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第1部・第5話:フィンレー
第4章
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襲撃現場のマスグレイヴは、州都ベントハイムから早馬でも半日近くの距離がある。
ルカの助言に冷静さを取り戻したフィンレーは、すべての予定を切り上げ、その日のうちに領主館を発った。問題の商団の幹部ではなく、末端の団員達に直接話を聞くためである。
元々、第一報を聞いた時から、商団幹部達の話には不審な点があった。他州とも繋がる街道沿いには、宿屋ならいくらでもある。にも関わらず夜営などしていたのは、さすがに不用心に過ぎよう。敢えて行ったからには、必ず理由があるはずだ。
憲兵達が幹部連中に煙に巻かれているというなら、末端から切り崩せないかとの目論見である。
実績のないフィンレーに父ほどの信頼がないのは当然だ。悔しくても、これが己の置かれた立場であることは、厳然たる事実。ならば尚のこと、誰をも納得させられるだけの証拠を提示しなければならない。コノール領主の勢いに押されたとはいえ、裏を取る前に会談に応じたのは、やはり間違いだったのだ。
出発に先立ち、フィンレーが行ったのは、取り急ぎ国に一報を入れておくことだった。商団同士のトラブルにかまけて、肝心の対策を遅らせる訳にはいかない。コノールの商団の偽証が確定すれば、事件は魔王軍の襲撃の線が濃厚になる。国と連携して、厳重な対策を講じなければならないからだ。
2人の部下を連れ、ひたすらに街道沿いを走った夕刻、ちょうどルカ達の暮らすハーフェルの町の外れ辺りで、フィンレーは愛馬オフィーリアを止めた。
ここまでの間、行き交う荷馬車や商隊はどれも小規模で、流通に問題が生じ始めているという報告が裏付けられた形だ。一刻も早く事態を解決しなければ、物不足から物価の高騰を招く危険もある。
逸る気持ちを落ち着かせながら、ひとまずフィンレーは部下達と共に、この先の予定を確認し合った。今日はこのまま、二つ先のリンデルバウムの街辺りまで馬を走らせ、宿を取る。明朝早くに出発すれば、昼までにはマスグレイヴに入れるだろう。
お前にも苦労を掛けるな、と、労るようにオフィーリアの首を撫でてやっているところへ、割って入る者があった。
「――おや、こんな所でお会いするとは、奇遇ですね」
「!」
馬上から声の主を確認して、フィンレーの品良く整った顔が、驚愕に歪められる。司祭のキャソックを纏った朗らかな、それでいて一分の隙もない立ち姿は、ネイトことナサニエル・ベイリー神父だ。
――なぜこんな所に。
フィンレーが考えたのも無理はない。そろそろ陽も落ちようかという時間帯、町外れを聖職者が1人でフラフラしていることの方が不自然だ。そしてそれ以上に、出来れば顔を合わせたくなかったというのが1番大きい。ルカの周りに存在するすべての人間を敵だと思っていそうなこの神父が、フィンレーは大の苦手だった。
――なんでわざわざ声なんか掛けてきたんだよ。
基本的には人当たりの良い人物を演じているこの神父に、心の底から嫌われている自覚のあるフィンレーは、心中ひっそりと苦虫を噛み潰した。どうせろくでもない理由に決まっている、と思いながらも、部下達の手前「どうも」とか「こんばんは」とか、当たり障りのない挨拶を返す。
二人の部下に向かってにこやかに頭を下げたネイトが、フィンレー(とその愛馬)に近付いてきた。思わず鞭を打ってその場から離れたくなるのを、何とか踏み止まる。
「あの、盗人猛々しい商団の調査に向かわれるんでしょう?」
「……ああ。そうだ」
答えるのが一瞬遅れたのは、ネイトの意図を図りかねたからだ。彼の口調から、町の人々が商団に悪感情を抱いているのはわかる。通り掛かっただけのよそ者が、魔物の爪痕の残る荷物の残骸を前に、我が街の者達へ罪を擦り付けているようにしか見えないのだから、彼らの怒りも尤もだ。そしてこの事態を長引かせれば、不満の矛先はフィンレー達支配者階級へ向かうことも明白だった。
「早く解決して貰わないと困るんですよね。往来がストップしてしまっては、いつまで経っても後任がハーフェルに入れない」
部下達に聞こえないようにとの配慮なのか、ネイトは声を落として、小さく頭を振った。眉間に皺を寄せる様が、いかにも当て付けじみていて嫌味っぽい。
