30 / 121
第1部・第5話:フィンレー
第6章
しおりを挟む
それから数日が経った、ある日の午後。
ルカは、祖母のベリンダに連れられ、公式に領主館を訪れた。魔王討伐隊の保留に伴い、一度領地に戻ってきたヘクター・ボールドウィン卿への、挨拶を兼ねたご機嫌伺いのようなものである。
礼儀として門前へ転移したのち、敷地内を案内されながら、ルカは花の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。男所帯の領主館に季節の花々が絶えないのは、フィンレーの母親のためなのだと、いつか祖母に聞いたことがある。亡き妻を想い、庭園の彩りを絶やさずにいるとは、ヘクター卿もなかなかにロマンティストなところがあるのかもしれない。
「――ルカ!」
弾んだ声に名を呼ばれて、ルカは顔を上げた。館の方から、軍服風の衣装に身を包んだフィンレーが駆けて来る。先触れを受けて、わざわざ迎えに出て来てくれたようだ。
手を挙げて応えようとしたルカだったが、羽織ったケープごと、そのままフィンレーに抱き締められ、思わず瞳を瞬かせる。
「! ちょ、ナニナニ、どうした!?」
赤くなったり青くなったりしながらどもりまくるルカに、普段こういったスキンシップとは縁のないフィンレーは、照れた様子で身体を離しながら「悪い」とはにかんだ。イケメンは不用意に人と接触するべきではないのだ、まったく心臓に悪い。
驚愕に高鳴った心臓を押さえるルカに向かって、フィンレーは満面の笑みを浮かべて見せる。
「斥候隊のこと、父上に許可して貰えたんだ」
「――そっか。良かった」
親友が、まるで子供のようにはしゃいでいる理由がわかって、ルカもまたホッとしたように微笑んだ。
このところのフィンレーを苦しめていたのは、父に討伐隊への参加を許されないのは、己の力不足が原因ではないかという懸念だ。それが、斥候隊加入の承認を得たことで、実力を認められていない訳ではなかったことが、間接的にも証明された。喜ぶなというのが無理な話だろう。彼を知る者からすれば、杞憂であることは一目瞭然でも、疑心暗鬼は難敵だ。
不安や疑念を払拭したフィンレーは、畏まった様子でベリンダに向き直る。
「ベリンダ先生、改めて宜しくお願いします。お役に立てるよう努めます」
「嬉しいわ。頑張りましょうね」
礼儀正しく頭を下げられ、ベリンダはルカとフィンレーの二人に向かって、優しく微笑んだ。
呑気な声が掛けられたのは、話がうまくまとまり、メイドを下がらせたフィンレーが、改めて自らルカ達を邸内へ案内しようとしたところだった。
「――あれ、坊ちゃん。また婚約の話から逃げてるんですか?」
花壇の脇から気安い口調で話し掛けてきたのは、庭師の棟梁の息子で、見習いとして働いている男性だ。気さくなフィンレーとは仲も良く、ルカも何度か話をしたことがある。優しくて気の良いお兄さん、といった人物だが、マイペースなところが玉に瑕だろうか。
年頃で家柄も見栄えも良いフィンレーには、縁談が引きも切らないとは聞いていたが、本人が逃げ回っていたとは初耳だ。
驚くルカに視線を移した庭師見習いは、「あー」と何かを理解した様子で頷く。
「そういえば、坊ちゃんの初恋はルカちゃんでしたもんね~、面食いだと色々と難しいよな~」
「なっ、オイ! 何言ってんだ!」
