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番外編
番外編3)ビビとシャラの会話 ※本編40話前後
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たこ焼き屋の娘と紫紺の王子の事情
「ビビ、貴方は皇太子殿下とお付き合いをされていましたね。貴方にとって彼はどういう存在でしたか」
そう問うてこられたのは我らを束ねし、総女官長であるシャラ様。聖女アリア様の世話を務める側近中の側近。彼女ほどアリア様に信頼されている人はいないと目されており、事実眠っておられたアリア様を世話なさっていたのも彼女だ。
ビビは腰を折ったまま頭に浮かんだままのことを口にした。
「・・・私にとっては大事な方、です。でも、あの人にとっては私は・・・」
「とってはどうだというのです」
「逃げ場だったのではと思うことがございます」
(少なくとも、親から愛情をもらえていないと思っていた彼にとってはそうだったに違いないわ)
それを解った上で、私はあの人の好意を受け入れた。
あの人は寂しがっていた。
ずっとずっと抱かれるたびに呼ばれて、自分も呼ぶようにと言われて。
幾度肌を重ねても、あの人は繰り返しぬくもりに固執していた。
『ビビ、ちゃんと名まえを呼んで』
『ん・・・大好き、だよ。ビビ』
それがあの人にとって救いになったのかどうか私にはわからない。
それでも、少しでも癒しとなれば、安らぎとなればいいと思っている。
結果的にそれが逃げや甘えにつながろうとも別に良い。
「貴方は、殿下を愛しているのですね。ああ、そんな顔をするでない」
どんな表情だと頭をあげようとしたらそっと細長い指が目元を拭った。それでもあふれ出る涙でやっと気づいた。自分は泣いているのだと。
「・・・・わた、しは」
「隠す必要はありません。そもそも、私は貴方が生まれた時から見知っているのですよ」
笑い声とともに頬へと触れてくるその手の温かさに目を瞑った。
シャラ様はアリア様の側近ということもあり、護衛隊長である父とも仲がいい。それもあって、小さいころからよくお世話になっていたし、目を掛けられていたとも思う。
シャラはため息をついた後、言葉を慎重に選んで口にする。ビビは涙を拭いながらじっと聞き入った。
「貴方の父であるラティスは・・・お前との付き合いに反対していましたが、それは決して皇太子殿下だからというわけではありません」
「そう、なのですか?」
「まぁ、普通の父親であれば娘が誰を連れてこようと反対するでしょうね」
「・・・そこで目を逸らされたのは・・・ザン様を思い出してのことですね」
「解っているなら聞くでない」
ギロリと睨まれた瞬間即座に謝罪。一気に噴出した禍々しいものを肌でビンビンと感じるのは気のせいじゃないはず。間違いなく本性と殺気出してますよね?シャラ様!?
「失礼いたしました!」
ビビが慌てて謝ると、シャラは気まずさからかコホンと咳をしてから話を続けた。むろん、ビビも蒸し返すなど愚かなことはしない。
「・・・ザン様であれば、むしろさっさと良い嫁ぎ先を探して押し込んでいそうではある、とは思いましたがね」
「はぁ・・・・・(この人の方がすごい)」
「少なくとも私は貴方の恋を悪いとは思いませぬ。寧ろ、応援しましょう。ただ、あまりプリム様を甘やかすのはよくありません」
「皇太子殿下と・・・プリム様・・・・呼び方を変えて区別する意味は何なのでしょうか」
プリム様への呼びかけは昔から区別されていた。いや、思い起こせば、シャラ様だけではない。父も、他の人も、皇帝陛下もそうやって区別していた。だからこそ、プリム様はあれほどまでに劣等感を抱えるようになっていたのだ・・・自分が皇太子にはふさわしくないと。
だけれど、今になってみれば呼び方には意味があるようにも思える。
「・・・プリム様が大切だからこそですよ。皇太子殿下としての重圧はあまりにも重い。ケイト様がなるにしろ、プリム様様がなるにせよ・・・ずっと気を張っているのは辛いであろうと皇帝陛下の配慮です」
「・・・次期皇帝になられるならない関係なく・・・?」
「誤解していますが、皇帝陛下はできればという意味でケイト様を押していたのです。でも、それはあくまでも皇帝陛下としての判断。父親としては・・・どちらでもよかったのだろうと思われますよ」