その時のフィンレーには知る由もないが、ネイトはどうやら、引き継ぎをかねて、自分の後任に当たる司祭共々、来月に迫った聖エドゥアルト祭の準備をしたいと考えているようだ。
ネイトの予想通り、教団本部は、彼が黄金のベリンダと共に斥候隊へ参加することを大変な名誉だと喜んだ。後任人事もつつがなく進んでいるらしいが、孤児院の子供達のケアを考えると、引き合わせるのは早い方がいい。ネイトがルカに同行を申し出たあの日から、子供達は目に見えて沈んでいる。出来る限りのフォローをしておかなければ、いくらネイトとて寝覚めが悪いというものだ。折に触れ街道の様子を確認しに来ているのも、そのためなのである。
それを知らないフィンレーは、「後任?」と思わず声を弾ませた。ネイトの発言が案の定自分に対する苦言という名の嫌味だったことを不快に感じながらも、この男がハーフェルの町から居なくなってくれるのであれば、それは純粋に嬉しい。ルカに対する、ネイトの執着心は危険だ。自分が不快になる程度ならまだいいが、いつかルカを傷付けないとも限らない。ルカの傍には極力いて欲しくないのだ。
しかし、フィンレーがうっすら口元を緩めてしまっているのを見ても、ネイトは気分を害した様子はなかった。それどころか、満面の笑みを浮かべて、フィンレーを見上げてくる。
「ああ、ルカから聞いていないんですか。私も斥候隊メンバーなんですよ」
「! 何だって!?」
聞いていないんですか、のところに、妙に力が込められていたと感じるのは、フィンレーの思い過ごしなどではないだろう。暗に「私の方がルカと親しいので」と言いたいらしいのも、ヒシヒシと伝わってくる。
そんな話は聞いていない、と、フィンレーは歯噛みした。確かに、ルカに誘われた際の話の流れでは、自分以外の誰に声を掛けたのかまでは聞けなかった。フィンレー自身に余裕がなくて、確認することまで思い至らなかったのもある。だが。
――なんでよりによってこの男を。警戒心がないにも程があるぞ!
自分でも正体のわからない苛立ちに、フィンレーは知らぬ間に拳を握り締めていた。
「俺だって、声は掛けて貰ってる」
自分から頼んで保留にして貰っているくせに、そんな風に反論したのは、ネイトの「圧」のようなものに負けたくなかったせいだ。
フィンレーの敵意を煽るかのように、ネイトが意地悪く微笑む。
「公子様はお忙しいでしょうし、ルカのお世話は私に任せてくださればよろしいのですよ」
「ルカは子供じゃない」
自分どころかルカの自主性まで無視するかのような物言いを、フィンレーは即座に切り捨てた。しかしネイトは、物わかりの悪い子供を諭すかのように、わざとらしく困ったような表情を作る。
「子供だなんて思っていませんよ、そんな話はしていない。貴方に正直になれとは言いませんが、聖人君子面には正直腹が立ちますね」
「……」
笑顔のまま吐き出された毒に、フィンレーは二の句が継げずに押し黙った。話を逸らすなと言ったつもりが、そっくりそのまま言い返されたようで、思わず奥歯を噛み締める。まるでフィンレーが己を偽っているかのような断定を、なぜか否定することが出来ない。
フィンレーが黙り込んだことで、取り敢えず溜飲は下げられたのか、ネイトは「まぁ、それはそれとして」と口調を改めた。背後に控えた部下達にも聞こえるように、にこやかに檄を飛ばす。
「早く片を付けてくださいよ。貴方なら出来るでしょう?」
言って、ネイトはフィンレー達に向かって掌を掲げた。そこから薄緑色のキラキラとした光が発されたかと思うと、次の瞬間、身体から疲労が抜けていく。フィンレーと2人の部下、その馬達に対して、癒しの魔法を掛けてくれたらしい。
「これは」「ありがたい」と、部下達が口々に感謝を述べる横で、フィンレーは愕然と瞳を見開いた。他者への癒しは聖職者の十八番といえるが、ネイトに限ってはフィンレーに力を貸す義理はない。或いは、よほどくたびれて見えたのだろうか。
フィンレーの疑惑の眼差しを受けて、ネイトは小さく肩を竦めて見せた。その澄ました表情を見ていると、もしかしたら、彼なりのひねくれたエールなのかもしれないとも思えてくる。
ひとまずは嫌味混じりの発破を真正面から受け止めることにして、フィンレーは愁眉を解いた。
「礼は言っておく。ありがとう」
生真面目に頭を下げると、ネイトは満足そうに「どういたしまして」と笑った。
「私が旅立てなくて、悲しい想いをするのはルカですからね」
手を振りながら付け加えられた世迷言は念頭から追いやって、フィンレーは再び愛馬を駆った。
