65 / 121
第2部・第3話:戦士覚醒
第4章
しおりを挟む
ワッと矯声を上げて、十数人からの男達が広場になだれ込んできた。服装や装備の点からも、山賊の一味と思われる。
昨日の買い出し隊への襲撃、山道の破壊に続いての畳み掛けるような暴挙には、自分達の要求を飲まないサハス村を、何としても陥落させてやろうとの害意が透けて見えるようだ。恐らくは彼らも手勢を何班かに分け、魔法使いの居ない場所を選んで攻撃を仕掛けてきたのだろう。
幸いにも炊き出しの女性達は、半数以上が第一班分の食事の後片付けに向かっており、留まっていたのは数人の女性と、まだ食事中の第二班の男達だけである。
「女性は家の中へ! 男達は武器を取れ!!」
居合わせた者の中で最も地位が高く、場馴れしたフィンレーが声高に指示を出した。突然の事態に浮き足立ちかけた村人達は、我に返った様子で、各自が最善の行動を取り始める。
女性達は手近な民家に駆け込み、男達はわずかな武器や、代わりになる農具を手に、奮然と山賊に立ち向かった。
それでも、荒事に長けた犯罪者と善良な村人、力の差は歴然だったはずだ。
しかし、これを補って余りあるのが、斥候隊の誇る剣士と戦士の二人。
フィンレーは村人に指示を与えるや、即座に大剣を抜いて、広場の中央に躍り出た。ジェイクもまた戦斧を軽々と振り回して、敵の戦力を削いでいく。
ニコラと共に、ネイトの背後に守られたルカは、固唾を飲んで事態の成り行きを見守っていた。ジェイクとフィンレーの活躍は目覚ましく、たかが10人ちょっとの山賊程度、蹴散らすことは容易い。レフがフードの中で、ぬいぐるみ体のままおとなしくしているのも、二人に任せていれば、ルカにまで危害が及ぶことはないと踏んでのことだろう。
とはいえ、こちらも万全の体制ではないため、捕縛までは不可能なようだった。山賊の一掃を目指す以上は、少なくとも追跡程度は行いたいところだが、圧倒的な人員不足であることは、戦闘に不向きなルカであっても理解できる。
「退け!!」
形勢不利と見た山賊達が、一斉に退却を始めた。比較的あっさりとした引き際から察するに、元々本気の襲撃というよりも、脅しの意味合いが強かったのかもしれない。
村人達が安堵に気を緩め、ルカも知らぬうち詰めていた息を吐き出した次の瞬間、背後の茂みがザッと揺れた。
きゃあ、と甲高い悲鳴が聞こえて、反射的に振り返ったルカは、驚愕に目を見開く。森の中を進み、いつの間にかルカ達の背後に回っていたらしい山賊の一人が、ニコラの左腕を捉えていたのだ。悪党なりに、何かしらの成果を上げたいとでも考えたのかもしれない。
「ッ、ニコラ!!」
慌てて手を伸ばそうとしたルカを、ネイトが強い力で引き寄せる。
ルカの安全が確保された横を、ジェイクが素早く駆け抜けた。必死の抵抗を続けるニコラの空いた方の手を取り、山賊の顔面に拳を叩き込む。
重たいパンチを受けて、山賊はニコラから手を離し、後方へ吹っ飛んだ。駆け付けてきた仲間達がほとんど引き摺るようにして、倒れ伏した男を回収していく。捕まってアジトの場所を吐かされることを、恐れているのかもしれない。
「大丈夫か!?」
負傷者の確認をしていたフィンレーが、血相を変えて走り寄ってくる。
「ああ」と答えるジェイクに腕を掴まれたまま、ニコラは泣き出しそうな顔で、何度も感謝を口にした。
「…………」
ルカはネイトの腕の中で、村娘が恋心を一層募らせていく様子を、半ば呆然と見守るしかなかったのである。
●
午後からの復旧作業を第二班と共に、二か所目の崩落現場で終えたジェイクとフィンレーは、夕方近くになって村長宅の離れへ戻ってきた。
「ジェイク、ちょっといいかな」
出迎えたルカが声をかけると、気を利かせてくれたらしいフィンレーが、「先にシャワー借りるぞ」と言い残して部屋の奥に消える。
リビングに鎮座するネイトをチラリと見遣ってから、ジェイクはルカを庭先へと促した。ルカのフードの中には当然のようにぬいぐるみ姿のレフが居たが、「隠れ可愛いもの好き」のジェイクにとっては、ネイトの存在とは比べるべくもないのだろう。
二人はそのまま、楡の木の木陰に入った。
第二班と入れ替わるタイミングで村に戻ってきたベリンダとユージーンは、慌ただしく昼食を摂った後、再び山中に分け入ってから、まだ戻って来ていない。山賊の本拠地を探る傍ら、第四番目の崩落箇所を発見したとのことだったので、明日も引き続き復旧作業が行われる予定だ。この分ではアジトの探索にも手間取っているのだろう。
翳り始めた陽射しからルカを庇うようにして、ジェイクは振り返った。
「――どうした?」
彼の精悍な顔立ちが優しく微笑んでいるのは、久し振りにルカと二人の時間を持てたからだ。自身のルカに向ける感情が、もう一人の幼馴染み――ユージーンとは違うと思い込んでいるジェイクは、自分がルカと二人だけで話せることを嬉しいと感じている事実に気付いていない。