ギョッと目を剥き、頬を染めたフィンレーが、貴公子らしからぬ制止を挙げる。しかし、この庭師見習いもまた幼い頃のフィンレーをよく知る人物らしく、「またまた~」と意味深に肩を揺らした。
「『花の妖精かと思った』とか、ロマンチックなこと言ってたじゃないですか~」
「ばらすなよ!」
盛大に狼狽えるフィンレーの横で、ルカは「そうだったのか」と冷や汗をかいていた。最初は女の子だと思っていた、と言われたことはあるが(そして悲しいことに、それはフィンレーに限った話ではないのだが)、妖精さんはさすがに言い過ぎだろう。しかし、口では否定を繰り返す親友の動揺ぶりこそが、庭師見習いの話が真実であることを如実に訴えてしまっている。
助けを求めるようにチラリと仰ぎ見たベリンダはというと、楽しそうにウフフと笑っていた。聡明な大魔法使いには、幼い公子の淡い想いなどお見通しだったのだろう。「そうなの、うちのルカは本当に可愛いから」とでも考えていそうなのは、それこそルカにもお見通しだ。
「違うって! だってお前、女の子みたいに可愛かったからさ! じゃなくて……!」
爆弾発言を繰り返す庭師見習いをむりやり仕事に戻らせ、フィンレーは必死な様子で弁解しながら、ルカとベリンダを邸内に招き入れた。グイグイと扉の中に押し込められるまで、実は抱き締められた時から今までずっと、フィンレーに手を取られたままだったことに気付いたルカは、「こういうところだよなぁ」と小さく天を仰ぐ。可哀想に、きっとフィンレーはこれをネタに、また揶揄われることになる。
「わかった、わかったから――」
常にない動揺を見せる、普段はめちゃくちゃカッコイイ親友が憐れに思えて来て、ルカは必死で宥めに掛かった。自然に手を離せたのは、お互いにとって良いことだったかもしれない。
そこへ更に、豪快な声が割って入る。
「――ベリンダ、戻ったぞ!」
正面の大階段を、エントランスに向かって降りてきた大柄な人物こそが、フィンレーの父、ヘクター・ボールドウィン卿だ。濃いブラウンの髪を無造作に伸ばし、浅黒い肌に口髭を蓄えた、ルカ的には『イカしたオジサン』――全体的に母親似のフィンレーとの共通点は、紫色の瞳くらいのものだろうか。
優雅な礼を取るベリンダの後ろで、ルカもまたぺこりと頭を下げる。小柄なルカの存在に今気付いたと言わんばかりに、ヘクター卿は笑みを深めた。
「オイオイオイ、ルカ! お前また可愛くなってんじゃねーか! 俺の養子になるか?」
「救国の大剣士」と讃えられる貴族でありながら、軽口の挨拶は変わらない。ぐしゃぐしゃと頭を撫でられながら、ルカは思わず「やめてくださいよー」と声を立てて笑った。彼のこういった身分を問わない大らかな気質が、息子のフィンレーに引き継がれていることが、とても嬉しい。
しかし、ほんわかと胸を温めていたのは、ルカだけだったようだ。
「バッ、何言ってんですか父上!」
初めて聞いた訳でもないはずの父親の冗談に、フィンレーが過剰な反応を見せたのは、「ルカが初恋の相手である」という黒歴史をばらされた影響だろうか。
「あらぁ聞き捨てなりませんわねぇ」
ベリンダが美しい笑顔を引き攣らせたのは、縁起でもないことを言うなとの、純粋な怒りのために違いない。
――ヤバい。収拾がつかない。
「ちょっと、みんな落ち着いてよ……」
自分よりも上手な人物達が、よくわからないことで盛り上がるのを止めることも出来ず、ルカは声を上擦らせた。辺りを見回しても、執事もメイド達も困ったように微笑むだけだ。
――なんでこんなことになった!?
