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最終話:小悪魔最強伝説
第5章
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不意に陽が翳った。
見上げた空には、翼を広げた緑色のドラゴンの姿が三体浮かんでいる。
地表を睥睨する様子に、孤児院の子供達は怯えてネイトにしがみ付き、フィンレーは落ち着きをなくした愛馬を宥めに掛かる。シェリルも咄嗟に、兄のジェイクの後ろに身を隠した。
ルカ達にとっては既に顔馴染み、とはいえ、突然の来訪には驚かざるを得ない。
ひゅう、と風を切って、一番小さい個体がルカに向かって急降下してきた。そのまま嬉しげに、周囲を旋回する。
『ルカ!』
「フェロール! 元気にしてた?」
『うん! 逢えて嬉しいよ』
「……何だよ、お前ら暇なのかよ」
じゃれあう一人と一頭の様子に、レフがグルルと牙を剥いた。
ベリンダが毅然とした態度で、父竜に向かって問い掛ける。
「今日は何の御用?」
すると、番の翼竜達はスルスルと体格を縮めながら、我が子を追うように地上へ降りてきた。自由に身体のサイズを変えられるとは、そんな芸当まで可能なのかと、ルカと仲間達は揃って目を見開く。ベリンダが顔色一つ変えないのは、知識人の間には既知の事実だからなのかもしれない。
象くらいの大きさまで体長を縮めた父竜は、翼を畳みながら「何」と思念波で応えた。
『縄張りをこの近くに移動したのでな』
『ご挨拶も兼ねてお邪魔したのだけど、懐かしい顔ぶれが集まっているようね』
母竜が横から、一同を眺めるように長い首を延べる。
何でもないことのように言っているが、実際に縄張りを変えるとなると、適当な土地を探し、先住者と戦い――と、それなりに手間は掛かるだろう。さすがはドラゴンといったところか。
ベリンダが呆れたように、しかし反対するでもなく、小さく肩を竦める。ルカの正面で旋回をやめたフェロールが、笑うように大きな口をニッと開いた。
『ルカ、これからは、もっと頻繁に会えるよ!』
彼だけは通常サイズのはずだが、それでも旅を終えて別れた時よりも、一回り成長したように見える。「そうだね」と同意してから、ルカはシェリルと子供達に向かって、「大丈夫だよ」と念を押した。この世界にあっても、翼竜などというのは伝説上の存在だ。生態系の外にある強大な生物がいきなり目の前に現れたのだから、怯えるなといっても無理な話だろう。
それでも、彼らもまた「魔王討伐」の協力者であり、立役者であるのは間違いないのだ。人間とも仲良くできるなら、これに越したことはない。
「そ、そうなの?」
「よろしく……」
まずはシェリルとケイシーが、恐々ながらも近付いて来る。
祖母は常々「ドラゴンのような高位の存在が、いたずらに人間と関わるものではない」との持論を展開しているが、フェロールが素直な人間の子供達に応えてやろうとする様子に、ルカは口元を緩めた。
北の魔境の魔王城から、ビアンカを従えて出てきたルカに、翼竜一家は驚き、それ以上に呆れていたけれど、まさか、わざわざ縄張りを移動させてくれるだなんて思いもしなかった。
――もしかして、僕を近くで見守ってくれるつもりなのかな。
ほっこりとした気分で、ルカは頬を緩めた。
これとは対照的に、背後では男達が、声を潜めて密談を交わしている。
「わざわざルカのために、一家全員で縄張りまで移すとは……」と、ネイトが子供達には見せられないような物騒な笑顔で呟くと、ジェイクがハッとした様子で「コイツまさか、人間に変身したりしないだろうな!?」と小さく叫び、それを受けてユージーンが眉根を押さえながら、「やめてくれ。そういうのはレフだけで充分だ」と吐き捨てた。
レフがギリギリと奥歯を鳴らしながら睨み付けるのを、フェロール達翼竜一家は、素知らぬ体で談笑を続けている。
「――なんと。不可思議な気配がするとは思っておったが、翼竜であったか」
冷ややかで凛とした声音が割って入って、ルカは弾かれたように振り返った。
足元に、魔石を使用しての瞬間移動の際に発する光の余波を纏わせながら、美しい彫像のような立ち姿を晒しているのは、国王アデルバート2世だ。今日は甲冑を脱ぎ捨て、ラフだがセンスの良いファッションに身を包んだ彼は、長い髪を後ろで一つに束ねている。いかにもオフといった出で立ちで、更には片手にラッピングの施された大小の包みをいくつも重ねているが、その美しさは少しも損なわれていない。
