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最終話:小悪魔最強伝説
第2章
しおりを挟む さわさわと心地良い風が吹き抜ける。
グリテンバルド州ハーフェルの町は、今日も穏やかに晴れ渡っていた。
可憐な赤い色の花を咲かせた、庭のポールベリーの大樹を見上げて、ルカは小さく微笑む。――今年こそは、町の花祭りにも参加できそうだ。
北の魔境を目指した、あの冒険の旅からひと月後。季節は巡り、ルカがこの世界に転生を果たしてから、早一年が経とうとしている。
仲間達は皆日常に帰り、そして今日は、近況報告も兼ねた屋外ランチが計画されていた。料理の得意なベリンダとユージーンが食事の準備に奔走する中、ルカはレフと共に、会場のセッティングに励んでいるところだ。
「ルカ。こいつら、この辺に纏めときゃいいのか?」
屋内から大量のクッションを運んできた人間体のレフが、レジャーシートの前で振り返る。
「あ、うん。ちょっと待って」
風に煽られないよう重石として載せていた石を払い除けて、ルカは「いいよ」とレフを見上げた。クッションはあらかじめ並べておくのではなく、各自が好みのサイズや硬さのものを選べるようにしておけばいいだろう。
ドサドサと積み重なっていくカラフルな布地の山を見るともなく眺め、ルカはこっそりと溜め息をついた――これがリーチの差というヤツだ。適材適所とはよくいったもので、同じ量をルカが運ぶには、何度か行き来を繰り返す必要があるだろう。
少年の羨望の眼差しをどう捉えたのか、レフはそのまま長い脚を折って、ルカの顔を覗き込んで来きた。に、と笑うと、ワイルドな顔立ちが途端に人懐っこくなって、妙に可愛らしい。お姉ちゃんの憧れのロックスター(レフのモデルの人)もこんな感じなのかな、などと考えていると、額をグリグリと押し付けられた。
「わ、もう、何!?」
慌てて距離を取ると、レフは悪びれもせずに、ニッと犬歯を見せる。
「なんでもねぇよ」
そうは言うが、その表情から、ルカの反応を楽しんでいることは明白だった。お陰様でルカの頬はわずかに赤らんでいるはずだ。レフは、自分が顔を近付けることで、ルカが見せる恥じらいを喜ぶことを覚えてしまったらしい。
そんな訳で、彼は自然と人間体を取ることが増えた。
今のようにお手伝いをしてくれるのはありがたいが、ルカとしては、ワイルド系のイケメンに、動物っぽい仕草で擦り寄ってこられるのは、心臓に悪いし、普通に恥ずかしい。他の仲間達の影響だろうかと思う反面、イケメンに顔を寄せられて恥ずかしいと思う時点で自分も何かを決定的に間違えているような気がして、どうにも落ち着かなかった。
そこに無邪気な子供の声が割って入ったのは、ルカにとっては好都合だったかもしれない。
「ルカ兄ちゃん!」
丘の上の自宅に続く、緩やかな登り坂から姿を現したのは、孤児院の末っ子・ティムだ。これを筆頭に、ネイトや他の子供達も顔を見せる。
日に日に大人びていく紅一点のアンジェリカが、「あら、初めてお会いする人だわ」とレフを見て両目を瞬かせた。お行儀よく「こんにちは」と頭を下げたのは、最年長のケイシーだ。
これを受けたレフはというと、ニコリともしない代わりに、「おう」と気安く手を挙げて応える。ワイルド系の外見とは裏腹に、レフは子供のあしらいがうまかった。本人は否定するものの、今も、物怖じすることなく「僕達クッキー焼いて来たんだよ」と纏わり付くティムを、「ソイツは美味いんだろうな?」などと、ぶっきらぼうな口調で相手をしてやっている。
やはり、元がぬいぐるみだからだろうか。そういう意味でも、子供を喜ばせるのは得意分野なのかもしれない。
ルカが何となく微笑ましい気分になっていると、ネイトが近寄ってきた。取り敢えず挨拶を口にしようとしたところで顎を捉えられ、上向かされる。
「――私の天使は、今日も愛らしいね」
「……そ、そうかな?」
子供達も居る前でのアプローチに、ルカは思わず口籠った。付き合いの深いルカにはわかる、コレは「気分がノッている時のネイト」に特有の表現だ。レフは心底嫌そうに、牙を剥いている。