ジェイク自身が理解できていないことが、他者からの好意に敏いようで疎い、ルカにわかるはずもなかった。
不意に吹き抜けた風に、ルカの明るい色の髪がふわりと呷られる。甲斐甲斐しく撫で付けられた、大きな掌を覆う革手袋のほつれを、今また何となく目で追いながら、「あのね」とルカは言いにくそうに口を開いた。
「斥候隊に誘ったのは僕だけど……他にジェイクのしたいことがあれば、そっちを優先してくれていいからね?」
絶妙に言葉を濁した曖昧な表現は、それでも、ルカなりの大譲歩だった。
斥候隊として、ジェイクについてきてほしいと思ったのは事実だし、彼の意思で自分を守ると言ってもらえて、本当に嬉しかった。彼が傍に居なくなるなど、考えるだけで寂しくて悲しい気持ちになる。
しかし、ネイトはジェイクが、ニコラのことを「満更でもなさそう」と言ったし、事実ジェイクは彼女のことを、常になく気に掛けてやっている風でもある。
フィンレーもまた、ジェイクの気持ちを考えるなら、彼の望む通りにさせてやれと言った。
降って湧いた結婚の話と、ニコラに優しいジェイクの姿にルカは動揺し、仲間達の発言の真意を見誤ったのである。
ネイトはそもそもルカに近付くすべての人間を良く思っていないし、フィンレーは「ジェイクがルカの傍を離れたがるはずがない」との確信から、彼を信じてやれとの忠告をくれただけ。
当然ながら、ルカの意思に反し、ジェイクは憤慨した。
ルカにだけ見せる優しい表情は硬く凍り付き、強い風からルカを守ってくれていた掌がするりと離れていく。
「――やめろよ、お前まで」
「!」
冷たい声音に、ルカはビクリと肩を震わせた。
見上げたジェイクと視線が絡むことはなく、彼はそのまま踵を返して離れに戻ってしまう。
幼馴染みの些細な心の機微までには気付けなくとも、怒らせてしまったらしいことだけは、嫌というほど理解できた。
出逢ってからこれまで、こんな風にジェイクに背を向けられたことはない。
彼を思いやったつもりでいたルカは、縫い止められたように、その場に立ち竦むことしか出来なかった。
昨日の買い出し隊への襲撃、山道の破壊に続いての畳み掛けるような暴挙には、自分達の要求を飲まないサハス村を、何としても陥落させてやろうとの害意が透けて見えるようだ。恐らくは彼らも手勢を何班かに分け、魔法使いの居ない場所を選んで攻撃を仕掛けてきたのだろう。
幸いにも炊き出しの女性達は、半数以上が第一班分の食事の後片付けに向かっており、留まっていたのは数人の女性と、まだ食事中の第二班の男達だけである。
「女性は家の中へ! 男達は武器を取れ!!」
居合わせた者の中で最も地位が高く、場馴れしたフィンレーが声高に指示を出した。突然の事態に浮き足立ちかけた村人達は、我に返った様子で、各自が最善の行動を取り始める。
女性達は手近な民家に駆け込み、男達はわずかな武器や、代わりになる農具を手に、奮然と山賊に立ち向かった。
それでも、荒事に長けた犯罪者と善良な村人、力の差は歴然だったはずだ。
しかし、これを補って余りあるのが、斥候隊の誇る剣士と戦士の二人。
フィンレーは村人に指示を与えるや、即座に大剣を抜いて、広場の中央に躍り出た。ジェイクもまた戦斧を軽々と振り回して、敵の戦力を削いでいく。
ニコラと共に、ネイトの背後に守られたルカは、固唾を飲んで事態の成り行きを見守っていた。ジェイクとフィンレーの活躍は目覚ましく、たかが10人ちょっとの山賊程度、蹴散らすことは容易い。レフがフードの中で、ぬいぐるみ体のままおとなしくしているのも、二人に任せていれば、ルカにまで危害が及ぶことはないと踏んでのことだろう。
とはいえ、こちらも万全の体制ではないため、捕縛までは不可能なようだった。山賊の一掃を目指す以上は、少なくとも追跡程度は行いたいところだが、圧倒的な人員不足であることは、戦闘に不向きなルカであっても理解できる。
「退け!!」
形勢不利と見た山賊達が、一斉に退却を始めた。比較的あっさりとした引き際から察するに、元々本気の襲撃というよりも、脅しの意味合いが強かったのかもしれない。
村人達が安堵に気を緩め、ルカも知らぬうち詰めていた息を吐き出した次の瞬間、背後の茂みがザッと揺れた。
きゃあ、と甲高い悲鳴が聞こえて、反射的に振り返ったルカは、驚愕に目を見開く。森の中を進み、いつの間にかルカ達の背後に回っていたらしい山賊の一人が、ニコラの左腕を捉えていたのだ。悪党なりに、何かしらの成果を上げたいとでも考えたのかもしれない。
「ッ、ニコラ!!」
慌てて手を伸ばそうとしたルカを、ネイトが強い力で引き寄せる。
ルカの安全が確保された横を、ジェイクが素早く駆け抜けた。必死の抵抗を続けるニコラの空いた方の手を取り、山賊の顔面に拳を叩き込む。
重たいパンチを受けて、山賊はニコラから手を離し、後方へ吹っ飛んだ。駆け付けてきた仲間達がほとんど引き摺るようにして、倒れ伏した男を回収していく。捕まってアジトの場所を吐かされることを、恐れているのかもしれない。
「大丈夫か!?」
負傷者の確認をしていたフィンレーが、血相を変えて走り寄ってくる。
「ああ」と答えるジェイクに腕を掴まれたまま、ニコラは泣き出しそうな顔で、何度も感謝を口にした。
「…………」
ルカはネイトの腕の中で、村娘が恋心を一層募らせていく様子を、半ば呆然と見守るしかなかったのである。
●
午後からの復旧作業を第二班と共に、二か所目の崩落現場で終えたジェイクとフィンレーは、夕方近くになって村長宅の離れへ戻ってきた。
「ジェイク、ちょっといいかな」
出迎えたルカが声をかけると、気を利かせてくれたらしいフィンレーが、「先にシャワー借りるぞ」と言い残して部屋の奥に消える。
リビングに鎮座するネイトをチラリと見遣ってから、ジェイクはルカを庭先へと促した。ルカのフードの中には当然のようにぬいぐるみ姿のレフが居たが、「隠れ可愛いもの好き」のジェイクにとっては、ネイトの存在とは比べるべくもないのだろう。
二人はそのまま、楡の木の木陰に入った。
第二班と入れ替わるタイミングで村に戻ってきたベリンダとユージーンは、慌ただしく昼食を摂った後、再び山中に分け入ってから、まだ戻って来ていない。山賊の本拠地を探る傍ら、第四番目の崩落箇所を発見したとのことだったので、明日も引き続き復旧作業が行われる予定だ。この分ではアジトの探索にも手間取っているのだろう。
翳り始めた陽射しからルカを庇うようにして、ジェイクは振り返った。
「――どうした?」
彼の精悍な顔立ちが優しく微笑んでいるのは、久し振りにルカと二人の時間を持てたからだ。自身のルカに向ける感情が、もう一人の幼馴染み――ユージーンとは違うと思い込んでいるジェイクは、自分がルカと二人だけで話せることを嬉しいと感じている事実に気付いていない。
ジェイク自身が理解できていないことが、他者からの好意に敏いようで疎い、ルカにわかるはずもなかった。
不意に吹き抜けた風に、ルカの明るい色の髪がふわりと呷られる。甲斐甲斐しく撫で付けられた、大きな掌を覆う革手袋のほつれを、今また何となく目で追いながら、「あのね」とルカは言いにくそうに口を開いた。
「斥候隊に誘ったのは僕だけど……他にジェイクのしたいことがあれば、そっちを優先してくれていいからね?」
絶妙に言葉を濁した曖昧な表現は、それでも、ルカなりの大譲歩だった。
斥候隊として、ジェイクについてきてほしいと思ったのは事実だし、彼の意思で自分を守ると言ってもらえて、本当に嬉しかった。彼が傍に居なくなるなど、考えるだけで寂しくて悲しい気持ちになる。
しかし、ネイトはジェイクが、ニコラのことを「満更でもなさそう」と言ったし、事実ジェイクは彼女のことを、常になく気に掛けてやっている風でもある。
フィンレーもまた、ジェイクの気持ちを考えるなら、彼の望む通りにさせてやれと言った。
降って湧いた結婚の話と、ニコラに優しいジェイクの姿にルカは動揺し、仲間達の発言の真意を見誤ったのである。
ネイトはそもそもルカに近付くすべての人間を良く思っていないし、フィンレーは「ジェイクがルカの傍を離れたがるはずがない」との確信から、彼を信じてやれとの忠告をくれただけ。
当然ながら、ルカの意思に反し、ジェイクは憤慨した。
ルカにだけ見せる優しい表情は硬く凍り付き、強い風からルカを守ってくれていた掌がするりと離れていく。
「――やめろよ、お前まで」
「!」
冷たい声音に、ルカはビクリと肩を震わせた。
見上げたジェイクと視線が絡むことはなく、彼はそのまま踵を返して離れに戻ってしまう。
幼馴染みの些細な心の機微までには気付けなくとも、怒らせてしまったらしいことだけは、嫌というほど理解できた。
出逢ってからこれまで、こんな風にジェイクに背を向けられたことはない。
彼を思いやったつもりでいたルカは、縫い止められたように、その場に立ち竦むことしか出来なかった。
23
お気に入りに追加
309
あなたにおすすめの小説

マリオネットが、糸を断つ時。
せんぷう
BL
異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。
オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。
第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。
そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。
『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』
金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。
『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!
許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』
そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。
王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。
『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』
『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』
『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』
しかし、オレは彼に拾われた。
どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。
気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!
しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?
スラム出身、第十一王子の守護魔導師。
これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。
※BL作品
恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。
.

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

続・聖女の兄で、すみません!
たっぷりチョコ
BL
『聖女の兄で、すみません!』(完結)の続編になります。
あらすじ
異世界に再び召喚され、一ヶ月経った主人公の古河大矢(こがだいや)。妹の桃花が聖女になりアリッシュは魔物のいない平和な国になったが、新たな問題が発生していた。

紅(くれない)の深染(こそ)めの心、色深く
やしろ
BL
「ならば、私を野に放ってください。国の情勢上無理だというのであれば、どこかの山奥に蟄居でもいい」
広大な秋津豊島を征服した瑞穂の国では、最後の戦の論功行賞の打ち合わせが行われていた。
その席で何と、「氷の美貌」と謳われる美しい顔で、しれっと国王の次男・紅緒(べにお)がそんな事を言い出した。
打ち合わせは阿鼻叫喚。そんななか、紅緒の副官を長年務めてきた出穂(いずほ)は、もう少し複雑な彼の本音を知っていた。
十三年前、敵襲で窮地に落ちった基地で死地に向かう紅緒を追いかけた出穂。
足を引き摺って敵中を行く紅緒を放っておけなくて、出穂は彼と共に敵に向かう。
「物好きだな、なんで付いてきたの?」
「なんでって言われても……解んねぇっす」
判んねぇけど、アンタを独りにしたくなかったっす。
告げた出穂に、紅緒は唐紅の瞳を見開き、それからくすくすと笑った。
交わした会話は
「私が死んでも代りはいるのに、変わったやつだなぁ」
「代りとかそんなんしらねっすけど、アンタが死ぬのは何か嫌っす。俺も死にたかねぇっすけど」
「そうか。君、名前は?」
「出穂っす」
「いづほ、か。うん、覚えた」
ただそれだけ。
なのに窮地を二人で脱した後、出穂は何故か紅緒の副官に任じられて……。
感情を表に出すのが不得意で、その天才的な頭脳とは裏腹にどこか危うい紅緒。その柔らかな人柄に惹かれ、出穂は彼に従う。
出穂の生活、人生、幸せは全て紅緒との日々の中にあった。
半年、二年後、更にそこからの歳月、緩やかに心を通わせていった二人の十三年は、いったい何処に行きつくのか──

王子様から逃げられない!
白兪
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。

幸福からくる世界
林 業
BL
大陸唯一の魔導具師であり精霊使い、ルーンティル。
元兵士であり、街の英雄で、(ルーンティルには秘匿中)冒険者のサジタリス。
共に暮らし、時に子供たちを養う。
二人の長い人生の一時。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる