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第2部・第5話:勇者と囚われの乙女
第4章
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明けて、翌日の夜。
辺りが真の闇に包まれるのを待って、生贄の儀式は決行された。
呪術師による浄めを受けた後、魔物に捧げられる娘は、介添え役の持つ灯りを頼りに、レスタド山中腹の湖へと向かう。
湖のほとりには小さな祠が建っており、ここより上は大蛇の住処とされていた。娘はそこで独り、魔物の迎えを待つことになっている。
――その後どうなるのかは、誰も知らない。
儀式が新月の夜に行われるのはおそらく、娘の悲惨な末路を見ないで済むように定められたものだろう。介添え役が一人だけであるのも、きっと同じ理由からだ。
そしてもう一つ重要なのは、取り残された娘が、万が一役目を放棄したとしても、砂漠に聳える岩山から灯りもなく逃げ出すのは、それこそ自殺行為であるということ。
真の闇の中行われる儀式は、魔物の思惑に沿うようでいて、実際は街の人々の事情が優先されているように思われる。
「――なるほどなぁ」
儀式に対する祖母の見解を思い返して、ルカは小さく呟いた。
その直後、またしてもグラリと地面が揺れる。この街に入って3日のルカでさえ、既に慣れた感覚と捉えるようになってしまっていた。
街の代表の主張通り、これが魔物の仕業であるなら、退治するに越したことはない。軽い緊張感とともに、改めて決意したルカを振り返ったのは、左斜め前を行くフィンレーだ。
「大丈夫か?」
右手にランタンを持ち、足元と進行方向を照らす彼は、黒地に金の刺繍の施された、ビルダヴァ伝統の民族衣装を身に纏っている。整った顔立ちと、貴族としての出自及び剣士としての身ごなしのおかげか、まるで異国の王子のようだ。
一緒に育ってきた同世代の親友の二枚目ぶりに改めて感嘆しながら、ルカは「うん」と頷いた。先程からフィンレーがずっと、ルカが歩きやすいよう気を遣ってくれているのはわかっている。
ニコリと微笑むと、フィンレーはランタンの覚束ない光源でさえはっきりと視認できるほど、サッと頬を赤らめた。「歩きにくい恰好だもんな、仕方ないよ」とか何とか言いながら、明後日の方向に視線を彷徨わせる。
フィンレーの動揺の原因は、ルカの服装のせいだろう。複雑な気持ちで、ルカは足元に纏わりつく、薄い布をたくし上げ直した。裾に付けられた装飾が、シャラリと涼しげな音を立てる。
ルカが身に着けているのは、生贄の娘のための白い装束だった。こちらもビルダヴァの民族衣装らしいのだが、強いて言うならベリーダンサーのイメージに近く、それだけ露出も多い。頭部から肩口までを覆う薄いベールには、繊細な金糸の刺繍が施されている。
女の子だと信じ切っていたルカが初恋の相手だという貴公子には、少々刺激が強いのかもしれない。
――レスタド山へ向かう道中、ルカはカリスタと密かに入れ替わっていた。同時に、介添人役を務めることになったのが、伝説の剣の存在を確かめたい一心で立候補したフィンレーという訳だ。
ルカとフィンレーの二人で湖の祠へ向かい、他の仲間達は隠れてこれを見守る。蛇の魔物が生贄を求めて姿を現したところで事の真偽を確かめ、必要とあれば斃す――というのが、斥候隊の作戦である。
露見の可能性を減らすため、入れ替わりは人家を離れてから行われた。ルカが少女の役を演じることに関しては、悲しいかな誰一人異論を唱える者はなかったが、スラリとした長身美人のカリスタはルカよりも背が高く、髪の長さもまったく違うため、違和感を与えてはまずいとの判断だ。
本物の介添人は、ベリンダの魔法で眠らせ、衣装を剥いだ後、時間稼ぎのために手近な樹木に括り付けさせてもらった。念のため魔物除けの結界も張っているので、さほどの危険はないと思われる。
生贄の娘の装束を纏ったルカの愛らしさに、(こんな事態だというのに)黄金のベリンダは歓喜に震え、ルカであれば何でも可愛いと思っているユージーンとネイトは楽しげに頬を緩ませ、人間の衣装に興味のないレフはただルカの傍を離れることだけを嫌がり、複雑そうに目を逸らしたのはジェイクとフィンレーだった。
ルカとしても、女装に抵抗はあるものの、人助けだと思えば諦めもつく。
ベリンダの私物のシックなドレスを与えられ、感激するカリスタを自宅へ送る役目は、黄金のベリンダ自らが担った。斥候隊などという括りではなく、個人として広く名を知られた彼女であれば、少なくともカリスタの家族は安心させられるだろうと判断してのことだ。
それ以外の仲間達は、魔物に存在を悟られないよう、物影に潜みながら付いて来てくれている。レフは最後まで、ルカの元を離れることに抵抗していたが、さすがに生贄の娘がぬいぐるみを連れているのは不自然だと説き伏せたので、今は成獣体で仲間達と行動を共にしているはずだ。
「――ここだな」
フィンレーの声に顔を上げたルカは、ゴツゴツとした岩肌の斜面が途切れているのに気付いた。そのまま登り詰めると、大きく開けた平地の奥に、並々と水を湛えた湖が広がっている。その更に奥には、山頂へと続くらしい道のようなものが見えるが、巨大な水場に阻まれ、登頂は容易でないことが伺えた。見ようによっては、人の立ち入りを拒んでいるようにも感じられる地形だ。
仲間達が岩陰に陣取るのを確認して、二人は小さく頷き合ってから、ゆっくりと祠へ近付いた。
しかし、何も起こる気配はない。
本来の儀式ならば、介添え役は娘を残して立ち去ることになっているため、そのせいかとも考えられる。だが、ルカ一人を残してフィンレーまでもが傍を離れることは、仲間の誰も承知しなかった。わずかな隙を突いて、大蛇に連れ去られないとも限らない。
ひとまずは打ち合わせどおり、灯りを消して、「生贄の娘が一人」の状況を演出する。ベリンダの合流までに何事も起こらなければ、次の手はその時話し合えばいい。
「……こんな所に女の子一人は、かなりキツいだろうな」
声を潜めて、フィンレーが嘆息する。同じことを考えていたルカは、「そうだね」と頷いた。明かりの一つもなしに、たった一人でこんな場所に放置されるだなんて、どんなに気丈な少女であっても、恐ろしいに決まっている。しかも魔物の生贄になると定められた運命だ。恐怖でどうにかなってしまうかもしれない。
そんな思いをカリスタにさせずに済んだ、その事実を喜ばしいと感じるのと同じくらい、救えなかった過去の犠牲者達を、哀れに思う。
「伝説の武器って、どんなのだろうね」
話題を変えたのは、重苦しい空気に耐えかねてのことだった。ちょっと唐突だったかな、と思わないでもなかったが、フィンレーが安心したように、小さく笑う気配が伝わってくる。彼もまた、自分の提供した話題の切なさに、その先の言葉を見付けられずにいたのだろう。
「大剣っていうのが、俺にとっては運命的だと思ったんだが。でも、それで父上を超えたことにはならないよな、やっぱ」
いささか抽象的な発言だったが、付き合いの長いルカには、フィンレーの言わんとすることがしっかりと理解できた。真面目な彼は、伝説の武器を手に入れ、それを用いて功を立てたとしても、それは武器の力であって、真実の意味で偉大な父を超えたことにはならないだろうと考えているのだ。
――最初は無邪気に、貴重な宝剣への憧れを口にしていたのになぁ。
いつの間にそんな風に考えるようになったのかは分からないが、それでもやっぱり、剣士として、貴重な武器を手に入れる欲求には逆らえなかった、といったところなのだろう。
自身の弱さや欺瞞から目を逸らさない、これこそがフィンレーの美点だと、ルカは思っている。
だからこそ、断言した。
「伝説の武器なんて、絶対に持ち主を選ぶよ。それが本当に『正しいもの』なら、フィンレーが持てないはずなんてない」
努力を厭わない真っ直ぐな気性と、自分が苦境にあってさえ、他者を思い遣れる誠実な人柄。
武器の力を借りて得た名声は実力に非ずと言い切れる彼に、本当に伝説の宝剣が存在するなら、応えないはずがない。
「それを使って大剣士になるなら、そこも含めて、フィンレーの実力なんじゃないかな」