あくまでも憶測ですがねと口にしたシャラに対し、ビビは驚いた。彼の言い方からして、そういう風には聞こえなかったから。しかし、こうして話を聞いてみると明らかにすれ違っているとさえ感じる。
「・・・プリム様は、もう少し皇帝陛下とお話しされた方がいいような気がしました」
「ええ、私もです。・・・皇帝陛下はザン様やアリア様と長い付き合いがあります。それだけに市民の生活の在り方にも理解がございます。そして、皇族としての生活が大変であることも重々承知しています。「幸せ」の形は人それぞれ。だからこそ、我が子には選べる選択肢を与えてやりたいと昔から言っておられました」
「・・・私との婚約に対しても好意的だったのはそういうことだったのですね」
ずっとおかしいと思っていたのだ。いくら私が七賢人の娘とはいえ、そう簡単に許可がおりるものかと。でも聞けば、反対したのは七賢人の方が多く、皇帝陛下や皇妃様はあっさりと許可されたとか。
「ええ。プリム様が直に選んだ人間だからこそです。そもそも今の皇帝陛下も恋愛結婚ですしねぇ・・・反対する理由などないのです」
「・・・そういえば、シャラ様もザン様や皇帝陛下と幼馴染でしたね」
「ええ。・・・説得力あるでしょう?」
珍しくふふふと笑っているシャラにビビは思わずうなずいてしまった。
「はい・・・」
「でしょうね。・・・ケイト様はともかく、プリム様は陛下たちと距離をとっておられるから、そういうおちゃめな一面があることも気付いていないでしょうね。ザン様がわざわざ教えるとは思わないし・・・そもそも数年はそれどころじゃなかったでしょう?」
「ああ、うん・・・察しました」
確かに聖女アリア様が眠られている間は阿鼻叫喚だった。主にザン様周辺が。そういう意味ではケイト様もかなり大変な環境に置かれているが、シャラ様曰く、「ケイト様はアリア様そっくりだからそれほど苦にはしてなかったでしょうね」とのこと。その意味が良くつかめずどういうことかと質問してみる。
「アリア様にそっくりとは・・・」
「アリア様は現実主義というか・・・シビアに物事をご覧になられるお方なの。だからか慣れてしまえば環境になじめる方というか・・・そうね、自分を客観的に見てどう動くのが効果的かを考えられるお方というほうが正しいかも」
・・・ああ!
確かにケイト様にもそういうところがある。妙に冷めているせいか、その場の雰囲気をコントロールできましたねぇ・・・。
あれはアリア様譲りだったのかと納得。
そう考えると、ケイト様が常々言っていた「母親似」というのは噓じゃなかったわけですか。
「まぁ、そういうお方だったからこそザン様と出会いが最悪でも徐々に気が合ったのでしょうけれども」
「最初から仲が良いわけではなかったのですね」
「そうよ。だから、貴方も気にすることはないわ。たとえ始まりがそういうものだったとしても・・・ね」
「・・・でも、プリム様には幸せになっていただきたいです」
そのためならば、婚約を辞する覚悟もあるとビビが言えば、シャラは呆れた顔でビビの頭をかき混ぜた。
「やれやれ、貴方の気の弱さは両親譲りね。もうちょっとは自信を持ちなさいな。そもそも、ケイト様にさえ付き合っていることを伝えなかったのでしょう?それはどうして?」
「それは・・・プリム様が内緒にと」
「でしょうね。その理由はお聞きになった?」
「い、いいえ・・・。婚約の段階だから言う必要がないと思ったのでは?」
考え込んでいると、シャラがコレは愉快とばかりに笑い出した。それはさっきまでの微笑みとは違う何かをたくらんだような笑い方に見えて、思わず後ずさったほど。
「ふふふ、そう思うのならばまたプリム殿下にお聞きすることね。しかし、これはなんと愉快なことか・・・アリア様にもいずれ伝えねばなるまいな」
「ヤメテクダサイ」
「ビビ、貴方はもう少し自信を持ちなさい。・・・仕事に戻ってよろしい」
「は、はぁ・・・ありがとうございました」
あっけにとられたビビだったが、すぐに仕事があることを思い出してか、慌てて走っていった。後ろ姿を見送ったシャラがクスっと笑いながら暗い方向に向かって声をかけた。ずっと動かずにいたラティスはそこでようやく口を開いた。