その胸中には、己のためにもルカのためにも、一刻も早く事態を収拾せねばとの熱い想いが、出発時よりも一層激しく燃え盛っていたのである。
ルカの助言に冷静さを取り戻したフィンレーは、すべての予定を切り上げ、その日のうちに領主館を発った。問題の商団の幹部ではなく、末端の団員達に直接話を聞くためである。
元々、第一報を聞いた時から、商団幹部達の話には不審な点があった。他州とも繋がる街道沿いには、宿屋ならいくらでもある。にも関わらず夜営などしていたのは、さすがに不用心に過ぎよう。敢えて行ったからには、必ず理由があるはずだ。
憲兵達が幹部連中に煙に巻かれているというなら、末端から切り崩せないかとの目論見である。
実績のないフィンレーに父ほどの信頼がないのは当然だ。悔しくても、これが己の置かれた立場であることは、厳然たる事実。ならば尚のこと、誰をも納得させられるだけの証拠を提示しなければならない。コノール領主の勢いに押されたとはいえ、裏を取る前に会談に応じたのは、やはり間違いだったのだ。
出発に先立ち、フィンレーが行ったのは、取り急ぎ国に一報を入れておくことだった。商団同士のトラブルにかまけて、肝心の対策を遅らせる訳にはいかない。コノールの商団の偽証が確定すれば、事件は魔王軍の襲撃の線が濃厚になる。国と連携して、厳重な対策を講じなければならないからだ。
2人の部下を連れ、ひたすらに街道沿いを走った夕刻、ちょうどルカ達の暮らすハーフェルの町の外れ辺りで、フィンレーは愛馬オフィーリアを止めた。
ここまでの間、行き交う荷馬車や商隊はどれも小規模で、流通に問題が生じ始めているという報告が裏付けられた形だ。一刻も早く事態を解決しなければ、物不足から物価の高騰を招く危険もある。
逸る気持ちを落ち着かせながら、ひとまずフィンレーは部下達と共に、この先の予定を確認し合った。今日はこのまま、二つ先のリンデルバウムの街辺りまで馬を走らせ、宿を取る。明朝早くに出発すれば、昼までにはマスグレイヴに入れるだろう。
お前にも苦労を掛けるな、と、労るようにオフィーリアの首を撫でてやっているところへ、割って入る者があった。
「――おや、こんな所でお会いするとは、奇遇ですね」
「!」
馬上から声の主を確認して、フィンレーの品良く整った顔が、驚愕に歪められる。司祭のキャソックを纏った朗らかな、それでいて一分の隙もない立ち姿は、ネイトことナサニエル・ベイリー神父だ。
――なぜこんな所に。
フィンレーが考えたのも無理はない。そろそろ陽も落ちようかという時間帯、町外れを聖職者が1人でフラフラしていることの方が不自然だ。そしてそれ以上に、出来れば顔を合わせたくなかったというのが1番大きい。ルカの周りに存在するすべての人間を敵だと思っていそうなこの神父が、フィンレーは大の苦手だった。
――なんでわざわざ声なんか掛けてきたんだよ。
基本的には人当たりの良い人物を演じているこの神父に、心の底から嫌われている自覚のあるフィンレーは、心中ひっそりと苦虫を噛み潰した。どうせろくでもない理由に決まっている、と思いながらも、部下達の手前「どうも」とか「こんばんは」とか、当たり障りのない挨拶を返す。
二人の部下に向かってにこやかに頭を下げたネイトが、フィンレー(とその愛馬)に近付いてきた。思わず鞭を打ってその場から離れたくなるのを、何とか踏み止まる。
「あの、盗人猛々しい商団の調査に向かわれるんでしょう?」
「……ああ。そうだ」
答えるのが一瞬遅れたのは、ネイトの意図を図りかねたからだ。彼の口調から、町の人々が商団に悪感情を抱いているのはわかる。通り掛かっただけのよそ者が、魔物の爪痕の残る荷物の残骸を前に、我が街の者達へ罪を擦り付けているようにしか見えないのだから、彼らの怒りも尤もだ。そしてこの事態を長引かせれば、不満の矛先はフィンレー達支配者階級へ向かうことも明白だった。
「早く解決して貰わないと困るんですよね。往来がストップしてしまっては、いつまで経っても後任がハーフェルに入れない」
部下達に聞こえないようにとの配慮なのか、ネイトは声を落として、小さく頭を振った。眉間に皺を寄せる様が、いかにも当て付けじみていて嫌味っぽい。
その時のフィンレーには知る由もないが、ネイトはどうやら、引き継ぎをかねて、自分の後任に当たる司祭共々、来月に迫った聖エドゥアルト祭の準備をしたいと考えているようだ。