名ばかりの「予言の子供」の託宣に、フィンレーはふと口元を緩めた。
「ありがとな」
「どういたしまして」
茶化すように答えると、コイツ、と嗜めるように優しく頭を小突かれる。
星明かりの下での親友同士の会話は、張り詰めた空気を少しだけ和ませてくれた。
自分の手元さえ覚束ない暗闇の中、ルカの女装があまりにもハマり過ぎて落ち着かなかったフィンレーも、ようやくいつもの調子を取り戻したようだ。
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「――なるほどなぁ」
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その直後、またしてもグラリと地面が揺れる。この街に入って3日のルカでさえ、既に慣れた感覚と捉えるようになってしまっていた。
街の代表の主張通り、これが魔物の仕業であるなら、退治するに越したことはない。軽い緊張感とともに、改めて決意したルカを振り返ったのは、左斜め前を行くフィンレーだ。
「大丈夫か?」
右手にランタンを持ち、足元と進行方向を照らす彼は、黒地に金の刺繍の施された、ビルダヴァ伝統の民族衣装を身に纏っている。整った顔立ちと、貴族としての出自及び剣士としての身ごなしのおかげか、まるで異国の王子のようだ。
一緒に育ってきた同世代の親友の二枚目ぶりに改めて感嘆しながら、ルカは「うん」と頷いた。先程からフィンレーがずっと、ルカが歩きやすいよう気を遣ってくれているのはわかっている。
ニコリと微笑むと、フィンレーはランタンの覚束ない光源でさえはっきりと視認できるほど、サッと頬を赤らめた。「歩きにくい恰好だもんな、仕方ないよ」とか何とか言いながら、明後日の方向に視線を彷徨わせる。
フィンレーの動揺の原因は、ルカの服装のせいだろう。複雑な気持ちで、ルカは足元に纏わりつく、薄い布をたくし上げ直した。裾に付けられた装飾が、シャラリと涼しげな音を立てる。
ルカが身に着けているのは、生贄の娘のための白い装束だった。こちらもビルダヴァの民族衣装らしいのだが、強いて言うならベリーダンサーのイメージに近く、それだけ露出も多い。頭部から肩口までを覆う薄いベールには、繊細な金糸の刺繍が施されている。
女の子だと信じ切っていたルカが初恋の相手だという貴公子には、少々刺激が強いのかもしれない。
――レスタド山へ向かう道中、ルカはカリスタと密かに入れ替わっていた。同時に、介添人役を務めることになったのが、伝説の剣の存在を確かめたい一心で立候補したフィンレーという訳だ。
ルカとフィンレーの二人で湖の祠へ向かい、他の仲間達は隠れてこれを見守る。蛇の魔物が生贄を求めて姿を現したところで事の真偽を確かめ、必要とあれば斃す――というのが、斥候隊の作戦である。
露見の可能性を減らすため、入れ替わりは人家を離れてから行われた。ルカが少女の役を演じることに関しては、悲しいかな誰一人異論を唱える者はなかったが、スラリとした長身美人のカリスタはルカよりも背が高く、髪の長さもまったく違うため、違和感を与えてはまずいとの判断だ。
本物の介添人は、ベリンダの魔法で眠らせ、衣装を剥いだ後、時間稼ぎのために手近な樹木に括り付けさせてもらった。念のため魔物除けの結界も張っているので、さほどの危険はないと思われる。
生贄の娘の装束を纏ったルカの愛らしさに、(こんな事態だというのに)黄金のベリンダは歓喜に震え、ルカであれば何でも可愛いと思っているユージーンとネイトは楽しげに頬を緩ませ、人間の衣装に興味のないレフはただルカの傍を離れることだけを嫌がり、複雑そうに目を逸らしたのはジェイクとフィンレーだった。
ルカとしても、女装に抵抗はあるものの、人助けだと思えば諦めもつく。
ベリンダの私物のシックなドレスを与えられ、感激するカリスタを自宅へ送る役目は、黄金のベリンダ自らが担った。斥候隊などという括りではなく、個人として広く名を知られた彼女であれば、少なくともカリスタの家族は安心させられるだろうと判断してのことだ。
それ以外の仲間達は、魔物に存在を悟られないよう、物影に潜みながら付いて来てくれている。レフは最後まで、ルカの元を離れることに抵抗していたが、さすがに生贄の娘がぬいぐるみを連れているのは不自然だと説き伏せたので、今は成獣体で仲間達と行動を共にしているはずだ。
「――ここだな」
フィンレーの声に顔を上げたルカは、ゴツゴツとした岩肌の斜面が途切れているのに気付いた。そのまま登り詰めると、大きく開けた平地の奥に、並々と水を湛えた湖が広がっている。その更に奥には、山頂へと続くらしい道のようなものが見えるが、巨大な水場に阻まれ、登頂は容易でないことが伺えた。見ようによっては、人の立ち入りを拒んでいるようにも感じられる地形だ。
仲間達が岩陰に陣取るのを確認して、二人は小さく頷き合ってから、ゆっくりと祠へ近付いた。
しかし、何も起こる気配はない。
本来の儀式ならば、介添え役は娘を残して立ち去ることになっているため、そのせいかとも考えられる。だが、ルカ一人を残してフィンレーまでもが傍を離れることは、仲間の誰も承知しなかった。わずかな隙を突いて、大蛇に連れ去られないとも限らない。
ひとまずは打ち合わせどおり、灯りを消して、「生贄の娘が一人」の状況を演出する。ベリンダの合流までに何事も起こらなければ、次の手はその時話し合えばいい。
「……こんな所に女の子一人は、かなりキツいだろうな」
声を潜めて、フィンレーが嘆息する。同じことを考えていたルカは、「そうだね」と頷いた。明かりの一つもなしに、たった一人でこんな場所に放置されるだなんて、どんなに気丈な少女であっても、恐ろしいに決まっている。しかも魔物の生贄になると定められた運命だ。恐怖でどうにかなってしまうかもしれない。
そんな思いをカリスタにさせずに済んだ、その事実を喜ばしいと感じるのと同じくらい、救えなかった過去の犠牲者達を、哀れに思う。
「伝説の武器って、どんなのだろうね」
話題を変えたのは、重苦しい空気に耐えかねてのことだった。ちょっと唐突だったかな、と思わないでもなかったが、フィンレーが安心したように、小さく笑う気配が伝わってくる。彼もまた、自分の提供した話題の切なさに、その先の言葉を見付けられずにいたのだろう。
「大剣っていうのが、俺にとっては運命的だと思ったんだが。でも、それで父上を超えたことにはならないよな、やっぱ」
いささか抽象的な発言だったが、付き合いの長いルカには、フィンレーの言わんとすることがしっかりと理解できた。真面目な彼は、伝説の武器を手に入れ、それを用いて功を立てたとしても、それは武器の力であって、真実の意味で偉大な父を超えたことにはならないだろうと考えているのだ。
――最初は無邪気に、貴重な宝剣への憧れを口にしていたのになぁ。
いつの間にそんな風に考えるようになったのかは分からないが、それでもやっぱり、剣士として、貴重な武器を手に入れる欲求には逆らえなかった、といったところなのだろう。
自身の弱さや欺瞞から目を逸らさない、これこそがフィンレーの美点だと、ルカは思っている。
だからこそ、断言した。
「伝説の武器なんて、絶対に持ち主を選ぶよ。それが本当に『正しいもの』なら、フィンレーが持てないはずなんてない」
努力を厭わない真っ直ぐな気性と、自分が苦境にあってさえ、他者を思い遣れる誠実な人柄。
武器の力を借りて得た名声は実力に非ずと言い切れる彼に、本当に伝説の宝剣が存在するなら、応えないはずがない。
「それを使って大剣士になるなら、そこも含めて、フィンレーの実力なんじゃないかな」
名ばかりの「予言の子供」の託宣に、フィンレーはふと口元を緩めた。
「ありがとな」
「どういたしまして」
茶化すように答えると、コイツ、と嗜めるように優しく頭を小突かれる。
星明かりの下での親友同士の会話は、張り詰めた空気を少しだけ和ませてくれた。
自分の手元さえ覚束ない暗闇の中、ルカの女装があまりにもハマり過ぎて落ち着かなかったフィンレーも、ようやくいつもの調子を取り戻したようだ。
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