オロオロと視線を彷徨わせたルカは、左手側の廊下の扉から、誰かが顔を覗かせているのに気付いた。フィンレーの祖父であるクリストファー卿が、ルカを手招きしている。
天の助けとばかりに、ルカはその場を離れた。エキサイトしている3人は、気付く様子もない。
招き入れられたのは、応接室の一つだった。テーブルにはお茶とお菓子が、しっかりとセットされている。
「あの子らの気が済むまで、ここでお菓子でも食べていなさい」
すまないね、と困ったように詫びるクリストファー卿の表情に、ルカはハッとした。ダンディな笑顔は、家族への愛情に満ち溢れている。
確かに、フィンレーは父の名代としての重圧や、斥候隊加入への懸念から解放されたばかり。ヘクター卿に至っては、数か月ぶりの故郷だ。多少なりとも、羽目を外したくなることもあるだろう。
――おばあちゃんが二人に付き合ってあげてるのも、そのせいかな。
さすがに違うか、と思い直して、ルカは「はい」と大きく頷いた。
クリストファー卿と向かい合って座り、室内に控えていたメイドが香り高い紅茶を注いでくれるのを見守る。
あれこれと世話を焼いてくれるクリストファー卿と、束の間の二人きりのお茶会を楽しみながら、ルカは親友の暖かな家庭を思い、自分まで幸せな気持ちになっていくような気がして、ふわりと微笑んだ。
第5話 END
ルカは、祖母のベリンダに連れられ、公式に領主館を訪れた。魔王討伐隊の保留に伴い、一度領地に戻ってきたヘクター・ボールドウィン卿への、挨拶を兼ねたご機嫌伺いのようなものである。
礼儀として門前へ転移したのち、敷地内を案内されながら、ルカは花の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。男所帯の領主館に季節の花々が絶えないのは、フィンレーの母親のためなのだと、いつか祖母に聞いたことがある。亡き妻を想い、庭園の彩りを絶やさずにいるとは、ヘクター卿もなかなかにロマンティストなところがあるのかもしれない。
「――ルカ!」
弾んだ声に名を呼ばれて、ルカは顔を上げた。館の方から、軍服風の衣装に身を包んだフィンレーが駆けて来る。先触れを受けて、わざわざ迎えに出て来てくれたようだ。
手を挙げて応えようとしたルカだったが、羽織ったケープごと、そのままフィンレーに抱き締められ、思わず瞳を瞬かせる。
「! ちょ、ナニナニ、どうした!?」
赤くなったり青くなったりしながらどもりまくるルカに、普段こういったスキンシップとは縁のないフィンレーは、照れた様子で身体を離しながら「悪い」とはにかんだ。イケメンは不用意に人と接触するべきではないのだ、まったく心臓に悪い。
驚愕に高鳴った心臓を押さえるルカに向かって、フィンレーは満面の笑みを浮かべて見せる。
「斥候隊のこと、父上に許可して貰えたんだ」
「――そっか。良かった」
親友が、まるで子供のようにはしゃいでいる理由がわかって、ルカもまたホッとしたように微笑んだ。
このところのフィンレーを苦しめていたのは、父に討伐隊への参加を許されないのは、己の力不足が原因ではないかという懸念だ。それが、斥候隊加入の承認を得たことで、実力を認められていない訳ではなかったことが、間接的にも証明された。喜ぶなというのが無理な話だろう。彼を知る者からすれば、杞憂であることは一目瞭然でも、疑心暗鬼は難敵だ。
不安や疑念を払拭したフィンレーは、畏まった様子でベリンダに向き直る。
「ベリンダ先生、改めて宜しくお願いします。お役に立てるよう努めます」
「嬉しいわ。頑張りましょうね」
礼儀正しく頭を下げられ、ベリンダはルカとフィンレーの二人に向かって、優しく微笑んだ。
呑気な声が掛けられたのは、話がうまくまとまり、メイドを下がらせたフィンレーが、改めて自らルカ達を邸内へ案内しようとしたところだった。
「――あれ、坊ちゃん。また婚約の話から逃げてるんですか?」
花壇の脇から気安い口調で話し掛けてきたのは、庭師の棟梁の息子で、見習いとして働いている男性だ。気さくなフィンレーとは仲も良く、ルカも何度か話をしたことがある。優しくて気の良いお兄さん、といった人物だが、マイペースなところが玉に瑕だろうか。