ネイトの予想通り、教団本部は、彼が黄金のベリンダと共に斥候隊へ参加することを大変な名誉だと喜んだ。後任人事もつつがなく進んでいるらしいが、孤児院の子供達のケアを考えると、引き合わせるのは早い方がいい。ネイトがルカに同行を申し出たあの日から、子供達は目に見えて沈んでいる。出来る限りのフォローをしておかなければ、いくらネイトとて寝覚めが悪いというものだ。折に触れ街道の様子を確認しに来ているのも、そのためなのである。
それを知らないフィンレーは、「後任?」と思わず声を弾ませた。ネイトの発言が案の定自分に対する苦言という名の嫌味だったことを不快に感じながらも、この男がハーフェルの町から居なくなってくれるのであれば、それは純粋に嬉しい。ルカに対する、ネイトの執着心は危険だ。自分が不快になる程度ならまだいいが、いつかルカを傷付けないとも限らない。ルカの傍には極力いて欲しくないのだ。
しかし、フィンレーがうっすら口元を緩めてしまっているのを見ても、ネイトは気分を害した様子はなかった。それどころか、満面の笑みを浮かべて、フィンレーを見上げてくる。
「ああ、ルカから聞いていないんですか。私も斥候隊メンバーなんですよ」
「! 何だって!?」
聞いていないんですか、のところに、妙に力が込められていたと感じるのは、フィンレーの思い過ごしなどではないだろう。暗に「私の方がルカと親しいので」と言いたいらしいのも、ヒシヒシと伝わってくる。
そんな話は聞いていない、と、フィンレーは歯噛みした。確かに、ルカに誘われた際の話の流れでは、自分以外の誰に声を掛けたのかまでは聞けなかった。フィンレー自身に余裕がなくて、確認することまで思い至らなかったのもある。だが。
――なんでよりによってこの男を。警戒心がないにも程があるぞ!
自分でも正体のわからない苛立ちに、フィンレーは知らぬ間に拳を握り締めていた。
「俺だって、声は掛けて貰ってる」
自分から頼んで保留にして貰っているくせに、そんな風に反論したのは、ネイトの「圧」のようなものに負けたくなかったせいだ。
フィンレーの敵意を煽るかのように、ネイトが意地悪く微笑む。
「公子様はお忙しいでしょうし、ルカのお世話は私に任せてくださればよろしいのですよ」
「ルカは子供じゃない」
自分どころかルカの自主性まで無視するかのような物言いを、フィンレーは即座に切り捨てた。しかしネイトは、物わかりの悪い子供を諭すかのように、わざとらしく困ったような表情を作る。
「子供だなんて思っていませんよ、そんな話はしていない。貴方に正直になれとは言いませんが、聖人君子面には正直腹が立ちますね」
「……」
笑顔のまま吐き出された毒に、フィンレーは二の句が継げずに押し黙った。話を逸らすなと言ったつもりが、そっくりそのまま言い返されたようで、思わず奥歯を噛み締める。まるでフィンレーが己を偽っているかのような断定を、なぜか否定することが出来ない。
フィンレーが黙り込んだことで、取り敢えず溜飲は下げられたのか、ネイトは「まぁ、それはそれとして」と口調を改めた。背後に控えた部下達にも聞こえるように、にこやかに檄を飛ばす。
「早く片を付けてくださいよ。貴方なら出来るでしょう?」
言って、ネイトはフィンレー達に向かって掌を掲げた。そこから薄緑色のキラキラとした光が発されたかと思うと、次の瞬間、身体から疲労が抜けていく。フィンレーと2人の部下、その馬達に対して、癒しの魔法を掛けてくれたらしい。
「これは」「ありがたい」と、部下達が口々に感謝を述べる横で、フィンレーは愕然と瞳を見開いた。他者への癒しは聖職者の十八番といえるが、ネイトに限ってはフィンレーに力を貸す義理はない。或いは、よほどくたびれて見えたのだろうか。
フィンレーの疑惑の眼差しを受けて、ネイトは小さく肩を竦めて見せた。その澄ました表情を見ていると、もしかしたら、彼なりのひねくれたエールなのかもしれないとも思えてくる。
ひとまずは嫌味混じりの発破を真正面から受け止めることにして、フィンレーは愁眉を解いた。
「礼は言っておく。ありがとう」
生真面目に頭を下げると、ネイトは満足そうに「どういたしまして」と笑った。
「私が旅立てなくて、悲しい想いをするのはルカですからね」
手を振りながら付け加えられた世迷言は念頭から追いやって、フィンレーは再び愛馬を駆った。
その胸中には、己のためにもルカのためにも、一刻も早く事態を収拾せねばとの熱い想いが、出発時よりも一層激しく燃え盛っていたのである。
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