帰還したナサニエル・ベイリー神父を待っていたのは、正エドゥアルト教会王都本部への栄転辞令だった。元々教団内でも将来を嘱望される存在だったが、歴史に残る大偉業に携わったことで、その評価は一層高まった、ということらしい。
しかし彼は、謹んでこれを辞退した。ルカの進言を受けた国王アデルバート2世は、ロートリンゲン州カロッサの民が魔王討伐に協力的であったことに鑑み、エインデル教の禁教令を緩和する姿勢を見せている。実はエインデル派であるネイトにとっても、教団内での昇進に関して、以前より心理的苦痛は少なくなったはずだが、それでも彼は、ルカの側近くにあることを望んだのである。
『私の気持ちは知っているだろう?』
使者を送り返したことを孤児院の子供達から聞いたルカが駆け付けた時、ネイトは笑ってそう言った。後悔など微塵も感じられない晴れやかな表情は、一方で、今まで見てきたどんな彼よりもセクシーで、ルカの胸をひどくざわめかせたものだ。
『これからは全力で行かせてもらうから、覚悟しておいで』
何を、とは恥ずかしくて聞き返せなかった。耳元で囁かれた声を思い出すだけで、鼓動が高鳴る……。
――だが、さすがにこれは。
「……みんな見てるよ」
彼らの保護者でもある神父が少年に迫る様子というのは、どう考えても、子供達の教育上よろしくない。ネイトの暴挙を必死に諌めるルカに、しかし当のネイトは、余裕の表情で肩を竦めて見せる。
「大丈夫だよ」
これに「うん」と応えたのは、アンジェリカだった。おませな少女は自信満々といった様子で、わずかに胸を反らして見せる。
「私は神父様の味方だもの!」
女の子の方が男子よりも成長が早いとはいうが、アンジェはルカに関して、大好きなネイトに協力すると決めたのだそうだ。
それは何というか、取り敢えずめちゃくちゃ恥ずかしい。
動揺したルカが「ええ~」と驚きの声を発するのと同時に、レフがすかさずティムの両脇に手を入れて抱き上げる。そのままネイトに押し付けることで、物理的にルカとの距離を引き離した。楽しげな声を上げるティムを反射的に受け取ってしまったのは、ネイトが彼らの保護者たる自覚があるからなのだろう。
「――ありがと」
ホッと息をついて、ルカはレフにこっそり微笑んだ。とはいっても、子守りをするネイトの姿を見るにつけ、彼が自分のためにキャリアを棒に振っているようで、申し訳ない気分になるのも事実だ。
ルカは1年前、斥候の旅に出ることで、自身の何かが変わることを期待していたが、無事に帰ってきた今になっても、ルカはルカのままだった。その事実に対して、以前ほど焦りを感じなくなったことは、ある意味では成長と言えるのかもしれない。しかし、自分の進むべき道が見えていないことと、他人のキャリアに水を差すことが同義になるようでは、さすがに問題である。
「……」
考え込むルカの頭を、レフがそっと撫でた。ルカほど大人から可愛がられる16歳男子もなかなか居ないが、それでも、他の人達にされるのと、レフにされるのとでは、何となく意味合いが違って感じられる。ぬいぐるみ体の彼に対して行っていたことを、逆に仕返されるというのは、くすぐったいような不思議な感覚だ。
思わず笑ってしまったルカに、レフは言葉を選ぶように語り掛けて来る。
「オレが具現化できたのは、ベリンダの力ってのもあるんだろうけどよ。でもたぶん、お前が大事にしてくれたからだぜ、きっと」
自身の守護聖獣の言わんとするところを探るように、ルカは瞳を瞬かせた。ルカは随分と昔に、ベリンダから(非常に言いづらそうに)魔法適性がないことを指摘されている。しかしレフは、素養がまったくのゼロではないと言ってくれているのだろうか。
ルカが見守る前で、レフは「だからな!」と瞳を覗き込んできた。
「ばあさんみたいな魔法使いは無理でも、お前には可能性があるんだよ。なんたって、あの魔王を手懐けたくらいなんだからな!」
どうやらレフは、ルカを励まそうとしてくれているらしい。ビアンカ本人にはとても聞かせられない大暴言だが、彼の心遣いが嬉しくて、ルカの口元は自然と綻んだ。一方的に愛情を投げ掛けてくれるだけではない、彼の成長ぶりも喜ばしい。
ルカはもう一度「ありがとう」と微笑んだ。
ポールベリーの樹から飛び立った薄桃色の小鳥達が、二人の周囲を飛び交う。
「ルカに群がる人間嫌い」は相変わらずでも、動物達が懐くことまで牙を剥くことはなくなった――これもレフの成長の一つなのだろう。
グリテンバルド州ハーフェルの町は、今日も穏やかに晴れ渡っていた。
可憐な赤い色の花を咲かせた、庭のポールベリーの大樹を見上げて、ルカは小さく微笑む。――今年こそは、町の花祭りにも参加できそうだ。
北の魔境を目指した、あの冒険の旅からひと月後。季節は巡り、ルカがこの世界に転生を果たしてから、早一年が経とうとしている。
仲間達は皆日常に帰り、そして今日は、近況報告も兼ねた屋外ランチが計画されていた。料理の得意なベリンダとユージーンが食事の準備に奔走する中、ルカはレフと共に、会場のセッティングに励んでいるところだ。
「ルカ。こいつら、この辺に纏めときゃいいのか?」
屋内から大量のクッションを運んできた人間体のレフが、レジャーシートの前で振り返る。
「あ、うん。ちょっと待って」
風に煽られないよう重石として載せていた石を払い除けて、ルカは「いいよ」とレフを見上げた。クッションはあらかじめ並べておくのではなく、各自が好みのサイズや硬さのものを選べるようにしておけばいいだろう。
ドサドサと積み重なっていくカラフルな布地の山を見るともなく眺め、ルカはこっそりと溜め息をついた――これがリーチの差というヤツだ。適材適所とはよくいったもので、同じ量をルカが運ぶには、何度か行き来を繰り返す必要があるだろう。
少年の羨望の眼差しをどう捉えたのか、レフはそのまま長い脚を折って、ルカの顔を覗き込んで来きた。に、と笑うと、ワイルドな顔立ちが途端に人懐っこくなって、妙に可愛らしい。お姉ちゃんの憧れのロックスター(レフのモデルの人)もこんな感じなのかな、などと考えていると、額をグリグリと押し付けられた。
「わ、もう、何!?」
慌てて距離を取ると、レフは悪びれもせずに、ニッと犬歯を見せる。
「なんでもねぇよ」
そうは言うが、その表情から、ルカの反応を楽しんでいることは明白だった。お陰様でルカの頬はわずかに赤らんでいるはずだ。レフは、自分が顔を近付けることで、ルカが見せる恥じらいを喜ぶことを覚えてしまったらしい。
そんな訳で、彼は自然と人間体を取ることが増えた。
今のようにお手伝いをしてくれるのはありがたいが、ルカとしては、ワイルド系のイケメンに、動物っぽい仕草で擦り寄ってこられるのは、心臓に悪いし、普通に恥ずかしい。他の仲間達の影響だろうかと思う反面、イケメンに顔を寄せられて恥ずかしいと思う時点で自分も何かを決定的に間違えているような気がして、どうにも落ち着かなかった。
そこに無邪気な子供の声が割って入ったのは、ルカにとっては好都合だったかもしれない。
「ルカ兄ちゃん!」
丘の上の自宅に続く、緩やかな登り坂から姿を現したのは、孤児院の末っ子・ティムだ。これを筆頭に、ネイトや他の子供達も顔を見せる。
日に日に大人びていく紅一点のアンジェリカが、「あら、初めてお会いする人だわ」とレフを見て両目を瞬かせた。お行儀よく「こんにちは」と頭を下げたのは、最年長のケイシーだ。
これを受けたレフはというと、ニコリともしない代わりに、「おう」と気安く手を挙げて応える。ワイルド系の外見とは裏腹に、レフは子供のあしらいがうまかった。本人は否定するものの、今も、物怖じすることなく「僕達クッキー焼いて来たんだよ」と纏わり付くティムを、「ソイツは美味いんだろうな?」などと、ぶっきらぼうな口調で相手をしてやっている。
やはり、元がぬいぐるみだからだろうか。そういう意味でも、子供を喜ばせるのは得意分野なのかもしれない。
ルカが何となく微笑ましい気分になっていると、ネイトが近寄ってきた。取り敢えず挨拶を口にしようとしたところで顎を捉えられ、上向かされる。
「――私の天使は、今日も愛らしいね」
「……そ、そうかな?」
子供達も居る前でのアプローチに、ルカは思わず口籠った。付き合いの深いルカにはわかる、コレは「気分がノッている時のネイト」に特有の表現だ。レフは心底嫌そうに、牙を剥いている。
帰還したナサニエル・ベイリー神父を待っていたのは、正エドゥアルト教会王都本部への栄転辞令だった。元々教団内でも将来を嘱望される存在だったが、歴史に残る大偉業に携わったことで、その評価は一層高まった、ということらしい。