年頃で家柄も見栄えも良いフィンレーには、縁談が引きも切らないとは聞いていたが、本人が逃げ回っていたとは初耳だ。
驚くルカに視線を移した庭師見習いは、「あー」と何かを理解した様子で頷く。
「そういえば、坊ちゃんの初恋はルカちゃんでしたもんね~、面食いだと色々と難しいよな~」
「なっ、オイ! 何言ってんだ!」
ギョッと目を剥き、頬を染めたフィンレーが、貴公子らしからぬ制止を挙げる。しかし、この庭師見習いもまた幼い頃のフィンレーをよく知る人物らしく、「またまた~」と意味深に肩を揺らした。
「『花の妖精かと思った』とか、ロマンチックなこと言ってたじゃないですか~」
「ばらすなよ!」
盛大に狼狽えるフィンレーの横で、ルカは「そうだったのか」と冷や汗をかいていた。最初は女の子だと思っていた、と言われたことはあるが(そして悲しいことに、それはフィンレーに限った話ではないのだが)、妖精さんはさすがに言い過ぎだろう。しかし、口では否定を繰り返す親友の動揺ぶりこそが、庭師見習いの話が真実であることを如実に訴えてしまっている。
助けを求めるようにチラリと仰ぎ見たベリンダはというと、楽しそうにウフフと笑っていた。聡明な大魔法使いには、幼い公子の淡い想いなどお見通しだったのだろう。「そうなの、うちのルカは本当に可愛いから」とでも考えていそうなのは、それこそルカにもお見通しだ。
「違うって! だってお前、女の子みたいに可愛かったからさ! じゃなくて……!」
爆弾発言を繰り返す庭師見習いをむりやり仕事に戻らせ、フィンレーは必死な様子で弁解しながら、ルカとベリンダを邸内に招き入れた。グイグイと扉の中に押し込められるまで、実は抱き締められた時から今までずっと、フィンレーに手を取られたままだったことに気付いたルカは、「こういうところだよなぁ」と小さく天を仰ぐ。可哀想に、きっとフィンレーはこれをネタに、また揶揄われることになる。
「わかった、わかったから――」
常にない動揺を見せる、普段はめちゃくちゃカッコイイ親友が憐れに思えて来て、ルカは必死で宥めに掛かった。自然に手を離せたのは、お互いにとって良いことだったかもしれない。
そこへ更に、豪快な声が割って入る。
「――ベリンダ、戻ったぞ!」
正面の大階段を、エントランスに向かって降りてきた大柄な人物こそが、フィンレーの父、ヘクター・ボールドウィン卿だ。濃いブラウンの髪を無造作に伸ばし、浅黒い肌に口髭を蓄えた、ルカ的には『イカしたオジサン』――全体的に母親似のフィンレーとの共通点は、紫色の瞳くらいのものだろうか。
優雅な礼を取るベリンダの後ろで、ルカもまたぺこりと頭を下げる。小柄なルカの存在に今気付いたと言わんばかりに、ヘクター卿は笑みを深めた。
「オイオイオイ、ルカ! お前また可愛くなってんじゃねーか! 俺の養子になるか?」
「救国の大剣士」と讃えられる貴族でありながら、軽口の挨拶は変わらない。ぐしゃぐしゃと頭を撫でられながら、ルカは思わず「やめてくださいよー」と声を立てて笑った。彼のこういった身分を問わない大らかな気質が、息子のフィンレーに引き継がれていることが、とても嬉しい。
しかし、ほんわかと胸を温めていたのは、ルカだけだったようだ。
「バッ、何言ってんですか父上!」
初めて聞いた訳でもないはずの父親の冗談に、フィンレーが過剰な反応を見せたのは、「ルカが初恋の相手である」という黒歴史をばらされた影響だろうか。
「あらぁ聞き捨てなりませんわねぇ」
ベリンダが美しい笑顔を引き攣らせたのは、縁起でもないことを言うなとの、純粋な怒りのために違いない。
――ヤバい。収拾がつかない。
「ちょっと、みんな落ち着いてよ……」
自分よりも上手な人物達が、よくわからないことで盛り上がるのを止めることも出来ず、ルカは声を上擦らせた。辺りを見回しても、執事もメイド達も困ったように微笑むだけだ。
――なんでこんなことになった!?