「・・・彼女の鈍さは貴方に似たのかしらね」
「できるなら、奥さん似であって欲しいっスね」
「ふむ。面白いから、当分黙っていましょう」
「・・・プリム様からビビの護衛を頼まれたことを?それとも、プリム様が俺に喧嘩を売ってきたことを?」
「両方ね。・・・貴方は父親としてはしゃべりたくなさそうだけれど」
「ザン様じゃあるまいし、大事な娘をかっさられる身になってくれ。第一、俺はアレを皇族にしたくて育てたわけじゃないっスよ」
「そうねぇ。でも・・・可能性はゼロではなかった。それは確かでしょう?」
「・・・くっつく可能性もあると考えていたからこそ2人が近づくのを止めなかったあんたがそれを言うんスか・・・!!」
シャラはラティスの指摘をあっさりと認めた。
「当然でしょう。そこらの貴族なんかよりよほどしっかりしていますし、何より皇妃付きのメイドだからこそ、何よりも皇族のなんたるかを理解できています。頭脳も腕もなかなかだし、貴方の娘だから家名も申分なし・・・つかわない手はないでしょう」
「・・・シャラさん、そういうことを考えているから独身のまま・・・ぎゃああっ!」
「よろしい。ならば、戦争だ」
「いやいや、そういう意味じゃなくっすね・・・あの・・・ぎゃあ、すんまんせ・・・ぎゃっ!!」
その夜、珍しく久しぶりにシャラの禍々しい気配が溢れ、ラティスの悲鳴がこだましたが、生憎と気づく者は誰もいなかった。(・・・一部の皇族を除いて)
追伸
「久しぶりに追いかけっことか楽しそうだったな」
「ザン様、どこをどう見たらそう見えるんスか!?」
「ああなったシャラを見たのは久しぶりだが、発散できたのはいいことだ。たまには相手してやれ」
「・・・・嫌っス」
「ビビ、貴方は皇太子殿下とお付き合いをされていましたね。貴方にとって彼はどういう存在でしたか」
そう問うてこられたのは我らを束ねし、総女官長であるシャラ様。聖女アリア様の世話を務める側近中の側近。彼女ほどアリア様に信頼されている人はいないと目されており、事実眠っておられたアリア様を世話なさっていたのも彼女だ。
ビビは腰を折ったまま頭に浮かんだままのことを口にした。
「・・・私にとっては大事な方、です。でも、あの人にとっては私は・・・」
「とってはどうだというのです」
「逃げ場だったのではと思うことがございます」
(少なくとも、親から愛情をもらえていないと思っていた彼にとってはそうだったに違いないわ)
それを解った上で、私はあの人の好意を受け入れた。
あの人は寂しがっていた。
ずっとずっと抱かれるたびに呼ばれて、自分も呼ぶようにと言われて。
幾度肌を重ねても、あの人は繰り返しぬくもりに固執していた。
『ビビ、ちゃんと名まえを呼んで』
『ん・・・大好き、だよ。ビビ』
それがあの人にとって救いになったのかどうか私にはわからない。
それでも、少しでも癒しとなれば、安らぎとなればいいと思っている。
結果的にそれが逃げや甘えにつながろうとも別に良い。
「貴方は、殿下を愛しているのですね。ああ、そんな顔をするでない」
どんな表情だと頭をあげようとしたらそっと細長い指が目元を拭った。それでもあふれ出る涙でやっと気づいた。自分は泣いているのだと。
「・・・・わた、しは」
「隠す必要はありません。そもそも、私は貴方が生まれた時から見知っているのですよ」
笑い声とともに頬へと触れてくるその手の温かさに目を瞑った。
シャラ様はアリア様の側近ということもあり、護衛隊長である父とも仲がいい。それもあって、小さいころからよくお世話になっていたし、目を掛けられていたとも思う。
シャラはため息をついた後、言葉を慎重に選んで口にする。ビビは涙を拭いながらじっと聞き入った。
「貴方の父であるラティスは・・・お前との付き合いに反対していましたが、それは決して皇太子殿下だからというわけではありません」
「そう、なのですか?」
「まぁ、普通の父親であれば娘が誰を連れてこようと反対するでしょうね」
「・・・そこで目を逸らされたのは・・・ザン様を思い出してのことですね」
「解っているなら聞くでない」
ギロリと睨まれた瞬間即座に謝罪。一気に噴出した禍々しいものを肌でビンビンと感じるのは気のせいじゃないはず。間違いなく本性と殺気出してますよね?シャラ様!?
「失礼いたしました!」
ビビが慌てて謝ると、シャラは気まずさからかコホンと咳をしてから話を続けた。むろん、ビビも蒸し返すなど愚かなことはしない。
「・・・ザン様であれば、むしろさっさと良い嫁ぎ先を探して押し込んでいそうではある、とは思いましたがね」
「はぁ・・・・・(この人の方がすごい)」
「少なくとも私は貴方の恋を悪いとは思いませぬ。寧ろ、応援しましょう。ただ、あまりプリム様を甘やかすのはよくありません」
「皇太子殿下と・・・プリム様・・・・呼び方を変えて区別する意味は何なのでしょうか」
プリム様への呼びかけは昔から区別されていた。いや、思い起こせば、シャラ様だけではない。父も、他の人も、皇帝陛下もそうやって区別していた。だからこそ、プリム様はあれほどまでに劣等感を抱えるようになっていたのだ・・・自分が皇太子にはふさわしくないと。
だけれど、今になってみれば呼び方には意味があるようにも思える。
「・・・プリム様が大切だからこそですよ。皇太子殿下としての重圧はあまりにも重い。ケイト様がなるにしろ、プリム様様がなるにせよ・・・ずっと気を張っているのは辛いであろうと皇帝陛下の配慮です」
「・・・次期皇帝になられるならない関係なく・・・?」
「誤解していますが、皇帝陛下はできればという意味でケイト様を押していたのです。でも、それはあくまでも皇帝陛下としての判断。父親としては・・・どちらでもよかったのだろうと思われますよ」
あくまでも憶測ですがねと口にしたシャラに対し、ビビは驚いた。彼の言い方からして、そういう風には聞こえなかったから。しかし、こうして話を聞いてみると明らかにすれ違っているとさえ感じる。
「・・・プリム様は、もう少し皇帝陛下とお話しされた方がいいような気がしました」
「ええ、私もです。・・・皇帝陛下はザン様やアリア様と長い付き合いがあります。それだけに市民の生活の在り方にも理解がございます。そして、皇族としての生活が大変であることも重々承知しています。「幸せ」の形は人それぞれ。だからこそ、我が子には選べる選択肢を与えてやりたいと昔から言っておられました」
「・・・私との婚約に対しても好意的だったのはそういうことだったのですね」
ずっとおかしいと思っていたのだ。いくら私が七賢人の娘とはいえ、そう簡単に許可がおりるものかと。でも聞けば、反対したのは七賢人の方が多く、皇帝陛下や皇妃様はあっさりと許可されたとか。
「ええ。プリム様が直に選んだ人間だからこそです。そもそも今の皇帝陛下も恋愛結婚ですしねぇ・・・反対する理由などないのです」
「・・・そういえば、シャラ様もザン様や皇帝陛下と幼馴染でしたね」
「ええ。・・・説得力あるでしょう?」
珍しくふふふと笑っているシャラにビビは思わずうなずいてしまった。
「はい・・・」
「でしょうね。・・・ケイト様はともかく、プリム様は陛下たちと距離をとっておられるから、そういうおちゃめな一面があることも気付いていないでしょうね。ザン様がわざわざ教えるとは思わないし・・・そもそも数年はそれどころじゃなかったでしょう?」
「ああ、うん・・・察しました」
確かに聖女アリア様が眠られている間は阿鼻叫喚だった。主にザン様周辺が。そういう意味ではケイト様もかなり大変な環境に置かれているが、シャラ様曰く、「ケイト様はアリア様そっくりだからそれほど苦にはしてなかったでしょうね」とのこと。その意味が良くつかめずどういうことかと質問してみる。
「アリア様にそっくりとは・・・」
「アリア様は現実主義というか・・・シビアに物事をご覧になられるお方なの。だからか慣れてしまえば環境になじめる方というか・・・そうね、自分を客観的に見てどう動くのが効果的かを考えられるお方というほうが正しいかも」
・・・ああ!
確かにケイト様にもそういうところがある。妙に冷めているせいか、その場の雰囲気をコントロールできましたねぇ・・・。
あれはアリア様譲りだったのかと納得。
そう考えると、ケイト様が常々言っていた「母親似」というのは噓じゃなかったわけですか。
「まぁ、そういうお方だったからこそザン様と出会いが最悪でも徐々に気が合ったのでしょうけれども」
「最初から仲が良いわけではなかったのですね」
「そうよ。だから、貴方も気にすることはないわ。たとえ始まりがそういうものだったとしても・・・ね」
「・・・でも、プリム様には幸せになっていただきたいです」
そのためならば、婚約を辞する覚悟もあるとビビが言えば、シャラは呆れた顔でビビの頭をかき混ぜた。
「やれやれ、貴方の気の弱さは両親譲りね。もうちょっとは自信を持ちなさいな。そもそも、ケイト様にさえ付き合っていることを伝えなかったのでしょう?それはどうして?」
「それは・・・プリム様が内緒にと」
「でしょうね。その理由はお聞きになった?」
「い、いいえ・・・。婚約の段階だから言う必要がないと思ったのでは?」
考え込んでいると、シャラがコレは愉快とばかりに笑い出した。それはさっきまでの微笑みとは違う何かをたくらんだような笑い方に見えて、思わず後ずさったほど。
「ふふふ、そう思うのならばまたプリム殿下にお聞きすることね。しかし、これはなんと愉快なことか・・・アリア様にもいずれ伝えねばなるまいな」
「ヤメテクダサイ」
「ビビ、貴方はもう少し自信を持ちなさい。・・・仕事に戻ってよろしい」
「は、はぁ・・・ありがとうございました」
あっけにとられたビビだったが、すぐに仕事があることを思い出してか、慌てて走っていった。後ろ姿を見送ったシャラがクスっと笑いながら暗い方向に向かって声をかけた。ずっと動かずにいたラティスはそこでようやく口を開いた。
「・・・彼女の鈍さは貴方に似たのかしらね」
「できるなら、奥さん似であって欲しいっスね」
「ふむ。面白いから、当分黙っていましょう」
「・・・プリム様からビビの護衛を頼まれたことを?それとも、プリム様が俺に喧嘩を売ってきたことを?」
「両方ね。・・・貴方は父親としてはしゃべりたくなさそうだけれど」
「ザン様じゃあるまいし、大事な娘をかっさられる身になってくれ。第一、俺はアレを皇族にしたくて育てたわけじゃないっスよ」
「そうねぇ。でも・・・可能性はゼロではなかった。それは確かでしょう?」
「・・・くっつく可能性もあると考えていたからこそ2人が近づくのを止めなかったあんたがそれを言うんスか・・・!!」
シャラはラティスの指摘をあっさりと認めた。
「当然でしょう。そこらの貴族なんかよりよほどしっかりしていますし、何より皇妃付きのメイドだからこそ、何よりも皇族のなんたるかを理解できています。頭脳も腕もなかなかだし、貴方の娘だから家名も申分なし・・・つかわない手はないでしょう」
「・・・シャラさん、そういうことを考えているから独身のまま・・・ぎゃああっ!」
「よろしい。ならば、戦争だ」
「いやいや、そういう意味じゃなくっすね・・・あの・・・ぎゃあ、すんまんせ・・・ぎゃっ!!」
その夜、珍しく久しぶりにシャラの禍々しい気配が溢れ、ラティスの悲鳴がこだましたが、生憎と気づく者は誰もいなかった。(・・・一部の皇族を除いて)
追伸
「久しぶりに追いかけっことか楽しそうだったな」
「ザン様、どこをどう見たらそう見えるんスか!?」
「ああなったシャラを見たのは久しぶりだが、発散できたのはいいことだ。たまには相手してやれ」
「・・・・嫌っス」
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