しかし彼は、謹んでこれを辞退した。ルカの進言を受けた国王アデルバート2世は、ロートリンゲン州カロッサの民が魔王討伐に協力的であったことに鑑み、エインデル教の禁教令を緩和する姿勢を見せている。実はエインデル派であるネイトにとっても、教団内での昇進に関して、以前より心理的苦痛は少なくなったはずだが、それでも彼は、ルカの側近くにあることを望んだのである。
『私の気持ちは知っているだろう?』
使者を送り返したことを孤児院の子供達から聞いたルカが駆け付けた時、ネイトは笑ってそう言った。後悔など微塵も感じられない晴れやかな表情は、一方で、今まで見てきたどんな彼よりもセクシーで、ルカの胸をひどくざわめかせたものだ。
『これからは全力で行かせてもらうから、覚悟しておいで』
何を、とは恥ずかしくて聞き返せなかった。耳元で囁かれた声を思い出すだけで、鼓動が高鳴る……。
――だが、さすがにこれは。
「……みんな見てるよ」
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「大丈夫だよ」
これに「うん」と応えたのは、アンジェリカだった。おませな少女は自信満々といった様子で、わずかに胸を反らして見せる。
「私は神父様の味方だもの!」
女の子の方が男子よりも成長が早いとはいうが、アンジェはルカに関して、大好きなネイトに協力すると決めたのだそうだ。
それは何というか、取り敢えずめちゃくちゃ恥ずかしい。
動揺したルカが「ええ~」と驚きの声を発するのと同時に、レフがすかさずティムの両脇に手を入れて抱き上げる。そのままネイトに押し付けることで、物理的にルカとの距離を引き離した。楽しげな声を上げるティムを反射的に受け取ってしまったのは、ネイトが彼らの保護者たる自覚があるからなのだろう。
「――ありがと」
ホッと息をついて、ルカはレフにこっそり微笑んだ。とはいっても、子守りをするネイトの姿を見るにつけ、彼が自分のためにキャリアを棒に振っているようで、申し訳ない気分になるのも事実だ。
ルカは1年前、斥候の旅に出ることで、自身の何かが変わることを期待していたが、無事に帰ってきた今になっても、ルカはルカのままだった。その事実に対して、以前ほど焦りを感じなくなったことは、ある意味では成長と言えるのかもしれない。しかし、自分の進むべき道が見えていないことと、他人のキャリアに水を差すことが同義になるようでは、さすがに問題である。
「……」
考え込むルカの頭を、レフがそっと撫でた。ルカほど大人から可愛がられる16歳男子もなかなか居ないが、それでも、他の人達にされるのと、レフにされるのとでは、何となく意味合いが違って感じられる。ぬいぐるみ体の彼に対して行っていたことを、逆に仕返されるというのは、くすぐったいような不思議な感覚だ。
思わず笑ってしまったルカに、レフは言葉を選ぶように語り掛けて来る。
「オレが具現化できたのは、ベリンダの力ってのもあるんだろうけどよ。でもたぶん、お前が大事にしてくれたからだぜ、きっと」
自身の守護聖獣の言わんとするところを探るように、ルカは瞳を瞬かせた。ルカは随分と昔に、ベリンダから(非常に言いづらそうに)魔法適性がないことを指摘されている。しかしレフは、素養がまったくのゼロではないと言ってくれているのだろうか。
ルカが見守る前で、レフは「だからな!」と瞳を覗き込んできた。
「ばあさんみたいな魔法使いは無理でも、お前には可能性があるんだよ。なんたって、あの魔王を手懐けたくらいなんだからな!」
どうやらレフは、ルカを励まそうとしてくれているらしい。ビアンカ本人にはとても聞かせられない大暴言だが、彼の心遣いが嬉しくて、ルカの口元は自然と綻んだ。一方的に愛情を投げ掛けてくれるだけではない、彼の成長ぶりも喜ばしい。
ルカはもう一度「ありがとう」と微笑んだ。
ポールベリーの樹から飛び立った薄桃色の小鳥達が、二人の周囲を飛び交う。
「ルカに群がる人間嫌い」は相変わらずでも、動物達が懐くことまで牙を剥くことはなくなった――これもレフの成長の一つなのだろう。
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