL
【GL】穴があったら入りたい
しおりを挟む階段の先にある廊下で崩れ落ちる。見上げると階段が目の前にあり、にらみつけることしかできない。転げ落ちたせいで脱げた上靴を探そうとすると、少し離れた先にあった。よろけながらも立ち上がろうとすると、目の前で拾われてしまった。
「あ・・・・!」
少し釣り目でくせっ毛のある女の子。肩あたりで跳ねた髪の毛が揺れている。拾われてしまったため、行き場をなくした私の手は宙に浮いてしまった。向こうのほうも私のほうに近寄ってくるので、仕方がなしに立ち止まった。
「・・・盛大に転げ落ちましたね。どうぞ」
きっと上靴を見て状況を理解したであろう、目の前の女子生徒はクスッと笑っていた。穴があったら入りたいとはまさにこのこと。
(うあぁあああああ、生徒に拾われるとか恥ずかしいっ!!)
顔を真っ赤にさせながら、上靴を受け取る。とりあえず靴を履いてから、お礼を言おうと彼女のほうを向く。
「ありがとう、立花さん」
「名前を憶えていただいていたんですね、光栄です」
「新米教師とはいえ、さすがに委員長の名前と顔は忘れませんよ」
そう言い返すと、今度は年相応にはにかんだ笑顔が返ってくるのに内心で驚いた。
・・・この子はクラスの中でもそつなく当たり障りなくこなす優等生で、友達も多いほうらしい。でも、私から見ると、誰にも近寄らせないように壁を作っているように見えた。
なんというか・・・本当の自分を見せたくないという雰囲気に近いだろうか。それもあって、笑顔がどうしても年相応に見えなかったのだけれど・・・
(なんだ・・・可愛く笑えるじゃないの。)
「・・・どうしました?」
「いいえ。あなたでもそんな笑顔を見せるのねって思って」
首を振って何でもないかのように言うと、彼女は目を見開き、そしてすぐに弧を描いたように微笑んだ。そして、なぜか私の手首をつかんで、人目のつかない階段の裏へと引っ張っていく。
いきなりの彼女の行動に驚いていると、なぜか壁のほうへ押しやられてしまった。
(え?えええっ?)
慌てふためきたいのに、悲しいかな、先生の職業柄、生徒にこんなことをされたとは言いにくい。心の中での絶叫を押し殺しながら、彼女をそろっと見やった。
すると、彼女の妖しい笑みが目の前にあって、思わず固まってしまった。
「ふふふ、私、先生のようにカンがよい人って嫌いじゃないですよ」
「えっと、どういう意味・・・」
「でも、あまり入り込まないほうがいいですよ。でなかったら・・・こーんな目にあっちゃいますから」
そういいながら、私の頬を撫でてきたと思ったら、いきなり口づけてきた。
頭が真っ白になる中、なぜか唇に触れる暖かな感触だけが異様にはっきりと分かった。
我に返った時にはもう彼女の唇は離れていた。
唖然としながらもとっさに口元を抑えたのは、またキスされるかも!?と思ったからだ。
でも、予想に反して、彼女はこちらをじっと眺めているだけだった。
「先生、私ね、欲しいものは絶対に手に入れて隠す主義なんです。だって、誰にもとられたくないじゃないですか」
「・・・はい?」
「大丈夫、大事に愛でて、絶対に誰にも本当のあなたを見せませんから。そのかわり、私の前ではみせていただきますけれど」
「ほ、ほん、とうのって・・・?」
「最初に見た時から思ってたんです。先生のあそこに指をつっこんでどろどろにして、めちゃくちゃ喘がしながら脱がしたいなぁって。でも、我慢していたんですよ。最初は優しくしてやりたかったし、がっつくのもはしたないかなぁと思いまして。でも、わかってくださったんですね。嬉しいです」
「・・・・・・(え、初対面での挨拶から目をつけられていたってこと?)」
「由香先生、安心してください。痛みなんか感じさせないぐらい・・・いえ、男なんていらないって思わせるぐらいには頑張りますから」
今度は勢いよく詰め寄って手を握り締めてくる。・・・・今までの微笑がむっつりに見えるぐらい今の彼女は輝いている。目をキラキラさせて、頬を紅潮させながら。
・・・・本当に厄介な子に捕まったかもしれない。
これ、私、やばくないですか。
「い、いいえ。間に合ってますから!」
「無理ですよ、先生。言ったでしょう、絶対に手に入れるって」
今度は、手首を舐められて、さらにのげそる。思わず持っていた教科書を落としてしまったが、慌てて拾う。でも、彼女を真正面から見れなくて・・・・思わずダッシュで逃げてしまった。
「何、あれ・・・・・見てはいけないものを見てしまった感じ・・・・!!!どうしよう、本当に穴があったら入りたいよ‥‥!!うぁああああ!!」
職員室に戻った時には精神的疲労でよろよろになっていた。思わず机に伏せてしまったぐらい。でも、この時の私は知らなかった。彼女が本気で実行してしまう未来がすぐそこにやってくることに。
・・・・本当に、穴があったら入りたい・・・・!!
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