オロオロと視線を彷徨わせたルカは、左手側の廊下の扉から、誰かが顔を覗かせているのに気付いた。フィンレーの祖父であるクリストファー卿が、ルカを手招きしている。
天の助けとばかりに、ルカはその場を離れた。エキサイトしている3人は、気付く様子もない。
招き入れられたのは、応接室の一つだった。テーブルにはお茶とお菓子が、しっかりとセットされている。
「あの子らの気が済むまで、ここでお菓子でも食べていなさい」
すまないね、と困ったように詫びるクリストファー卿の表情に、ルカはハッとした。ダンディな笑顔は、家族への愛情に満ち溢れている。
確かに、フィンレーは父の名代としての重圧や、斥候隊加入への懸念から解放されたばかり。ヘクター卿に至っては、数か月ぶりの故郷だ。多少なりとも、羽目を外したくなることもあるだろう。
――おばあちゃんが二人に付き合ってあげてるのも、そのせいかな。
さすがに違うか、と思い直して、ルカは「はい」と大きく頷いた。
クリストファー卿と向かい合って座り、室内に控えていたメイドが香り高い紅茶を注いでくれるのを見守る。
あれこれと世話を焼いてくれるクリストファー卿と、束の間の二人きりのお茶会を楽しみながら、ルカは親友の暖かな家庭を思い、自分まで幸せな気持ちになっていくような気がして、ふわりと微笑んだ。
第5話 END
14
お気に入りに追加
298
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

マリオネットが、糸を断つ時。
せんぷう
BL
異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。
オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。
第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。
そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。
『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』
金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。
『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!
許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』
そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。
王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。
『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』
『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』
『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』
しかし、オレは彼に拾われた。
どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。
気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!
しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?
スラム出身、第十一王子の守護魔導師。
これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。
※BL作品
恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。
.

動物アレルギーのSS級治療師は、竜神と恋をする
拍羅
BL
SS級治療師、ルカ。それが今世の俺だ。
前世では、野犬に噛まれたことで狂犬病に感染し、死んでしまった。次に目が覚めると、異世界に転生していた。しかも、森に住んでるのは獣人で人間は俺1人?!しかも、俺は動物アレルギー持ち…
でも、彼らの怪我を治療出来る力を持つのは治癒魔法が使える自分だけ…
優しい彼が、唯一触れられる竜神に溺愛されて生活するお話。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね
ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」
オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。
しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。
その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。
「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」
卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。
見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……?
追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様
悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

モラトリアムは物書きライフを満喫します。
星坂 蓮夜
BL
本来のゲームでは冒頭で死亡する予定の大賢者✕元39歳コンビニアルバイトの美少年悪役令息
就職に失敗。
アルバイトしながら文字書きしていたら、気づいたら39歳だった。
自他共に認めるデブのキモオタ男の俺が目を覚ますと、鏡には美少年が映っていた。
あ、そういやトラックに跳ねられた気がする。
30年前のドット絵ゲームの固有グラなしのモブ敵、悪役貴族の息子ヴァニタス・アッシュフィールドに転生した俺。
しかし……待てよ。
悪役令息ということは、倒されるまでのモラトリアムの間は貧困とか経済的な問題とか考えずに思う存分文字書きライフを送れるのでは!?
☆
※この作品は一度中断・削除した作品ですが、再投稿して再び連載を開始します。
※この作品は小説家になろう、エブリスタ、Fujossyでも公開しています。

【完結】元騎士は相棒の元剣闘士となんでも屋さん営業中
きよひ
BL
ここはドラゴンや魔獣が住み、冒険者や魔術師が職業として存在する世界。
カズユキはある国のある領のある街で「なんでも屋」を営んでいた。
家庭教師に家業の手伝い、貴族の護衛に魔獣退治もなんでもござれ。
そんなある日、相棒のコウが気絶したオッドアイの少年、ミナトを連れて帰ってくる。
この話は、お互い想い合いながらも10年間硬直状態だったふたりが、純真な少年との関わりや事件によって動き出す物語。
※コウ(黒髪長髪/褐色肌/青目/超高身長/無口美形)×カズユキ(金髪短髪/色白/赤目/高身長/美形)←ミナト(赤髪ベリーショート/金と黒のオッドアイ/細身で元気な15歳)
※受けのカズユキは性に奔放な設定のため、攻めのコウ以外との体の関係を仄めかす表現があります。
※同性婚が認められている世界観です。

魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。
柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。
そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。
すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。
「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」
そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。
魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。
甘々ハピエン。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる