BLGL短編集

巴月のん

文字の大きさ
上 下
2 / 4
GL

【GL】穴があったら入りたい

しおりを挟む





階段の先にある廊下で崩れ落ちる。見上げると階段が目の前にあり、にらみつけることしかできない。転げ落ちたせいで脱げた上靴を探そうとすると、少し離れた先にあった。よろけながらも立ち上がろうとすると、目の前で拾われてしまった。

「あ・・・・!」

少し釣り目でくせっ毛のある女の子。肩あたりで跳ねた髪の毛が揺れている。拾われてしまったため、行き場をなくした私の手は宙に浮いてしまった。向こうのほうも私のほうに近寄ってくるので、仕方がなしに立ち止まった。

「・・・盛大に転げ落ちましたね。どうぞ」

きっと上靴を見て状況を理解したであろう、目の前の女子生徒はクスッと笑っていた。穴があったら入りたいとはまさにこのこと。

(うあぁあああああ、生徒に拾われるとか恥ずかしいっ!!)

顔を真っ赤にさせながら、上靴を受け取る。とりあえず靴を履いてから、お礼を言おうと彼女のほうを向く。

「ありがとう、立花さん」
「名前を憶えていただいていたんですね、光栄です」
「新米教師とはいえ、さすがに委員長の名前と顔は忘れませんよ」

そう言い返すと、今度は年相応にはにかんだ笑顔が返ってくるのに内心で驚いた。

・・・この子はクラスの中でもそつなく当たり障りなくこなす優等生で、友達も多いほうらしい。でも、私から見ると、誰にも近寄らせないように壁を作っているように見えた。
なんというか・・・本当の自分を見せたくないという雰囲気に近いだろうか。それもあって、笑顔がどうしても年相応に見えなかったのだけれど・・・

(なんだ・・・可愛く笑えるじゃないの。)

「・・・どうしました?」
「いいえ。あなたでもそんな笑顔を見せるのねって思って」

首を振って何でもないかのように言うと、彼女は目を見開き、そしてすぐに弧を描いたように微笑んだ。そして、なぜか私の手首をつかんで、人目のつかない階段の裏へと引っ張っていく。
いきなりの彼女の行動に驚いていると、なぜか壁のほうへ押しやられてしまった。

(え?えええっ?)

慌てふためきたいのに、悲しいかな、先生の職業柄、生徒にこんなことをされたとは言いにくい。心の中での絶叫を押し殺しながら、彼女をそろっと見やった。
すると、彼女の妖しい笑みが目の前にあって、思わず固まってしまった。

「ふふふ、私、先生のようにカンがよい人って嫌いじゃないですよ」
「えっと、どういう意味・・・」
「でも、あまり入り込まないほうがいいですよ。でなかったら・・・こーんな目にあっちゃいますから」

そういいながら、私の頬を撫でてきたと思ったら、いきなり口づけてきた。
頭が真っ白になる中、なぜか唇に触れる暖かな感触だけが異様にはっきりと分かった。
我に返った時にはもう彼女の唇は離れていた。
唖然としながらもとっさに口元を抑えたのは、またキスされるかも!?と思ったからだ。

でも、予想に反して、彼女はこちらをじっと眺めているだけだった。

「先生、私ね、欲しいものは絶対に手に入れて隠す主義なんです。だって、誰にもとられたくないじゃないですか」
「・・・はい?」
「大丈夫、大事に愛でて、絶対に誰にも本当のあなたを見せませんから。そのかわり、私の前ではみせていただきますけれど」
「ほ、ほん、とうのって・・・?」
「最初に見た時から思ってたんです。先生のあそこに指をつっこんでどろどろにして、めちゃくちゃ喘がしながら脱がしたいなぁって。でも、我慢していたんですよ。最初は優しくしてやりたかったし、がっつくのもはしたないかなぁと思いまして。でも、わかってくださったんですね。嬉しいです」
「・・・・・・(え、初対面での挨拶から目をつけられていたってこと?)」
「由香先生、安心してください。痛みなんか感じさせないぐらい・・・いえ、男なんていらないって思わせるぐらいには頑張りますから」

今度は勢いよく詰め寄って手を握り締めてくる。・・・・今までの微笑がむっつりに見えるぐらい今の彼女は輝いている。目をキラキラさせて、頬を紅潮させながら。

・・・・本当に厄介な子に捕まったかもしれない。

これ、私、やばくないですか。

「い、いいえ。間に合ってますから!」
「無理ですよ、先生。言ったでしょう、絶対に手に入れるって」

今度は、手首を舐められて、さらにのげそる。思わず持っていた教科書を落としてしまったが、慌てて拾う。でも、彼女を真正面から見れなくて・・・・思わずダッシュで逃げてしまった。


「何、あれ・・・・・見てはいけないものを見てしまった感じ・・・・!!!どうしよう、本当に穴があったら入りたいよ‥‥!!うぁああああ!!」



職員室に戻った時には精神的疲労でよろよろになっていた。思わず机に伏せてしまったぐらい。でも、この時の私は知らなかった。彼女が本気で実行してしまう未来がすぐそこにやってくることに。





・・・・本当に、穴があったら入りたい・・・・!!





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!

かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。 その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。 両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。 自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。 自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。 相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと… のんびり新連載。 気まぐれ更新です。 BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意! 人外CPにはなりません ストックなくなるまでは07:10に公開 3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

BL短編まとめ(甘い話多め)

白井由貴
BL
BLの短編詰め合わせです。 主に10000文字前後のお話が多いです。 性的描写がないものもあればがっつりあるものもあります。 性的描写のある話につきましては、各話「あらすじ」をご覧ください。 (※性的描写のないものは各話上部に書いています) もしかすると続きを書くお話もあるかもしれません。 その場合、あまりにも長くなってしまいそうな時は別作品として分離する可能性がありますので、その点ご留意いただければと思います。 【不定期更新】 ※性的描写を含む話には「※」がついています。 ※投稿日時が前後する場合もあります。 ※一部の話のみムーンライトノベルズ様にも掲載しています。 ■追記 R6.02.22 話が多くなってきたので、タイトル別にしました。タイトル横に「※」があるものは性的描写が含まれるお話です。(性的描写が含まれる話にもこれまで通り「※」がつきます) 誤字脱字がありましたらご報告頂けると助かります。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

処理中です...