「えっ、アデルバート様!?」
「まぁ陛下!」
驚くルカとベリンダに対して、シェリルと子供達には声もない。翼竜の登場に続いて、であるために、インパクトがあり過ぎたようだ。確かに、国王というのは(いくら伝説級の大魔法使いの自宅とはいえ)片田舎の庶民の家を、気安く訪ねて良いものではないだろう。
ユージーン達は一様に「何をしに来やがった」という顔をしているし、ルカとしても「何でこう、次から次へと!」とツッコミたい気分だ。
「時間が取れたのでな。我の仔ウサギの顔を見に参った」
美しい黄金のベリンダとその愛らしい孫の姿を満足げに眺めながら、アデルバートは鷹揚に頷く。
基本的には、日々政務に追われているアデルバートではあったが、彼の高い能力は人材育成の面でも遺憾なく発揮されており、お陰で適度に余暇を楽しめる余裕はあるらしい。最近では、こうした時間にルカに相手をさせるのが、いたくお気に入りなのだ。
この発言を受けて、シェリルがじっとりとした視線をルカに向けてくる。
「仔ウサギ……」
「……」
何となく、あまり女の子には知られたくなかったルカとしては、黙り込む以外に出来ることはなかった。ベリンダが少々わざとらしく溜め息をついたことで、周囲の意識がそちらへ向き、密かに胸を撫で下ろす。
「あまりルカを甘やかされては困りますわ。庶民の家には、収容の限界もありますのよ?」
アデルバートが片手で軽々と抱えた、プレゼントらしき包みへの苦言である。大半はルカ宛の物だろうが、中のいくつかが自分宛ての賄賂であることを、ベリンダは見抜いているのだ。――うん、今度は何だろう。服か、靴か、アクセサリーなんかもあるかもしれない。
王宮に作られていた自分用の部屋の凄まじさを思い出して、ルカは生暖かい目で思わず宙を見上げる。
やんわりと釘を刺すベリンダに、アデルバートは不敵な笑みを浮かべてみせた。
「そなたに限って収容の限界など、無縁の話だろう。障りがあるなら、そなたからもルカに、早く王宮に出仕するように言ってやってくれ」
賄賂の理由はこれに尽きる。魔法でどうとでも出来るくせに、と言わんばかりの表情で、アデルバートは手近にいたジェイクの手に、プレゼント一式を押し付けた。人間体のレフに次いで大柄だからなのか、当のジェイクは嫌な顔をしながらも、ひとまずはクッションの横へと運んでやる。
やっぱりジェイクは大人だなぁ、などと考えていたルカは、アデルバートに一気に距離を詰められて、瞳を瞬かせた。「久しいな」と、凄味のある美貌で微笑まれるやいなや、そのまま腰を引き寄せられる。
「我の小姓になる覚悟は決まったか?」
「!!」
顔を寄せ、耳元でセクシーな声に囁かれて、ルカは反射的に頬を染めた。同時に、帰還直後の王宮で、かなり本気のトーンで迫られた時のことを思い出してしまう。
『そなたは我のものだ。誰にも渡さぬ』
人払いされた、アデルバート秘蔵のバラ園で、彼の膝の上に載せられ――レフが居なかったら、今頃どうなっていたことだろう。想像するだけで、恥ずかしさに身悶えしてしまいそうだ。
「ま、まだです……っ」
その時のことを思い出し、頬を真っ赤に染めながら、ルカは必死に抵抗した。
アデルバートの言う「小姓」が本来の意味でなら、職業としては願ってもないことだろう。しかし、この調子ではそれこそ「貞操の危機」的な問題も孕んでいそうだから危ない。
他の仲間達と同様、ルカはアデルバートに好意こそ持ってはいるが、まだそこまで思い切れてはいないのだ。
「あまり焦らしてくれるな」
恥じらうルカを、アデルバートは、まるで言うことを聞かない仔猫を躾ける飼い主のような、この上なく甘い表情であやす。
彼は本気で、ルカを小姓として召し抱えるつもりのようだ。だが、決して無理強いをしようとはしない。それは、アデルバートもまた、将来的には必ずルカを手に入れてみせるという自信があるからなのだろう。
――ちなみに、アデルバートが持参したルカへの手土産の一つは、ベルトホルト公爵令嬢・ローザリンデからの物(中身は香水)だった。
『アレを、ルカに近付けてはなりません!』
ローザリンデは、ルカが自分以外の女性――魔王ビアンカに篭絡されるのが、悔しくて見ていられないらしい。また、可愛いルカがアデルバートのものになるなら、それはそれで素敵かも、と思い始めているフシもあるようで、もはやアデルバートにとっては戦友ようなものだった。
得難い同志からの激励を思い返して、アデルバートは不敵な笑みを深める。
「――陛下!」
愛馬オフィーリアを落ち着かせたフィンレーが、慌てた様子で駆け戻ってくる。更に、ユージーンがルカを取り戻すべく、横から手を出そうとするのを、アデルバートは一蹴した。
「下がれ。不敬であるぞ」
「アデルバート様……ッ」
歯噛みする仲間達とアデルバートとの間に、一触即発の不穏な雰囲気が流れ始めた――次の瞬間。
ぱぁ、と、家を囲む林の裏手から、薄青い光の柱が立ち昇った。
見上げた空には、翼を広げた緑色のドラゴンの姿が三体浮かんでいる。
地表を睥睨する様子に、孤児院の子供達は怯えてネイトにしがみ付き、フィンレーは落ち着きをなくした愛馬を宥めに掛かる。シェリルも咄嗟に、兄のジェイクの後ろに身を隠した。
ルカ達にとっては既に顔馴染み、とはいえ、突然の来訪には驚かざるを得ない。
ひゅう、と風を切って、一番小さい個体がルカに向かって急降下してきた。そのまま嬉しげに、周囲を旋回する。
『ルカ!』
「フェロール! 元気にしてた?」
『うん! 逢えて嬉しいよ』
「……何だよ、お前ら暇なのかよ」
じゃれあう一人と一頭の様子に、レフがグルルと牙を剥いた。
ベリンダが毅然とした態度で、父竜に向かって問い掛ける。
「今日は何の御用?」
すると、番の翼竜達はスルスルと体格を縮めながら、我が子を追うように地上へ降りてきた。自由に身体のサイズを変えられるとは、そんな芸当まで可能なのかと、ルカと仲間達は揃って目を見開く。ベリンダが顔色一つ変えないのは、知識人の間には既知の事実だからなのかもしれない。
象くらいの大きさまで体長を縮めた父竜は、翼を畳みながら「何」と思念波で応えた。
『縄張りをこの近くに移動したのでな』
『ご挨拶も兼ねてお邪魔したのだけど、懐かしい顔ぶれが集まっているようね』
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ベリンダが呆れたように、しかし反対するでもなく、小さく肩を竦める。ルカの正面で旋回をやめたフェロールが、笑うように大きな口をニッと開いた。
『ルカ、これからは、もっと頻繁に会えるよ!』
彼だけは通常サイズのはずだが、それでも旅を終えて別れた時よりも、一回り成長したように見える。「そうだね」と同意してから、ルカはシェリルと子供達に向かって、「大丈夫だよ」と念を押した。この世界にあっても、翼竜などというのは伝説上の存在だ。生態系の外にある強大な生物がいきなり目の前に現れたのだから、怯えるなといっても無理な話だろう。
それでも、彼らもまた「魔王討伐」の協力者であり、立役者であるのは間違いないのだ。人間とも仲良くできるなら、これに越したことはない。
「そ、そうなの?」
「よろしく……」
まずはシェリルとケイシーが、恐々ながらも近付いて来る。
祖母は常々「ドラゴンのような高位の存在が、いたずらに人間と関わるものではない」との持論を展開しているが、フェロールが素直な人間の子供達に応えてやろうとする様子に、ルカは口元を緩めた。
北の魔境の魔王城から、ビアンカを従えて出てきたルカに、翼竜一家は驚き、それ以上に呆れていたけれど、まさか、わざわざ縄張りを移動させてくれるだなんて思いもしなかった。
――もしかして、僕を近くで見守ってくれるつもりなのかな。
ほっこりとした気分で、ルカは頬を緩めた。
これとは対照的に、背後では男達が、声を潜めて密談を交わしている。
「わざわざルカのために、一家全員で縄張りまで移すとは……」と、ネイトが子供達には見せられないような物騒な笑顔で呟くと、ジェイクがハッとした様子で「コイツまさか、人間に変身したりしないだろうな!?」と小さく叫び、それを受けてユージーンが眉根を押さえながら、「やめてくれ。そういうのはレフだけで充分だ」と吐き捨てた。
レフがギリギリと奥歯を鳴らしながら睨み付けるのを、フェロール達翼竜一家は、素知らぬ体で談笑を続けている。
「――なんと。不可思議な気配がするとは思っておったが、翼竜であったか」
冷ややかで凛とした声音が割って入って、ルカは弾かれたように振り返った。
足元に、魔石を使用しての瞬間移動の際に発する光の余波を纏わせながら、美しい彫像のような立ち姿を晒しているのは、国王アデルバート2世だ。今日は甲冑を脱ぎ捨て、ラフだがセンスの良いファッションに身を包んだ彼は、長い髪を後ろで一つに束ねている。いかにもオフといった出で立ちで、更には片手にラッピングの施された大小の包みをいくつも重ねているが、その美しさは少しも損なわれていない。
「えっ、アデルバート様!?」
「まぁ陛下!」
驚くルカとベリンダに対して、シェリルと子供達には声もない。翼竜の登場に続いて、であるために、インパクトがあり過ぎたようだ。確かに、国王というのは(いくら伝説級の大魔法使いの自宅とはいえ)片田舎の庶民の家を、気安く訪ねて良いものではないだろう。
ユージーン達は一様に「何をしに来やがった」という顔をしているし、ルカとしても「何でこう、次から次へと!」とツッコミたい気分だ。
「時間が取れたのでな。我の仔ウサギの顔を見に参った」
美しい黄金のベリンダとその愛らしい孫の姿を満足げに眺めながら、アデルバートは鷹揚に頷く。
基本的には、日々政務に追われているアデルバートではあったが、彼の高い能力は人材育成の面でも遺憾なく発揮されており、お陰で適度に余暇を楽しめる余裕はあるらしい。最近では、こうした時間にルカに相手をさせるのが、いたくお気に入りなのだ。
この発言を受けて、シェリルがじっとりとした視線をルカに向けてくる。
「仔ウサギ……」
「……」
何となく、あまり女の子には知られたくなかったルカとしては、黙り込む以外に出来ることはなかった。ベリンダが少々わざとらしく溜め息をついたことで、周囲の意識がそちらへ向き、密かに胸を撫で下ろす。
「あまりルカを甘やかされては困りますわ。庶民の家には、収容の限界もありますのよ?」
アデルバートが片手で軽々と抱えた、プレゼントらしき包みへの苦言である。大半はルカ宛の物だろうが、中のいくつかが自分宛ての賄賂であることを、ベリンダは見抜いているのだ。――うん、今度は何だろう。服か、靴か、アクセサリーなんかもあるかもしれない。
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やんわりと釘を刺すベリンダに、アデルバートは不敵な笑みを浮かべてみせた。
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やっぱりジェイクは大人だなぁ、などと考えていたルカは、アデルバートに一気に距離を詰められて、瞳を瞬かせた。「久しいな」と、凄味のある美貌で微笑まれるやいなや、そのまま腰を引き寄せられる。
「我の小姓になる覚悟は決まったか?」
「!!」
顔を寄せ、耳元でセクシーな声に囁かれて、ルカは反射的に頬を染めた。同時に、帰還直後の王宮で、かなり本気のトーンで迫られた時のことを思い出してしまう。
『そなたは我のものだ。誰にも渡さぬ』
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「ま、まだです……っ」
その時のことを思い出し、頬を真っ赤に染めながら、ルカは必死に抵抗した。
アデルバートの言う「小姓」が本来の意味でなら、職業としては願ってもないことだろう。しかし、この調子ではそれこそ「貞操の危機」的な問題も孕んでいそうだから危ない。
他の仲間達と同様、ルカはアデルバートに好意こそ持ってはいるが、まだそこまで思い切れてはいないのだ。
「あまり焦らしてくれるな」
恥じらうルカを、アデルバートは、まるで言うことを聞かない仔猫を躾ける飼い主のような、この上なく甘い表情であやす。
彼は本気で、ルカを小姓として召し抱えるつもりのようだ。だが、決して無理強いをしようとはしない。それは、アデルバートもまた、将来的には必ずルカを手に入れてみせるという自信があるからなのだろう。
――ちなみに、アデルバートが持参したルカへの手土産の一つは、ベルトホルト公爵令嬢・ローザリンデからの物(中身は香水)だった。
『アレを、ルカに近付けてはなりません!』
ローザリンデは、ルカが自分以外の女性――魔王ビアンカに篭絡されるのが、悔しくて見ていられないらしい。また、可愛いルカがアデルバートのものになるなら、それはそれで素敵かも、と思い始めているフシもあるようで、もはやアデルバートにとっては戦友ようなものだった。
得難い同志からの激励を思い返して、アデルバートは不敵な笑みを深める。
「――陛下!」
愛馬オフィーリアを落ち着かせたフィンレーが、慌てた様子で駆け戻ってくる。更に、ユージーンがルカを取り戻すべく、横から手を出そうとするのを、アデルバートは一蹴した。
「下がれ。不敬であるぞ」
「アデルバート様……ッ」
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